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diary1

彼女と出逢えた事は本当に偶然だった...

その日は久しぶりに新宿で打ち合わせをしている時だった。最近では新宿周辺では数少なくなった水出し珈琲が飲める店舗という事もあり新宿で打ち合わせの時は大概はここを使っていた...5月というのに気温が高い日が続き暖かい珈琲よりは冷たく冷えた珈琲を選択したくなる日だった。ペーパレス化が進みだしたとはいえ旧人類に属する方なのでテーブル席に書類とパソコンが無造作に置いてあったのも今に思えば原因だと思う。水出しのアイス珈琲が運ばれて来て書類をどかしスペースを確保しようとしたその時、リクルートスーツの彼女とウエートレスがぶつかりトレイからアイス珈琲は見事に書類の上にダイブした一瞬の出来事だったがなんとかノートパソコンだけは被害を受けずに済んだが書類はほぼ全滅だった..

えーこの直ぐ後面接なのにでもこの状況で居なくなるの...など、ぶちまけた彼女は明らかに動揺している。

「こっちは大丈夫だよ、急いでるんでしょ さー行って もし何かあればここに連絡して」

そう言って彼女に名刺を渡すと持っていたアドレス帳の端を切りとり素早く名前と電話番号を書き込み渡すとレジに駆け込みお会計を待っている間もこちらを向いて何度も頭を下げていた。

それと入れ違いに和智氏がテーブルにやって来て現状見て開口一番

「どうしたんですか?流星さん?」

「ご覧の通り珈琲ぶちまけた...」

その日の夕方一本の電話がかかって来た。アドレスに登録の無い電話番号だったが記憶に残ってていた番号だった。

「もしもし嵐田さんの電話番号で間違いありませんか?」

「そうですが...」

「よかった、お昼に珈琲ぶちまけた麻美です、資料台無しにしてごめんなさい...」

あ、やはり昼のあの子か

「大丈夫だよありがとうね心配で連絡くれたんだね。それこそそっちは面接どうだった?」

「ダメでした、どっか気になってしまって...ちゃんと謝罪させてください...」

「それはこっちにも責任があるな、面接の前に余計な負担を与えてしまったのなら社会人として何かしらのアドバイスしてあげねばなるまい...」


「あ〜完全に流さんの悪い癖が発動してるよそれ」

数年の飲み仲間である新井文に今日あった事話した。

「嵐田さん若い子好きですもんね〜」

新宿の行きつけのBAR「街場」でバーテンダーの杉原耕平が笑いながら言う

「確かに若い子好きだがロリコンじゃない!」

「「どーだか」」

全く同じタイミングで文と耕平が言う

「で、いつ会うんですか?その麻美って若い子とw」

完全に揶揄ってるのが分かる文の言葉に

「明後日...」

夏の暑さも大分和らぎ秋の長雨シーズンに突入し出した頃私は一本の電話をかけた...出来れば自力でどうにかせねばならない案件なのだが最近は「晴れ男」の能力が落ちてきているので背に腹はかえられぬ...

「あれ、流星オジ珍しい〜どうしたの?」

電話の相手は我が姪っ子の嵐田まりの 本家の嵐田雷蔵の娘である。

「実はまりのに頼みがあってさ...明日なんだけどテルテル坊主作ってくんないかね...」

「明日?良いけど、でももう作ってあるし」

「作ってある?」

「うん、大学の知り合いの子がどうしても明日晴れさせってお願いされたから、なんでも知り合ったオジサマに相談したそのあとの面接全部内定貰って、それでお祝いしてくれるって」

姪っ子の嵐田まりの は小さい頃から何故か大事な行事事の前に作る「テルテル坊主」は100%の効果があった。

入園式

学芸会

運動会

卒園式

入学式

遠足

修学旅行

卒園式などなど数限りない行事はどんな長雨が続く季節や台風でもピンポンで晴れたり進路が逸れたりその効果は絶大だった。

「だからか!最近麻美ちゃんニコニコして話す知り合いのオジさんってやっぱ流星オジだったのか!」

そういえば麻美と同い年で同じ城南大学だったね、まりの...この甥っ子の怖いところは1つの情報で10を理解する..

「流星オジにも頼まれたんでは特製の造らねばなりますまい!で、もちろんのことですが...」

「炭治郎 フィギュア!だろう」

「禰豆子 も!」

コイツ!足元見やがって

「わーった週明けには手配して送っておく」

「さすが流星オジ!話が早いですなー。となれば特製の造りますかね〜」

次の日、どこの天気予報でも週末は雨と予報していた天気予報士達が朝の番組でことごとく頭を下げて謝罪していた...

「すごい〜本当に晴れた〜!ちょっと眉唾だったけどまりのちゃんにお願いして良かった〜」

我が姪っ子ながらこの能力は凄まじい...雲一つない快晴だった...お陰で秋の風が吹いて心地良く車の窓を開けても丁度良い日和になっていた。

「でもこんな山奥でほんとに美味しい海鮮食べれるの?」

そう思うよね私だってそう思うもの...確かに田舎レストランジンベイの看板は出ていますが、道が狭くて本当にこの先にあるのか、と思ってしまう程の田舎のど真ん中だもの...

