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髪を切るための言葉を知らない


「大体いつも、真ん中のこのあたりで分けて、で、こっちサイドは耳にかけて、こっちサイドはわしゃわしゃっとさせてるんですけど、この、後ろの髪。正面から見た時にこう、首まわりに見えてるこの辺の髪。あの、天パなもので、これが乾かすとなんかもこもこしてくるんですよね。で、ここら一帯の毛って、いらないんじゃないかなって思ってて。なんかこう、顔まわりのこのピロピロしたのは残しつつ、首元をちょっとスッキリさせたいんですけど、なんかそういうバランスって可能なんですか? 可能っていうかその、どう思います? その、変じゃないです? というか伝わってます…?」

『あー、前下がりですね』

「……前下がりかもしれないです」

『いけますよー!いいと思います!』

「ヒヒッお願いします」



みたいになるんですよ美容室。毎度。
「前下がり」っていう言葉があるんですね。
前下がりみんな知ってたの?なんで?
結構いろんな常識的なことなんにも知らないわたくしなんですけど、特にファッションに関することって本当にわからない。言葉が。単語力がマジでない。なんとなく好きな感じというか、自分の嗜好はわかっているのに、それを他者にも理解される文章にすることができない。
とはいえ、それを説明しなくちゃいけない機会なんてそうそうないのだけれど、どうしても逃れられないのが散髪のとき。美容室で椅子に座って「どうしますか」って聞かれた瞬間。
あの説明はみんな上手くやれてるの?なんで?
や、もちろんね。もう30超えたいい大人だから、「オシャレになれない僕」みたいなスタンスでかわいこぶってアレするつもりはないけれど。
ただ、あの瞬間の「やりたい髪型の説明」って、それにまつわる全責任が自分にある感じにちょっと緊張するんですよ未だに。
だって美容師さんからしたら、とりあえず説明してもらわないことにはやりようないし、僕の方にはその説明考える時間めちゃくちゃあったしね。そこに座るまでに。
その、はっきりしたビジョンの説明であるにせよ、「なんとなくこの形を保ったまま軽くしたいんですけど…」みたいな相談ベースの感じであるにせよ、とりあえず言葉は用意してこなくちゃじゃんって思うから、用意して行くんですね。だから冒頭に書いた今回のオーダーも、これでもそこそこに考えていったし、流れとか心の中で軽くリハしました。
病院行くときとかもこれやる。それに近いかも。

で、いつもほんっとうにありがたく思うのだけど。
僕は結構いろんな美容室を転々としてるんですけど、一度たりとも
「ちょっとそれだけじゃわかんないですねー」
って言われたことがない。
美容師さんってほんとに全員やさしいなって思う。なんかうまく伝わらない時でも、一生懸命こちらの考えを汲み取ろうとしてくれて、雑誌とか画像検索とか資料も駆使して、色々やってくれる。やさしい。
ありがとう…ちょっとそれだけじゃわかんないですねーって言わないでくれてありがとう…っていつも思うよね。


そういえば、わからないことが素直に聞けなかった若い頃。
当時よく行っていた美容室で、いつも担当してくれる美容師さんが最後に言う
「後ろ軽くダン入れときますねー」
がわからなかった。
(ダンが入った)
って思って聞いてた。
「段」なのか「壇」なのか、もしかしたら「団」なのかも、さっぱりわからなかった。

後日、「髪の毛 ダン」で検索したらすぐ出てきた。Googleって本当にすごいよね。


色々書いたけど、トータル美容室って嫌いじゃない。下手なだけで。

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