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投票と徳

投票と徳(約20万字)

 選挙の話です。
 私たちはなぜ投票するのでしょうか。

 今回の投稿は、前々回(28万字)と前回(5万字)の投稿(仮題)で出てきた疑問を考えるための内容です。いつものように結論らしきものは特にありません。

 このシリーズをnoteに投稿する前、FBに投稿した時のタイトルは「葛藤を乗り越えるために」でした。リベラル寄りの私が感じていたもともとの葛藤は乗り越えられたと思っていますが、新たな形での葛藤が始まっています。



 私は、選挙の公正を目指す者の一員として行動したいと思っています。
 国によって文化や歴史認識の違いはあっても、選挙の公正は、民主政治を選んでいると意識している人たちの共通の願いではないでしょうか。

 「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、・・・」
 (↑現行の日本国憲法の前文は、この文章からはじまります)



 写真は、近所の山道で撮影しました。倒れかけていた水仙を、どなたかが木の枝で支えてくださったと思われます。この道を通らなければ気がつきませんでした。私は、大事なものを支えることができる人になれなくても、応援できる人にはなりたいです。

 またアテナイ人が集まって国事を議する国民議会においては、建築とか造船とかの技術的な問題を取り扱う場合には、それぞれ専門家を呼び出して、その意見を聴取し、素人の議論などには耳をかさないのであるが、しかし治国一般の政治問題については、何びとにも発言を許しているのである。これはプロタゴラスのいわゆる「身のため国のために計る」ということに関しては、他の技術におけるがごとき専門家は存在せず、したがってべつに教えたり学んだりできるものではないということを示すものでなければならぬと考えられるであろう。
〔中略〕
 徳の探究はソクラテスに死をもたらしたが、徳の説教はソピステースに称讃と金銭とをもたらした。しかし徳育の問題は、今も昔も充分に解決されてはいない。われわれの徳育といえども、ソピステースに至るまでのギリシアの徳育以上に出ていないことを忘れてはならない。われわれはソピステースの徳育を軽蔑することができないのである。

初版:1941(昭和16)年2月 弘文堂書房「教養文庫」八七
改訂版:1957(昭和32)年6月 筑摩書房
第二改訂版:1969(昭和44)年1月 筑摩書房(「田中美知太郎全集」第三巻収録)
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(田中美知太郎「徳育」『ソフィスト』1976(昭和51)年. 講談社学術文庫. pp. 92-109. )


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0、宿題のおさらい

 前回の文章では、わかったこともあるし、わからなくなってしまったこともある、と結びました。


 わかったことというのは、米国はすごい国だなということです。

 なんとなくひとつのまとまりがあるから国になるとか、単にいろんな州が集まっているだけでは連邦国家にはなり得ませんので、州法に対する連邦法の優先が合衆国憲法に規定されています。その一方、州の自治は尊重されています。米国は国土が広いため、州によっても時間、気候、歴史、人種、宗教、産業などの違いにより、国家として一律に決定できない要素がたくさんあります。ですので、米国ってこんなところ、と一概に言えないなぁと思いました。まさに、United 「States」 of America、というわけですね。

 また、自分は米国籍を持っている人、というよりもう少し積極的な、「自分は人為的なものである国家の政治的主体としての構成員であり、主権者である」ことを明確に意識している方々が多いのだということもわかりました。そしてそのような方々のおかげで私は、現在の米国の選挙制度を、ほんの一部ですが学ぶ機会を得られました。


 
 連邦最高裁判所は2021年2月22日、選挙日の3日後までに受け取った投票用紙の集計を許可したペンシルバニア州最高裁判所の判決に係る共和党議員らの訴えを審議しないと決定しました。

 しかし今回も、アリート判事、ゴーサッチ判事、クラレンストーマス判事の御三方は、レビューするべきとの見解を示してくださっていたようです。
「Supreme Court refuses to review #Pennsylvania election cases. No standing before an election, moot after. Justices Alito, Gorsuch, and Thomas dissent from the denial.」(Disclose.tv @disclosetv)

Order List (02/22/2021)
 One wonders what this Court waits for. We failed to set- tle this dispute before the election, and thus provide clear rules. Now we again fail to provide clear rules for future elections. The decision to leave election law hidden beneath a shroud of doubt is baffling. By doing nothing, we invite further confusion and erosion of voter confidence. Our fel- low citizens deserve better and expect more of us. I respect- fully dissent. 
 (私たちは選挙前にこの論争を解決し、明確な規則を示す事ができなかった。今回、私たちは将来の選挙についても明確な規則を示せなかった。選挙法を疑惑のベールに包まれたままにしておくという決定は不可解だ。何もしないことによって更なる混乱を招き、有権者の信頼をさらに低下させてしまう)
THOMAS, J., dissenting
クラレンストーマス最高裁判事:1991年10月15日に上院で承認され、23日に宣誓し最高裁判事就任。今年で30年目の法の番人。スカリア判事(在任期間:1986~2016年)以上の保守。原意主義。黒人。
https://www.supremecourt.gov/orders/courtorders/022221zor_2cp3.pdf

 たまに、このような決定を根拠にし、不正はなかったとおっしゃる方がおられます。しかし、選挙法が憲法違反ではなかったと判断されたわけではなく、ましてや選挙の不正はなかったと結論づけられたわけでもありません。審理がなされていないということですから、どちらかに決まったわけではない、というのが正しい言い方なのではないでしょうか。

 クラレンストーマス判事の反対意見には、「有権者の信頼」という言葉が使われています。PA州の有権者、さらに主権者はこの状態をどう捉えておられるのでしょうか。そして州民の代表であり、立法の権限があるPA州議会はどう動くのでしょうか。中間選挙はもう来年、2022年に迫っています。「昔から不正も収賄もあったし、いまさら騒ぎ立てることでもない」というご意見もよく目にしますが、いつまでもこのままだとは、私には思えません。実際に、ジョージア州、アイオワ州、アリゾナ州、ミシガン州などでは選挙法の改革が進んでいます。

 今から230年前の1791年、PA州議会の下院では、州財政の詳細な決算が公表されました。計算結果が貸借対照表にまとめられ、最終的に黒字であることが報告されました。しかも作成者は、「帳簿一式を民事登録局に保管して市民なら誰でも閲覧できるようにすれば、官民いずれにとってもきわめて有意義であると考えている」との注記を書き添えておられたとのことです。


〈参考〉
・About The Election Fraud Database | The Heritage Foundation
(不正選挙データベースについて)
https://www.heritage.org/article/about-the-election-fraud-database 
・不正選挙は大規模であると主張する人々もいれば、それが非常にまれであるか、まったく起こらないと主張する人々もいます。しかし、2008年に米国最高裁判所がクロフォード対マリオン郡選挙管理委員会で述べたように、このような詐欺の顕著な例は、この国の歴史を通じて、尊敬される歴史家やジャーナリストによって文書化されてきました。それが有権者のリスクだけにとどまらないことも示されています。
・大きな問題は、本当の不正選挙の範囲を誰も知らないことです。私たちはわが国の不正選挙の範囲について明確な主張はしていませんが、現在のシステムには非常に多くの脆弱性があると確信しています。
・民主党員、共和党員、および無党派によって犯されたこの詐欺は、州の選挙法の脆弱性のために起こりました。


・Georgia Legislators Addressing Election Vulnerabilities That Fueled Controversy | The Heritage Foundation/ Mar 23rd, 2021
(今回最も注目されているジョージア州では、不在者投票には写真付き身分証明書の提出を義務付ける(IDチェック)、不在者投票の申請期間、ドロップボックスの設置場所とアクセス時間などの改正を含む531号法案が下院と上院を通り、州知事の署名も終わりました。なおもう1つの重要な規定は、選挙管理人の私的資金提供を禁止することです。Facebookの創設者であるマークザッカーバーグ氏は、GA州を含む全国の地方選挙委員会にこれらの資金を分配する組織(CTCL)に3億5000万ドルを寄付しました。これらはおそらく「無党派」の助成金でしたが、キャピタルリサーチセンターによる分析では、助成金は「戦場の州に拠点を置くために既知の民主党地区を対象とした」ことが示されています。余談ですがウィスコンシン州は、CTCLから6.3億円の援助を受けているのですが(GA州で25億円)、そのうちの1.6億円がBrown郡に投入されています。この時に、CTCLは選挙スタッフの人選にも関与していたことが、市長の証言から判明しており、今後の展開が注目されています)
https://www.heritage.org/election-integrity/commentary/georgia-legislators-addressing-election-vulnerabilities-fueled

・Iowa Enacts Heritage Backed Election Reforms | The Heritage Foundation/ March 23rd, 2021
(アイオワ州では主に不在者投票に関する改正が行われたようです。「真の民主主義は選挙プロセスの完全性にかかっています。すべての合法的な投票がカウントされ、すべての違法な投票が排除されるという保証がないままでは、私たちの政府への信頼は失われてしまいます」という言葉は重いです)
https://www.heritage.org/impact/iowa-enacts-heritage-backed-election-reforms

・Arizona Enacts Election Reform Bill Containing Heritage Recommendations | The Heritage Foundation/ March 26th, 2021
(アリゾナ州では月次レビューを法定化。州の有権者登録データベースと年次市民死亡レポートを相互参照する州の既存の年次レビューに加えて行われます。州の有権者名簿の精度が大幅に向上することが期待できます)
https://www.heritage.org/impact/arizona-enacts-election-reform-bill-containing-heritage-recommendations



 さて、わかったことはたくさんありますが、わからなくなってしまったことはそれ以上に多いです。
 そのうちのひとつは、リベラルについてです。

 前回の投稿より。
 ↓
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 実は、トランプ大統領を応援している私は保守ではなく、どちらかというとリベラル寄りです。しかし、どうも私の考えているリベラルは、世の中のリベラルとはずいぶん隔たりがあるような感じがしており、自分の不勉強を今後の宿題とするために、関係する文章を最後に置いておきます。

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 「リベラル」という言葉と、「自由」という言葉には親和性があると思っていたのですが、最近の米国での言論弾圧や「キャンセルカルチャー」という言葉には、たいてい「リベラル」という文字もくっついているんですよね。

 私はフェイスブックに、不正選挙疑惑に関する内容を3本投稿しています。2020年12月1日、12月22日、2021年1月6日です。3月31日時点で、表示されたりされなかったりしますが、一応まだ残っているみたいです。もし勝手に削除される日が来ても、「ああそうか」というくらいしか思わないかもしれません。こうやってだんだんと麻痺していくのかもしれないと思うと怖い気もします。


* *

(1)リベラル寄りだった私は戸惑っている

 私は情報弱者で英語も苦手です。
 米国の有権者でもありません。
 ですので、保守(共和党)とリベラル(民主党)とどっちがいいかと聞かれることなどそうそうありません。しかし、たまに参加する勉強会とか仕事の関係などで、どちらかといえばリベラル寄りの政策について議論することが多いこともあり、なんとなくリベラルの方がいいんじゃないかなと思ってきました。

 けれども情報源については、左派か右派かどちらかのメディアだけを見ていたら情報が偏ってしまうことがわかり、なるべく両方見るようになりました。この投稿でも、完全ではないですがなるべく両方のソースを載せるように心がけています。

画像1

 ↑
 左側からだけ見ていたら木の洞の先は見えませんでした。右側からでも同じです。でも、いつも真ん中から見ることができるかというと、それも難しいですよね。結局、左に行ったり右に行ったりうろうろするしかないのかなと思っています。

 さて、オレゴン州ポートランドは先進的な街として紹介されることがよくあります。
 2009年10月にフォーブス誌が全米で3番目に安全な都市としてランクした地域でもあります。そのポートランドの視察報告を、私は過去5年以内に複数回拝聴したことがあります。主に教育関連の報告だったのですが、一番びっくりしたのは男女一緒の公衆トイレ(すべて個室)です。またホームレスや地域格差の問題も指摘されていました。とはいえ、全般的に良い取り組みをしている地域なんだなと思っていました。

 しかし最近では気になる面が出てきました。ポートランドでは、放火が街全体で400%増加しています。銃撃は、2020年8月の時点で116回(2019年全体で41人)。殺人は、2020年7月だけで15人(2019年全体で31人)。治安がかなり悪化しているようなのです。

 1月20日には、ANTIFAという反政府・反ファシズム主義者らが新大統領の就任に抗議するため民主党の事務所を襲撃しました。警察によると、器物損壊、破壊装置の所持、暴動、放火の容疑で18歳から38歳までの8人が逮捕されたそうです。

 ちなみに「自由を重んじる」街らしく麻薬に対しても寛容で、公式に合法化されています(連邦法ではまだ違法)。しかし市の税金でヘロインの注射キットが市内で大量に、それも教会の目の前などで配布されている様子を動画で見た時にはびっくりしました。

 リベラル政党が掲げてきたのは人権への配慮だったはず。それなのに、適切な形で政策の成果として現れていないのでしょうか。秩序の崩壊が目立ちすぎてしまっている現状に、正直、複雑な思いを抱いています。

〈参考〉
・「Coalition to Save Portland, Oregon – Join us!」
(オレゴン州ポートランドを救うための連合)

https://www.savepdx.org/

・The Antifa thugs shame America - UnHerd」BY DOUGLAS MURRAY, January 15, 2021
https://unherd.com/2021/01/the-antifa-thugs-shame-america/ 
・反政府団体らがオレゴン州民主党支部を襲撃 バイデンの大統領就任に抗議 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト/ 2021年1月21日(木)18時00分

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/01/post-95460.php
・I Used To Be Antifa | PragerU/ Mar 08, 2021
https://www.prageru.com/video/i-used-to-be-antifa/ 
・アンティファは "アンチファシスト" の略。
・ポートランドの  "ローズ・シティ・アンティファ" など、アンティファであることを明らかにしている集団もあるが、否定的なイメージを避けるためにほとんどの集団はそうしていない。
・ファシズムとは→ ほとんどのアメリカ人にとっては、ナチ政権下のドイツ、ベネズエラ、中国、北朝鮮など現代の専制国家。しかし、アンティファにとってのそれはユダヤ教/キリスト教的価値観であり、資本主義。
・若者が左翼に吹き寄せられるのは、左翼がより優れていると考えているからではない。ほとんどの若者が、ほかの何かに触れたことがないからだ。アンドリュー・ブライトバートがかつて述べたように、左翼が “初期設定” になったからだ。

 民主党の政策で有名なもののひとつとして、警察予算の削減があります。
 最近ではミネソタ州ミネアポリス市のニュースが大きく報じられていました。ブラックライブスマター(BLM)の活動で有名になった同市では昨年、警察解体の機運が高まり、結果として警察予算が9億1千万円削減されました。(7月に1億1千万円、12月に8億円)(警察全体予算は179億円)
 その結果がこちら。
 ↓
前年比で、
放火 ARSON +77%
暴行 ASSAULTS +24%
殺人 HOMICIDES +73%
強盗 ROBBERIES +48%
車盗 CARJACKINGS +331%
(FOX)
 ↑
 さすがにこれはやばいということで、市は全会一致で6億4千万円の追加を決定したようです。つまり12月に8億円減らしたけど、すぐにまた2月に6億円を増やしたということですね。ちなみに警官の数も増やすとのことです。昨年のジョージフロイド氏の事件(検死では覚醒剤が検出。なおミネアポリス市は同氏の遺族に和解金として2,700万ドル(約29億円)を支払うことが決定(3/13, FOX))の直後は市民も警察予算の削減に積極的だったようなのですが、徐々に治安が悪くなり実害も感じるようになってきたため、今回の選挙では民主党は議席を大きく減らす結果になったようです。このあたり、「おいおい市民の意向を反映して政策決定したのに何なんだよ(*`д´)」という声も聞こえてきそうで複雑な気持ちになります…。

 ちなみにですが、前述しましたポートランドも、「暴力に対応するため、200万ドルほど予算を増やしたい。警察予算打ち切り・削減は誤りであった。犯罪が爆増している」と市長さんがおっしゃっているそうです(3/13, FOX)。実は昨年夏のBLMの運動に市長さん自らも参加されています。そして再選済みです。そういえば昨年の大統領選挙の後にBLMの方々が、「選挙で民主党に協力したのに金をくれないじゃないか」と抗議されていましたよね…。

〈参考〉
・Minneapolis to Spend $6.4 Million to Recruit More Police Officers | Voice of America - English/ February 13, 2021 08:56 PM
https://www.voanews.com/usa/minneapolis-spend-64-million-recruit-more-police-officers?amp&__twitter_impression=true 
・Michael Yon JP: ジョージ・フロイドの長いビデオ/   Tuesday, August 11, 2020
http://michaelyonjp.blogspot.com/2020/08/blog-post_11.html 
・A Father’s Questions for Black Lives Matter | PragerU/ Feb 15, 2021
https://www.prageru.com/video/a-fathers-questions-for-black-lives-matter/ 

 ・[事件] ジョージ・フロイド事件の分析 [日系仮面] - YouTube/ 2021/03/09(2020/08/15)
(元米陸軍、元犯罪捜査官の方の解説。司法解剖の結果、危険なレベルのドラッグが検出されたことや、窒息死の痕跡はなかったことが判明)

(わかりやすい日本語です。私はいつも2倍速で聞いていますが特に問題ありません)
https://www.youtube.com/watch?v=UDlWeGyON1Y 
・[社会問題] Black Lives Matterの組織について [日系仮面] - YouTube/ 2021/03/10(2020/08/22)
(BLMは2013年にトレイボン・マーティン射殺事件の後に創立、2014年のマイケル・ブラウン射殺事件で有名に。公式サイトより)https://www.youtube.com/watch?v=Zv3S1Kzxqz0 
・[事件] ポートランド:トランプ支持者射殺事件 [日系仮面] - YouTube/ 2021/03/14(2020/09/12)
(2020年8月29日、左翼の過激派が無抵抗の保守派を射殺した事件。当時の複数の動画などから解説。逮捕状や被害者の身元に関する誤報も)https://www.youtube.com/watch?v=rKc7TQ-IWaw 
・Views on race, police shift a year after George Floyd death, poll shows/ 12:21 p.m.ET Mar. 5, 2021
https://www.usatoday.com/story/news/politics/2021/03/05/americans-trust-black-lives-matter-declines-usa-today-ipsos-poll/6903470002/ 
(ジョージ・フロイドから全米に火が着いたBLMの平和的デモは暴動に変化、多くの犠牲を出した。10ヶ月後の今、彼らの暴走はBLMの掲げるスローガンと真逆の国民感情に反映した)
フロイドは警官に殺されたと思う:60%→36%
BLM運動を信頼する:60%→48%
警察・司法を信頼する:56%→69%



 最近の話題としては、カリフォルニア州知事のリコール運動(なんと5回目)や、CA州教員組合会長の炎上、ニューヨーク州知事のコロナ死者数隠蔽事件などをよく見かけます。いずれもcovid-19に関連するものなので今回だけの特別な問題と言われてしまえばそれまでですが、そうとも言い切れないような問題が見え隠れしています。

 特にNY州の事件は連日ニュースになっています。
 FBIとブルックリンにあるNY州東部地区連邦検事局がNY州知事アンドリュークオモ氏に対し調査を開始するという報道が2月18日にあり、3月9日から調査が開始されているようです。

