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【先行公開】(1/4) もくじあり 葛西リサ『13歳から考える住まいの権利 多様な生き方を実現する「家」のはなし』

 『13歳から考える住まいの権利 多様な生き方を実現する「家」のはなし』(葛西リサ著、12月12日販売予定)は、「空き家活用」や「居住支援」、「シェアハウス」「団地再生」など最近話題のワードを軸に、これからの住まい方について考えます。全4回にわたって、第1章の一部を先行公開します。

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もくじ

第1章           住宅に困っている人はホントにいるの?
第2章           お金がなければ、住まいがなくても仕方ない?
第3章           私の住まいはだれのもの?
第4章           住宅に困る人がいるのに、どうして空き家があるの?
第5章           住みたい家に住み続けるには何が必要?
第6章           一緒に暮らすのは家族じゃなきゃいけないの?

はじめに

 私たちにとって住まいとはどういうものでしょうか。人は住まいがなければ人間らしい暮らしができません。とはいえ、単に住宅があればいいというわけではなく、適切な住宅環境が健康に害を及ぼすことはもちろん、弱くもろい住宅は災害時に被害を拡大させ人の命を奪います。

 しかし、良質な住宅だけがあっても、人は幸せにはなれません。住宅を基軸とした人と人との関係や、サポートやケアといった目には見えない重要な要素があります。人間は、ひとりでは生きていけません。急速なネット環境の発展は、リアルな人間との接触など必要ないかのような錯覚を抱かせますが、実社会では孤立して苦しむ人、ひっそりと亡くなっていく人がたくさんいます。育児、家事、介護や看護などのケアの領域では金銭を媒介するサービスも発達しましたが、それだけでは補いきれないところで私たちはつまずいています。さあ、住宅と一口に言っても、考えるべきことがたくさん見えてきましたか?

 私たちが幸せに生きていくために欠かせない住宅のコト。ここから一緒に学んでいきましょう。

 住宅に困る人はいないはず?

 日本には6000万戸を超える住宅があります。みなさんは、このうちのいずれかの住宅に住んでいるということになるでしょう。

 ところで、住宅を必要としている側の数はどのくらいあると思いますか。
この場合、人口ではなく、世帯数、つまり、住宅に一緒に住んで生活をしている人の集まり・グループ数を確認する必要があります。具体的には、あなたを中心に住宅に一緒に住む人たちを1つの世帯と見なすのです。お父さんやお母さん、兄弟、姉妹、おじいさんやおばあさんなどと一緒に暮らしているという人が多いかもしれませんね。たとえ10人で暮らしていても、たった1人で暮らしていても、どちらも1世帯とカウントされます。

 2020年時点の日本の世帯数は、おおよそ5500万です。単純に計算すれば、世帯数よりも住宅数が多いわけですから、日本に住む人全員に住宅が行きわたっている。そんなふうに見えてしまいます。

 では、住宅とはどのようにして手に入れるのでしょうか。生まれたときから住んでいるので分からないという人は多いかもしれませんね。住宅に住むための方法は2つあります。1つは、住宅を買うという方法です。もう1つは、住宅を借りるという方法です。大まかに言えば、住宅を買って住んでいる人は6割、借りている人は4割くらい存在します。

 いずれにしても、住宅に住むためには、お金が必要になります。

 今、みなさんは、どこかに住み、そしてだれかと暮らしている。しかし、遠くない将来、進学や就職、結婚などといった生活の変化によって新たな住宅が必要になる人は少なくないと思います。

 そこで、想像してみてください。住宅が必要なのに、仕事もなく、お金もなく、助けてくれる人もいなかったら、私たちは一体どうなるのでしょうか。(第2回に続く)

『13歳から考える住まいの権利』