国家財政を考えてみよう その8 特別会計、健康保険、厚生年金・国民年金の負担はどれくらい増えているのか
前項までで振り返ってきたアベノミクス第2の矢=機動的な財政政策は国家財政の一般会計でした。
国民負担、要するにサラリーマンが給料から天引きされるお金やその他の日常生活で払っている税金、は一般会計だけではありません。それ以外に大きく分けて特別会計、年金保険料、健康保険料があります。
それらの国民負担はどうなっているのでしょうか?
まず、特別会計を見てみます。
平成21年度(2009年度)特別会計決算収納済歳入額は377兆8376億円、決算での剰余金が29兆8,254憶円発生しています。それが10年後の平成30年度(2018年度)では特別会計決算収納済歳入額は381兆1765億円と3兆3389億円歳入が増え12兆2405憶円の剰余金を計上しています。
平成21年度特別会計決算概要 : 財務省
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/account/fy2009/ke220730tokai.htm
平成30年度特別会計決算概要 : 財務省
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/account/fy2018/ke010731tokkai.html
次に健康保険を見てみましょう。
平成21年度健康保険料収入は5兆9705億円でこの年の経常収支は▲5235憶円の赤字。平成30年度健康保険料収入は8兆2730憶円と10年前より2兆3025億円も増え、経常収支は3048憶円の黒字になっています。保険料は支出も大きく増えているので黒字額はそれほど大きくはないものの、国民負担が大きく増えていることは明らかです。
平成 21 年度健保組合決算見込の概要 健康保険組合連合会
https://www.kenporen.com/include/press/2010/20100910172618-0.pdf
平成30年度 健康保険組合 決算見込のポイント 健康保険組合連合会
https://www.kenporen.com/include/press/2019/201909092.pdf
では最後に厚生年金・国民年金はどうでしょうか?
平成21年度の厚生年金国民年金合わせた歳入は43兆1426億円で積立金残高は126兆9874億円。10年後の平成30年度では歳入が51兆9157億円となんと10年前の8兆7731憶円も増え積立金残高は119兆9867憶円です。
厚生年金・国民年金の平成21年度収支決算の概要 厚生労働省年金局
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000j1pd-img/2r9852000000j1qu.pdf
厚生年金・国民年金の平成 30 年度収支決算の概要 厚生労働省年金局
https://www.mhlw.go.jp/content/12501000/000536909.pdf
健康保険と年金はアベノミクスでは謳われていないので見過ごしがちですが、この二つの負担が過去10年の内に年間11兆0756憶円も増えています。
その上、年金の積立金は約120兆円もあり、これは年金支出の2年半分に相当します。つまり2年半の間全国民が年金保険料を全く支払わなくても破綻しません。これは過剰貯蓄ではないのでしょうか?この120兆円のお金が民間に流れたら、どれだけ有効活用可能でしょうか?
特別会計は一般会計、年金保険料、健康保険料との入り繰りがあるので、歳入増と国民負担増が必ずしも直結しませんが、いずれにしても特別会計でもお金を国が吸い上げて貯め込む構造であることだけは明白です。
前項で見たように、アベノミクス含む10年間で一般会計の税収は年間21兆6323億円増えていました。それに加えてアベノミクスではなくそれ以前の小泉政権時に決められたこととは言え、健康保険料と年金保険料で年間11兆0756憶円も増えているのです。併せて32兆7139憶円もの国民負担増です。
民間から年間32兆、GDPの6%ものお金を、以前より多く吸い上げていて、財政の歳出も減っている。
これで経済が上向くはずもありません。逆にこんなに締め上げられているのにデフレからの回復傾向が見えてきたのは、いかに金融緩和が利いているかの証左ではないでしょうか?もし黒田日銀の金融緩和がないままに、財政側のこの恐るべき緊縮が実行されていたら、いったい日本経済はどうなっていたことやら、という感を数字を見て再確認しました。
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