聞きたくなかった話とひとりで抱えられなくなった話

5回目の移植を終えた後、会社に戻ると何やらこそこそと話す声が聞こえる。どうやら一つ年上で不妊治療を続けていた人が妊娠したらしく、子育て中の社員と話しているようだった。最後の移植で授かったらしい。

おいおい聞こえているよ……と呆れながらも「あの人もあっちに行ってしまったのか」という気持ちと「わたしはどうなるんだろう」という気持ちとで、シンプルに聞きたくなかったなと思っている。シンプルに聞きたくなかった。

わたしは今日が移植日なのに、アルコール依存性の夫は昼まで待っても家に帰って来なくて、これなら子どもなんていらんな〜と思っていたところで聞いてしまった話だったので「だれもわたしの苦悩なんて知らないんだろうなあ」という絶望にも似た苦い気持ちを抱えている。

ひとりで抱えるには少ししんどくなってしまった。家に夫は帰っているのだろうか。わたしの話を聞いてはくれるのだろうか。どうしたらよかったのだろうか。

わたしは、どうしたらいいのだろう。

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