 知事ご本人の発言は、右派メディアでは全文確認できますし、左派メディアも切り貼りせずに伝えているようです。この件についてNY在住の方と直接お話する機会は今のところありませんが、私が見聞きする限りでは「早く辞めてほしい」「殺人鬼」「CNNにいる弟が持ち上げすぎていたのでは」「エミー賞の頃からおかしいと思っていた」「本まで出して浮かれていた」「民事過失責任だけでなく刑事告訴の可能性もある」等の否定的な意見が圧倒的多数です。保守リベラル問わず、というかむしろ私はリベラル寄りなのでそちら側の意見を目にすることが多いのにも関わらずこんな感じです。

 この事件によって、トランプ大統領がワクチンを渡さないと言ったのはトランプ大統領の嫌がらせではなく、知事の報告の問題であったことがバレてしまいました。しかしコロナ禍の影響が甚大な状況で、しかも誰にも正解がわからないのに、知事の判断ミスがどこまで問われるかというのは難しいと思います。やれば非難されるしやらなくても非難される中で何らかの決断を迫られるのが首長なのです。そんな中、NY市長のデブラシオ氏(民主党・反トランプ・三期までという規定により今期で退任)は知事を強烈に批判。またNY州議会では、共和党はもちろんのこと、民主党からも知事権限剥奪の動きが出てきています(感染症対策に係る知事権限の制限に関しては、既にNY州上院議会で3/5までに可決済み)。なお同州で弾劾された州知事はWilliam Sulzer氏のみ(1913年)だそうです。

 この動きには、知事を批判しているRon Kim氏(NY州下院議員・民主党・Ron氏の叔父様が老人ホームでコロナに感染し亡くなられていることから知事の責任を追求)のところに、2月11日、知事から電話があり、「destry(破壊)する」と脅迫されたことも関係しています(ちなみにソースは反トランプのCNN 2/18 )。このことが本当ならば、さすがにそれは批判されるべきです。それとともに、当時の判断がただのミスではなく、かなりの悪質性があることが判明してきました。そうなってくると、話は違ってきますね…。とはいえ2022年の中間選挙でどうなるのかはNY州の有権者さんが決めることであり、私がどうこう言う立場ではないのですが。

 しかし気になるのは、CNNやNYTのリベラルメディアが今になって急に180度ターンをしていることです。クオモ氏を大統領候補としてヒーロー扱いするのであれば、事前に調べておられたはずです。このような人物である可能性がある事がわかっていて持ち上げたのであれば悪意がありますし、もし知らなかったらメディアとしての能力はないということですよね…。

〈参考〉
・米加州知事のリコール選挙に必要な署名150万件集まる、新型コロナ対策への不満などが背景に(米国) | ビジネス短信 - ジェトロ/ 2021年02月19日
https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/02/ead149c2ae68136c.html
・Newsom Recall Signature Level Hits 1.7 million as CA Citizens Keep Fighting Pandemic Policies/ Monday, February 22, 2021 at 3:30pm

(2月22日に170万筆。署名を集める期限は3月10日、最終的に2,117,730筆。なおCA州知事が立ち上げたリコール反対のためのサイトには、「リコール活動の背後には白人至上主義団体・反ワクチン者・Qアノンがうごめいている」などと書かれている)
https://legalinsurrection.com/2021/02/newsom-recall-signature-level-hits-1-7-million-as-ca-citizens-keep-fighting-pandemic-policies/
・Cuomo aide Melissa DeRosa admits they hid nursing home data from feds/ February 11, 2021
https://nypost.com/2021/02/11/cuomo-aide-admits-they-hid-nursing-home-data-from-feds/?utm_source=NYPTwitter&utm_campaign=SocialFlow&utm_medium=SocialFlow 
・窮地のクオモNY州知事、高齢者施設に患者を戻した判断が生んだ「3つの誤算」 | 冷泉彰彦 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト/ 2021年02月16日(火)15時00分
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2021/02/ny3.php 
・Cuomo said 'he can destroy me': NY assemblyman alleges governor threatened him over nursing homes scandal - CNNPolitics/ February 18, 2021
https://edition.cnn.com/2021/02/17/politics/cuomo-ron-kim-nursing-home/index.html 
・U.S. Prosecutors Investigating How Cuomo Administration Handled Covid-19 in Nursing Homes - WSJ/ Feb. 18, 2021 12:02 am ET
https://www.wsj.com/articles/u-s-prosecutors-investigating-how-cuomo-administration-handled-covid-19-in-nursing-homes-11613624562 
・Assembly GOP Advances Impeachment Process Against Cuomo/1:47 PM ET FEB. 18, 2021
https://spectrumlocalnews.com/nys/central-ny/ny-state-of-politics/2021/02/18/assembly-gop-advances-impeachment-articles-against-cuomo 
・Assembly Democrat accuses Cuomo of profiting off hospitals, lying about nursing homes | WSTM/ Friday, February 19th 2021

(議会民主党は、クオモが病院から利益を得て、ナーシングホームについて嘘をついていると非難している)

https://cnycentral.com/news/local/assembly-democrat-accuses-cuomo-of-profiting-off-hospitals-lying-about-nursing-homes 

・Cuomo gave immunity to nursing home executives after big campaign donations | Andrew Cuomo | The Guardian/ 【Tue 26 May 2020 19:00 BST】

(クオモは大規模なキャンペーンの寄付の後、ナーシングホームの幹部に免除を与えた)
https://www.theguardian.com/us-news/2020/may/26/andrew-cuomo-nursing-home-execs-immunity 

・‘It’s Like Gangster Stuff’: More New York Politicians Accuse Cuomo Of Threatening Behavior (Forbes)/ Feb 22, 2021, 05:05pm EST
https://www.forbes.com/sites/andrewsolender/2021/02/20/its-like-gangster-stuff-more-new-york-politicians-accuse-cuomo-of-threatening-behavior/?sh=2562f78a1450 
・NY Dem says Cuomo nursing home scandal is impeachable offense, as governor blames Trump for vaccine woes | Fox News/ 2021.02.23
https://www.foxnews.com/politics/new-york-ron-kim-cuomo-nursing-home-scandal-impeachable-offense 
・Cuomo Aides Rewrote Nursing Home Report to Hide Higher Death Toll - The New York Times/ March 4, 2021
(NY州知事アンドリュークオモの側近(高官)たち、保健当局者が提出した介護施設でのコロナ死者数を含む報告書を、意図的に書き直すなどして、実際の死者数を隠蔽していた)
https://www.nytimes.com/2021/03/04/nyregion/cuomo-nursing-home-deaths.html 
・New York nursing home whistleblower: Cuomo's order was 'ridiculous,' warned officials 'we can't be doing this' | Fox News/ March 18, 2021
(NYのナーシングホーム内部告発者:クオモの命令は「ばかげている」と当局に警告した「私たちはこれを行うことはできない」)(NYのナーシングホームで15,000人以上が死亡したことが確認された)

https://www.foxnews.com/us/new-york-nursing-home-whistleblower-speaks-out-cuomos-order 
・Gov. Andrew Cuomo Now Has a Third Scandal by Beth Baumann/ Mar 24, 2021 9:35 PM
(パンデミックが始まった頃、検査数には限界があったのだが、クオモは自身の親族に優先的に検査をさせた。ちなみにセクハラ告発8人目はなんと現職スタッフ。さらに9人目は一般人で、なんと2017年5月27日(月)洪水被害の視察時(公務時)でのこと)https://townhall.com/tipsheet/bethbaumann/2021/03/24/scandal-three-gov-cuomo-pulled-strings-to-get-his-family-and-friends-covid-test-n2586852 

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 さらに、生活に不安を感じる人々が引っ越してしまう地域も少なくないようです。カリフォルニア州(民主党地盤)からテキサス州(共和党地盤)へ移住する人が益々増加しているのはわりとよく聞く話ですが、税制や規制に加え、治安の問題も大きいようです。もしかしたら、特定の保護されている人にとっては住み良いかもしれないけれど、それ以外の人の自由が脅かされている状態が目立つようになっているのかもしれません。ひとまず民主党の州単位の政策に関しては、一見開放的なようでいて、実態はそうでもないことが案外多いのかもしれません。

 しかし2月15日、テキサス州は大雪で停電!120年ぶりの寒波の原因は、成層圏突然昇温という現象とのこと。一時は、水道管も破裂して、飲料水のみならず火事にも影響、消火活動にも支障をきたしていたそうです。

 《今回は、州内の2割強の電力を賄う風力タービンの翼面が凍結し、太陽光発電設備も雪で発電不能、次いで火力発電所や原発も凍結により停止、全体的に発電量が不足した》とのこと。このようなことがあると、天候に左右されにくい安定した電力供給システムの必要性が高まりますね。しかし、(長距離で石油を運ぶ)キーストーンパイプラインは、公約通り新政権(民主党)発足後すぐに停止されたばかりです。

 なお、この決定は雇用に大打撃を与えたとして提訴されています。いきなり失業者を増やして国内産業に影響を与えるというやり方はクリントン政権(民主党)のNAFTAと似ており、現在でも、民主党員と共和党員で評価が分かれているようです。そういえばゴア元副大統領(民主党)は『不都合な真実』を書く前から再生エネルギー関連に投資をし、運動家を動かしてロビイ活動の成果をあげ、有利な規制で資産が一気に増えたことから「世界初の環境長者」という呼び名があるらしいです。もしかして今回も、誰か得をする人がいるのでしょうか。それとも私のような素人ではわからない、もっと高度な政治的判断で、環境政策が進められているのでしょうか。ちなみに3月8日、12州の連合が提訴した訴訟は、現政権の環境政策は越権行為であるという内容のようです。

 一方、バックアップ措置をとっておかなかったTX州議会多数派の共和党にも責任がありそうです。《毎年この時期は電力需要が低いためプラントの定検を1月下旬から1か月半の予定でやっている。しかし今回はそこに寒波襲来。見通しが甘かった州と電力会社の責任という面もある》というお話もあります。TX州といえば、不正選挙疑惑の件ではものすごく良い活躍をされている印象がありますが、その代表格でもあるテッド・クルーズ上院議員(共和党)の旅行が今回問題視され、かなり叩かれているようです。議員としてどうなのかはTX州の有権者さんが決めることですのでさておき、この電力網の構造上の欠陥がどうも気になります。

 なんでも、米国の発電網は、西部、東部、そしてTX州と三つに分かれていて、TX州は連邦の規制から外れて独立しているのだそうです。そのため、電力を他から融通してもらえないのだとか。《州内の電力網を管理するERCOT(Electric Reliability Council of Texas)という非営利団体は州内700社ほどの発電事業者から電気を受けていますが、発電事業者はコスト重視で寒冷対策を含む電力の信頼性に対するインセンティブがなく、今回のような停電時に発電しなかった場合のペナルティもないため、ERCOTは発電事業者に発電再開の命令も指示もできず、結局は受電者への供給を止めるという選択肢しかなかった》ようです。

 ちなみに、《電力、水、ガスといったライフインフラの規制もかなり複雑》なのだそうです。これは、州内でもまた独自の電力網を敷いているところがあるようで、たとえば《エルパソという地域では10年前に豪雪を経験し、かなりのダメージを受けたため、マイナス20度まで耐えられる施設を新設したおかげで今回はダメージを受けなかった》そうです。

 うーんこれはどう解釈したらいいんでしょうか…。何しろTX州の面積は日本の約2倍でかなり広いのと、TX州の成り立ちを考えると(メキシコから独立「アラモを忘れるな!」)、やはりこのような状況になるのでしょうか。気になるのは、「小さな政府」の限界と考えて(規制も含めて)インフラを整えるのか、それとも滅多に来ない寒波に備える財源は後回しにするのか、このあたりも難しそうですね。

 3月2日はTX州の独立記念日だったそうです(Texas Declaration of Independence( テキサス独立宣言)が採択された日)。おめでとうございました。3月10日からはコロナ関連の義務も緩和され、経済活動も全面再開されているようです。しかし寒波の被災者は数百万人とも言われていますので、現在も何かしら影響が残っているかと思います。皆様のご無事を祈るばかりです…。

 なおこの事態により、不法移民に関する施策にも影響があるようです。周知の通り現政権(民主党)は不法移民に対し寛大な措置をとろうとしています。しかし、TX州Del Rio市のBruno Lozano市長(ちなみに民主党)は、「不法移民受け入れの準備が整っていない。もし不法移民を我々の地域に開放するのであれば、我々は彼らに何も与えずに放置せざるを得ないであろう。大寒波の影響がまだ続いている。他の計画を考えてほしい」と要求しておられたとのこと(2/20)。

 TX州選出のHenry Cuellar連邦下院議員(こちらも民主党)も、「国境は危機的状況をいつ迎えてもおかしくなく、米国は不法移民を迎え入れる準備はできていない。大統領は国境周辺の州から話を聞くべきだ」と強めの発言をされています(ただし不法移民に市民権を与えることを推進されてるのでなんだか微妙)。これは、TX州のAbott知事(バリバリの共和党)が、「Lone Star(一つ星)」という作戦名で、国境警備政策を発表されたことに対応するもののようです。この作戦とは、TX州の州兵とTX州公安局の合同でメキシコ国境からの人の密入国やドラッグの密輸入と戦う、あらゆる手段(空・陸・海・戦略的な国境警備)を動員する、といった内容です。その後、Joe Manchin連邦上院議員(WV州選出・民主党ですが政策は共和党寄り)も、CNNの番組内(3/16)で「国境の現状はcrisis(危機的状況)」であると認めておられます。

 ちなみに強制退去処分が決まった不法移民の場合、20人に1人はコロナの陽性反応が認められるらしいのですが、勾留する権限を持つ機関がないために誰も引き留めることができない、つまり釈放するしかなく、そのまま「キャッチ・アンド・リリース」となってしまうようです。そして越境の際に正規のルート以外で来られた場合はもはやPCR検査はできませんし、不法移民にPCR検査を義務付ける法案も下院の段階で否決されています。


 そもそも米国政権の長年の懸念であった、人身売買、麻薬、テロリストの混入などを防止するためにメキシコの国境の壁(鉄柵)の建設が始まりました。《しかし1994年の頃の壁は頼りないフェンスで、穴だらけでした。トランプ政権になってから国境をちゃんとした壁(というか柵)で全体的にカバーするという動きになったのですが、それよりも重要だったのが「不法入国を許容しないぞ」というスタンスだったと思います。そのようなスタンスにより、不法入国のメリットを薄くし、リスクを高くすることによって、不法入国しようとする人を減らすことに成功していたと思います。今は逆に、壁はあるけれど、移民を受け入れる状態になってしまっているので、不法入国するメリットだらけで、リスクはほぼ無い状態です。よって、今は不法入国し、そのままCBPに自首することによって、一時的に保護されたらアメリカ国内に釈放される、という流れができ上がっている、最悪のパターンです。不法入国者による米国民や政府への経済的な負担に加えて、社会的な負担などは膨大なので、壁にかかったコストはちゃんとしていれば数年で取り返せる計算です。また、壁があることによってCBPのパトロールなどの負担が減り、より効率的に国境を守れるようになります。重要なのは壁自体よりも不法入国を許容しないスタンスや取り締まりだと思います。》

 しかし新政権は壁建設の中止を決定し、さらに(全員ではないが)不法移民の釈放も決定されています。これに対し、ミズーリ(MO)州のEric Schmitt司法長官はじめ、AL, AR, FL, GA, IN, KZ, KY, LA, MS, MT, NE, OK, SC, SD, TX, UT, WVの、計18名の司法長官から、性犯罪の前科のある不法移民を米国内に「釈放しないように求める」書簡が、DHS(国土安全保障省)およびICE(移民関税局)に送られています。不法ではなく、正式な手続きを経た移民であれば問題ないような気もしますが、何しろ、2014年10月-2018年05月に逮捕された、前科のある不法移民は、19,752人。そのうち性的暴行に関する前科を持っている不法移民の割合は、2017年では不法移民全体の1%、2020年ではこれが6%に跳ね上がっているそうなので、その深刻さが伺えます。このあたりの整理と再考も必要になってくるのかもしれません。

 ところでTX州が、100日間の不法移民の強制退去の執行停止を差し止める命令を求めて連邦地方裁判所に提訴したことはまだ記憶に新しいです。1月26日に仮差止めの緊急命令、2月9日に仮差止めの延長命令、そして2月23日、正式に差止めが認められました。「1月20日の大統領令に従い、DHSが発出した覚書に関する訴訟」の判決文の説明を見てみると、経済的損失が半端ないですね、2018年には$152,054,117(150億円)の支出だったそうです。そして、子どもだけの不法入国も増加しているので学校に通わせなければならず(修正14条:平等保護条項)、その費用は、2014-2020年で、$26.71M-$112,1M(26~112億円)とのこと。なおICEは、2017-2019年に、241,000人の犯罪を犯した不法移民を強制退去させています(一日あたり220人)。TX州のDallas,Houston,San Antonioからは、58,916人が強制退去の対象となっています。もし100日間の停止をした場合は、単純計算で22,000人の犯罪を犯した不法移民が全米に残され、そのうち16,100人がTX州に留まることになります。連邦政府からの補助は多少あるものの、基本的にはそのほとんどを州が支払うことになりますので、さすがにTX州の負担が大きすぎると判断されたのでしょう。しかし今回の訴訟は覚書に係る案件ですので、今後立法化された時の動きが気になるところです。

 不法移民の問題は、今回のテーマである「投票」にも関係してきます。クリントン政権からオバマ政権にかけて、民主党に投票させるため不法移民に選挙権を与えてきた経緯があります(カーター政権(民主党)の時にもキューバから13万人受け入れているという話もありますね、詳しくはわかりませんが)。選挙権が誰にでも与えられる、ということは素晴らしい政策のようにも思えますし、「選挙権」という一面からだけ見た議論としてはそれで良いのかもしれません。しかし限られた財源の使い道としては、もともと国境付近に住んでいた住民や、適正な手続きを経て移民となった人たちの生活がまず優先されるべきではないでしょうか。投票は、自分たちが納めた税金をこのように使ってほしいとアピールする手段でもあります。納税していない人は蚊帳の外、ということは許されませんが、自分たちの政権安泰のために不法移民を増やすこととは分けて考えられなければならないと思います。共和党のトランプ政権でその流れが一旦止められましたが、民主党のバイデン政権になって再びその流れになってきました。しかしさすがに民主党支持者の間でも疑問の声が大きくなってきているようです。

 それと、子どもだけで来た不法移民への対応の件をもう少し。前政権の時は「子どもをケージに入れて云々」と批判されてきました。現政権ではその施設をあまり使いたくなかったようです(オバマ政権の時も使ってたような気がするけど違うのかな…)。しかし現在、子どもを平均77時間勾留している(平均なのでもっと長い場合もあるし、120時間とか、10−12日間という報告もある)ことが発覚しています。連邦法では72時間が上限とされているところ、これは違法だし人権にも配慮できてないということで、施設が不足していることを理由に、一度閉鎖した施設を再度利用することを検討中とのこと。つまりトランプ政権で使われてきた施設を使いたくないので閉鎖したけど、やっぱり使わなきゃ間に合わない…ということみたいです。しかしそれでも間に合いそうにないので、「トランプ政権が作らなかったのが悪い」と責任転嫁しているとのこと…。

 ちなみに現在の稼働状況はというと、
・AZ州Yumaの施設:定員104人→収容600人以上!
・TX州Rio Grande Vallyの施設:定員715人→収容2,000人以上!
(3/3, CNNが独自に内部文書を入手)

