新しい寄付のかたち

新しい寄付のかたち

皆さんは、寄付をしたことがあるでしょうか。

「ない」という人も多いでしょうし、「ある」という人はコンビニ募金や災害募金などにお金を投じた人が多いかと思います。

個人の寄付総額2

寄付白書2017」によると、2009年時点での個人による寄付総額は5,455億円だったものが、2016年には7,756億円まで増加しています。

寄付者数2

寄付総額と比例して、寄付者数も増えています。人口は減っていますが、寄付者数は2016年には4,500万人を超えました。これは、実に日本人の45%が何らかの寄付活動を行ったということになる計算です。

図でも明らかな通り、とりわけ2011年の東日本大震災が寄付活動拡大の大きな要因になっていることが分かります。2011年の個人寄付総額は1兆円を超え、寄付者率も68%という高い数字になりました。お金の寄付に限らず、物資の給付やボランティア活動など、何らかの支援を行った人は多いだろうと思われます。

そうした背景もあって翌年度は寄付額・寄付者数とも大幅に下落してしまいましたが、長期的には増加の一途を辿っていることから、決して一過性の活動ではなかったということです。近年は大規模災害も増えたこともあり、社会に貢献したいという日本人が増えてきたのではないでしょうか。

ただグローバルベースで比較すると、日本の寄付市場はまだまだ発展途上です。2016年度における日本・韓国・アメリカ・イギリスの個人寄付総額の名目GDPに占める割合は日本が0.14%と最低値になっています。韓国が0.5%、イギリスは0.54%、アメリカはさらに大きく1.44%、寄付総額が30兆円と極めて巨大な市場となっています。とはいえ日本も増加の一途を辿っていることから、今後の発展が期待できます。

この流れは、政府の公的資金以外にも活用できる資金があるという表れです。裏を返せば、「政府に頼るだけでは何も解決できない」という危機意識を持った日本人が増えた、ということなのかもしれません。課題が山積みになっている今の日本では当然の動きかもしれませんが、いずれにせよ良い動きです。

寄付の形態についても数多くの種類が生まれてきており、寄付のしやすい社会が形成されつつあります。今回は代表的な寄付形態・方法を紹介していきます。

インターネットやポイントでの寄付

最も気軽にできる寄付として、インターネットやクレジットカード等のポイントが挙げられます。

銀行振込や募金箱など、旧来行われてきた寄付方法の場合は現地に赴いたり手続きが必要だったりと手間がかかり、それが寄付をすることに対して壁を作っていたかもしれません。ただし最近はインターネットの普及により、インターネットを通した多彩な寄付方法が生まれてきています。

Yahoo!募金

例えば「Yahoo!ネット募金」では、クレジットカードや貯まったTポイントを使用して手軽に寄付を行うことができます。

ポイントなどの少額でも、たくさん集まることで非常に大きな資金に生まれ変わるということを直に感じることができます。他にもショッピングなどで貯まったポイントを寄付できるWebサービスは多く、誰しもが気軽に寄付できるようになりました。

また、サブスクリプション型(定期的支払・会費)の寄付形態も増えています。支援したい団体に会費として入会することで、毎月クレジットカードで数千円〜数万円を継続して支払うことのできるサービスです。

これによって、寄付したい人は自分の好きな団体や応援したい事業に対して継続的・自動的に支援を続けることが可能になりました。また、団体側としても継続的な安定収入を得ることができるため、事業継続に大きく貢献することができます。

インターネットによる寄付サービスは、寄付のハードルを格段に下げたと言えるでしょう。筆者もポイントなどで寄付を行ったことがあるが、非常に簡単で、なおかつ貢献できたという実感が湧き、とても良い行いをしたと感じることができました。

物の寄付

寄付は何もお金に限った話ではなく、家にある不用品などを寄付できる制度もあります。

蔵書支援プロジェクト

港北図書館友の会「古本市」より

「神奈川県港北図書館」では、「港北図書館友の会」という団体から協力を得て、市民から寄付してもらった古本を基に古本市を開き、売上を図書館の寄贈購入費に充てています。

三重県尾鷲市では、地域の風習である厄年の「まき銭」を「尾鷲市立図書館」の図書購入費として寄付してもらう「寿文庫活動」を毎年実施しています。活動を通して集められた寄付金は、通常の予算では購入が難しい高額本や利用者からのリクエスト本などの購入に充てられています。

尾鷲市立図書館の寿文庫活動 - カレントアウェアネス

ボランティア宅本便

ブックオフ「ボランティア宅本便」より

「ブックオフ」は通常の買取だけでなく、買取金額を指定の団体へ寄付金にできる「ボランティア宅本便」を実施しています。自宅にある不用品で寄付が可能になり、なおかつ寄付先は任意で選ぶことも可能なことから、行動に移しやすいサービスであると言えるでしょう。

