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スコットランド日和⑬ みんながアクセスしやすい学校の制服

 スコットランドのエジンバラで研究生活を送っている阿比留久美さん(早稲田大学、「子どものための居場所論」)の現地レポートを連載します(月2回程度の更新予定)。
 ★「子どものための居場所論」note はこちらから読めます。
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 スコットランドは、プライマリー・スクール(primary school、7年制)とセカンダリー・スクール(secondary school、6年制)となっていて、プライマリー・スクールの時から公立の学校でも制服があります。基本的には、ポロシャツとズボン(長ズボンも半ズボンも自由に選べます)・スカート、あるいはチェックのワンピースですが、制服の仕組みは比較的ゆるやかです。
女の子はポロシャツとスカートの組み合わせでも、ポロシャツとズボンの組み合わせでも、ワンピースでもいいので、それぞれがそれぞれの好きなものを着ているようです。女の子の着ている服がそれぞれ多様なので、たとえ「女の子」でなくても自分で選びたいものを選んで着れそうな雰囲気を感じます。

 それぞれの学校独自の制服があるのですが、同時に一般的な衣料品店で売っている制服を着てもかまいません。Marks & SpencerやTesco、Sainsbury‘sといったスーパーにある衣料品コーナーではほぼかならず制服コーナーがり、その値段は他の洋服と比べて安価に抑えられています。Marks & Spencerでは、ポロシャツやシャツが3枚で9£、長ズボンは2本で11£、スカートが2枚で12£、セーターがサイズによって6~8£といった具合です。Primarkという日本でいう「しまむら」のようなアパレルではさらに値段は安くなります。

スーパーにある制服コーナー①
ポロシャツやシャツが3枚で9£
スーパーにある制服コーナー②
スカートが2枚で12£
スーパーにある制服コーナー③
長ズボンが2本で11£

 学校市販のものになるともう少し高くなりますが、それでもポロシャツが1枚8£、トレーナーやセーターで10£といった感じです。ポロシャツやトレーナーには学校のロゴが入るので学校市販のものがありますが、ズボンは特に学校のロゴが入るわけではないので学校のサイトでは売っておらず、そのかわりに他で入手できる場所が紹介されていて、合理的になっています。

 イギリスの物価の感覚は、ものにもよりますが(スーパーで売っている野菜などの食品はそんなに高くないのですが、ドラッグストアで売っているようなものや外食は相対的に高い感じです)だいたい1£=100円~120円くらいのイメージになります(実際の為替レートは1£=189円、2024年2月15日現在)。

 そのため、スコットランドの人たちの生活の中でも制服の値段はかなり安いといえます。洗い替えを含めてポロシャツを5、6枚、ズボン3本、トレーナー・セーター2枚準備しても、50£程度ですみます。

 しかも、年に数回学校で制服のバザーが開かれ、私の子どもが通っている学校ではトレーナー・セーター・ズボンが2£で売っていました。それぞれの家庭で寄付されたものが提供されるのですが、小さくなってしまった中古の服が中心ながらも、着ないままにサイズアウトしてしまった新品のものもまぎれています。

 さらには、以前チャリティについて紹介した時にも書いたように、学校用品の寄付も集められていてそれが頒布されてもいるので、購入することなく制服を手に入れることも可能だと思います(スコットランド日和⑩ チャリティ大国イギリス(1)日常のなかにあるチャリティ参照)。

 日本でも、埼玉県の大宮北高校が2022年度から旧来の制服と同時に、ユニクロの商品の一部を制服に指定しました。それによって制服一式の値段が旧来の制服であれば約5万円かかるところ、ユニクロ制服にすれば約1万2000円の負担ですむようになりました。とはいえ、学校が一つのアパレルを制服に指定することは、公教育を営利企業の宣伝・営業活動の場にしてしまうという点で議論の残るところでもあります。(西郷海南子「高すぎる学校制服の負担解消策は「ユニクロ制服」か、それとも私服か」朝日新聞論座、2023年4月16日

 スコットランド方式の制服のあり方は、あらゆる子どもの通う学校の制服が家庭にとっては手の届きやすい値段でおさまり、さらに特定の企業に利するものにもならないようにすること、さらにはその中でも子ども・家庭がそれぞれの好みを選択できるようにすることをうまく実現しているように思います。

阿比留久美『子どものための居場所論』
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