 補足ですが、
・施設へのメディアの立ち入りは禁止。弁護士も指定された場所で面会が許されているだけで、子どもが収容されている施設内を見ることはできない(理由は感染症対策)。
・ICEのTwitterアカウントの使用中止。バンされたのではなく、自ら「もう使いません」と。(2013年から不法移民の犯罪情報等を提供してきたのに…)
・「バイデンさん、どうかわたしたちを入国させてください(Biden Please Let Us In)」と書かれた「おそろいの」Tシャツを着てTVに映っている人たち(3/4, FOX)。
・エルサルバドルのNayib Bukele大統領(38歳)「バイデン政権の不法移民政策は中南米諸国にとって良くない。労働力の流出を引き起こすし、米国からの仕送りに頼り切った生活をする人が増えてしまう」(FOXタッカーカールソンの番組内にて)

 …うーーーん…

〈参考〉
・《 》内は、ヒューストンやオースティンなど現地の方のコメント。
・不法移民の強制送還凍結、米連邦地裁が一時差し止め: 日本経済新聞/ 2021年1月27日 8:04
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN270BV0X20C21A1000000/
・【写真】歴史的な大停電と断水が襲ったテキサス州で、地元住人の倫理観の高さを示す出来事が・・・全米の各都市で治安の明暗が大きく分かれる -/ 2021.02.22

https://bonafidr.com/2021/02/22/【写真】歴史的な大停電と断水が襲ったテキサス/ 
・Democrat mayor’s urgent plea to Biden to halt latest immigration policies( Fox News) - YouTube/ 2021/02/20
https://www.youtube.com/watch?v=swd-2dLeR0c&feature=emb_logo
・Gas traders pleaded for cash as Texas cold upended their market | Hindustan Times/  FEB 21, 2021 11:04 PM IST

https://www.hindustantimes.com/environment/gas-traders-pleaded-for-cash-as-texas-cold-upended-their-market-101613928208695.html 
・12 States Sue Biden Administration Over Climate Policies/ March 09, 2021
https://www.dailysignal.com/2021/03/09/12-states-sue-biden-administration-over-climate-policies-massive-expansion-of-regulations/ 
・Biden Overstepped Constitutional Authority When He Revoked Keystone Pipeline Permit, Multiple States Allege In Lawsuit/ March 17, 2021 6:36 PM ET
(21人の共和党司法長官のグループが3/17、キーストーンパイプラインを廃止するという決定をめぐりバイデン政権に対して連邦訴訟を起こした)
https://dailycaller.com/2021/03/17/states-lawsuit-joe-biden-administration-keystone-xl-pipeline-union-jobs-economy/ 
・The Biden Administration Is Covering up the COVID Crisis at the Border – PJ Media/ MAR 15, 2021 9:54 AM ET
(テキサス州政府「バイデン政権の担当者はCOVIDで不法移民の数を隠蔽している」)
https://pjmedia.com/news-and-politics/matt-margolis/2021/03/15/the-biden-admin-is-covering-up-the-number-of-illegal-immigrants-with-covid-says-texas-gov-n1432525 
・Exclusive: 'Migrant president' Biden stirs Mexican angst over boom time for gangs | Reuters/ MARCH 10, 20219:11 PM
(メキシコのAndres Manuel Lopez Obrador大統領「現政権の移民政策が不法移民に自信を与え、さらに米国との国境で人の密輸ビジネスを行なっている麻薬カルテル組織に収益をもたらしている。私たちはこの移民の流入を制限するために協力する必要がある」)
https://www.reuters.com/article/us-usa-immigration-mexico-exclusive/exclusive-migrant-president-biden-stirs-mexican-angst-over-boom-time-for-gangs-idUSKBN2B21D8 
・Families send thousands of kids alone across border due to Biden policy/ March 17, 2021 at 3:08pm
(バイデンの方針により、家族は子供を一人で越境させる~米国の管理下にある13,000人以上の同伴者のいない未成年者)https://www.wnd.com/2021/03/families-sending-children-alone-across-border-due-biden-policy/ 
・Traffickers At U.S.-Mexico Border Earned As Much As $14M A Day Last Month: Report | The Daily Wire/ Mar 23, 2021
(米国とメキシコの国境での人身売買業者は先月1400万ドルも稼いだ)https://www.dailywire.com/news/traffickers-at-u-s-mexico-border-earned-as-much-as-14m-a-day-last-month-report 
・Biden Blatantly Withholding Border Crisis Information From Reporters: DHS Source/ March 8, 2021
(国土安全保障省(DHS)の複数の高官達は、同省の上級法執行官達に対して、南部国境で発生している危機的問題について報道機関に情報を提供することを禁じる「口頭命令」を出した)
https://conservativebrief.com/withholding-information-36419/ 
・Fact-Checking DHS Chief’s Dishonest Statement on Border Crisis | The Heritage Foundation/ Mar 17th, 2021
(国境危機に関するDHSチーフの不正な声明の事実確認)
https://www.heritage.org/immigration/commentary/fact-checking-dhs-chiefs-dishonest-statement-border-crisis
・Border Shift | Full Measure/ MONDAY, MARCH 8TH 2021
http://fullmeasure.news/news/cover-story/border-shift 
→国境警備局(CBP)のアリゾナ州ツーソン署で国境警備隊を率いているジョン・モドリン暫定署長:
「過去4か月で、国境当局は296,000人以上の違法な国境通過者を確保して追放した。メキシコ国境に押し寄せる不法移民の数は、今年の会計年度の最初の4ヶ月間で、過去三年間の合計をすでに超えた。今のスピードで流入が続けば、今会計年度が終わるまでに、2018年、2019年、2020年の人数を合わせた数を超えるだろう」
(米国政府の会計年度は10-09月)

・バイデン大統領、言うことを聞かない州知事に…「新型コロナ」「移民問題」巡り“自己矛盾"も?(2021年3月12日) - YouTube/ 2021/03/12
https://www.youtube.com/watch?v=8486T8OX4jc 
・【動画】米国の南部国境で麻薬カルテルが大規模な児童売買を指南+移民を誘拐して身代金を要求——それでもバイデン政権のサキ報道官は国境で「危機」は起きていないと否定 -/ 2021.03.12
(3月11日、ホワイトハウスで行われた定例記者会見で、CNNのケイトリン・コリンズ記者が、サキ報道官に詰め寄る場面があった(左派メディアが左派政権を糾弾した。ちなみに「circle back」サキ報道官は、現政権に入るまでの2017〜2020年、CNNで政治コメンテーターを務めていた)
https://bonafidr.com/2021/03/12/【動画】米国の南部国境で麻薬カルテルが大規模/ 
・President Biden Tells Illegal Immigrants ‘Don’t Come Over’ After Migrants Overwhelm Border Facilities/ March 16, 2021 8:35 PM ET
(移民が国境施設に殺到していることに対しバイデン大統領は不法移民に「来ないでください」と言った)
https://dailycaller.com/2021/03/16/joe-biden-abc-news-tells-migrants-dont-come/ 
・After Weeks Of Dodging, Psaki Refers To Situation ‘On The Border’ As A ‘Crisis’/ March 18, 2021 1:58 PM ET
(政権は「クライシス(危機)」という言葉を使わない状態を数週間続けてきたがサキ報道官はとうとう「国境の状況」を「クライシス」とつい口走る→慌てて訂正)
https://dailycaller.com/2021/03/18/after-weeks-dodging-psaki-refers-situation-border-crisis/ 
・Biden Avoids The Word ‘Crisis,’ Despite Rate Of Illegal Border Crossings Being ‘Six Times The Crisis Level’ He Set Under Obama | The Daily Wire/ Mar 19, 2021
(バイデンは、違法な国境通過率が「(オバマチームが設定した)危機レベルの6倍」であるにもかかわらず、「危機」という言葉を避けている。3/16の新しい報告によると、拘禁施設に収容されている同伴者のいない子供たちの数はそれまでの数字より300%以上多いことがわかった)
https://www.dailywire.com/news/biden-avoids-the-word-crisis-despite-rate-of-illegal-border-crossings-being-six-times-the-crisis-level-he-set-under-obama 
・Border Photographer Sounds the Alarm on Biden's Insane Media Blackout by Beth Baumann/  Mar 21, 2021 3:15 PM
(ブッシュ大統領、オバマ大統領、トランプ大統領の下で国境警備隊の施設を撮影したジョン・ムーア氏(ゲッティフォトジャーナリスト)は、国境警備隊の施設の状況に関する報道を禁止するというバイデン政権の決定に警鐘を鳴らした)
https://townhall.com/tipsheet/bethbaumann/2021/03/21/theres-no-modern-precedent-photojournalist-slams-the-biden-admins-media-blackout-at-the-border-n2586605 
・Inside the Biden administration?s failure to contain the border surge - The Washington Post/ March 21, 2021 at 5:24 a.m. GMT+9
(バイデン政権を擁護してきたWaPoもさすがにかばいきれなくなったのか、国境の危機はかなりやばいところまできている様子。ちなみに極左のMSNBCも国境問題については現政権に批判的。同じく左のNYTはファクトチェックでバイデン大統領とマヨルカス長官の数々の嘘を暴き出しており、トランプ政権に自分たちの失策を責任転嫁していることも指摘されている)https://www.washingtonpost.com/politics/biden-border-surge/2021/03/20/21824e94-8818-11eb-8a8b-5cf82c3dffe4_story.html 
・Biden Will Spend More Than $100M to Bring Illegals Here. 1,200 to Stay in Hotels, Fly to New Destinations. Wall Construction Delay Costs Millions. - The New American/ March 22, 2021
(1,200人の不法移民を収容するためにホテルと8,600万ドルの契約。さらに壁建設の中止には何百万ドルもの大金が必要。ちなみに予算が既に決定しているものを大統領令で勝手に中止しているので会計検査院が入るとの情報も)
https://thenewamerican.com/biden-will-spend-more-than-100m-to-bring-illegals-here-1200-to-stay-in-hotels-fly-to-new-destinations-wall-construction-delay-costs-millions/ 

・Fact Check: Biden Tells Massive Whopper on Migrant Crisis During First Solo Press Conference / March 25, 2021 at 1:15pm
(今まで大多数の家族が送り返されたとの主張に対し、実際の数字は13,000人の家族の平均13%、CNNのファクトチェッカーのダニエルデール氏でさえ、この主張は正しくないと非難)
https://www.westernjournal.com/fact-check-biden-tells-massive-whopper-migrant-crisis-first-solo-press-conference/ 
・不法移民の収容施設を埋め尽くす子どもたち=テキサスの流出画像/ 2021年03月24日 15時09分
https://www.epochtimes.jp/p/2021/03/70379.html?utm_source=newsletter&utm_medium=email&utm_campaign=477 
・After Pledging to Decriminalize Illegal Border Crossings, Harris Will Lead Border Crisis Response - Washington Free Beacon/ MARCH 24, 2021 6:04 PM
(国境問題は今後、ハリス副大統領が指揮を執る事になる。深刻な場面でガハハと笑ってごまかすのは癖なのだと思いますが、深刻な場面ではさすがに控えていただきたいなと思います、もしかしてご本人はあまり重大な問題と思っておられないのでしょうか。余談:同氏の祖先も移民ですが奴隷として使われる側ではなくて使う側だったと、父でありスタンフォード大学名誉教授のドナルド・ハリス氏が書かれた文章があります)
https://freebeacon.com/biden-administration/after-pledging-to-decriminalize-illegal-border-crossings-harris-will-lead-border-crisis-response/ 
・Thorner/O’Neil: Blame for Border Crisis Rests Squarely on Biden/Harris Administration - Illinois Review/ WEDNESDAY, MARCH 24, 2021
(国境問題に関して色々まとまっているレビュー)
https://www.illinoisreview.com/illinoisreview/2021/03/thorneroneil-blame-for-border-crisis-rests-squarely-on-bidenharris-administration.html 

・Project Veritas obtains images showing inhumane conditions in migrant holding facility | One America News Network/ 11:34 AM PT – Monday, March 22, 2021
https://www.oann.com/project-veritas-obtains-images-showing-inhumane-conditions-in-migrant-holding-facility/ 
→Project Veritas(非営利の潜入ジャーナリズム団体)が取得した移民収容施設の非人道的な状況を示す画像。テキサス州ドナにある税関国境警備局(CBP)の施設内の写真(2021年3月20日)は、Henry Cuellar下院議員(TX-28)によって提供された(Axios)。少なくとも50人がCOVID-19陽性とのこと。
・何百人もの子どもたちが非常用のブランケットに身を包み、ぎゅうぎゅう詰めの「セル」の中で身を寄せ合っている様子。「セル」の中では、床に厚さ約10cmのマットレスが並んでいるが、床で寝ている子どももいる。「セル」は金属製のフレームにぶら下がった透明なプラスチックのカーテンで仕切られている。8つの「セル」が1つの「ポッド」を形成。「ポッド」の最大収容人数は260人だが400人以上が収容。この収容施設は複数の連結された巨大なテントから出来ており、8つの「ポッド」に平均3,000人が常時収容。
・2019年1月に施行されたMPPプログラムでは、亡命申請が審査される間、亡命希望者をメキシコで待たせていた。バイデン政権はMPPプログラムを廃止し、オバマ政権時代の「キャッチ・アンド・リリース」政策に戻した。同政策では、裁判を待つ間、何千人もの不法移民が米国内に釈放され、そのほとんどは出廷していない。
・この画像が公開された後、18名の上院議員が国境視察をしているが、日を追うごとに状況が悪化しているとのこと。

・難民を受け入れた数(3/22, FOX)
ASYLUM CASES APPROVED
                           APPROVALS    GRANT RATIO
Obama 2009-2012    36,536            4.1%
Obama 2013-2016    34,933            6.8%
Trump   2017-2020    57,014          12.8%

・Biden Administration's Border Catastrophe—A Policy Tracker | The Heritage Foundation/ March 15, 2021
(バイデン政権の国境の大惨事−ポリシートラッカー)
https://www.heritage.org/data-visualizations/immigration/biden-administrations-border-catastrophe-a-policy-tracker/?www
・Yes, It’s a Joe Biden-Created “Crisis” at the Southern Border | The Heritage Foundation/ Mar 22nd, 2021
(安全保障の専門家であるケン・クッチネリ氏とマイク・ハウエル氏の解説)
https://www.heritage.org/homeland-security/commentary/yes-its-joe-biden-created-crisis-the-southern-border

* 

 次に、もう少し大きい単位での政策をみていきます。

 実は、保守派の主張する人工妊娠中絶禁止と銃規制反対というのが私にはどうも難しくて、それがリベラル寄りの理由のひとつでもありました。

 しかし、中絶に関しては前回の記事「2020年12月1日から Vol.2(仮題)」の、■2021.1/20(水)03:50追記:(10-7)「Proclamation on National Sanctity of Human Life Day, 2021 | The White House」でも書いたように、自分の考えがちょっと揺らいできています。自然法の概念で考えるという保守派の論調には、なるほどそうかと理解できなくもありません。しかしその一方、それだけでは解決できない問題もあると私は思っているため、自分の中で答えはまだ出ていません。しかしもしかしたら本当の問題は、中絶そのものというよりも、倫理的に容認しがたい理由が中絶の目的となっていることがあるのかもしれないと思うようになりました。いやはや難しい問題ですね…。

 そして銃の所持に関しては、今まで、治安の良くない地域に住んでおられる方のお話を伺ったり、観光でラスベガス(現在の市長は民主党)(ネバダ州・スイングステート:現在の知事は民主党)等を訪れたこともありますが、日本以外に住んだことのない私にはいまいちピンときていませんでした。しかし昨年の11月頃から、「銃がないと怖くて生活できない地域」の動画を視聴したり、実際の被害状況等を調べていくうちに、これでは規制は無理だろうと思うようになりました。その一方、合衆国憲法修正2条とNRA(全米ライフル協会)との関連について触れる余裕はありませんがこちらも色々と考えさせられます。けれども銃はやはり危険です。米国は広いので、銃が必要な地域、そうでない地域と、地域ごとの政策が必要となってくるのでしょうか。このあたりも、私にはよくわかりません。住む地域によって考えが変わるような気もしますが、実際に住んでみないとわからないのでしょうね…。

〈参考〉
「The pro-life cause continues even after a child is born. Today, I signed Born Alive legislation to guarantee the right to life for every baby that is born alive. We expect doctors to treat all children equally, even those born in horrific circumstances. It's basic human decency.」
Governor Kristi Noem(@govkristinoem)Twitter/ 日本時間2月25日am05:13
「医師は、恐ろしい状況で生まれた子どもも含め、すべての子どもを平等に扱うことを期待しています。それは基本的な人間の品位です」クリスティ・ノーム(サウスダコタ州知事・共和党)

・Kamala Harris Secretly Met With Planned Parenthood to Stop Exposing Its Aborted Baby Part Sales | LifeNews.com/ MAR 25, 2021
(中絶された赤ちゃんの体の一部を販売…そして残虐行為や妊娠中絶ビジネスに関する14個のビデオなど…)
https://www.lifenews.com/2021/03/25/kamala-harris-secretly-met-with-planned-parenthood-to-stop-exposing-its-aborted-baby-part-sales/ 
・Abortion Foe’s Retaliation Suit Against California Unlikely to Advance – Courthouse News Service / March 24, 2021
(上述記事の補足:DavidDaleiden氏とCenterfor Medical Progressが昨年提訴した事件。カマラ・ハリス副大統領、新しいHHS長官のXavier Becerra、カリフォルニア司法長官事務所、Planned Parenthoodなどを、修正第1条および第14条の公民権を侵害する陰謀で告発した訴訟は厳しい見通し)https://www.courthousenews.com/abortion-foes-retaliation-suit-against-california-unlikely-to-advance/ 

・Top 9 Reasons Democrats’ Latest Gun Control Bill Is A Terrible Idea(Again)/ MARCH 4, 2021
(民主党の最新の銃規制法案がひどい考えであるトップ9の理由(再び))
https://thefederalist.com/2021/03/04/top-9-reasons-democrats-latest-gun-control-bill-is-a-terrible-idea-again/ 
・[事件] カイル・リッテンハウス事件について|殺人か?正当防衛か? [日系仮面] - YouTube/ 2021/03/12(2020/09/05)
(2020年8月25日の事件(裁判待ち)の起訴状や関係条文等の解説。そもそも暴動の規模のせいで警察が正しく機能できなかったため、街が燃えた。自分の身を守る武器を禁止されたらどうなるのか)https://www.youtube.com/watch?v=IxI2hIxAniw 

・Heritage Legal Experts Testify Before Congress on DC Statehood, Gun Rights | The Heritage Foundation/ March 26th, 2021
https://www.heritage.org/impact/heritage-legal-experts-testify-congress-dc-statehood-gun-rights
・へリテージ財団の法務フェローであるザック・スミス氏とエイミー・スウェアラー氏は、コロンビア特別区の州と銃の権利の問題について証言した。 
・スミス氏:3月22日の米国下院監視・改革委員会への証言で、「ワシントンDC入場法」としても知られるHR 51は違憲であり、DCを憲法改正に満たない州にしようとする試みは違憲であると主張。
・スウェアラー氏:3月23日の「銃による暴力を減らすための憲法上および常識的な措置」と題された米国上院司法委員会の公聴会で、いわゆる「2021年の超党派背景チェック法」と呼ばれるHR 8は、特定の人々が銃を所有することを法的に許可されるべきではないという考えに同意したが、法案は意図しない結果をもたらす可能性があると警告。  また議会のドケットに関する別の法案「2021年の強化された背景チェック法」としても知られるHR 1446は、「比較的厳しい方法で法を遵守する将来の銃所有者の権利に負担をかけることなく、FBIの身元調査のバックログの問題に対処していない」 と主張。