到着した時は開店ちょっと前でそれでも既にお客さんらしき車が6割程停まっている。
お店の中は結構広くて落ち着ける感じで窓の外からは川が見える。店の外には釣り堀もあり、岩魚やマスなどがその場で釣って食べられるらしいが今回はスルー今回私たちが注文したのは、ネギトロ丼と、アジフライ&ちょっと刺身定食をシェアして食べた。ネギトロ丼はご飯もネギトロもとても多くてボリュームがありアジフライとお刺身は凄く美味しかったとの事
「田舎のこんな場所で海鮮ものをこれだけ提供できるのは凄いね!でもよく知ってたね!」

その麻美の言葉は味噌汁飲んであえて聞き流したが情報源は従兄の嵐田雷蔵である...あらゆるとこに人脈があり昔から聞いた質問にはあらゆる分野でも必ず答えを出してくる...最近顔出してないから来週のお彼岸に本家に顔出しに行くか...

もうすぐ麻美と知り合ってもうすぐ一年になる4月

麻美からメールが入る。

この頃になると交換日記の様にお互いメールでやり取りしていた。

もちろん緊急性の高い案件や待ち合わせなどはLINEや電話を使っていたが私達にはメールのやり取りの方が性に合っていたようだ。

入社初日の帰り!

髪の毛、黒くするように注意されたので

夜予約とってるので美容室行ってきます〜

あまりカラーリング変わらなかった

会社に来たら

あまり変わってないから

もう一度 もう少し変えてくださいっていわれた

カラーリングが、ダメじゃないけど

もう少しおさえてくださいね

っていわれたので

また近いうちに美容室行ってきます

せっかく入社したのに

コロナでオフィスで待機ばかり…

無事就職先も決まり新社会人として新たな一歩を踏み出すようになった麻美とは既に週末に必ず会っているような関係になっていた。街場の常連客にもなっていた様で私より通っているらしく持ち前の明るさで店の人気者になっている様だ。当初はそれこそ就職活動のアドバイスなどしていたのだがお互い野球好きなのが判明しより意気投合したのは当然の結果だった。

で今週も麻美と野球観戦で会っているのだが...ベルーナドーム 所謂、西武ドーム何度も名前変更するのでいちいち覚えるのが面倒なのだがこのあたりしっかり麻美は指摘してベルーナドームと言って直させる。狭山丘陵のなかにあるアウトドア感覚のドーム球場。1979年から埼玉西武ライオンズの本拠地球場として球史に残る名勝負が繰り広げられた球場である。1999年からドーム球場となり、2021年3月に大規模な改修工事が完了。さまざまな楽しみにあふれるボールパークとしてファンに親しまれている球場である。

ここで問題なのは麻美家は親子揃って生粋の北海道日本ハムファイターズのファンであり.逆に私の方はそれこそ生粋のライオンズファンである...同じ球場に居るのに試合中は一塁側スタンド三塁側スタンドに分かれて観戦している...今日は日ハムが優先だから機嫌が良いが負けた試合の日とその次の日朝は麻美家はすこぶる機嫌が悪い...

そんな6月のある日。日ハムが勝った日なのになんだか麻美の様子が変だった。母親である奈美も異変に気がついたのか私に連絡してきた

「流さん昨日麻美に何か言いました?」

「いえ特に何も」

「ほんとですか〜怪しいなー」

「第一昨日麻美と会って無いのは奈美さんが1番知ってるでしょ苦笑」

「そうよね〜でも今朝の麻美の洗濯しようとしたら下着一色その日のとは違う気がしたのよね〜ストッキングとか...」

「それこそ私が嫌われるような事はしませんよ!嫌がる事はしますが...夜会うんでそれとなく聞いておきますね」

その日の夕方。いつもの待ち合わせのアルタ前で待っていると麻美が現れた。明るく振る舞っているが確かにいつもの様子が違う気がする...

「麻美なんかあったか?」

「?どうして...」

「明るく振る舞ってけどなんか無理して感じがするから」

以前から麻美が食べたいと言っていたので段取りしてアルタ裏の洋食アカシア 新宿本店に向かう。昭和38年から営業しているレトロな洋食屋。オリジナルの有名なロールキャベツシチューを食事をしながら昼間奈美さんからの電話の件を麻美に聞いてみた。

「そうだよね〜流星さんにも分かるんだからママは気がつくよね...」

でも奈美さんの場合物的証拠も確認してだから...まーその所為で私が疑われた訳だが

「ちょっとここでは話難いから食べたらカラオケ行って話すね...」

嫌な予感しかないが今はまだ黙っておこう。食事を終えて靖国通りを超えた場所にあるカラオケパセラ新宿靖国通り店。いつもなら絶対ハニートーストを頼む麻美だが今回はドリンクだけ...

いよいよ嫌な予感しかない...

「そっか...流星さんにもバレてるんだからママには当然気が付かれてるよね...」

麻美の口から出た言葉はそれなり衝撃的な事だった元彼にレイプさせたとの事だった...何故この子に未だに過去の亡霊が憑いているのかと思うと愕然となる...そもそもその元彼がその当時しっかり麻美の事を護ってやれていればと言うのもその頃若い高校生には少し酷な話ではある...が、だからといって今回の件は許せる事は出来ない話ではある。元彼とはそんな理由もあり疎遠になりアドレス自体も変えていた様だが共通の女友達が前から元カレ麻美のこと探してたみたいだからとの事...新しいアドレスを入力しアクセスして来たのが始まりらしい...

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