クラウドファンディング

LIFULLファンディング

LIFULLソーシャルファンディング」(旧ジャパンギビング)より

日本でも急速に発展しているのがクラウドファンディングでしょう。

クラウドファンディングとは「Crowd(群衆)」と「Funding(資金調達)」を組み合わせた造語で、インターネットを経由して様々な団体や事業に資金を寄付できる仕組みのことを言います。社会貢献だけでなく、芸術や創作活動、ITなどのサービス開発資金など、幅広い分野に寄付ができるのが大きな特徴です。そのため非営利組織に関わらず、個人や営利企業も参入しています。中には怪しい団体もあるため、その点は注意が必要です。

クラウドファンディングでは寄付をした人に何らかのリターンを設定することができます。お金に限らずお礼状やお礼品、進捗報告レポートなどの物品だったり、運営するイベントへの招待状など、実に様々なリターンを設定できるため、資金調達の幅が広がり、支援者との交流にも繋がる素晴らしい仕組みです。

また、クラウドファンディングでは「陰徳」のような旧来的な考え方ではなく、「支援者の一人として、みんなと何かを応援する」気持ちが芽生えつつあり、日本に新たな潮流をもたらしているサービスなのかもしれません。確かに支援はボランティアなど、無償で行うことが全てではありません。それがあまりに行き過ぎると思考も行動もおろそかになってしまうので、十分に気をつけたいところです。

寄付つき商品

箱根の森から

箱根の森から」公式HPより

買うだけで寄付に繋がる「寄付つき商品」も増えてきました。

筆者も買ったことがある小田急電鉄社の天然水ペットボトル「箱根の森から」では、1本につき1円が箱根町に寄付されて自然保護活動に活用されます。普段買う商品が寄付に繋がるだけでも購買意欲に高まりますし、企業のイメージアップに繋がることからCSR活動(企業の社会的責任)として注目されています。

2007年から日本で展開されたフランス・ダノン社による「1リッター・フォー・10リッター・プログラム」が、こうした寄付つき商品の先駆けとなっています。ボルヴィックの売上の一部がユニセフを通してアフリカの水支援に充てられるこのプログラムは、多くの新聞や雑誌に取り上げられ反響を呼びました。

画像8

TABLE FOR TWO」公式HPより

「TABLE FOR TWO(テーブル・フォー・ツー)」は、対象となる飲食店の定食や食品を購入することで、1食につき20円の寄付金が開発途上国の子どもの学校給食に充てられるという貧困支援プログラムです。

この仕組みを利用することで、先進国に住む我々と発展途上国に住む子どもの双方が健康的な食事をすることができます。かつ、毎日行う「食べる」行為だけで寄付することができるという画期的な仕組みとなっているのです。

ふるさと納税

ふるさと納税

ふるさとチョイス」より

クラウドファンディングと同じく、近年日本で急速に普及し始めている寄付形態として「ふるさと納税」が挙げられます。返礼品や税額控除を目的に実施している人も多いかと思いますが、広義では寄付の一種です。

ふるさと納税制度は、そもそもは自治体を支援・応援することを目的としたもので、返礼品や税額控除はそのリターンです。ご当地の特産品やギフトなど多彩なものを自由に選ぶことができるのがふるさと納税の特徴ですが、返礼品以外に使い道を選べる自治体も存在します。

ふるさと納税「元気な多治見!うながっぱ寄附金」

岐阜県多治見市ではふるさと納税で集められた資金を「美濃焼の担い手育成」や「幼保小中学校へのエアコン設置費」、「子どもの未来応援(貧困対策)」などの社会貢献政策に充てています。支援者は使途を選ぶことも可能です。同じような自治体は数多くあります。

遺贈寄付

遺贈寄付

寄付白書2017」より

認知度は途上にありますが、近年注目度が高まっているものの一つとして「遺贈寄付」があります。

遺贈寄付とは「個人が亡くなった時に持っていた財産を寄付することができる制度」であり、人生最大の社会貢献になり得る可能性を秘めている寄付の形です。

アメリカやイギリスでは盛んに遺贈寄付が実施されていますが、その波が日本にも上陸し始めているのです。なにせ日本は先進国の中でもトップクラスの高齢者国であり、毎年の相続規模は平均的に見積もって約37兆円、最大に見積もると約63兆円にまで到達するのです。条件によって相続税が非課税になるのも遺贈寄付の利用度を高めています。

2016年には「全国レガシーギフト協会」が発足され、遺贈寄付に関する相談が無料でできる相談窓口が全国各地に設置されました。現在は遺贈相続を実施する人はごく僅かであるが、潜在的な可能性を大きく秘めている市場です。

◇参考
日本総研「政策観測 - 相続資産額の規模は年間約 37 兆円 」
全国レガシーギフト協会 - 遺族寄付の窓口「遺贈寄付とは」

まとめ

日本においても寄付する人、寄付金額が増えてきました。一人の金額が小さくとも、たくさんの人が寄付をすることで、社会を変えられる大きな力になることができます。

また、寄付のかたちも増えてきました。テクノロジーの発達のおかげで、誰でも気軽に寄付ができるようになりました。

自分が助けたい人、あるいは叶えたい夢に向かっている事業を応援するために、寄付をすることを一つのアイデアとして考えてもらえればと思います。

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