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さむさよ

油断して薄いズボンで出てきちゃったから脚が寒くて寒くて無理かもしんない月曜日。
冬は好きだけど寒さにはめっぽう弱い。それは子供の時からそうで、家族の中で誰よりも寒さに弱いのにたぶん誰よりも冬が好きだった。

寒さの中で感じる温かさが好きだと気付いた時のことを今でもよく覚えていて、今日みたいな日はいつも思い出す。
それはたぶん5歳とか6歳の頃。
当時、母と姉と3人で暮らしていた家賃3万のボロアパートはとにかく隙間風がすごくて、寝る前に母が必ず雨戸を閉めた。僕は布団から顔だけを出して、その作業を見るのが好きだった。温かい布団にくるまって、外から一瞬吹き込んでくる夜の匂いの冷たい風を、頬で感じるのが好きだった。
「冷たい空気が顔に当たると、布団がさっきより嬉しいものになる」
そうはっきり認識していて、いつも母が雨戸を閉めるために窓を開くのを、布団の中で楽しみに思っていた。

もうひとつ、その頃に寒さの中で発見したことがあって、それは「フードの下はいつでも温かい」というもの。
パーカーやコートに付いているフードの下にすぼっと手を入れると、服の外側なのにポケットの中みたいに温かい。どうして発見したのかは覚えていないけれど、よく母が着ていた服のフードの下に手を入れて、温かいことを確かめていたことは覚えている。この発見はなんとなく自分だけのものにしておきたくて、すぼっとやると母から「なに?」と聞かれるのだけど、「別に……」とごまかして、しばらく誰にも話さなかった。

寒いね寒いね無理かもしんないねなんて言ってはいるけれど、1月も半ばに入ってもうきっと冬も終わりに向かう。名残惜しい既に。
どんな季節もだいたいいつも忙しいけど、一番好きな季節だけは少しくらいお休み増やして、ゆっくり吸い込んでおいたらいい気がするよね。息が白いとか、光がまっすぐとか、足音がクリアに響くとか、そういうの確かめるだけの時間を、1日くらいとってもいいように思うよね。できるかな。




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