 次は、民主党が進めようとしているコートパッキングについて。
 米国の連邦最高裁判所(Supreme Court of the United States)の判事の人数は、当初は1789年裁判所法によって(長官を含め)6人でした。その後、国家の拡大に伴い徐々に増員され、1866年の大統領と議会のゴタゴタを経たのち、1869年の法改正で9人と定められて以来現在まで続いています。

 実は1937年にフランクリンルーズベルト大統領が増員を試み最大15人まで増やそうとしています(ニューディール政策に絡む内容)。この時の司法手続改革法案(Judicial Procedures Reform Bill of 1937)が、別名「コートパッキング」と呼ばれています。

 米国の最高裁判所判事の人数は合衆国憲法には定められておらず、連邦議会による立法に委ねられています。現在の(大統領、上下院多数党の全てをリベラルの民主党が占める)トリプルブルー状態の中、現政権は判事の人数を増やす議論をしています。しかしこの増員計画、つまりリベラル寄りの判事を増やして民主党に有利なように進めようという計画は、三権分立崩壊の恐れがあると指摘されています。

 リベラル派の代表だった「RBG」故ルース・ベイダー・ギンズバーグ判事は、「(最高裁判事の人数は)9人が適正。コートパッキングはよくない考え」と生前おっしゃっていました。

 人々を代弁する政治部門は、数による「力の府」であると言えます。一方、憲法を代弁する司法部門は、直接的な力を持ちません。しかし、裁判所は手続きの適正を担保し、理性による判断の場であるということこそが国民の信頼につながっています。「理性の府」である司法部門の存在意義をどうか重要視していただきたいと祈るばかりです。

〈参考〉
・ギンズバーグ連邦最高裁判所判事死去がアメリカ政治に及ぼす影響 | 日米グループ-SPFアメリカ現状モニター | 笹川平和財団 - THE SASAKAWA PEACE FOUNDATION/ 2020/10/7

https://www.spf.org/jpus-j/spf-america-monitor/spf-america-monitor-document-detail_75.html
・Tomo(@Tomo20309138)さんTwitter/ 日本時間2020.10.08.pm06:59
https://twitter.com/Tomo20309138/status/1314143413126615041
・[政治] Court-Packing (コートパッキング)について [日系仮面] - YouTube /2021/03/20(2020/10/26)
https://www.youtube.com/watch?v=DpfiD1GfSW4 



 さて、2月に「退任後の大統領」の弾劾裁判がありました。私は、民主党の拙速な事の運び方が気になりました。
 下院は数日で弾劾訴追を可決しました。しかし、公聴会も開かれず、トランプ氏側に弁護の余地を与えることもありませんでした。これは憲法で定められているDue Processを無視した行為だといえないでしょうか。

 「リベラルは自分たちを「モラルの番人」だと思っている。結果のためであれば手段を選ばないのがリベラルの特徴。自分たちが不利になると憲法を出してくるダブルスタンダード」とは、ある米国(しかも民主党地盤の州)在住の弁護士さんの言葉です。

 トランプ氏に対しては2回目の弾劾となります。1回目の理由は根拠に乏しいもので、いわゆるロシアゲート疑惑です。スチール文書をはじめ機密資料(捜査資料やFISA裁判訴状など)は既に公開されています。上院司法委員会のLindsey Graham委員長(共和党)の声明は、「「クロスファイヤー・ハリケーン(FBIの作戦名)」はアメリカのFBI・司法省の歴史上、最も無能で、腐敗した捜査であった」「FISA裁判所は嘘をつかれていた」等の厳しいものでした。

 そして今回2回目の理由も、1月6日の議事堂襲撃事件はトランプ氏が扇動したものだという、これまた根拠に乏しいものでした。事件の直後から様々な検証がなされており、その一部は私の前回及び前々回の投稿にほぼ毎日追記しています。またFBI(連邦捜査局)は、この議会襲撃は事前に計画されたものだったと発表しています(8日公表の審理前準備書面)。FBIの発表が信頼に足るものかどうかはさておき、少し調べるだけでもトランプ氏の扇動に結びつけるのはだいぶ無理があるのがわかることから、左派メディアも途中からあまり取り上げなくなりましたし、国民の多くはあまり関心がない(もっと優先すべきことがあると思っている)ことも米国の世論調査から明らかでした。

 そしてそもそも「上院は退任後の大統領に対する弾劾裁判の手続きを行う憲法上の権限を欠く」という意見は共和党民主党どちらからも出ていました。「トランプは刑事罰で裁け」とおっしゃったマコーネル上院共和党院内総務(2/16, WSJ)でさえ、「この弾劾は憲法違反である」と発言しておられたくらいです(余談ですがマコーネル氏に対して地元ケンタッキー州のネルソン郡およびバトラー郡などの共和党から指導的地位の辞任要求が出ています。そして同氏の妻であるイレーン・チャオ前運輸長官が連邦倫理法に違反していると3月上旬に報じられています)。

 なお合衆国憲法第1章第3条第6項では、「合衆国大統領が弾劾裁判を受ける場合には、最高裁主席判事が裁判長となる」と規定されていますが、今回、ロバーツ主席判事は仕切ることを拒否されています。

〈参考〉
・合衆国憲法第2条第4節
「The President, Vice President and all civil Officers of the United States, shall be removed from Office on Impeachment for, and Conviction of, Treason, Bribery, or other high Crimes and Misdemeanors.」(大統領並びに副大統領、文官は国家反逆罪をはじめ収賄、重犯罪や軽罪により弾劾訴追され有罪判決が下れば、解任される)

・憲法第1条第2節第5項(下院の弾劾訴追権)

・憲法第1条第3節第6項(上院の弾劾裁判権)

https://constitutioncenter.org/interactive-constitution/the-constitution

 超スピード審理の結果としては、2021年2月13日(日本時間14日朝)に上院で無罪の評決(賛成57-反対43)が下されています。

 公開されている裁判の様子からは、弾劾の理由とされる内容に説得力のあるものは見えないどころか(ちなみにトランプ支持者が消火器で警官を殴り殺害に至らしめたというNYTの記事は誤報→採決の前日静かに訂正。またトランプ大統領がGA州捜査官に圧力をかけたという1/9のWaPoの記事も誤報→3/15にやっと訂正と謝罪)、証拠の捏造までされていました。トランプ氏が支持者らに「fight like hell(死に物狂いで戦う)」と言ったことが、連邦議会議事堂への乱入事件の一因となったとの主張らしいのですが(しかも「平和的に、愛国的に、あなたの声を発してください」というトランプ氏の発言は省かれていた)、それだけで弾劾されるのであれば、民主党議員たちが以前にも使った同じような表現は問題にならないのでしょうか。

 以下は、トランプ氏の弁護団である、Michael van der Veen弁護士とDavid Schoen弁護士が再生した動画の内容より。
 なおVeen弁護士は100件近くの殺害脅迫を受けておられるうえに、同氏のご自宅は窓ガラスが割られ、ペンキでひどい言葉をあちこちに書かれていたそうです(米フィラデルフィア州チェスター郡のウエスト・ホワイトランド郡区警察署、2月12日の発表)。

・ナンシー・ペロシ下院議長(民主党・カリフォルニア州):2018年、不法移民の子どもたちが親から引き離されたことに対し、「なぜ全国で暴動が起こらないのか分からない。これが自分たちが支持する政策だと気付いたら、暴動は起こるかもしれない」「パンチする準備ができていなければならない」といった扇動的な内容。また、「2016年の選挙はハイジャックされており、議会には民主主義を守る義務がある」という発言や、大統領を詐欺師、そして裏切り者と呼び、最近では下院の共和党議員らを「内部の敵」と呼んでいる内容。さらに、民主党の政治家の多くは、昨年夏に米国の多くの都市を破壊した暴動を支持し、奨励していることを弁護団は指摘し、「暴力的な左翼無政府主義者たちが、オレゴン州ポートランドの連邦裁判所を荒らしていた時、ペロシ議長はそれを反乱とは呼ばなかった。暴徒が公共物を破壊した時、彼女は「人々がこのような事をするのは仕方ない」と言った」と説明。なお昨年、全国の主要都市で暴徒が店舗を荒らし、政府や民間の建物に深刻な被害を与えているが、暴徒の一部は、反政府・共産主義組織のANTIFAやBLMに所属している。

・カマラ・ハリス副大統領(民主党・カリフォルニア州):殺人、凶悪犯罪、そして性犯罪で起訴された被告の保釈を支援する「ミネソタ・フリーダム・ファンド」への寄付を呼びかけていた。
Minnesota nonprofit with $35M bails out those accused of violent crimes/ August 10, 2020
https://www.fox9.com/news/minnesota-nonprofit-with-35m-bails-out-those-accused-of-violent-crimes 

(ちなみにBLM再燃のきっかけとなったジェイコブブレイク氏の事件ですが、もともと同氏は銃撃事件前から第3級性的暴行、住居侵入および治安紊乱行為などの罪状による逮捕令状が出されており、入院後もしばらくの間、手錠で繋がれた状態となっていました(CNN 2020/08/29)。(余談:同氏の父親は「黒人至上主義」ヘイト活動家ルイスファラカン氏の信者)。バイデン氏の面会&称賛や、カマラハリス氏の「誇りに思う」という発言などは、問題視されないのでしょうか)

・バイデン大統領と多くの上院議員:トランプ氏を「punch him(ぶん殴る)」ことについて何度も群衆に話していた。

・アヤンナ・プレスリー下院議員(民主党・マサチューセッツ州):昨年メディアに対して、「私たちの生活に不安がある限り、通りには暴動が必要だ」

・エリザベス・ウォーレン上院議員(民主党・マサチューセッツ州):BLMとANTIFAの騒乱に対して、「やめるべきではない」「より猛烈なものになるべき」

・民主党側は、1/6のトランプ演説でトランプ氏は22回"fight"あるいは"fight like hell"と言ったのが暴動を扇動したと主張しているが、ウォーレン氏はANTIFA/BLM暴動中に50回"fight"といい、ハリス氏は70回言っていた。


・火曜の民主党側が流した動画はトランプ氏と関係ない騒乱の動画が使われていた。

・トランプ氏の演説の前に暴動は始まっていた。

・トランプ氏ではない人のTwitterを引用している。等。

〈参考〉
・民主党員の過去の発言
Trump Defense Attorney Shows Montage Of Democrats Using 'Fight' Rhetoric | NBC News/ 2021/02/12
https://www.youtube.com/watch?v=XG5BcU1ZGiA&ab_channel=NBCNews
・「偽善だ」トランプ弁護団が弾劾裁判で反撃 民主党議員の過去の問題発言動画流す/epoctimes/ 2021年02月14日 17時50分
https://www.epochtimes.jp/p/2021/02/68508.html?utm_source=newsletter&utm_medium=email&utm_campaign=433
・証拠捏造の一例に関するインタビュー
MUST WATCH: Trump Attorney Destroys the Entire Media - YouTube/ 2021/02/15
(理解不足?印象操作?失礼な左派アンカーに対しVeen弁護士げきおこ「メディアがこの国を分断している」「この国に必要なのは右でも左でもなく中立な意見を伝えるメディアだ」)
https://www.youtube.com/watch?v=0LWVqcel_nI 
・1月6日と3月4日の共通点。暴動の物語を作っているのは結局民主党。
As the Insurrection Narrative Crumbles, Democrats Cling to it More Desperately Than Ever - Glenn Greenwald/ Mar 6, 2021
https://greenwald.substack.com/p/as-the-insurrection-narrative-crumbles 
・保守系ジャーナリストのAndy Ngô(@MrAndyNgo)氏が米国から英国へ避難——ANTIFAから複数回にわたる殺害予告を受け -/ 2021.01.26
https://bonafidr.com/2021/01/26/保守系ジャーナリストのアンディー・ンゴ氏が米/
・FBIが圧倒的に腐敗していることを示す証拠が機密解除される——「恐ろしくゾッとする」とデビン・ニューネス下院議員がFOXに語る -/ 2021.03.01
https://bonafidr.com/2021/03/01/fbiが圧倒的に腐敗していることを示す証拠が機密/ 

・CAUGHT ON VIDEO: FBI and DHS Attempt To Recruit Former Green Beret to Infiltrate and Spy on Oath Keepers, Proud Boys - But He Recorded The Conversation!/ March 23, 2021 at 9:04am
https://www.thegatewaypundit.com/2021/03/caught-video-fbi-dhs-attempt-recruit-former-green-beret-infiltrate-spy-oath-keepers-proud-boys-recorded-conversation/ 
・Jeremy Brown氏:フロリダ州の第14選挙区から共和党の連邦議員に立候補した経験もある。1992〜2012年まで米国陸軍に従軍し、最高位は特殊部隊(グリーンベレー)曹長。
・ブラウン氏は昨年11月に保守系の愛国者組織「誓いを守る者たち(Oath Keepers)に加入し、1月6日のワシントンD.C.の抗議デモや集会ではセキュリティー要員としてボランティア活動をするため現地入りしている。
・国土安全保障省とFBIのジョイント・テロリズム・タスク・フォース(JTTF)は、「昨年12月」、ブラウン氏に接触し、米国の愛国者や一般市民をスパイさせるために彼を勧誘しようとした。監視カメラの内容と音声データが公開されている。
・FBページ:https://www.facebook.com/BrownForCongress2020/posts/2880009032277031

〈補足〉
1)チャック・シューマー議員(上院民主党院内総務・NY州)
:2020年3月4日、連邦最高裁前で保守派判事2名を脅迫。中絶権利擁護団体が「最高裁前」で開いた「集会」で「演説」し、トランプ大統領が送り出したゴーサッチ判事とカバノー判事を「名指し」して「あなたたちは代償を払うことになる。ひどい判断をすれば、何が起きるか分からない」などと絶叫。
→ロバーツ主席判事が「異例の」警告声明を発し、「不適切なだけでなく、危険だ」と批判。
・米民主幹部、判事「脅迫」発言 最高裁長官が異例の警告: 日本経済新聞/ 2020年3月6日 5:17
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56464160W0A300C2000000/

2)この弾劾を進めたペロシ氏に対し、共和党議員からの質問状。
・1月4日の元DC警察チーフSund氏からの州兵派遣要請はなぜ断られたのか?
・州兵派遣を断ったのは、あなたの許可・指示によるものなのか?
・1月6日に議事堂が襲撃を受けている間に、Sund氏との間でどのような会話があったのか?
・どのような警備計画の指示を出していたのか?
・なぜ下院議会は1月6日の資料の公開に関して協力的ではないのか?

3)ペロシ氏が独立調査委員会を設置したいと発表。
→順番が逆なのでは…。しかし徹底した調査は今後のためにも役立つでしょう。今回の事件で複数回逮捕されているJohn Sullivan氏と議事堂内で一緒にいるところが動画に残っている、CNNのジャーナリストJade Sacker氏なども証人として話を聞かれたらよいかと思います。また、CNNとNBCが暴動発生時のビデオの提供&使用料として「35,000ドル」を支払っていたことも、追求されてもよいかと思います。
→その後の情報が出てこないなぁと思っていたら、どうやらこの委員会は、トランプ氏に対してではなく、なんとバイデン氏の罷免のためだという情報が出てきました(3/8, NewsMax, 合衆国憲法修正25条の罷免については後述、「1、民意は反映されていたのかな…(+Time誌の記事)」の参考記事にて)。
・Judge refuses to ban Capitol riot suspect from Twitter and Facebook - POLITICO/ 02/16/2021 08:42 PM EST
https://www.politico.com/news/2021/02/16/judge-ban-riot-twitter-and-facebook-469219 

4)民主党のダブルスタンダードの一例。
:3/3 Fox News「民主党はNY州知事アンドリュークオモを糾弾するがバイデンのセクハラ疑惑(タラリードさん)は完全スルー。カマラハリスは予備選の時にバイデンを差別主義者、タラリードさんの件も持ち出して攻撃したのに、副大統領に指名された瞬間、なかったことにした。おそろしいダブスタ。」(ララ・トランプ氏…トランプ前大統領の次男の妻)
→そしてクオモ知事(強烈な反トランプ)の件に関しては、このセクハラ疑惑を大きく取り上げることによって、高齢者施設におけるコロナ対応の問題から目を逸らす狙いがあるのではないかということを考えてしまいます。ちなみに連邦最高裁のカバノー判事(保守)のセクハラ疑惑の時も、民主党の女性議員らは公聴会で「女性の言う事を信じる」と断言され、悪魔の証明(やっていないことの証明)を主張されていたかと思います。今回も、都合の良い時には推定無罪の原則を放棄し、都合の悪い時には推定無罪を主張される場面が目立っているような気がします。
→なお、カバノー判事が承認された際のクオモ知事の声明はこちらです。「今日は米国にとって悲しい日になった。彼が法廷に居座り続ける限り我々を苦しめ続けることになるだろう。我々NY州民は決して引き下がらない。Ford氏(セクハラを訴えた女性)やセクハラを受けた人々全員を我々は信じ、戦う」
・Cuomo Accused of Unwanted Advance at a Wedding: ‘Can I Kiss You?’ - The New York Times/ March 1, 2021

https://www.nytimes.com/2021/03/01/nyregion/cuomo-harassment-anna-ruch.html
・Cuomo again refuses to resign despite new allegations, slams 'anti-democratic' critics | Fox News/  2021.03.07
https://www.foxnews.com/politics/cuomo-refuses-to-resign-ny-governor-slams-critics 
・Cuomo faces new sexual harassment allegation, this time at Executive Mansion/ March 9, 2021 10:03 p.m.
https://www.timesunion.com/news/article/Cuomo-faces-new-allegation-of-sexual-harassment-16011424.php 
・Female aide says Cuomo aggressively groped her at the governor's mansion: report | Fox News/ March 10, 2021
https://www.foxnews.com/politics/female-aide-said-cuomo-aggressively-groped-her-at-the-governors-mansion-report.amp?__twitter_impression=true 
・Publisher ceases promotion of Cuomo's Covid book amid nursing home inquiry | Andrew Cuomo | The Guardian/ Tue 9 Mar 2021 12:44 GMT
(クオモ氏の本の出版社が宣伝をストップ)
https://www.theguardian.com/us-news/2021/mar/09/cuomo-book-covid-publisher-halts-promotional-efforts 
・Cuomo staffers have stopped showing up to work, sources say/ March 13, 2021 | 8:18am
(スキャンダルまみれのクオモ氏に幻滅した職員たちが勤務拒否、過去2週間で5名の補佐官が辞任を発表)
https://nypost.com/2021/03/13/cuomo-staffers-have-stopped-showing-up-to-work-sources-say/ 
・Cuomo’s problem isn’t #MeToo. It’s killing old people - The Spectator - news, politics, life & arts/ March 2, 2021 | 11:17 am
(セクシャルハラスメントの申し立ては、本当のスキャンダル(高齢者を殺すこと)から気をそらすものです)
https://spectator.us/topic/andrew-cuomo-metoo-nursing-homes/ 
・Nolte: Media's MeTooing of Andrew Cuomo Is Really About Protecting Four Democrat Governors/ 2 Mar 2021
https://www.breitbart.com/the-media/2021/03/02/nolte-medias-metooing-of-andrew-cuomo-is-really-about-protecting-four-democrat-governors/ 

