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【編集の話vol.6】書籍編集へ異動に。自分はどんな本が作りたい?

コロナの影響で保育園への入園が5月となり、育休を延長して家で子どもと過ごしています。
復職に向けてあれこれ準備しなきゃ・・・と気構えていたのですが、一転、仕事に戻れなくなりました。
はじめは早く働きたい、活動したいという気持ちがありましたが、今は子どもの命を守ることが一番の仕事だと切り替えました。
子どもとずっと日中家にいてやれることはあまり多くはないですが、あれもこれもできないとは思わずに、一緒に穏やかな時間を過ごそうと思っています(いま、子どもの昼寝中にこの文章を書いています)。

そんな中ですが、少し前に行った上司との復職面談(オンライン面談)で、書籍編集への異動を伝えられました。
雑誌編集に復帰するつもりでいたので戸惑いはありますが、サラリーマンですからそういうことはあります。
少なくとも毎月の締め切り時の徹夜(とかタクシー帰りとか)どうする?という問題はなくなったので、こちらも気分を切り替えて臨もうと思います。

個々の書籍の企画を考える前に、自分が作りたいのは一体どういう本であるのか、改めて整理して考えてみました。
これまでも数冊の単行本を作ったことがあるので、その経験も踏まえて。

自分が作る本は、下記を満たしたものにしたいと思っています。

1. 著者にとっての「初めての著作」である
2. 単著である
3.10年経っても読める普遍的な内容、テーマである
4. これを読むことで今後の人生が変わる、という期待感が持てる

1と4は、5年前に初めて手がけた書籍の反省でもあります。その著者は、以前数十万部を超えるヒット本を出した方でした。
私の作った本は、雑誌でのその方のインタビュー連載を書籍化したもので、連載は毎回評判が良く、手応えを感じていたので、書籍も大きな反応が得られるのではないかと期待していました。
ですが、結果はそこまで大きく伸びることはなく。書店でも好意的に扱っていただきましたし、テレビに取り上げられたり、(その効果で)amazonで1位になるなどの反響もありました。うちの会社の出版物としてはかなり部数が出たので、評価もしてもらいましたが、私自身は、もっと行けると思っていたので、悔しい思いをしました。

なぜヒット本にできなかったのか。その後振り返る中で、書籍と雑誌のポイントの違いが自分なりに理解できてきました。

1つは、書籍は「面白い読み物」だというだけでは、さほど部数につながらないということです。
雑誌の連載なら「ああ面白かった」という読後感があればいいと思うんです。ただ、書籍はそれだけでは足りなくて、1冊の内容を自分の中に取り込んだ時に、自分自身が変われるという実感を持てないと、わざわざ買って時間をかけて読んでもらえないと思います。

自分自身が変われる実感とは、新しい価値観や考え方を体得できたり、人生の新しい指針をそこから立てられたり、生活習慣を変えられる、といったことです。その結果、仕事のやり方が変わる、人づきあいが変わる、自分の身体が変わる。その先に、自己実現や、人間関係や健康面の悩みの解決、あるいは年収アップといった人生の好転が見込める。そこまでの期待を予感させるものじゃないと、本って売れないんじゃないでしょうか。

読んだら面白いかも、ではあってもなくてもいい本だから、買わないかもしれない。
でも、これは今の私に必要な本に違いない、この本に呼ばれた、くらいに感じられたら、たぶん書いますよね。

そのために、本の内容はまとまりのある強いものになっている必要があるので、そのためには単著が最適です。
2人、あるいはオムニバス形式で複数の著者がいる共著ではメッセージが弱くなります。
対談形式の本も、書籍としては一貫性が弱いと思います。

その上で、その著者が半生かけて培ってきた構想や思考、ノウハウといったものが詰まった「1冊目の本」が強いと私は思うんです。
それが「初めての著作」と書いた意味です。

そして、そういうコンテンツは普遍性も兼ね備えていると思います。
変化の大きな時代ですが、願わくば10年は読むに耐えるものを作りたい。
本のいち作り手としても、読み捨てされる本より、書棚の蔵書として大切にされる本を作りたいという思いがあります。

復職後は仕事に使える時間が以前よりもかなり限定されると思います。貴重な時間を使って作るのであれば、出す意義が明確にあり、かつ売上が見込める本が作りたい。
それって一体どんな本なのか。・・・と考えてこんな結論になりました。
言うは易し行うは難しだと思いますが、自分への備忘録として残しておこうと思います。

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