『ワッチャプリマジ!』を1話だけでいいから見てくれ!【マジ(魔法)とマジ(本気)の物語】
こんにちは、考察オタクの近藤です!
貴方と同じくプリティーシリーズに人生を狂わされた成人です。
さて、プリティーシリーズがとんでもないアニメを作ってしまいました。
その名も『ワッチャ!プリマジ』です!
しかしながら、「プリリズやプリパラは好きだけど、プリマジ……?」と、あまりピンとこない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、プリマジをまだ見ていない方にぜひ魅力を知ってもらいたいと思い、「1話」だけの内容から感想とポイントを語っていきます!
タイトルの通り、本記事を読む前でも後でもいいので、1話だけ……1話だけでいいので見てください!
0.プリティーシリーズとは?
そもそもプリティーシリーズとは……と説明し始めると、女児アニメの歴史を無限に語り続けるオタクになってしまうので、ここでは『プリマジ』の説明に必要な前提のみ整理します。
プリマジは、大枠でいうと『プリティーリズム』『プリパラ』『キラッとプリ☆チャン』に次ぐプリティーシリーズの4作目です。
本作で最も特徴的なのは「魔法」が登場することです。
プリティーシリーズ的には、意外にも魔法を扱うのは初めて。
同じ女児アニメで、魔法(にあたる要素)をメインに扱う作品といえば、プリキュアシリーズがありますね。
私は、プリマジにおける「魔法」がプリキュアにおける「魔法」とどのように異なっているかが最大のポイントだと思っています。
というのも、最近のプリティーシリーズは、他の女児アニメが扱ったテーマを踏襲しつつ、プリティーシリーズなりの独自テーマを乗せて再解釈するという手法をよく取っているからです。
たとえば、『キラッとプリ☆チャン』では、『アイカツ!』が描く「憧れのバトン」というテーマに、プリティーシリーズの描く「友達」「多様性」といったテーマを乗せることで、同じようでまったく異なる作品として仕上げていました。
(※以下、参考までに具体的に補足しますと……
これまでのアイカツシリーズとプリティーシリーズの大きな違いとして、「憧れ」の対象となる具体的なキャラクターの有無が挙げられます。
アイカツシリーズでは、『アイカツ!』なら神崎美月、『アイカツスターズ!』なら白鳥ひめという「憧れ」の人物が登場します。
これによって、美月からいちごへ、いちごからあかりへ……という「憧れのバトン」というテーマを描いていました。
一方、プリティーシリーズでは、「憧れ」の対象は店のオーナーや神アイドルなどの抽象的な概念となっていました。
そのような流れの中で、プリチャンでは初めて具体的な「憧れ」の人物となるアンジュが登場します。
このアンジュが登場したことで、アンジュから主人公のみらいへ、そしてみらいからだいあへ……という「憧れのバトン」がプリティーシリーズにも持ち込まれます。その上で、アイカツシリーズとは異なる方向性に仕上げているのです。)
1.「チュッピ」という差別用語
プリマジを見る上でのポイントは、「プリキュアとの『魔法』の扱いの違い」だと語りました。
ここで注目したいのは、みゃむというキャラクターが連呼する「チュッピ」という表現です。
チュッピとは、プリマジの世界で「魔法を使えない者」を指す造語です。
しかしこの言葉、よく考えるとおかしいと思いませんか?
プリキュアを含む魔法を扱う作品において、魔法が使える者には「プリキュア」や「魔法少女」などの特別な呼び方が存在します。
特別な存在だから、特別な呼び方がある。当然の話ですね。
しかし、女児アニメを見る我々(我々……?)は、魔法を使えません。一般人に対して、わざわざ呼び名を設定する必要は本来ならないのです。
しかも、「チュッピ」=「魔法が使えない」という表現には、魔法が使える者(=マナマナ)と比べて「劣っている」というニュアンスが含まれます。
魔法が使いたいであろう女児先輩方に対して、「まぁ貴方達は魔法が使えないけどね」と現実を突きつけるような、禁句ともいえる表現です。
それだけでなく、チュッピは一種の差別用語でもあります。
「流石に言い過ぎでは?」と思う方もいるかもしれませんが、1話を思い返してみると……
このように、主人公・陽比野まつりに対する、みゃむの言動は、チュッピを見下すようなものになっています。
ハリーポッターシリーズで一般人を表す「マグル」と同じだといえば、ニュアンスは伝わるでしょうか。
朝に放送する女児アニメは教育上も重要なコンテンツ。
差別表現は避けたいところですが、それでもあえて「チュッピ」という言葉を扱うプリマジ……これはマジで挑戦的です。
そして、この点こそが明確にプリキュアと異なる点であり、ここにプリマジの理念が隠れている気がしてなりません。
2.陽比野まつりの現実
「チュッピ」という危険な造語と、マナマナのチュッピへの差別的な態度。
では、何故このような表現を前面に押し出しているのでしょうか?