→4名の民主党知事(グレッチェン・ホイットマー知事(D-MI)、ギャビン・ニューサム知事(D-CA)、フィル・マーフィー知事(D-NJ)、トム・ウルフ知事(D-PA))は、クオモ知事と同じような対応をしているけれども、それについての報道はどうなっているのか?というような内容。ちなみにミシガン州のホイットマー知事も高齢者施設に関する疑惑があり、MI州の共和党議員は司法省に捜査を依頼しているようです。感染の疑いがある高齢者でも受け入れるようにという知事令を出していたことまでは確かで、そのこと自体は当時の状況を鑑みて知事の判断の正当性を考える必要がありますが、もし数字の隠蔽等があったのであれば話は別ですね。



 以上、最近の流れのほんの一部だけを取り出して見てきました。
 昨年のBLMの暴動の際、トランプ大統領は軍を派遣したい意向を示しましたが却下されています。警察だけでは対応できていなかったことを、当時の私はよくわかっていませんでしたので、どうして軍の必要が?やりすぎでは?と思っていました。何しろ私が接する報道では、「おおむね平和的な抗議」とおっしゃるミシェルオバマ氏の発言を引用したり、「軍の派遣を考えるトランプなんてとんでもない!」と伝えていたからです。

 民主党の掲げる「人権政策」は、私が思い描いていたものとは少し違っているようです。ちなみにトランプさんは、過去20年で最も多く黒人有権者から票を獲得し、過去16年で最も多くヒスパニック系有権者から票を得たとされていますが、私は今回の件について調べるまで、そういうニュースをあまり見たことがありませんでした。

 前述の件は一例で、このようなことがたくさんあります。もしかして、「中立=反トランプ」という構図になっていたと思うのは、私の考え過ぎでしょうか。でも、トランプさんが退任された後の報道の仕方も、何だか不自然なような気がするのです。

 米国ではバイオテロの様な攻撃を現実としてとらえていると考えられており、その対応策としてトランプ前大統領は大統領令を発令されました。そして米国保険局が設定した”Emergency Use Authorizations”=EUAs=緊急使用許可と言うシステム(認可が下りる前の仮認可であっても、医師の注意のもとで使用が可能になるように設定された法律(564条))が採用されました。そのおかげで、通常の承認プロセスをものすごいスピードで進めることができました。いわゆる、”オペレーション・ワープスピード”です。その結果出来上がったワクチンが、現在のバイデン政権の政策を後押ししていることは明らかです。

 しかし現政権において、「私が就任した時にはワクチンはまだなかった」(バイデン氏の発言…就任前に二回ワクチン接種しておられますが…2/16 CNN)、「ワクチン政策をゼロから始める starting from scratch」(ハリス氏の発言…前日、実際に保管庫に行き、保管状態から輸送等のシステムを見てその素晴らしさを目の当たりにし、褒めちぎっておられましたが… 2/14 AXIOS)という、ワープスピード作戦のことを説明しないままの報道がなされています。もし私がこの件について追ってなかったら、「トランプさんは何もしてなかった」と思っていたかもしれません。

 もちろん、アンソニー・ファウチ博士は記者会見で「我々はゼロからはじめるわけではない not starting from scratch」と否定しておられます。なおファウチ氏に関しては興味深い資料が出てきています。

・DCNF v HHS Nov 2020 00149 | Judicial Watch
(政府監視を行う市民組織であるジュディシャル・ウォッチの情報開示請求訴訟の結果、公開された資料、301頁)
https://www.judicialwatch.org/documents/dcnf-v-hhs-nov-2020-00149/ 
・Judicial Watch: New Emails Detail WHO/NIH Accommodations to Chinese Confidentiality ‘Terms’ | Judicial Watch/ MARCH 01, 2021
(WHOとNIH(国立衛生研究所)が、covid-19に関する情報を統制しようとするCCP中国共産党による活動に特別な便宜を働いていたことを示すEメールなど)
https://www.judicialwatch.org/press-releases/emails-who-terms/ 


 なんだかもやもやします。私が情弱で米国事情のことをよく知らないから、そんなことを思うのでしょうか。

 政治に中立はあり得ないし、政党には色がついていて当然なのですが、報道には中立を求めたいと思うのは私がお花畑だからなのかもしれません。

 ここで、冒頭の木の洞の話に戻ると…いつも真ん中から見ていたら確かに向こうも見えて見晴らしがよいですが、いつも同じ角度から見ることになってしまいます。それに、木の側面にくっついた苔とか虫とかもわかりません。もしかしたら、全体像を知るのには右側からも左側からも見ることが必要なのかもしれません。けれども私が情報収集に使える時間は限られており、はてどうしたものでしょう。

 しかしよく考えたら、私はたまに、意識して情報を摂取しない時期を設けているのでした。内省したい時期や、息をするだけで体力を奪われる暑い時期などは、SNSはもちろんニュースサイトにもアクセスしないようにしています。そんな状態でも今まで困ることはありませんでした。間違えたら戻ってくればいいのだし、「それは違うよ!」と指摘してもらえる環境を作っておけばいいのかなと。ということで、まずは自分のやるべきことを中心に、情報収集に関してはあまり無理しないようにしようと思います。

 あっそれと念のためですが、私はワクチン反対派ではありません。私自身は2019年に臓器を一部摘出しているので主治医とよく相談しなければならないのですが、医療的にも政治的にも社会的にも、ワクチン接種の方向に進んだ方が良いのだろうなという考えです。

〈参考〉
・新型コロナワクチンの接種についてのお知らせ|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00218.html
・予防接種健康被害救済制度|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou20/kenkouhigai_kyusai/
・新型コロナの病原性とワクチン:変異株の影響は?|コロナ専門家有志の会/ 2021/01/29 21:46
https://note.stopcovid19.jp/n/n4aa25b2513d8 

・CNN Primetime Ratings Fall Back to Earth in First Post-Trump Week - Variety/ FEBRUARY 1, 2021 4:38PM PT
(なんでもトランプのせいにして視聴率を稼いでいたリベラルメディアの視聴率は下がる一方。世論調査では、オールドメディアは信用していないと答える人の割合が増加)
https://variety.com/vip/cnn-primetime-ratings-fall-post-trump-1234897869/ 
・ロックダウン強度指数 - オックスフォード大学
(毎日自動更新。米国においてはロックダウン強度とCOVID-19関連死者数との間に有意な関連が見られない、というデータ)https://exploratory.io/data/kanaugust/uaU3ELH6Hm 
・米国CDCが3月5日に発表したデータ
「マスク着用命令が新型コロナの感染拡大を防止する効果は、わずか1.32%」
Association of State-Issued Mask Mandates and Allowing On-Premises Restaurant Dining with County-Level COVID-19 Case and Death Growth Rates — United States, March 1–December 31, 2020/ March 5, 2021
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/pdfs/mm7010e3-H.pdf 

・科学雑誌「ネイチャー」が2月に掲載した研究成果
「マスクを着用するアメリカ人は、自宅から外出するというような、よりリスクある活動を行う可能性が高い」(なお1月初旬に「ネイチャー」誌に発表された別の研究では、2020年後半における日本の子どもの自殺率が49%も跳ね上がったと報告されている)
Risk compensation and face mask mandates during the COVID-19 pandemic | Scientific Reports/ 04 February 2021
https://www.nature.com/articles/s41598-021-82574-w 

* *

(2)「リベラル」を正しく理解していたか


 昨年12月、自分が考えているリベラルの定義がなんだか世間とずれているなぁと思いました。

 今までそんなに困ったことはないけれど、この機会に自分は何を間違えているのかを確認してみます。そして、リベラル寄りの政策がいいなと私が思ってきた根拠は主に「人権」ですので、「個人の人権」とも関わりの深い「個人の自由」についても、改めて考えてみることにします。

 もともと私が「自由」を考えるきっかけとなったのは、子どもの教育を通じて知ったシュタイナー哲学や、日本では明治時代にベストセラーとなった、J.S.ミルの『自由論』です。「リベラル」に関しては、政治思想史的な位置付けとして、「社会主義陣営に対してのリベラル」というふうに私は学びました。なので、リベラル≒自由、でもあるけど、それよりは、リベラル=寛大とか気前が良いとか、そんな感じです。一歩引くだけでは自分を守れないので、政治第一とは思ってないけどどうでもいいとも思っていない、みたいなイメージです(古代人は政治第一だと思っていた)。

 しかし私はその後の先生のお話をちゃんと理解できていませんでした。そういえばニューリベとかネオリベとか出てきた時点でついていけなくなったのでした。

 ということで「リベラル」で検索してみます。ハイエクが紹介されていましたので、手元の書物でちょっと確認してみましょう。

 現在のところ、古典的な自由主義の立場の擁護者は、主に経済学者からなるきわめて少数者に再び縮小してしまっている。そして「自由主義者(リベラル)」の名称は、しばらく前から、合衆国でそうだったのと同じように、フランスにおいてさえ、本質的に社会主義を信奉する者を指す名称として使われている。というのは、J.A. シュムペーターの言うように、「最高の、しかし意図的ではないお世辞として、私企業体制の敵はそのレッテルを頂戴するのが賢明と考えた」からである。
(1973年)
----
(F.A. ハイエク 著/田中真晴, 田中秀夫 編訳「第八章 自由主義」『市場・知識・自由 −自由主義の経済思想』1986年1刷, 2012年13刷. ミネルヴァ書房. p. 221. )→※A


 あら!そうだったのですね。
 リベラル≒自由、とはちょっと遠い感じですね…。むしろ「大きな政府」的な感じということなのかな。

 そういえば、「リベラルって呼ばれたくないから、ナニステイト(nanny state…子守国家、過保護な政治)と呼ぶようになった」というのを聞いたことがあります。もしかして、こういう経緯があったからなんでしょうかね。

 たしかに日本では、「保守 対 革新」が「保守 対 リベラル」に言い換えられています。でも、「左翼=革新」はなんとなくイメージできますが、リベラルな政党って、社民党や共産党?あんまりそんなイメージはないですが…。現在は、いわゆる野党のことを指すのでしょうかね。しかし日本の場合は、保守と言われている与党の自民党も「いわゆる大きな政府」と言われているような気がします。

 しかし経済学的には、日本は「小さな政府」なのだそうです。所得の再分配を重視するのが「大きな政府」で、その行き過ぎを防ごうとするのが「小さな政府」といわれています。日本の政府支出規模は、OECD諸国平均と比べると確かに小さい気がします。それと、「大きな政府」はよく、ケインズ的な…という言い方がなされていますが、ケインズは確かに不況対策として政府の役割を重視したけれども、福祉については語っていないようですし、ケインズが提唱した混合経済とはちょっと違うようです。経済と政治には密接な関係がありますが、あくまでも別のものだということを忘れないでおきましょう。しかしまあとにかくややこしいですね。

 ところで、右翼とか左翼とかいう言葉は、フランス革命時の議会の座席に由来するらしいです。しかし私は日本での右とか左の使い方があんまりよくわかっていません。なので、選挙そのものの話は好きなのですが、政治とか政局の話になると難しくってついていけなくなります。ちなみに国民皆保険は良い制度だと思っています。

 たまに、「日本は世界で最も成功した社会主義国家」と揶揄されることがあります。けれども、マルクス主義の欠陥を指摘して肩身の狭い思いをした1970年代においてさえ、少なくとも不当な逮捕をされることはなかったと思います。それに日本では、政権批判をしても逮捕されることはありません。2019年7月に札幌市であった事件(街頭演説中の首相に野次を飛ばした人たちを警察官が離れた場所に移動させた)は、札幌地裁(広瀬孝裁判長)でまだ審理中のため確定的なことは言えませんが、例えばそこから芋づる式に逮捕されるということはなく、また、もし不適正な処分であった場合は社会から非難され、しかもその非難の声を弾圧されることもないと思います。もしかしたら日本は限りなく社会主義に近い資本主義国家かもしれませんが、少なくとも全体主義ではない民主主義国家と言えるのではないでしょうか。

 もっとも、統治形態としては立憲君主制というのが正しいのだろうとは思います。「1973(昭和48)年6月28日 参議院内閣委員会、政府委員・吉國一郎内閣法制局長官答弁」によりますと、日本は共和制ではないので君主制であろう、そして近代憲法を持っているので立憲君主制であろう(君主の権力が憲法によって規制されている)、しかし「統治権の総攬者としての天皇をいただくという意味での立憲君主制でないこと」は明らかである、ということでした。なお天皇は日本国民統合の象徴であることや主権は国民にあることなどが、現行の日本国憲法の第一条に規定されています。いずれにしましても、政治と経済を分けて考えるという方法は、困った時に役立ちそうです。

 しかし翻って米国です。二大政党制が根付いているため、「保守=右=共和党(Republican Party)=red=小さな政府」「リベラル=左=民主党(Democratic Party=blue=大きな政府」と、表面上はわかりやすくなっています。ちなみに君主をいただいてないので、共和制ということも明らかです。教科書にはだいたい、「米国は小さな政府」と書いてあることが多いですが、政策としては民主党=大きな政府で間違ってなさそうです。これだけ見ると、覚えやすいですね。

 けれども、「大きな政府=社会主義」というわけでもないですし(大きな政府を徹底させると共産主義になるという説はある)、「左=社会主義」とも言えません。確かに、ご自宅に毛沢東の写真を飾っておられる民主党の議員さんもいらっしゃるようですが、「左派」と「極左」は違いますし(しかしサンダース氏の人気は高い)、「社会民主主義」という概念も出てくると、事はそう単純でないことがわかります。

 ちなみに米国の政党には、党首も幹事長もおらず、一応のリーダーがいるだけです(他国の状況はちょっとわかりませんが、でも党首とかよく聞く気がする)。言うなれば「個人商店の集団」みたいなものなので、党議拘束は原則的に行われないとのことです(でも基本的にはまとまっている気がする。現在の上院は民主党と共和党が50対50で、可否同数の場合に登場する上院議長=副大統領は民主党なので民主党がちょっと強い)。共和党の場合でいうと、RNC(Republican National Committee…共和党全国委員会。なお3月20日時点で全米共和党上院議員委員会の委員長はリック・スコット氏)というところが選挙事務局みたいな感じです。党の政策綱領の作成や広報活動などは行なっていますが、主な仕事は資金集めと、4年ごとの大統領候補を指名する共和党全国大会の計画や運営などで、政策の立案や決定に関与する立場ではないようです(なので日本の〇〇党本部、みたいなものとはだいぶイメージが違いますね。なお共和党のミッチ・マコーネル氏の役職である「上院院内総務」は、政党や院内会派が議院に置く役職です。議院内において各党派を代弁する地位で、法案審議に関して院内で主導的な役割を果たす役割と言われています)。余談ですが2020年の大統領選において、RNCはトランプ氏をほとんど支援していなかったと言われています。

 しかも、青い州(民主党が強い州)と赤い州(共和党が強い州)がはっきりわかる州では、政策にも結構違いがあります。大統領がこう言ったから、はい従います、という感じでもなさそうですし、一律に米国全体はこうだ、と言えそうにもありません。覚えやすいと油断していたらえらい目にあいそうです。

 2021年11月(予備選は6月)に行われるNYの「市長選挙」(州ではなく市)に出馬を表明しているアンドリューヤン氏は、UBI(ユニバーサルベーシックインカム)を公約に掲げておられます。UBIは社会主義的だと言われることもありますが(ヤン氏は民主党)、私はあんまりそう思っていません。むしろ「チャレンジするためのセーフティネット」じゃないかなと。つまり社会主義とは真逆の発想なのではないかなと思っていますがどうでしょうか。民主党の強いこの地域で、UBIは若者に大人気なのだそうです。どんな結果になるのか、興味があります。

 ところで、米国での保守派の目指す「小さな政府」ですが、私は今まで経済的なことだけを思い浮かべてしまっていました。しかし元々の言葉は「Limited Government」です。つまり、小さくするのは再分配の割合だけでなく、政府の権力自体に限界を設ける、ということなんですね。国家との距離感みたいなものなのかなとも思います。このあたり、右や左の変遷もまとめて整理しようと思いましたが、複雑すぎて私のアタマでは無理でした…。

〈参考〉
・「まずアダム・スミスは,その主著『国富論』(1776年)で,絶対王政下の「重商主義政策」で,経済や産業に国家が干渉することを厳しく批判しました。彼は干渉を撤廃し,市民が自愛心(利己心)に基づいて行動する自由の保障された「自然的自由の体系」を確立することが,国富を増進させる早道だと説きました。だからといって彼は,国家を否定したわけではありません。『国富論』第5編でスミスは,市場に任せていては誰も引き受けない「治安維持」,「教育」,そして「公共事業」という3つの事業は,政府が担わなければならないと述べています。」(諸富徹「2 国家の役割とは何か」『財政と現代の経済社会 '15 』放送大学印刷教材. p. 26. )

・「このように,ケインズは不況対策として政府の役割を重視したのです。市場の自動調整が機能しない状況では,政府の経済対策が重要になり,民間部門と補完関係の役割を果たすと強調したのです。すなわち,民間部門と政府部門がクルマの両輪のように機能する混合経済の社会になれば,マルクスが予言したような資本主義社会の崩壊も招かずにすむのです。そのため,ケインズの考え方は修正資本主義ともいわれるようになりました。」(西村理「1 はじめに〜経済学とは?」『経済学入門 '13 』放送大学印刷教材. pp. 16-17. )


・「国民の間での所得格差の改善や,最低生活保障等の社会的安全弁の確保も,政府の主要な役割である。この政府を通じた所得の再分配を重視する「大きな政府」と,その行き過ぎを防ごうとする「小さな政府」の思想が対立している。日本は,欧州諸国と比べれば,米国と並んで「小さな政府」に近いが,今後,急速な人口高齢化に伴う社会保障支出の増加を通じて,政府の規模が拡大することは避けられない。」(八代尚宏「3 政府と市場」西尾隆『現代の行政と公共政策 '16 』放送大学印刷教材. p. 51. )

・「また、憲法の定める国家形態ないし統治形態に関する分類として、①君主が存在するかどうかによる君主制か共和制かという区分、②議会と政府との関係に関して、大統領制か議院内閣制かという区分、③国家内に支邦(州)が存在するかどうかによる連邦国家か単一国家かという区分、なども伝統的に説かれているが、これらも憲法の分類自体としてはそれほど大きな意味をもつものではない。たとえば、君主制でも、イギリスのように民主政治が確立している国もあり、共和制でも、政治が非民主的な国は少なくない(したがって、民主制か独裁制かという観点からの分類の方が意味がある)。大統領制や議院内閣制にも、いろいろの形態がある(たとえば、両者の混合形態もあるし、同じ大統領制でも、アメリカのような民主的なもの、南米ないし中近東の諸国のような独裁的なもの、の別がある)。」(芦部信喜 著/高橋和之 補訂「第一章 憲法と立憲主義」『憲法 第六版』2015年. 岩波書店. p. 8. )→(芦部2015)

・第1節 小さな政府とは - 内閣府
https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je05/05-00201.html
・令和元年度 年次経済財政報告 - 内閣府
https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je19/index_pdf.html
・崩壊都市の再生をかけたNY市長選、「ベーシックインカム」か「ガーディアン・エンジェルス」か | 冷泉彰彦 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト/ 2021年02月11日(木)13時15分
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2021/02/ny_1.php
・米国初のベーシックインカム実験に関する結果報告書が発表、その成果は...... | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト/2021年3月8日(月)18時30分https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/03/post-95775.php 

* 

 さて次は、2019年に受けた放送大学の面接授業「リベラリズムとは何か」(2019.12/14,12/15:講師は西洋政治理論がご専門の山岡龍一先生)の内容から、カミトクフィルターを通したものを超ざっくりとおさらいしてみます。

・リベラリズムはどういう挑戦を受けているのか?

