『ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと』のレビュー
2019年4月発売。
ニューヨークを拠点に活動する日本人2人が、ブランドとはなにか?ということを世界的(というかアメリカ的)視点から説明した内容。
ブランド論を考えたい人にとっては必読といえる内容。ブランド論の超絶分かりやすい解説本、ともいえそう。
マーケターの書いた難しいブランディングの書籍より気軽に、そしてデザイナーの書いたブランディングの本より実践的に読んでもらえるようにつくった、と序文にあるとおり、たしかに、バランスのよい内容だと感じました。
筆者2人がアートの専門でありながら、ブランド全般について語ることができるのは、ブランディングのやり方が世界的企業ではそういうやり方をしているから。
ロゴデザインやパッケージを考えるときにも、そもそもこのブランドとは何か?という根本的なところから考えてトータルに設計しているそうです。
どこでも言われていることですが、モノがこれだけ溢れている今の時代、その機能的価値だけのために人々が購入にいたることはほとんどありません。
その商品・サービスがもつイメージ=ブランドで人々はモノを選ぶ時代、といいます。
たとえば、スタバのコーヒーを、純粋にその味だけで選んで購入している人はいない、ということです。
そのブランドイメージを形作るものはなにか?
ざっくりいえば、機能的・実質的価値と情緒的価値です。
実質的価値とは、品質・性能・原料といった商品の客観的な価値のこと。
一方、情緒的価値とは、デザイン、ストーリー、ビジョン、ミッション、社会貢献的要素といった感情的な要素を含んだものです。
ブランディングとは、その両方の価値を統合した「らしさ=個性」を伝えることだと筆者はいいます。
「現在のようなモノが溢れている時代では、実質的価値を向上させることは「できていて当たり前のこと」とみなされ、そこで差別化を図ることが難しくなってきました。・・・略・・・その企業の個性や特性を柔軟な視点で引き出し、時代やお客さまのニーズをふまえた上での新しい価値=情緒的価値で他社と差別化し、実質的価値を含むすべてをお客様に伝わるかたちにすることがブランディングの醍醐味です(p.83)」
そして、ブランディングの最終目的は、「売る」ことではなく、「ファンになってもらうこと」「顧客のロイヤリティを高めること」だと説きます(p.82)。
本書の後半では、具体的なブランディングのプロセスを具体例とともに詳しく紹介しています。
①ターゲット・オーディエンス
②プロダクト・ベネフィット
③ブランド属性とブランド価値
・・・・
と14項目にわたって、そのブランドとはなにかを考えていくプロセスを丁寧に説明。
これを真面目に考えて明文化したら、どんな会社のブランドもその世界観がすぐに伝わるんじゃないか、そう思わされるくらい分かりやすく書かれています。
きっとそこまで簡単な作業でもないんだろうと想像しますが、まぁそれでもこの項目たちを考えるだけで、見えてくる世界、やるべき施策はだいぶ違ってくると思います。
本書は、全体をとおして、抽象的になりすぎることもなく、かといって具体例に偏りすぎることなく、そのバランスがほどよくミックスされてとても分かりやすいブランド論の解説本でした。
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