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切り紙

昨日の今森光彦氏の、素晴らしい切り紙の作品を見ていて、思い出した出来事。

2年前、学校司書の仕事についてまもなくの頃だ。図書室に1番近い教室は3年生だ。図書室にやって来た見慣れない職種の人に興味深々で、休憩時間毎に何人かがやってくる。その中のひとりT君は、昆虫博士と呼んでいいくらい、昆虫についてよく知っていた。そのT君が気に入った本が

この本だった。

図書室の昆虫の本を制覇しているT君は、今森光彦氏の切り紙に魅了されたようで、私のところに本を持ってきては、昆虫の説明をしてくれる。「すごいね〜。T君も真似して作ったら」と紙を一枚を渡し、本を貸し出した。すると次の日「出来たよー」とカブトムシを作り持ってきた。なかなか良い出来だったので、「みんなが見たら欲しがるね。書棚からこれが出てきたら、面白いね、喜ぶかもね」と何気なく私は言った。するとT君は、「そうだ、そうしよう。沢山作って図書室に隠して、昆虫探し会をしよう」と言い出す。話しはドンドン盛り上がり、日程まで決まった。広報用のポスターまで書いてくれた。

もちろん、3年生の手では、そんなに沢山出来るわけはなく、私は今森氏のような精巧な昆虫ではなく、超簡単昆虫を切り紙して、T君の計画を支える。もちろんT君なりに、今森氏の作品を参考に作って持ってきてくれた。さらに、T君の担任に事情を話し、図書室の中で解決させるので、T君の活動の許可を得ておいた。前日は、T君は、切り紙の昆虫を図書室内に隠す。

当日、ポスターを見た低学年がやってくる。T君は、クラスメイトを連れてやってくる。すると、知らなかった子どもたちも、状況を察して探し始めるた。あちらこちらで「アッター」の声。みんな見つけた切り紙昆虫を宝もののように持って帰る。これが、一週間続いた。さすがに作り置いた切り紙もなくなり、昆虫探し会は、終わった。その後も時々、「本の間にこれあった」と切り紙昆虫が出てきた。「それはプレゼント」と言って発見した子がもらってくれた。

今森氏の素晴らしい切り紙から始まった図書室の楽しい行事。物で誘ったわけではなく、何かワクワクすることができる場所。場合によっては企画だって出来る。

今回、今森氏の素晴らしい作品を鑑賞しながら、学校の中の図書室はどんな場所かを学んだきっかけをもらったことを思い出す。


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