【先行公開】(3/4) 葛西リサ 『13歳から考える住まいの権利 多様な生き方を実現する「家」のはなし』
『13歳から考える住まいの権利 多様な生き方を実現する「家」のはなし』(葛西リサ著、12月12日販売予定)は、「空き家活用」や「居住支援」、「シェアハウス」「団地再生」など最近話題のワードを軸に、これからの住まい方について考えます。全4回にわたって、第1章の一部を先行公開します。
性的マイノリティ(LGBTQ)と住宅
みなさんの中には、男性は女性を、女性は男性を好きになることが「ふつう」で、それ以外の選択肢しはありえないと思っている人もいるかもしれません。しかし、私たちの社会には、同性に恋愛感情を持つ人が存在します。また、生まれたときの性別とは異なる性を生きる人もいます。これらの人々は、性的マイノリティ(LGBTQ)と総称されます。
男性同士、女性同士で愛し合い、夫婦のように一緒に暮らしたいと願う人たちが、2人で住むための住宅を借りようとすると、断られるという事実が報告されています。住宅を貸す側は、結婚しているカップルや、血のつながった家族が一緒に暮らすことがあたりまえと考えているため、それ以外の関係の人々を対象にするのを嫌がることが問題の根底にあります。貸す側の中には、自分とは違うから同性で愛し合うことが理解できない、おかしいと考える人たちもいるでしょう。
「友達同士で暮らすことができる家もあるじゃないか」と思った人もいるかもしれません。
しかし、同性同士で住める住宅があるとしても、同性カップルが、男女のカップルと同じ条件で住宅を借りることができないという問題は解決されませんね。
「結婚すればいいじゃない」と考える人もいますか。とてもいい視点ですね。世界では、同性同士で結婚できる国が数多くありますが、残念ながら日本はそこにふくまれてはいません。
どんなに頑張っても住宅を借りることができないので、ひとりで暮らすと噓をつき、隠れて一緒に住んだりする同性カップルもいます。こういった行為は違法ですし、何より、災害が起こったときや火事が発生したときに、そこにその人がいたことが証明できないことはとても危険です。
また、出生時に割り当てられた性と性自認が異なるトランスジェンダーの人たちからも、外見と性別が違うという理由だけで住宅を貸してもらえないという声があがっています。
だれと住むか、どの性を生きるかは、社会の側が決めるものではなく、自分で決めていいはずです。しかし、住宅を借りるときには、人と違うということが不利に働くことはよくあるのです。