銀座ウエストのシュークリーム
私にとり世界一のシュークリーム。それは銀座ウエストのハーフシュークリームです。
しかし、手放しに賞賛するには複雑な思いがあります。
元々この店には、カスタードクリームのシュークリームと、生クリームのクリームパフという二つの異なるシュークリームがありました。幼稚園に上がる前から、つまり今から50年以上も前から私はこの店のシュークリームが大好きでした。何故そんな幼いころのことをはっきり覚えているかというと、私の母の妹、つまり叔母が銀座ウエストでウエイトレスとして働いていて、それで母がよく私をウエストに連れて行っていたからです。しかしもう少し成長すると、ウエストにはカスタードクリームのシュークリームとは別に、生クリームが詰められたクリームパフという店内専用メニューがあることを私は知りました。それからは私にとってシュークリームとクリームパフのどちらを選ぶかが常に大きな悩みになりました。。
そして社会人になってお小遣いに少し余裕が出来たある日、その悩みをついに振り切ることができました。カスタードクリームのシュークリームと生クリームのクリームパフの両方を注文するという贅沢な暴挙に出たのです。繰り返すこと数回、ある時ふと思い立って、テーブルに並んだシュークリームとクリームパフを半分に切り分け、互い違いに合体させてみました。一つのシュークリームの中に生クリームとカスタードクリームが半々になる。
これが最高に美味しかった!
それからというもの、私は銀座ウエストに行くとシュークリームとクリームパフの分解再構築に明け暮れました。そのような作業を続けて約20年、ある日銀座ウエストに行くと、なんとメニューにハーフシュークリームなるものがあるではありませんか!20年以上に渡り私が手作業で制作していたスペシャルバージョンが、カタログモデルとなっていたのです。どうやら経営者の世代交代があり、メニューや店舗の刷新の一環で若い新経営者の提案でハーフシュークリームが定番化されたようでした。私は、著作権料くれ、と心の中で呟いていました。
とは言え、味の素晴らしさは変わりません。
今では素直にカタログモデルのハーフシュークリームを楽しんでいます。
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