Paterson 映画感想

なんてことはない普通(ちょっとシュール寄り)の人たちの、普通の日常の物語。
バスの運転手のパターソンは、秘密のノートに毎日詩を書き留めている。それは彼にとって大事な作業だが、別にいつか詩人になりたいという野望があるわけではない。妻のローラは専業主婦だが夢みがちなアーティストで、家のインテリアを独自のセンスで飾るのに余念がない。そんなパターソンの1週間を淡々となぞった映画。
大きな事件は起こらず声高な主張もないが、ちょっとした感情の揺れ、ちょっとした優しさに耳をすませるような物語。
こういう作品、学生のときに好きだったなあ。シネマライズで上映してそうな・・・
ゆっくりと飲むほうじ茶のようで、とてもよいタイミングで鑑賞できたことに嬉しさを感じた。
それにしても、この映画は、わからない人には全然良さのわからない映画だろう。で、何が言いたいの?と思う人もいるだろう。そう思ってレビューを見てみると高評価が多くて良い意味で驚き。

パターソンの妻ローラを見ていて思い出したのは、「全然大丈夫」という10年くらい前の日本映画だった。
詳しいストーリーは忘れたが、個性的なマイワールドを持ち非常に不器用な、社会に馴染むのが難しそうな感じの登場人物が出てくるコメディ映画。
確かヒロインの木村佳乃はおどろおどろしい絵を描くのが趣味で、ものすごく手先が不器用で普通の人ができることが普通にできない、とかそんな感じだった。
その姿が、通販の教則本つきギターを手にしてスターになることを無邪気に信じるローラの浮世離れ感と通ずるところがあった。
ローラこだわりのモノトーンのインテリア装飾は、ギリギリ猟奇を逸した状態にならないきわどいバランスで映画に取り入れられている。
彼女はお菓子作りも趣味で、マーケットでマフィン(これもこだわりのモノトーン)が売れて、彼女の社会との健康的な繋がりが見えてホッとしてしまった。

ものを作る人は、自分の中に大事な世界を持っている反面、攻撃力や防御力が低く、脆い面があると感じる。私は、そんな人が生きやすい社会であるといいと思っている。

それから、ラストシーンに出てくる永瀬正敏。
日本人の自分にとっては役者自身のイメージが強く映ってしまうが、外国人の観客にとってはどう見えたんだろう?
「片言の英語を話す日本人のサラリーマン」は、パターソンの街の中では異質なものとして目立ちそうだ。
全く違う世界にいるように見える2人は詩を介して話がはずみ、彼はパターソンにふたたび創作を始めるきっかけを与える。

私はこの物語のテーマをこのように受け取った。
注意深く観察し、感性に耳をすませば、誰でも詩人である。

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