・古典的リベラリズム:レッセフェール。国家は介在しない。国家(統治≒政府)が悪いことしないように。
(ただしロックは、(政治≒司法)と考える)

・ニューリベラリズム:ウェルフェア or ウェルビーイング。国民の幸福な暮らしを保障。人倫としての国家。T.H.グリーン、ホブハウス。
(イングランドでは、レッセフェールとウェルフェアの違いを強調)

・ネオリベラリズム:アメリカのニューリベに対抗。古典回帰。競争を賛美。サッチャー「福祉政策は人間をダメにする」。日本においては生活保護バッシング。

・ポリティカルリベラリズム(ロールズ):政治的な構想。近代のヨーロッパにおけるひとつのエピソード。

・「リベラリズム」→たくさんある用法を固めてきたのが19世紀で、いまはそれをときほぐしている。
・右も左も、隷属的でない生き方を目指している。
・BI(ベーシックインカム)は?「運の平等主義」→ネオリベに食い込まれる危険ある。
・現代のリベラリズムは、宗教観の違うことを前提としている。
・フランス革命の時のような中立な感じではない。
・脱色すると考えに反する。
・ホッブズのような物質論でもない。
・革新している、と言えば「仕事してる」と思われがちな時代。
・アリストテレスは政治体制を変える発想をしていない。フランス革命はそういう意味で突飛。(だけど、エドマンド・バーク『フランス革命の省察』は必読。革命ってそんなにいいものか??なお保守主義者と呼ばれるバークは、トーリー党(のちの保守党)ではなくホイッグ党(のちの自由党)の幹部を務めていたことにも注意)
・日本人はポピュリストが嫌い?

・バーリン「自由には200の意味がある」
積極的自由(〜への自由)と、消極的自由(〜からの自由)
→全体主義への警鐘

■コンスタン(1819):
・古代人の自由(アテナイ)と近代人の自由(規模でかい)
・フランス革命:人間が体制をつくることができる
 →(人権派弁護士)ロベスピエールへ…結果として恐怖政治になってしまった
・ルソーの影響:コンスタンは批判的「人民主権論だけではあかん」
 →人民が権力を握れば、制限する必要はないんじゃね?
 →いやいや権力はどのみち暴走しまっせ…
 (ミルを理解する上で重要)
・現代国家の恐ろしさ
 →テクノロジーの発達により、決定したことは全て可能になってしまう
 →代議制へ
・商業がしっかり発達すれば、国家の役割そんなになくてよくね?
 →いやいや政治的エージェントでない人が力を持ちまっせ…
・軍事力:リアリスト

相互依存(理想):リベラリスト≠アナーキスト
(国家がなくてよいとは思っていないので)
・近代に入り、
1)政治に参加してる実感がなくなる(規模)有効性感覚
2)奴隷制の廃止→余暇時間が減る
3)商業活動は、人間から知的な時間を奪う
4)個人的独立の強い念が生まれた(商業)
これらは、政治を負担に感じる要因。
→代議制(分業制)委任のシステム、アカウンタビリティ
→でも、もともと代議士は貴族が担っていた
(アテナイは例外。商業が発達していたので)

で、ここからだいぶ(レポート用紙14頁分)端折って、
・ルソー+ヘーゲル⇒マルクス
・ルソー+カント+自由⇒ロールズ

 ひとまず以上です。

 つまり、私が思い描いていた「リベラリズム」は、ロックやモンテスキューといった、ずいぶんと古典的なものでした。ですので、現代の政策に当てはめて、もし私が米国の有権者で投票するとなったら、リバタリアン党になるのかもしれません。あれ?ということは、私は民主党支持層ではなく共和党支持層に近いということ?でも国家に期待している部分もあるし、あれれ?ちょっと難しくなってきました。

 小さな政府「Limited Government」という共通項があるとすると、確かに共和党の保守的な考えとリバタリアンは近いことになります。
 そして、「ネオリベ(古典回帰) ≒ レッセ・フェール(古典主義)」と考えると、ネオリベラリズムと古典的リベラリズムには親和性がありそうです。でも私は、ネオリベってあんまり好きじゃないのですが…。
 そこで、「新自由主義 ≠ 市場原理主義(古典的自由主義=自由放任主義)」という資料を引っ張り出してみます。1929年の世界大恐慌によって、自由放任主義(レッセ・フェール)はやばいということになったのでしたっけね。これがヒントになりそうです。でもこれ以上考えると、私の頭から湯気が出てきそうなので、いったん置いといて、後でもう一度見てみることにしましょう…。

 ところで私の印象では、政府の権力をlimitedしているはずの保守派の人たちのほうが愛国的な感じです。このあたりはとても興味深いです。私も日本が大好きなので。

 人為的に国家をつくり、国家を愛するからこそ、権力はしっかりコントロールする、ということなのでしょうか。国家が一度暴走を始めてしまうと止められないことを意識しておられるのかもしれません。TX州のアボット知事は、「現在、マスク・手洗い・距離が大事なことはもうほとんどの人がわかっている。マスク義務解除といっても、自分の判断でマスクをすることができる。それを、政府が強制するのはおかしい」とおっしゃっています。また、「コロナ対策で最優先すべきことは、死者と入院患者を減らすこと。そして入院し、死亡する人のほとんどは65歳以上なので、ワクチン接種は65歳以上を最優先にする」と3月上旬に発表されています。TX州でのコロナ死者数は4万人と言われ、決して少なくありませんが、人口比にするとさほど悪くない数字なのだそうです。今回、3/10の経済活動全面再開の決断は、ヒューストン感染症医療チームや自治体などと熟考された結果であり、1年をかけて、封鎖→開放(解放?)25%→50%→75%と実践されてきたのだそうです。ロックダウン強度とCOVID-19関連死者数との間に有意な関連が見られないことは前述しましたが、政府によって強制されなくても、正確な情報さえ提示されたなら(もしくは自分で取りに行くことができるなら)、ほとんどの人は自律的な行動ができる、ということの証明になるのかもしれません。

 それに今はなんだか、いわゆるリベラル寄りの政策、つまり民主党の方向性が良いとはあまり思えなくなってしまいました。行き過ぎとも思えるポリコレも気持ち悪いです。しかしもともと私はよく理解できていないのにふんわりした理由のままきてしまったので、これは私の勉強不足が原因です。

 今回は、リベラリストとグローバリストが反トランプという共通項で協力している部分が、多くの人の目に触れることとなりました。私自身は、グローバル化は自然の流れだと思っています。たとえば一時的に鎖国していた日本でさえ、他国の影響をまったく受けなかったわけではありませんし、海を渡って入ってくる人財や外貨や文化などから恩恵も受けています。このように、歴史を学ぶ際には一国だけを見るのではなく、地図全体を見て輪切りにしたものを積み重ねる感じで見ていく方法が有効だとも言われていますし、現代の情勢を見る際にもその必要性は益々高まっています。けれども、国際金融資本の話が絡んでくると、どうも手放しでは喜べなくなってしまいます。グローバル≒開く感じに対して、よく「閉じる」という言葉が使われますが、国家のボーダーがぼやけてしまうことによる危険性は今や世界各国で認識されています。ですので「閉じる」というより「はっきりさせる」というのが正しいのかもしれません。

 だからといってすぐに保守の共和党寄りになるかというとそれも難しいです。共和党の内部もだいぶ複雑なことを今回初めて知りました。「第三の政党ができたらすぐにそちらに移りたい」とおっしゃるトランプ支持者のお話も納得できます。しかしトランプ氏はあくまでも共和党を立て直したいというご意向のようですね(2/28(現地時間)CPAC2021)。票が割れることを防ぐ、という目的もあるのでしょう。しかしもしかしたら、「保守」とはなんぞや、ということを、いわゆる「市民」(自分たちが国家の政治的主体なのだと意識している人たち)と一緒に考え、より良い未来につなげていきたい、ということなのかもしれません。『De la démocratie en Amérique』で南北戦争による米国の分裂を正しく予測したトクヴィルは、キリスト教と自由の概念との密接な結びつきが米国民に見られることをも指摘しています。保守系の論考を読む際に私がよく目にする言葉は、「宗教」「自由」「建国の父」です。これはリベラル系の論考ではあまり目にしたことがありませんが、私が知らないだけかもしれません。

 「保守の論客」ラッシュ・リンボー氏が、2月17日(現地時間)、神に召されました。
 追悼の報道などから、米国でいかに保守という概念が大事にされているのか、ほんの少しだけですがわかったような気がしました。ありがとうございます。
 ご冥福をお祈りいたします。

〈参考〉
・米右派の大物司会者リンボー氏死去 トランプ氏らが功績たたえる - BBCニュース/ 2021年2月18日
https://www.bbc.com/japanese/56107437
・Prominent Conservatives Mourn the Loss of Rush Limbaugh: 'He Leaves a Legacy That Will Last Forever'/ February 17, 2021 at 11:37am
https://www.westernjournal.com/prominent-conservatives-mourn-loss-rush-limbaugh-leaves-legacy-will-last-forever/
・Eagle Leadership & Gen. Mike Flynn Support MO “Rush Limbaugh Day”/ March 3, 2021

(ミズーリ州で「ラッシュ・リンボーの日」がつくられるかも)
https://www.phyllisschlafly.com/press-releases/eagle-leadership-gen-mike-flynn-support-mo-rush-limbaugh-day/ 


〈重要〉
・Rush Limbaugh, Titan of Conservative Movement, Passes at 70
(February 17, 2021 by Ryan Hite)
https://www.phyllisschlafly.com/press-releases/rush-limbaugh-titan-of-conservative-movement-passes-at-70/ 

・Rush: On Top Because of Courage
(August 1, 2008 by Phyllis Schlafly)
https://www.phyllisschlafly.com/family/rush-on-top-because-of-courage-719/ 
・Rush Limbaugh Remarks | Phyllis Schlafly's Life of the Party 1992 - YouTube/ 2021/02/18
(1992年にヒューストンで開催された共和党全国大会に関連して開催されたフィリスシュラフリーの4年に一度の「LifeoftheParty」祝賀会でのリンボー氏のスピーチ)
https://www.youtube.com/watch?v=DGPYZc1KSEc 




 私は米国に住む予定もないのでここまで考えなくてもよかったのかもしれません。それに、政治は、どちらが良いとか悪いとかではなくてバランスが大事なのだと私は考えています。国家対国家、国家対国民、国民対国民、大きさに違いはあれど、これらはすべて「政治」です。誰か悪い人がいるとして、その人を退治したら万事うまくいく世界などありません。あっちが通ればこっちが引っ込む相対的な関係という面から見れば、正解や不正解がすぐに決まる世界ではなさそうです。

 とはいえ今回、表面的なこと限定ですが、ちょっと集中してニュースを追っていくことで、米国の人権や福祉や教育や市民活動などの事例を勉強する際に見るべきポイントがなんとなくわかったような気がしました。今後しばらくは同程度のチェックは難しいですが、一面的な見方になっていないかどうか、気をつけることはできそうな気がします。

 ということで、リベラルという言葉について自分の認識の間違いを確認して、宿題を片付けたかったのですが、さっき後回しにしていた問題がまだ残っていますね…でも疲れたのでちょっと休憩します…。

画像2

* *

(3)自由権>参政権>社会権の順番が大事


 さて休憩おわり。
 さっき後回しにしていた資料をまずは確認してみましょう。

・モンペルラン協会:1947年、ハイエクの主導により設立。
↑ケインズ主義に挑戦。フリードマンも参加。新自由主義の牙城。

・新自由主義(ネオリベラリズム)≠ ニューリベラリズム
↑違う部分、これは、先ほどみてきたとおりですね。

・ネオリベ(古典回帰) ≒ レッセフェール(古典主義)
↑近い関係、これも大丈夫です。しかしここからさっきの問題、↓

・新自由主義 ≠ 市場原理主義(古典的自由主義=自由放任主義)
↑これは文字通り、そのままとらえたら良いのでしょうか。
ということは、ネオリベとリバタリアンとは違うということですね。
政治的には親和性があるけど、経済的には違うということなのかな。

・自由放任 ≠ 自由競争(政府の環境整備)
↑ん?自由放任と自由競争は違うのか…。

自由放任=国家は介在しない=古典的自由。
放任だけだと良くないですね、1929年の大恐慌で証明されています。

ということは、私はリバタリアンではないですね。

いわゆる保守の考えも、放任 ≠ 競争というのがヒントになりそうです。
放任 ≒ 政府が介在してない ≠ 政府の権力をlimitedする ≒ 積極的自由?


・消極的な自由放任主義 ≠ 積極的な自由獲得の新自由主義
↑フリードマン(ユダヤ系移民)の主張はこんな感じぽい。

あれ、じゃあ私はどうなるのかな…。

政治的には古典的リベラリズム(リバタリアン)で、
経済的にはニューリベラリズムということ?
たしかに、ニューリベのウェルビーイングという考え方は好きです。

でも、そもそもどれかにかっちりはまるものなのかな…。



・英→多元主義的リベラリズム
(キャメロン「英国は多文化主義に耐えられない」)

・独→民族主義的リベラリズム
(90年代後半から多文化主義、20Cに終わる)

・仏→共和主義的リベラリズム
(多様な民族であろうと普遍的な市民でなければならない)

・米国多文化主義
→価値相対主義の徹底化
→文化戦争
→オールド・リベラルの反発

〈参考〉
(新川敏光先生の放送大学面接授業「現代民主主義論」2018.7/7,7/8, 2019.4/27,4/28, の内容からカミトクフィルターを通したもの)




 頭がこんがらがっています…(>_<)

 米国の、オールド・リベラルの反発というのが気になります。
 欧州の対君主と、米国の対議会というのがどう関係してくるのかも気になりますが今は置いといて、ひとまず自由競争というのが大事っぽいです。

 けれども、私自身は社会的弱者として支援の対象となっていた時期もありましたし、NPO関連の仕事を通じて、現在の米国や日本の福祉制度はもっと改良の余地があるとも感じています。

 つまり、国家にできることはもっとあるんじゃないかとも思っています(とはいえ日本の場合、防衛費を削って社会保障費に、というのはちょっと違うかなとは思います、もちろん防衛費の内容は精査されるべきですが)。

 貧困の連鎖や、スタート地点が違うことによってめちゃくちゃしんどい現実に直面すると、資本主義社会ってほんまにいい社会と言えるのかな…と考える時も、なくもないです。ネオリベの危険性について議論をしたことも思い出されます。

 けれども、私はやっぱり資本主義がいいんじゃないかなと考えています。

 そもそも資本「主義」とは言っても、誰かが思考実験をして考え出した方法ではなく、長い歴史の中でたくさんの人々がトライ&エラーを繰り返しながら、徐々に改良されてきたシステムですよね。つまり、イデオロギーというよりは、自然状態に近いものだと思っています。

 たまに、富の再分配の問題と絡めて、資本主義の問題を指摘される方がおられます。私は政治と経済をいっぺんに考えられないので、分けて考える方法((2)「リベラル」を正しく理解していたか」)をここでも試してみたいと思います。

 北欧の例によると「大きな政府」と資本主義社会は、困難な状況もあるようですが今のところ矛盾していません。技術は富を生み出し、技術の発展は富の不平等を生み出します。けれども今までの歴史において、先人は効率性だけを追求してきたのでしょうか。格差はあって当たり前だと、福祉の問題に無頓着だったのでしょうか。社会権という言葉ができているくらいですから、そうでないことは明らかです。

 14世紀頃(または12C)からイタリアで始まるルネサンスとほぼ同時進行で、15世紀頃からスペインやポルトガル(どちらもカトリック)が中心となり大航海時代が始まりました。船を出すのは大変なので、はじめは中央集権的な国家の国王からお金を出してもらっていました。しかし商業の発達とともに、現在のクラウドファンディングのような制度も発達しました。「今度この航海をしま〜す、応援してくれる人はお金を出してもらえたらうれしいで〜す」と言って一航海ごとに資金調達をするわけですね。しかし直接投資には煩わしい部分もあるので、オランダ(プロテスタント)では株式取引所が作られました。1602年にはオルデンバルネフェルトがオランダのすべての貿易会社を招集して史上初の株式会社である「東インド会社」が結成されています。なおオランダ東インド会社の正式名称は「連合東インド会社」といって略称はVOCです。17世紀初めのVOCの取扱量はイギリス東インド会社の2倍、投下資本は10倍にも達していました。しかしVOCは透明性の問題をクリアするまでに相当の苦労があり、後述するマウリッツ総督が自ら解決に乗り出しています。結局VOCでは組織的な複式簿記は根付きませんでしたが、「会計の精神」は息づいていました。内部監査が試みられたほか、会計計算や利益・損失の予想、評価に最新の注意を払うことはされていたようです。

 絶対君主制を嫌う商業共和国であるオランダの商業的成功と文化と自由は世界から称讃されていましたが、周辺国との摩擦は避けられませんでした。戦争に疲弊し現政権に不満を募らせていた民衆の暴動によりオランダの平和は長続きしていません。しかし資本主義の発達は止まらず、次は立憲君主国であるイギリスのお話です。小さな島国でありながら強力な海軍を維持し、世界各地の植民地経営と輸出・輸入大国だったイギリスでは、(複雑に絡まり合う)プロテスタント的な功利主義信奉と科学的探究心によって経済の飛躍的な発展が達成されました。なお一部の歴史家は、「産業(インダストリアル)革命」よりも「勤勉(インダストリアス)革命」のほうがふさわしいと言っているようです。そしてイギリスの産業を支えた要素の一つは、やはり「会計」でした。1688年の名誉革命以降、物品税の徴税官は複式簿記を採用するなど政治や行政においても会計が重要視されるなか、1777年に数学者で会計学者のウォルドー・トンプソンは『会計士の知恵』で、複式簿記の産業への応用を取り上げるという画期的な試みをしています。また革新的な事業経営で有名なウェッジウッドが今日に残したものは、「厳密な原価計算に基づいて生産コストを管理し適切な価格設定をする方法」と、「コストを分類し、順位を付け、発生しうるコストを予想する手法」、そして「こまめな監査の必要性」という教訓です。しかし産業公害には対応できなかったようです。

 この時代のイギリスでは財政改革がほとんど行われませんでしたが、米国の独立戦争(1775〜83年、独立宣言は1776年)によって再び債務危機が訪れています。ちなみにイギリスは長年にわたり会計の改革を進めてきましたが、1822年の委員会報告では「政府の収支を合わせることはまずもってできない」という結論でした。しかも鉄道の登場によって桁外れに大きい固定資産の減価償却など財務会計は複雑化し、横行する巨大企業の不正への対応に追われます。1840年のイギリスの鉄道総延長は9,700キロメートルにもなったそうです(なお1870年代の米国のそれは82,000キロメートルで世界の総延長の約半分!)。そこで1854年にスコットランドが勅許会計士( Chartered Accountant いわゆる公認会計士)の審査基準を正式に定め、イングランドもこの基準に追随しました。ニューヨークでは1849年に会計検査基準の検討が始まり、1887年に米国公認会計士協会が設立されています。ところで、英語の accounting や accountability という言葉はフランスから輸入されたと言われています(フランス語で会計や決算や報告を意味する compte は、古くは acompt )。当時はカトリック教徒が多かったフランスで「公会計」や「会計責任」といった言葉が使われるようになったのは、国家の財務会計に透明性が欠如していたからだと推測されています。

