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うえののそこから「はじまり、はじまり」荒木珠奈展@東京都美術館


フライヤーを手にした時から気になっていた展覧会。

なんだかわからない黒いカゴ?にかわいいガイコツ・・・経歴も作風もまったく知らないアーティストでしたが、何やら楽しそうというだけで行ってきました。

荒木珠奈(1970年-)は、へんてこなかわいらしさとゾクッとする感覚が混ざり合った世界観が魅力の作家です。光と影、昔話、家や舟といった物語を想起させるようなモチーフを用いて、私たちの心の底にある懐かしい感覚や感情、記憶を揺さぶりながら、非日常の世界へと誘う作品を数多く発表してきました。
本展では、詩情豊かな版画や立体作品をはじめ、メキシコの先住民やさまざまな国のルーツを持つこどもたちと共同制作した作品など、初期から最新作までの90点以上を紹介します。物語性あふれる作品がもたらす鑑賞体験を通じて、「越境」「多様性」「包摂」といった国や地域を越えて現代社会が共通して抱えるテーマについて思いを寄せ、一人ひとりの日々の暮らしのかけがえのなさ、生きていくことのポジティブな力を見つめることのできる展覧会です。

東京都美術館展覧会公式サイトより

いい歳のオバサンですが、奥底に眠っていた「幼ごころ」を覚醒させてしまったようでめちゃくちゃ心の中ではしゃいで楽しんできました。一部撮影不可でしたがほぼ自由に撮影させてもらいながら童心にかえるひとときを過ごすことができました。

子供の頃に読んだ絵本の世界を垣間見たようなかわいらしい作品から、よくよく考えるとふか〜い意味にゾゾっとしたり得体の知れない不安感を抱いたりと、ギャラリーをあっちへこっちへと移動しながらさまざまな感情を体験できました。根底にアーティストの生命への慈しみや未来志向を感じるので「揺さぶられ」感がほどよく鑑賞後はすごくリフレッシュした気分になりました!

では、気になった作品をご紹介します。

このエスカレーターの地下に潜る感じ、すき。
《Caos poetico(詩的な混沌)》 2005年
東京都現代美術館

最初は版画の展示ですが、その先にあるカラフルな照明に惹きつけられてまずは直行。

メキシコの貧困層の住む地域の夜の灯り。公共の電柱から勝手に自宅へ電線を持ち出して自分の好きな色にペンキで塗っちゃう!たくましく生きる人たちのひとつひとつの暮らしを見るようなカラー。「ひとつ灯しますか?」とぶら下がったコンセントへ促され・・・

赤いのを選びました。
わー。なんかうれしい。

アート・コミュニケータさんが気軽に話しかけてくださって、作品との距離を自然に縮めてくれるのっていいですね!

最初に戻って版画へ。

ガイコツいました。

それぞれにお気に入りを撮影するみなさん、ほぼ私よりグッと若い人。

《昼》1999年
作家蔵
《夜》1999年
作家蔵

続いての作品は、子どものころ住んでいた団地の灯りがモチーフだとアート・コミュニケータさんに教わり・・・「なんだと思いますか?」と聞かれて「・・・・」しばし考えて「北極圏の氷のホテルとか?」とピントはずれな回答を繰り出してしまった。

《うち》1999年
作家蔵
お。408号室の人は猫を飼っているのね。

それぞれの箱に番号が割り当てられていて、書体もアパートの表札によくあるかんじで中をのぞきこむといろんな家庭の様子が見られる仕掛け。

晩ごはんの匂いが漂ってきそうな雰囲気で、子供時代の記憶のどこかにある夕方の映像が浮かんでくる。

次のコーナーはグッと暗い空間。2011年の震災の頃の作品。

《見えない》2011年 作家蔵

得体の知れない、見えないものへの恐怖。自然の恵みと恐ろしさを忘れてしまっている日常に突然襲いかかる底知れぬ不安感。忘れてはいけない記憶。

続いて第3章:物語の世界、国境を越える蝶

《牛レストラン》2001年
個人蔵

最初に目に飛び込んできたのがこのウシ。

なんてニヒリズム。そうね〜そうよね〜人間ってね〜。最近の「エシカル消費」を考えさせるし、思い出したのは宮沢賢治の『注文の多い料理店』で、あっちは人間が食べられちゃうレストラン。

《虹蛇(部分)》2005年
作家蔵

版画の中でいちばん気に入ったアクアチント。

寄ってみました。
《本の中の劇場》2009年
作家蔵
《Aurora theater》2000年
アートプリントジャパン

小さめの立体作品がかわいくてキュンキュンしますな。

構図、色使い、線。版画も好みだった。飾りたい。

《花散らしの雨》2000年
作家蔵

ソール・ライターのあの写真を思い出した。

大気に任せて予測できない散る花の描く軌道と、印象的な赤い傘がスンスンスンと揺れながら規則的に移動する軌道。静止したような画中から、オートマティックに動き出す記憶。たしかに、わたしもこんな情景をいつだったか体感したから版画の中の小さな世界に同期できる。

つづいて・・・

ワークショップで子供たちと制作した蝶の羽を模したテント。
越冬のためカナダからメキシコまでの6000kmを移動するモナルカ蝶。
ボーダーレスな世界で国境を越えたくて越えられない人々に思いを寄せて制作されたのだそうです。ここでもアート・コミュニケータさんとお話ししながらちゃっかり促されるままクッションに座ってしばし蝶の羽に包まれ体験。そりゃーね、子供たちはこういうの好きですよ。うんうん。


そしていよいよ、あの謎の黒い物体へ!

《記憶のそこ》2023年
作家蔵

いくつものドローイングが展示されていて、こうしてイメージが立ち上がっていくんだ〜と面白かった。

すっかり満足して会場を見渡す位置からもう一枚。

今回は「ぐるっとパス」を利用して観てきました。東京を中心とした数々の美術館や博物館、庭園などの入場券や割引券がセットになったチケットです。最初の使用日から2ヶ月間という期間限定ですが、上手に利用するとかなりお得ですよ。

2021年以来の利用でしたが、以前はチケットを入り口でもぎる冊子タイプでしたが現在はQRコードチケットでスマホ・PCかカードの2種類になっていて便利になりましたね〜。私はもぎってもらうのも好きでしたけれど。

なぜか2022年だけれど、利用可能施設をリンク先でチェックしてみてね。

展覧会のあとは家族と合流して、ぐるっとパスで上野動物園のパンダを見ました。

この日は美術館のサマーナイト・ミュージアムと上野動物園の夜間開園が重なってどちらも夜20時まで。いつもは展覧会をはしごして電車に飛び乗って晩ごはんを作る「忙しモード」ですが、今日は大人の夏休み。

お食事中のパンダさん
人間もお腹がへる。完食。

上野を満喫した1日でした。

会期は2023年10月9日(月)までです。

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