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幸せな命

文フリ、丸善の怒涛の出展ラッシュを終え、今日は久々にほんのちょっとのんびり過ごしました。

忙しすぎて季節感を失っていたけれど、外を歩けば真っ直ぐな初夏の日差しと日焼け止めのにおい。暦はどうあれたぶんもう夏なんだね。

丸の内丸善「書活」の最終日、お隣のブース「すずめや」の四方さんと軽く打ち上げをした。
四方さんは手製本ノートを作っている製本家。彼女と初めて会ったのも、3年前の丸善の催事だった。僕は元々すずめやさんのファンで、インスタで見ていた美しいノートが欲しくて、東京に出展しに来ていた時に(当時すずめやさんは京都で活動していた)ブースを見に行ったのだった。
そこで驚いたのは、実物の手製本ノートの美しさだけじゃなく、その数。ブースに並んだノートの大量さ。100? 200? いやいや全然もっとだわ何冊あんのコレ。
その大量のノートに囲まれながら自席で紙を折っている彼女の姿に、当時とても勇気付けられた。
当時の僕は「自分の小説を自分で製本して売ってゆく」という道を進み始めたばかりだったし、四方さんに会うまで、手製本で大量生産をしている人を見たことがなかったから。
こんなに綺麗で魅力的な上製本を、ひとりでこんなにたくさん作っている人がいるんだと思うと、嬉しいし心強かった。
前からインスタで見てました、僕も本を作っていて…といった話を一通りしたあと、緊張しながら短編小説のフリーペーパーを手渡したことを覚えている。

打ち上げ。ビアホールのでかいジョッキを握りながら、意味ない話もたくさんしたけど、製作・創作に関する話も色々して、その中で、自分の小説の話ができていることがじんわり嬉しかった。四方さんは、僕の本を買って読んでくれている。嬉しいし、楽しいし、そして相変わらず心強い。仲良くなってからも四方さんに対する「すげーなこの人」という思いは薄れない。というか、見える部分が増えるごとに強まっている。

いいものを作りながら生きている人の存在は、分野を問わず本当にありがたい。
ちょっと前に、生きることのあり方を「人生」という言葉でより「命」という言葉で考える方がしっくりくることに気が付いた。
なんとなく、命の方が自分の持ち物って感じがするからかもしれない。
幸せな人生を送れなくてもいいから、幸せな命でありたい。生きるという活動をもって、命を幸せにしたい。というのが、今の自分にとってはしっくりきている感じがする。

文学フリマと丸善の出展で、先日改訂版を出したばかりの自著「胎内の雪」が売り切れました。
たぶん2週間以内には再販できると思います。

もっと作っておけばよかった、という悔しさはあるけれど、たくさんの方に手に取っていただけたことを素直に嬉しく思います。
「胎内の雪」は初めて作った本で、今でもとっても大切に思っている物語です。
本を作る以前は、音楽とかお芝居とか、形に残らない作品づくりを好んでいたところがあるのだけれど、読んでくれたり読み返してくれたりした方の声を聞くたび、本当にほんとうに、本を作って良かったなと思います。

いろいろな物事に助けられながら頑張れているな、と思うことばかりですここ最近。
これからもそうやって頑張ります。

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