個人的な考えですが、これは主人公・陽比野まつりが自分の夢と現実に向き合う物語だからだと思っています。
陽比野まつりは、トッププリマジスタのジェニファー・純恋・ソル(すごい名前……)に憧れる女の子。しかし自分に自信が持てず、プリマジの世界に足を踏み出せずにいます。
プロフィールも書いてみたものの、提出はしておらず、夢の欄も空白のままです。
そんなまつりを見て、みゃむは「やりたいなら やれよ!」とストレートに言い放ちます。
この容赦のなさこそ、マナマナとチュッピの間にある隔たりを示しており、まつりがただのチュッピであるという現実を突きつけるシーンになっています。お前は特別な存在にはなれない、ただの普通の人間なのだと。
魔法を使えるすごい者はマナマナ。使えない劣ったヤツがチュッピ。
チュッピという名称があることで、この対比構造が明確になります。
つまり、「チュッピ」という言葉には、魔法を使えない者が直面する「厳しい現実」を炙り出す作用があるのです。
プリマジで扱われる「魔法」は、単に優れた能力ではなく「現実の裏側」という立ち位置を持っていることがわかります。
このように整理すると、「プリマジは女児に厳しい現実を突きつけるヤバい作品なのか?」「PTAが黙っていないのでは?」という風に思ってしまいそうですが、実際にはそうではありません。
むしろここからがプリマジのテーマであり、PTAも思わず唸るような希望を見せてくれるのです。
3.マジ(魔法)はなくてもマジ(本気)はある
では、チュッピであるまつりが、突き付けられた厳しい現実と向き合うためにはどうすればいいのでしょうか?
これに対する答えがマジ(本気)です。
自信が持てずに夢の欄を空白にし続けていたまつりですが、紆余曲折を経てついにペンを取ります。
そこからのまつりに迷いはありません。完全にマジ(本気)です。
では、まつりの身に一体何が起きたのでしょうか?
このきっかけとなったのは、みゃむから突き付けられた現実です。
まつりがマジ(本気)になれたのは、チュッピであるまつりにはマジ(魔法)がないという残酷な現実を受け入れることができたからです。
つまり、マジ(本気)になるためには、「自分が特別ではない」という現実を飲み込むというある種の開き直りが必要なのです。
ここで注目すべきなのは、まつりがプロフィールの「夢」の欄に書いた内容が、「カッコイイ自分でいたい!」であるということです。
まつりが夢の欄を空白にしていた理由は夢がないからではありません。ジェニファーのようになりたいという夢(≒憧れ)はあるけれど、その夢を書けるほど自分に自信がないからでした。
ということは、「カッコイイ自分でいたい!」という夢は、まつりがもともと持っていた夢ではありません。
では、なぜ自分の中にあった夢をそのまま書かなかったのか?
それは、現実を受け入れた上で、「マジ」で目指せる現実的な落とし所まで、夢のランクを下げているからです。
ここが『プリマジ』の最大のポイントです。
女児に対して厳しい現実を突きつけると共に、それを受け入れて妥協してでも夢に向かって走れという、現実的な叱咤激励をしているのです。
ここまでやってしまうのか、プリティーシリーズ……!
魔法という題材を扱いながら現実と向き合わせるという、一見矛盾した素晴らしい第1話ではないでしょうか!
プリマジはマジ(魔法)とマジ(本気)──つまり「夢」と「現実」の物語なのです。
4.なぜ「ワッチャ」なのか?
ここまでくると、タイトルにくっついている意味不明な言葉、「ワッチャ」の意味が見えてきます。
注目すべきは、プリマジのテーマ曲である『マジ・ワッチャパレード』です。
「マジワッチャ」は、「マジ」と「交わっちゃう」が掛かっています。つまり、プリマジはマジ(魔法)とマジ(本気)が交わった時に始まる物語だということです。
さらに言うと、「マナマナマジパチュッピ」という謎の合言葉の意味もわかるはずです。
プリマジはマナマナ(魔法)とチュッピ(現実)の物語です。間に入る「マジパ」は、「マジ(魔法&本気)のパートナー」の略だという予想はすぐに立ちます。
5.まとめ
というわけで、「プリマジが描く魔法」について語ってきました。
1話だけでも語りまくれてしまう、とんでもない熱とパワーを持った作品です!
気になってくださった方は、ぜひ2話以降も視聴していただき、そして他のプリティーシリーズ、他の女児アニメにも興味を広げて……一緒に界隈を盛り上げるマジパとなりましょう!
この先の見どころですが……
1話時点では、まつり(現実サイド)が、マナマナの魔法に大きく影響を受けて成長する姿が描かれました。
今後は、みゃむ(魔法サイド)が、チュッピという現実からどのような影響を受けて、どのように成長していくのか……そのあたりに注目しながら観進めていくと、より一層楽しめるかと思います!
プリマジ自体はすでに完結しているので、いつか作品全体を振り返っての考察もできればと思います!
★おまけ
プリマジの監督は『おジャ魔女どれみ』でお馴染みの佐藤順一監督です。
思い返してみれば、おジャ魔女どれみで描かれる魔法は、万能の解決手段として用いられていません。あくまできっかけを作ったり、背中を押す程度の役割です。中には「魔法を使わない魔女」なんてキャラクターもいるくらいです。
基本的には彼女たち自身の力でなんとかする、地に足のついた物語が多かったように思います。
そんなおジャ魔女どれみを描いた佐藤順一監督の思想と、プリティーシリーズ全体のテーマである「夢を持て!」という思想の化学反応によって、プリマジが誕生したと考えると……とても感慨深いです!
(※この「夢を持て!」の話は長くなるので、動画や記事で改めて語ります)
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それではまた次回のかもしれない考察でお会いしましょう!
※記事内に用いた画像は、すべて考察を目的として引用しています。
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