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為替は、投資にどんな影響を与えるの?

当連載では、これから投資を始めようと考えている資産形成世代のみなさまのお悩みや投資のギモンについて、日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト神山直樹がお答えしていきます。これまで、株式、REIT(リート)、債券の3つの投資対象についてお話しました。世界には投資対象がたくさんあるのですが、みなさんが外国の資産に投資をする際に気にしていただきたいことをお伝えします。今回は「為替」がテーマです。

為替ってなんですか?

為替(かわせ)は、江戸時代から広く普及した決済の仕方の名前です。上方(京都や大阪)の米取引の金銭授受を、遠く離れた江戸で帳簿上で行うことで、輸送のリスクや手間を減らしました。今では国内の送金や振込などは銀行の口座振替で行われますが、現金に触らないですむので、為替(内国為替)の一種ですね。そして今私たちが為替と言う場合、多くは外国為替のことであり、海外の通貨と円との交換比率のことを意味します。外国為替レートの略ですね。例えば1米ドル108円というのは、1米ドルを108円と交換できるという意味です。投資の観点から為替とは何かを考えると、外国の債券や株式を買うときの円での金額を計算する比率ですが、それ以上に、売るときに為替(交換比率)が変わると投資成果を変えるかもしれないので、リスク(値動き)の源泉でもあります。

為替そのものはリターンを生みださない?!

為替が動く(例えば1米ドルが80円から120円になる)ことは知られています。円高であれば海外でのお買い物が割安になるし、円安であれば割高に感じることになります。では、為替はどのように決まるでしょうか。マクドナルドのビッグマックを例にしてお話しましょう。ビッグマックは世界の主要な町で買うことができますね。ビッグマック1個の値段が、アメリカで5.50米ドル、日本で390円だとしましょう。1米ドルは390÷5.5=70.9円になりそうです。つまり物価の比較が基本です。同じものを作るコストはどの国でもだいたい同じなので、売値もだいたい同じくらいだろうと考えます。もちろん物価はマクドナルドだけではないし、輸出入での為替のニーズなども影響を与えるのですが。ですから、為替は株式のように人の努力や工夫が関係あるわけでもなく、債券や融資(ローン)のように決まった金利を払ってくれるものでもありません。その意味で為替はあくまで交換比率なのであって、何かリターンももたらすようには作られていません。物価の期待が変わるなどすると為替は変化しますが、少なくとも先進国通貨について、リターンのもとになるとは想定しないでよいです。

為替にこだわらず世界の成長に長期投資を。

長期にわたり世界の成長を享受するために株式などに投資することを前提とすると、為替ヘッジは要らないと思います。為替ヘッジとは、米ドル建ての債券・株(まとめて証券と言います)を買ったときに前もって米ドルを売っておいて、証券を売るときに為替のリスクがないようにすることです。為替ヘッジありだと例えば米ドルで高い金利であっても、前もってその分米ドルを売って日本円に戻してしまうときに金利は日本並みの低金利になります。為替ヘッジありの金利商品は、通常元本保全を目標としていて(保障ではないですが)、リターンは円商品と基本的に同じはずです。一方で、新興国の為替はその国の経済環境が改善すると価値が上がることもありますので、リターンのもとにもなります。為替ヘッジするということがご自身の投資目的に合致しているかよく考える必要があります。長期投資でわざわざ外国の債券や株式を買う場合、為替ヘッジがある方がよいということはめったにないと思います。

まとめ

為替は外国資産の投資成果に変化をもたらす。もういちど投資目的を明確にして、為替ヘッジが必要かどうか考えてみよう。

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