 巨額の債務を抱えたフランス財政を建て直すべくルイ16世によって財務長官に任命されたスイス出身のプロテスタントで富裕な銀行家のネッケルは、1777年の着任以来行政官として有能な働きをしてきました。しかし煽動的なプロパガンダに満ちた大衆新聞やパンフレットなどの攻撃にさらされたため、1781年『国王への会計報告』として王家の財政の報告書を公表するという荒技に出ます。絶対王政の大前提である秘密主義を冒涜すると批判されたこの行為は、議会政治と立憲政体が定着し財務報告を毎年印刷して配布していたイギリスに倣ったものだとネッケルは述べています。この『会計報告』は翻訳もされ、前代未聞のベストセラーとなりました。そして「改革」を望んでいたネッケルの思いをよそに、1789年7月14日、激怒した群衆はバスティーユに殺到します。「革命」は結局、責任ある代議政治の確立にはいたりませんでした。しかし財務リテラシーと会計責任の文化は政治に持ち込まれ、1830年代には中央集権化されたシステムの下、不正を排除する仕組みも整っていたようです。

 なおネッケルの著作と会計改革は、米国建国の父たちにも強い感銘を与えました。初代大統領のワシントンは必要に迫られたとはいえ個人帳簿を公開していますし、合衆国憲法第1章9条7項には決算報告の公表義務が明記されています。マディソンやジェファーソンからは快く思われなかったものの、1789年米国初代財務長官に就任したハミルトンは戦争や国家建設のための負債に積極的でした。翌年には「公的信用に関する第一報告書」を議会に提出し、州の負債はすべて連邦政府が肩代わりすることを提案して公債を肯定したり、政府債務は「自由の代償」であると述べたりしました。なお合衆国銀行の設立、効率的な徴税システムの確立、財務省証券の発行などもハミルトンの業績です。

 18世紀末の米国は会計報告に意欲的だったようです。特にペンシルバニア州議会の下院では、1791年に州財政の詳細な決算が公表されています。計算結果が貸借対照表にまとめられ、最終的に黒字であることが報告されました。しかも作成者は、「帳簿一式を民事登録局に保管して市民なら誰でも閲覧できるようにすれば、官民いずれにとってもきわめて有意義であると考えている」との注記を書き添えていたとのことです。ちなみにマックス・ウェーバーは「独立初期の米国に資本主義文化が定着するに至った要因はプロテスタントの職業倫理にある」という有名な主張を残しています。
 
 もちろん資本主義のシステムは最初からうまくいったわけではありません。財務面の失敗は簿記の発達、金銭面のトラブルは法律の整備などが支えとなったことでしょう。時代をさかのぼりますと、中世のイタリア商人は共同出資方式を採用しており、各人の持ち分や利益を計算する必要がありました。最も早い複式簿記の例はリニエリ・フィニー兄弟商会の帳簿(1296年)か、ファロルフィ商会の帳簿(1299−1300年)とされています。1494年には、複式簿記の世界最初の教科書であるルカ・パチョーリ著『算術、幾何、比及び比例全書(通称:スムマ)』が印刷されています。

 しかし『スムマ』はしばらくの間、政治指導者のみならず思想家や商人からも無視されていたそうです。おそらく、人文主義全盛のルネサンス期、かつ新プラトン主義(※)の影響が大きかったのでしょう。けれども『スムマ』は、前述したようにオランダで日の目を見ることになりました。『スムマ』をもとに初めてオランダ語で簿記書を書いたヤン・インピン・クリストッフェルの死後、妻の手によって1543年にアントワープで出版された『新しい手引き』には、「期間損益計算」の考え方(年次決算につながる考え)が示されています。また1605年に出版された『数学の伝統』を著したライデン大学教授のシモン・ステヴィンは、パチョーリの実務的伝統を重んじたうえで、損益計算書と貸借対照表の原型を考案しました。そして低地のオランダで重要な役割を果たした水利技術者でもあるステヴィンに学んだオラニエ公マウリッツはオランダ総督でしたが自ら複式簿記を学び、それを政権運営に導入した歴史上初めての統治者となりました。現代における複式簿記の恩恵は言うまでもありませんが、『スムマ』では倫理規範も指南されておりますので、その部分も肝に銘じたいですね。
 なおトスカーナ生まれのパチョーリはフランチェスコ会修道士で幾何学と代数学に精通していましたが、実は人文主義者でもあり、かつ新プラトン主義にも親しんでいたといいます。なんだかこんがらがってしまいそうですが、パチョーリの考えはこうです。
 「複式簿記は現世のことではあるが、神の言葉でもある数学の派生物であり、日々の金銭的取引を統(す)べる哲学にほかならない」(Grendler, Schooling in Renaissance Italy, 321-323. )

(※):古代の新プラトン主義(プロティノス等)ではなく中世以降の、プラトンの思想の中でも神や美や理想などを強調したと思われる新プラトン主義(フィチーノ等)のほうです。メディチ家の功罪は振れ幅が大きいですね。プラトン研究を後押しし、古典学習の奨励と芸術の後援によってフィレンツェの商業、学問、芸術、建築を開花させた老コジモは会計のエキスパートで欠かさず帳簿をつけていましたが、その孫であるロレンツォは政治や外交に長けて教養もあったけれど会計が苦手だったためにメディチ銀行そしてフィレンツェを弱体化させました。新プラトン主義の貴族的哲学と商人の価値観とが衝突したのも原因だといわれています。イデア論はたしかにプラトン哲学の背骨となっているものですが、(たとえばアリストテレスと同じように)それだけを切り離して考える方法にはどうにも無理がありそうです。しかし中世の教会の教えに疑問を持つ人が多かった当時の時代背景を考えると、そのような流れは避けられなかったのでしょう。

 ちなみに「創造的破壊」で名高いシュンペーターは、会計を資本主義の支柱と位置付け、経済学者が会計にあまり注意を払わないことを嘆いていたようです。そして実はカール・マルクスも、複式簿記は経済と資本主義の発展に欠かせないと考えていたのだそうです。つまり、現在も細かい改良はあるにせよ、経済的なシステムとしては、ベターで合理的な方法がある程度固まってきた、ということは言えないでしょうか。

 そういう意味では近代憲法と似ていて、主に先進国で採用されている近代憲法も、たくさんの失敗を繰り返しながら徐々に改良されてきました。植民地支配や戦争ではたくさんの尊い命が奪われており、その犠牲のもとに資本主義が発達してきた面もありますが、近代憲法もある程度固まるまでは、幾多の辛い試錬を乗り越えてきました。その結果近代憲法は、現在は少数者を守るためのシステムとして、(運用面等での異論はあるものの)、おおむね順調に機能しているということは、言えるのではないでしょうか。

 そう考えると、国家とも似ていますよね。国家は人間が作った嘘の存在だとか、国家は自然のものではないから悪だ、という議論が昔からあります。そのような主張に対して、アリストテレスの有名な定義が現代でも使われているようです。すなわち「人間というものは生まれつきにおいて、その自然の本性においてポリティカル・アニマルである」というようなものです。政治的動物、というか、生活のある段階において、どうしてもポリス(国家)を作らずにはいられない動物が人間なのだ、つまり、国家を作ることが実は人間の自然な姿である、という考え方です。出来不出来というのはあるかもしれませんが、今のところ、国家(領域・人民・権力)なしの状態というのは考えにくいので、このシステムも様々な意見はありますがおおむね順調に機能していると言って良さそうです。

 ですのでやっぱり、経済の場合も、資本主義を中心に考えて、社会の不具合は政治でなんとかする、というのがいいような気がしますが、どうでしょうか。

〈参考〉
・[国の財政] 歳出~社会保障関係費~ | 税の学習コーナー|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/kids/hatten/page04.htm
・東アジア戦略概観2021 - 防衛省防衛研究所http://www.nids.mod.go.jp/publication/east-asian/j2021.html 
・第15回 ジョン・スチュアート・ミル(1) | 根井雅弘「英語原典で読む経済学史」 | web ふらんす/ 2018.04.20
https://webfrance.hakusuisha.co.jp/posts/564 

・There's a New Medici Bank After 500 Years, And This Time It's Crypto-Friendly - CoinDesk/ May 9, 2019 at 7:00 p.m. Updated May 9, 2019 at 7:01 p.m.
(メディチ家の子孫であるロレンツォデメディチ王子がプエルトリコに銀行を開設。暗号通貨に対応する金融機関らしいが、今はどうなっているのだろうか…記事は2019年のもの)
https://www.coindesk.com/medici-bank-is-back-after-500-years-and-this-time-its-crypto-friendly 

・「以上の議論の蓄積を踏まえて,戦後の近代財政学の大成者であるマスグレイブは,その主著『財政理論』(1959年)で政府機能を「資源配分機能」,「所得再分配機能」,そして「経済安定化機能」の3つにまとめました。「資源配分機能」とは,政府が最適な公共財供給を行う機能のことです。「所得再分配機能」とは,累進所得税や社会保障政策を通じて,政府が所得格差を平準化する機能を指します。最後に「経済安定化機能」とは,政府が財政政策によって景気変動の振幅を抑える機能を意味します。」(諸富徹「2 国家の役割とは何か」『財政と現代の経済社会 '15 』放送大学印刷教材. p. 27. )

・「最初に会計システムを開発し、財政と政治の責任を明確化したのは、繁栄する商業国家だった。イタリアのジェノヴァ共和国では、早くも一三四〇年には市政庁の執務室で大型の帳簿がつけられており、複式簿記で財政を記録していた。〔中略〕これこそ、理想的な近代統治、すなわち規律と責任のある合理的な統治の始まりと言えよう。〔中略〕複式簿記なしには近代的な資本主義は成り立たないし、近代国家も存続できない。複式簿記は、損益を計算し、財政を管理する基本的なツールである。〔中略〕会計は財政と政治の安定に欠かせない要素だが、信じがたいほど困難で、脆く、やり方によっては危険にもなる−−これが中世イタリアの残した教訓であり、この教訓は七〇〇年前と同じく今日にも通じる。」(ジェイコブ・ソール 著/村井章子 訳「序章 ルイ十六世はなぜ断頭台へ送られたのか」『THE RECKONING - FINANCIAL ACCOUNTABILITY and the RISE and FALL of NATIONS - 帳簿の世界史』2015年. 文藝春秋. pp. 13-16. )
【会計に関する紙徳の記述の多くは同書に依っています】

(なおこちらの書物では、博覧強記のジョゼフ・シュンペーターは経済学者ではなく「政治学者」(p. 17. )として紹介されています。1942年に発表された『資本主義・社会主義・民主主義』では、資本主義と民主主義は切り離されて考察されているのですが、当時のオーストリアでは、社会主義国家の台頭と民主主義の没落が現実問題として議論されており、自由や平等という理念よりも、代表を選出するという制度としての民主主義を定義する必要性があったのでしょう。財務大臣も経験したシュンペーター、たしかに政治学者という肩書きはなるほどと思えます。さかのぼると「会計の父」パチョーリも、「商業、産業、利益は健全な国家と財政運営の土台」(p. 98. )だと示唆しているようですし、1651年にホッブズが『リヴァイアサン』で示した、「会計・倫理・政治」の「直接的」(p. 180. )な結びつきも気になるところです。政治と経済は別のものではあるけれども、やっぱり分けて考えるのは難しいのかな…それとも、経済≠経営を厳密に考えると、政治≒経営、政治≠経済、になるのかな…)

・「一方で、この時代の経済発展は、江戸の大量の消費者によっても支えられていた。一八世紀の初めには、江戸の人口は一〇〇万人を超えていたと考えられており、これは当時のパリやロンドンをも上回る、世界最大級の大都市だったのだ。また、当時は江戸を中心とした東日本では金貨が、そして大阪を中心とした西日本では銀貨が主に使われていたため、その両替を行う両替屋も誕生した。このように、流通や金融が高度に発展していく中で、日本においても複式簿記が生まれたのである。〔中略〕とはいえ、もともと西洋の複式簿記と近い帳簿を使用していたこともあり、日本の明治期における簿記の移行は何ら混乱もなく、非常にスムーズに行われた。」(ジェイコブ・ソール 著/村井章子 訳「日本版特別付録 帳簿の日本史(編集部)」『THE RECKONING - FINANCIAL ACCOUNTABILITY and the RISE and FALL of NATIONS - 帳簿の世界史』2015年. 文藝春秋. pp. 379-380. )

・「だから国家の人工性といったものを昔のギリシア人ははっきりと意識していたわけです。〔中略〕蜘蛛や蟻は、巣を作ったり、集団生活をしたりしますが、あれは自然によって一定の方式のものが出来るのですが、人間が作る国家というのは、ああいうものではない。国家には、出来、不出来があり、その間におのずから優劣というのがあります。また、それは時代によっても大きな違いがある。こういった国家の人工性といったものをわれわれ日本人はあまり意識しないということを申しましたが、これについては、もう一つ特殊な事情があるのではないかとわたしは考えるわけです。」(田中美知太郎「日本人と国家」『人間であること』2018年. 文春学藝ライブラリー. pp. 163-164. )(単行本:1984年1月. 文藝春秋刊, 初出:1975年9月エグゼクティブ・サロン・オリエンテーション, 1976年1月号「諸君!」掲載)



 自由権>参政権>社会権
 ↑
 T. H. Marshallのシティズンシップ論より。
 資本主義経済の発展の中でまず自由権が、次に民主主義政治の成熟によって参政権が実現し、最後に福祉国家の誕生とともに社会権が確立するという順番です。決して逆ではありません。

 自由権 (civil right) 18世紀
→参政権(political right) 19世紀
→社会権(social right) 20世紀

 マーシャルの議論はイギリスの歴史的固有性を過度に一般化するものと批判されることもあります。
 さらにボットモアは、「マーシャルのシティズンシップはたんに形式的な地位にすぎず,それが具体的な市民的,政治的,社会的権利の参加を必ずしも保障していない,と述べ,移民,ジェンダー,貧困問題とシティズンシップの関連の再考を求めている」ようです(岩田正美 解説/岩崎信彦・中村健吾 訳『シティズンシップと社会的階級』法律文化社)。

 けれどもシティズンシップを自由権から説くことにはそれなりの根拠がありますし、実際に近代憲法では個人の自由に重きを置いています。

 福祉国家が民主主義政治を前提とし,全体主義との対抗の中で実現されたことを理解するなら,独裁国家がいかに社会保障を充実させたとしても,それを福祉国家と呼ぶことはできない。
 福祉国家は,資本主義経済と民主主義政治という歴史的文脈の中で生まれてきたのである。資本主義経済の発展は,市場における自由な経済活動を促し,国民福祉を全般的に向上させるが,政治的に民主主義を持たない国の場合,いかに国家福祉が寛大であろうとも,それは上からの恩恵として与えられるに過ぎない。
 これに対して,民主主義政治の場合,公的福祉の拡充は,国民の要求に基づいて,権利として実現する。民主主義政治を通じて,市民が自らの要求を政策に反映することによって,初めて福祉国家が生まれる。福祉国家は単なる物質的再分配の政治ではなく,社会権を保障する「権利の政治」としてある。
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(新川敏光「第六章 福祉国家の発展と政治」埋橋孝文『社会福祉の国際比較 '15』2018年3刷. 放送大学印刷教材. p. 90. )

* 

 ところで、ハイエクのベストセラーとなった1944年発表の『隷従への道』(The Road to Serfdom) は、戦後を展望して書かれたようです。

 ハイエクはナチズム、ファシズムと社会主義は対立するものではなくて同根であると断定し、マルクス主義だけでなくあらゆる形態の社会主義、社会政策、社会保障はすべて程度の差はあっても全体主義への、人間の隷属化への道であり、十九世紀末以降の歴史はその進行過程に他ならず、現代は深い危機のなかにある、と説いた。『隷従への道』はハイエクの著作中でもっとも多く諸国語に訳出され、多くのひとに読まれ、そして反論から賛成にいたる多くの書評があらわれた書物である。
(※A、田中真晴「解説」p.272. )

 厳しいですね…。
 社会政策や社会保障もあかんのですね…。これはちょっと私には受け入れ難い考え方ですが、第二次世界大戦の終り頃という時代背景も考えないといけないですね。ハイエクがネオリベと呼ばれる所以はこのようなところにあるのでしょうか。

 しかし、《ハイエク研究の第一人者》である江頭進教授(小樽商科大学総務・財務担当理事、副学長、大学院研究科長、図書館長)の研究によると、ハイエク経済学は、新古典派経済学よりも、なんとケインズ経済学との類似性が感じられることが指摘されているようです。《人間観》が似ているから、そして、《ミクロの経済行動を集計することがマクロの経済分析にならないことを強調》している、などが理由のようです。ケインズは恵まれた環境で《人間の理性に信頼を置くことができた》のに対し、ハイエクは、《第一次世界大戦・第二次世界大戦という業火に翻弄され,晩年に祖国の地を再び踏むまで亡国の悲哀をなめ続けた》との違いはあるようですが、興味深いですね…。(《 》内は後述、依田2013 .p. 51. )

 しかし、ナチズムも社会主義も同じだと。つまり極右も極左も同じだということなのですね。一部のエリートが経済をより良く管理できるという理性至上主義は傲慢に思えますし、全体主義の匂いがします。国家は個人のためにあるはずなのに、国家のために個人があるようにも見えてしまいます。

 ここで,ハイエクが設計主義的な計画に対し,対抗軸として描いて見せたのが「自生的秩序」という概念である。自生的秩序とは,法律,習慣や制度のように,歴史過程において自生的に形成されてきたルールの束である。「自生的秩序を無視して設計主義的な政策を押しつけることは,個人の自由を抑圧することにつながる」と,ハイエクは生涯を通じて警鐘を鳴らし続けた。特に,計画化が完全な情報と完全な計算能力を必要とする点を指摘し,すべての財に対して均衡価格を計算することは不可能であるという経済計算論争を積極的に展開した。共産主義という20世紀最大の社会実験の帰結を知っているわれわれにとって,全体主義と共産主義が本質的に同じという主張は説得的であり,政府や官僚の経済計算能力を見誤り,共産主義の計画経済体制が行き詰まったことを考えると,ハイエクの洞察は正しかったと言ってよい。
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(依田高典「3 社会経済学の射程」『改訂新版 現代経済学 '13 』放送大学印刷教材. p. 48. )→(依田2013)

 こうなってくると、政治と経済を分けて考えるのは難しくなってきますね。
 けれども、社会主義(からの共産主義)がすぐに全体主義に結びつくと考えるのは乱暴にすぎると、私は以前指摘されたことがあるのです。それにマルクスはもともと、「市場が人間のレベルを決める議論」に反論していたわけです。
 もうちょっと頑張って考えてみます。

 ちなみにハイエクは、「諸個人の出発の条件を平等化しての競争という点では、理念型としての社会主義の方が資本主義よりもヨリ個人主義的でありうる」と認めているようです。(※A、田中真晴「解説」p.278. )


 なんだかわかりにくいですが、要するに「個人主義」とは言っても、家族単位で財産を持っているのは構わないのだと。つまりハイエクの個人主義(=自由主義)は、私有財産とその相続を原則としているのです。このあたりは、遺産相続を問題としていたJ.S.ミルとは異なる部分です。

 古典的リベラリズムの「自由放任」とは違って、ネオリベでは、「自由競争」という言葉が使われていました。つまり、民間が競争するために政府が環境を整えることは許されています。つまりネオリベ的な理論では超ざっくりいうと、「金持ちの個人は優れている」と考えて良いでしょう。しかし、そもそもスタートが違うことを隠しているのを忘れてはなりません。このあたり、マルクスが「それ違うよ!」と指摘したことは正しいような気もします。

* 

 さて、ジョージ・オーウェルはハイエクの『隷従への道』に対して、「集産主義と民主主義は両立し得ない」と賞賛している一方で、批判もしています。
 「しかし、自由競争への回帰は、一般大衆にとってはむしろいばらの道となるだろう。なぜなら、市場による虐待は、国家によるそれとは異なり誰にも帰責できないからだ」ということのようです。
(“Review of the Road to Serfdom by F. A. Hayek, etc”. As I Please, 1943-1945: The Collected Essays, Journalism & Letters 3.)

