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トラブルが起きたとき、子どもに「原因」を聞くのをやめて、解決志向のゴールを聞きませんか

児童が問題行動を起こした時に、教員が言ってしまいがちな言葉があります。
「どうして そんなことをしたの?」

けれどこの問いを投げかけても、その子の困り感が解決することはありません。もっと聞いた方がいいことがあるようです、というお話です。

■よくあるトラブル後の一幕

T(学級担任)とAさん(友達によく手を出してしまう子)2人でのお話です。

T「Aさんはどうして、悪いとわかっているのにたたいてしまうの?」
A「う〜ん・・・。」
T「もう何度も同じ話をしているよ。それはなおさないと。」
A「そうなんだけど…。」
T「暴力はダメって、わかっているんでしょ?」
A「うん…。」
T「じゃあ、なんでやってしまうの?」
A「・・・。」

うわぁ、聞いててつらくなってきますね。

原因を探ってなんとか解決しようと必死に問い詰める先生と、どう答えれば先生は早く解放してくれるのかと困っている子どもの攻防戦です。

正直、私も児童にこんな話し方をしてしまった覚えがあります。

■原因の追求はやめよう

でも問題の「原因」を追求したところで、解決なんてしません。
むしろ、「自分は、ダメだとわかっているのに人をたたくダメダメな人間だ」という刷り込みを深めるばかりです。

突き詰めれば愛着や発達などの「原因(?)」もあるかもしれませんが、それを子ども自身に語らせることに、メリットはありません。


問題行動の原因を突き詰めることに意味はない、と気づかせてくれたのは、この本でした。

さて、著者の森俊夫先生は、「問題行動の意味を問うのは意味がない!」ことの意味を数章にわたって述べられた上で(いや、こんな書き方をするとちょっと引いてしまうかもしれませんが、とても面白く、そして議論の前提として重要なお話でした)解決に導くための方策を書いていただいています。

それはズバリ、困り感を抱えた子ども自身に、「どうなればいいの?」と聞くこと。

「どうすればいいと思う?」ではなく、「どうしたいの?」でもなく、「どうなればいいの?」です。

■解決志向のゴールを考える

おれだってたたくんじゃなくて、ちゃんと言葉で言いたい!
でも、なんかうまくできないんだよ!

そんな子たちが、「これくらいなら自分だってできるかも」そう思えるような、小さな一歩につながるヒントは、子ども自身が(本人は無自覚かもしれませんが)必ず持っているはず。

解決の種は子どもの中にあることを信じて、
「〜〜しない」という否定形ではなく肯定形の言葉で、
具体的で行動の形で記述できるような、
目指す姿がありありと思い浮かべられるような、
達成可能な小さなゴールを
子ども自身の言葉で設定してもらうこと。


たとえその最初の一歩が担任にとって最優先事項だと思えなくても、それを引き出し、達成することこそが重要なのだと、私は森先生の著書から学びました。

noteの数行でその極意を伝えることは難しいので、具体的な手法を知りたいと言う方は、ぜひこちらの本もお読みください。

■餅は餅屋 本当は心理のプロにお願いしたい!

さて、子どもの困り感を解決するためには、このスモールステップの目標を設定し、適宜フィードバックをかえしながら支援を継続することが必要です。
けれども、果たしてこれは学級担任にできることでしょうか。
先ほど提示した森先生の著書も、担任向けというよりはむしろ、スクールカウンセラーやコーディネーターなどの支援者に向けて書かれていました。

けれど、こうしたトラブルは、日々学級の中で起きています。
月に数回来校するスクールカウンセラーを待つことはできないこともあるでしょう。コーディネーターが、他のクラスの児童に対応していて動けないこともあるでしょう。
結果、担任の先生が「根本的なところから解決しなきゃ!」と原因を探ろうと奮闘し、子どもと共に疲れ果て、なかなか解決に結びつかない・・・という光景が各地の学校で繰り広げられているように思うのです。

そんな先生方には、是非とも上記の本をお読みいただきたいと思います。きっと、本当の解決に向けた糸口がみつかります。

それでも担任はあくまで「教育」のプロであって、残念ながら「心理」のプロではありません。
担任が全てを解決できると思うことは驕りですし、日本中の全担任にこれを求めることは無茶無謀もいいところです。

どの学校にも、心理のプロであるスクールカウンセラーが毎日いる。それに加えて、コーディネーターをはじめとした担任を持たないフリーで動ける先生が複数、ある程度専門的な知識を身につけて適宜対応できる。

そんな体制がいつか整ってほしいと、昨今の「働き方改革」報道を見ながら切に願っています。

■次善の策 管理職の先生方にお願いです!!

それまでは・・・、管理職の先生方、どうにかして自由に動ける人員を1人でも多く確保してください。

そして、その中核となる先生に負担となる仕事を負わせずに、様々な支援の手立てや理論を教育・心理・福祉の分野を問わず学べる時間を確保してあげてください。

それが、まわりまわって担任の先生たちの負担軽減につながるはずです。
どうか、よろしくお願いします。