 オーウェルは反共作家と呼ばれることがありますし、確かにソ連の全体主義を批判しています。しかし彼が右側に行ったことはありません。それどころかオーウェルは、「共産主義は社会主義でもなんでもなく、社会主義の仮面をかぶったファシズムである」と感じていたようです。(高畠文夫)

 そもそも「ジョージ・オーウェル」というペンネームを初めて用いた作品は『パリー・ロンドンどん底生活』という自身の窮乏生活の赤裸々な記録であります。またオーウェルが1936年12月にP.O.U.M(マルクス主義統一労働党)に入隊した次の年には、下層労働者の生活実態記録である『ウィガン波止場への道』が刊行されています。そして『貧しいものの最期』や『絞首刑』を読むと、支配者 対 被支配者(誰が統治するか)の関係性を考えさせられます。

 つまりオーウェルは名門イートン校の出身ではあるのですが、その視線は常に社会的弱者のほうに向いていたということが言えるのかもしれません。

 もともと社会主義とはどういう目的で構想されたのか、社会主義が理想としていたものは何か、ということを考える時、「理念と処方箋を分けて考える」ことを教えてくださった複数の先生方のことを私は思い出し、「所詮は机上の空論に過ぎない」と社会主義の理念をバッサリ切ってしまっていた以前の自分の浅はかさを反省します。政治と経済を分けて考えることは困った時限定かもしれないけれど、理念と処方箋を分けて考えることは、少なくとも私が触れている分野においては注意しておかなければなりません。

 とはいえ、です。オーウェルは「柔軟で自由な社会主義をめざしていた」と、開高健は「24金の率直 −オーウェル瞥見 −」で述べていますが、この文章が発表された1984年から40年近く経った現在、「柔軟で自由な」社会主義国は未だに存在していません。1960年に中国訪問日本文学代表団の一員として中国を訪れ、毛沢東や周恩来らと会見したことのある開高も、社会主義の成功は難しいと気がついていたのではないでしょうか。

 しかし、自身の知識と心情が一致するとは限りません。
 権力衝動とは人間の本能である→だからシステムでコントロールするべきだという、人類の凄惨な経験から導き出された方法(現在採用されている、権力分立の方法)とは違う角度から考える行き方もあります。
 つまり、権力衝動は自然に反している→権力を悪い方に行使するのには理由があるはずだ、その理由が解明されれば理想的な社会に到達できるのではないか、という行き方です。

 これはあまりにもお花畑な考え方で、歴史から何も学んでいないと非難されるのでしょう。けれど、「いかに」よりも「なぜ」を考えてしまう者のひとりとして、つい引き寄せられてしまうことは確かなのです。

 ザミャーチンの・・・『われら』は極度の権力の集中による極度の統制が住民にとってはもはや歓びと感じられるまでになった全体主義社会を透明に描いているのですが、ここでも権力は “いかに” が描かれ、 “なぜ” または “何” は謎のまま残されています。
〔中略〕
 ・・・これから察すれば、権力衝動とは人工または文明の異名にほかならないのだと作者はいいたがっているように思えてきます。
(1984(昭和59)年)
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(開高健「権力と作家」ジョージ・オーウェル 著/開高健 訳『動物農場』2013年1刷, 2014年2刷. ちくま文庫. pp. 266-268. )



 ところで、〈ジェノサイド〉という言葉には、「大量虐殺」どころではない、もっと悪質な「民族浄化」の意味が含まれているのだそうです。CCP中国共産党政権のウイグル人に対する人権侵害(女性の強制避妊手術、強制妊娠中絶、産児制限等も含む)は、【トランプ政権が継続して問題視】してきました。ポンペオ元国務長官は退任日直前の2021年1月19日に、「中共によるウイグル族への系統的な弾圧を〈ジェノサイドであり、人道に対する犯罪〉とみなす」ことを公式見解とされました。後任のブリンケン氏の対中政策も、若干の補正はあるものの概ねこの方針を踏襲される方向、つまり人権侵害には毅然とした態度で接する方向で動かれているようです(3/16の日米外相会談では「香港の選挙制度に関する全人代の決定について共に重大な懸念を示し、新疆ウイグル自治区に関する人権状況についても共に深刻な懸念。日米を始め価値観を共有する国がしっかりと声を上げていくことが重要であるとの点で一致)。ただ、バイデン氏はどうも違うお考えのようですね。2月16日、ウィスコンシン州(スイングステート・現在の知事は民主党)のTown HallでCNNの番組に出演された際の発言をご記憶の方もいらっしゃると思います。編集されていない生放送でした。「China’s human rights violations and genocide against the Uighurs: “culturally there are different norms”」

 なお、大手メディアで最初にこの問題を取り扱ったのは米国のThe Wall Street Journalだといわれており、CNNも長期間報道、さらに英国のBBCも昨年から継続して報道しています(この件に関しては反トランプかどうかは関係ないということですね、何しろ重大な人権問題です)。2月4日、英放送通信庁(Ofcom)は、中共メディアCGTNの放送免許を取消しました。この措置に伴い英国の通信大手ボーダフォンのドイツ法人は、2月12日、CGTNのドイツでの放送を停止すると発表しています。ちなみに英国政府は、香港の民主派47名が国家転覆罪で起訴された件についても強く非難していますね。ラーブ外相のTwitter, 2/28「国家安全法を、秩序を守るのではなく反対意見を排除するために利用することは中国政府の約束と反対だ」

 そしてカナダは、中国共産党のこの弾圧を〈ジェノサイド〉と認定しました。これは米国に次いで世界で2番目の認定となります。ただし、賛成266−反対0ではあるものの、トルドー首相はじめ多くの政権与党議員(閣僚)は投票を棄権しています。トルドー政権で参加したのは、Marc Garneau外務大臣(元宇宙飛行士)のみですが、「カナダ政府を代表して棄権する」として投票されなかったとのこと。議会と政府の間にある方向性の違いには注意しておいたほうが良いかもしれません。とはいえ、EU・米国・英国が中国に同時制裁という流れに今のところカナダも乗っています(3/22発表、3/23豪州とNZも支持。中国の高官4名及び1団体に対し入国禁止資産凍結等。米国はトランプ政権の時から制裁を行っていたが、EUの制裁は1989年の天安門大虐殺後の対中禁輸以来。日本は制裁法の作成段階にあると思われるが?)。風見鶏のEUですが、中国EU投資協定(EU-China Comprehensive Agreement on Investment:CAI)の動きを見ていますと、さすがに今回は人権と経済を天秤にかけられないのだろうなあと思われます。日本に関しては、中国主導のRCEP(Regional Comprehensive Economic Partnership)の行方も気になります。

〈参考〉
・Secretary Pompeo(@SecPompeo)国務長官Twitter, 日本時間1/20,am02:19
「I have determined that the People’s Republic of China is committing genocide and crimes against humanity in Xinjiang, China, targeting Uyghur Muslims and members of other ethnic and religious minority groups.」

(私は、中華人民共和国がウイグル人イスラム教徒や他の民族的および宗教的マイノリティグループのメンバーを標的として、中国の新疆ウイグル自治区で大量虐殺と人道に対する罪を犯していると判断しました)(←昨年末に、CCP中国共産党による弾圧を国際法上の犯罪となるジェノサイド認定するか検討するよう指示しておられたことに関する、公式アカウントからのツイート)

・Congressional-Executive Commission on China(CECC)(議会報告)
https://www.cecc.gov/
・The Uyghur Genocide: An Examination of China's Breaches of the 1948 Genocide Convention - Newlines Institute/ March 8, 2021
(ウイグル人ジェノサイド:1948年のジェノサイド条約に違反している中国。独立系のシンクタンクによる「明確で説得力のある証拠」→国際ジェノサイド法のすべてに違反)
https://newlinesinstitute.org/uyghurs/the-uyghur-genocide-an-examination-of-chinas-breaches-of-the-1948-genocide-convention/ 
・CNN.co.jp : 専門家らが中国のウイグル族弾圧に関する報告書発表、「ジェノサイド」と断定/ 2021.03.10 Wed posted at 13:40 JST
(1948年のジェノサイド条約は「国民的、民族的、人種的または宗教的な集団の全部または一部を、集団それ自体として破壊する意図をもって行われる」行為を〈ジェノサイド〉と定義したうえで、「集団の構成員を殺すこと」「重大な肉体的または精神的危害を加えること」「身体的破壊をもたらすよう企てられた生活条件を故意に集団に課すこと」「集団内の出生を妨げるための措置を課すこと」「集団の子どもを他の集団に強制的に移すこと」という5種類の行為を挙げた。同条約は中国を含む152カ国が批准している。過去には旧ユーゴスラビアとルワンダで、国連安全保障理事会が設置した国際刑事裁判所がジェノサイドを認定してきた。国際刑事裁判所で裁くには安保理の付託が必要だが、中国は安保理で拒否権を持つ常任理事国のひとつ。その国自体によるジェノサイド疑惑が取り上げられる可能性は低い。だが条約によれば、5つの行為のうち1つでも確認されればジェノサイドに当たる。同報告書は、中国の行為が5種類すべてに及ぶと主張している。報告書はさらに、ウイグル人亡命者数千人の証言や中国政府の公文書に基づき、中国の「集団を破壊する意図」を示す十分な証拠があると指摘する)

https://www.cnn.co.jp/world/35167599.html 
・Coalition to End Forced Labour in the Uyghur Region Warns Corporations Not to Trade their Human Rights Principles for Market Access - UHRP/ March 26, 2021
(ウイグル地域での強制労働を終わらせるための連合「人権よりも利益を優先することは大きな代償を伴う」:私はこの問題が明らかになった頃から無印には行ってません。好きだったので考え直してほしい…。一方、売上の12%を中国から得ているアシックス社の中国法人は「ウイグルの話はデマ。新疆綿の使用を支持する」という声明を発表しましたが、「本社の了解を得ていない」「豪州チームに提供したユニフォームには新疆綿が使われていない」と緊急釈明された模様。この声明は29日に微博から削除されています。ちなみにナイキ社が25日、中国でリリースした新製品は販売開始直後瞬く間に品切れ、転売目的が多いと思われます。結局、H&Mの不買運動もかなり規模が小さく、かつすぐに当局の取り締まりがあり、中国はアパレル産業に対し強気に出にくいのではないでしょうか)
https://uhrp.org/statement/coalition-to-end-forced-labour-in-the-uyghur-region-warns-corporations-not-to-trade-their-human-rights-principles-for-market-access/ 



・速報 02-18-2 売電が本性を現してSNS騒然 - (妙佛 DEEP MAX)YouTube/ 2021/02/18
https://www.youtube.com/watch?v=TVWtQpcEVjY 
・03-04 中国社会のリアルのスルーする大手マスコミ - (妙佛 DEEP MAX)YouTube/ 2021/03/04
https://www.youtube.com/watch?v=bpNSofpDFRw 
・03‐05 NG判定になりやすい話題を正面から取り上げます -(妙佛 DEEP MAX) YouTube/ 2021/03/05
https://www.youtube.com/watch?v=0IPFw7YaDFE 
・3-23 速報 広州近くで政府攻撃 現地は封鎖 - (妙佛 DEEP MAX)YouTube/ 2021/03/23
(3/22、中国南部の共産党組織に対して爆発物による攻撃、日本では情報統制されるのかな。先日の全人代開催中に株価が大暴落して108兆円が溶けている事件といい、現政権が安泰ならばこのようなことは起こりにくいと思われます、脅威がないという意味では決してないのですが。余談ですが中国株絡みとして、野村HDとクレディスイスの例の事件に関与しているアーキゴス・キャピタル・マネジメント(ビル・ファン氏はもともと取引要注意人物としてブラックリストに載っていたのだがいつの間にかリストから外される→プライムブローカレッジとして資金を貸し付けてもらう、投資銀行は金利収入を得る)のデフォルトは、アーキゴス社が大量の中国株を保有していたことが原因だといわれています)
https://www.youtube.com/watch?v=TozvW51njZk 
・番外編3 中国共産党は今後どのように「料理」されるのか? - (妙佛 DEEP MAX)YouTube/ 2021/03/28
(断片的な情報だけだと陰謀論と言われて切り捨てられがちな内容ですが、私はしばらくこのような観点からネット情報と学問的知識とを追いかけてきたのでまとめていただいてスッキリしました(けど中東はやっぱり複雑…ムズカシイ…)ドイツの経済優先主義的な面が最近目立たなくなった理由にも対応しています、番外編1から見るのがおすすめです)https://www.youtube.com/watch?v=ialImErvFOo 
・Canada votes to recognize China’s treatment of Uighur population as genocide | Canada | The Guardian/ Mon 22 Feb 2021 21.27 GMT

https://www.theguardian.com/world/2021/feb/22/canada-china-uighur-muslims-genocide 

・Canada calls China's treatment of Uighurs 'genocide' over Trudeau's objections | TheHill/ 02/22/21 07:34 PM EST
https://thehill.com/policy/international/539972-canada-calls-chinas-treatment-of-uighurs-genocide-over-trudeaus 

・ウイグル政策は「大量虐殺」 オランダ議会が動議可決 : 日本経済新聞/ 2021年2月27日 1:04
(オランダでも〈ジェノサイド〉認定、欧州では初。しかし、ルッテ首相率いる自由民主党は動議を支持せず。ブロック外相はウイグルの人権状況に懸念を示しつつも、国連などが認定していないことなどを理由に「政府はジェノサイドという言葉を使わない」と説明)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR26E8Y0W1A220C2000000/
・Ted Cruz Releases Blistering Thread, Exposes Biden Administration Ties to China – RedState/ Mar 05, 2021 9:00 AM ET
https://redstate.com/bonchie/2021/03/05/ted-cruz-releases-blistering-thread-exposes-biden-administration-ties-to-china-n337955 
・中国共産党中央委員会と国家評議会は、全国的な包括的な三次元輸送ネットワークの概要を発表(新華社通信)/2021-02-24 19:45
http://www.gov.cn/zhengce/2021-02/24/content_5588654.htm
・中国の肺移植専門家、全人代で「臓器提供率を都市評価指標に」と提言 「臓器狩りの隠蔽」指摘も/ 2021年03月12日 11時57分
(ハーバード大学の元医学研究員で、国際NGO「法輪功迫害追跡国際組織(WOIPFG)」の代表を務める汪志遠氏「臓器移植大国である米国では、このような移植には通常2〜3年かかるが、陳氏のチームが行った肺移植は、ドナーの選定から採取決定まで、わずか3~4日しかかからず、ドナーの出所が非常に疑わしい。これは、中国共産党が、投獄された法輪功学習者や反体制派などから強制的に臓器を摘出しているためだ。長年にわたり、中国共産党の臓器狩り疑惑に関する世界の関心が高まってきたが、中国共産党は回答や現地調査を拒否している。臓器提供率を上げれば、当局や医療関係者による大規模な臓器狩りを隠蔽することもできる」)https://www.epochtimes.jp/p/2021/03/69698.html?utm_source=newsletter&utm_medium=email&utm_campaign=462 
・【寄稿】中国の大量虐殺を無視するIOCの偽善 - WSJ/ 2021 年 3 月 12 日 16:35 JST 更新
 (森氏の女性差別発言は非難したが、ウイグル人女性に対する中国の組織的虐待は黙殺。なお3月中旬までに160以上の人権団体は中国の人権侵害を理由に、2022年北京冬季五輪の開催決定を撤回するよう求める書簡をIOCに送っている)
https://jp.wsj.com/articles/olympics-win-the-hypocrisy-championship-11615532929 

・Sen. Marsha Blackburn's Big Idea: Review US-China sister city partnerships to protect against malign influence−Blackburn set to introduce Sister City Transparency Act in coming weeks/ Published February 26
https://www.foxnews.com/politics/sen-marsha-blackburns-big-idea-review-us-china-sister-city-partnerships-protect-against-malign-influence 

・Senate passes bill against China-funded Confucius Institutes at U.S. colleges/ SAT, MAR 6 20218:28 AM EST
https://www.cnbc.com/2021/03/05/us-senate-approves-bill-against-china-funded-confucius-institutes.html?__source=sharebar|twitter&par=sharebar 
(3月4日、上院で米国内の大学の孔子学院を閉鎖する法案が可決。ちなみにカナダなど他国では既に進んでいますが、日本では早稲田大学や立命館大学等、孔子学院との提携大学は20校以上とも言われています。さらに米国では中国との姉妹都市を見直す動きも出ており、スウェーデンでは既に中国との姉妹都市は禁止されています。なおチェコのプラハ市は、北京との姉妹都市を解消して台北との姉妹都市提携を結びました。もちろん中国政府からの圧力はあったようなのですが、市長のフジブ氏は、経済よりもモラルや道徳心を大切にすべきだとおっしゃったようです。(BIG NEWS NETWORK 2/10)。ところで第13期全国人民代表大会(全人代)最終日の3月11日、香港の選挙制度の見直しに関する「愛国者による香港統治」決定案が、賛成2895、反対0、棄権1で採択されました。香港は今後、共産党体制を支持する「愛国者」が統治し、香港政府のトップとなる行政長官やこれを選ぶ委員会、立法会(議会)の候補者に対して資格審査を行うという、私の価値観では理解不能な内容です。これには香港の民主派が反発しているほか、欧米から非難や懸念の声が相次いでいます。日中の姉妹都市提携は400以上あるとも言われていますが、日本は中国とはお隣さんなので難しい対応を迫られますね…。私は最近、対華二十一ヵ条の要求を勉強し直しています)

★念のためですが、ポンペオ氏は、中共の問題とは別に、中国の国民は守られなければならないともおっしゃっています。私も、政権と善良な国民は分けて考えられなければならないと考えます。日中間の活動は、政府が関与するものに限定されなくても良いはずです。災害復興支援で四川に入っておられる方々、コロナ関連で武漢に届くよう一早い支援を開始された団体などには私も微力ながら寄付でご協力させていただきましたし、自分自身も若い頃、北京、上海、河北省などの文化交流事業に参加したことがあります。今も私は中国にいる大事な友人のことを心配していますし、現在も有益な市民活動を継続しておられる方々のことを尊敬しています。


〈ちょっと余談〉
・ジョセフ・M・ヤング 駐日米国臨時代理大使(@USAmbJapan)のTwitter, 日本時間3/15, pm04:16
「This afternoon Mrs. Sakie Yokota and Mr. Takuya Yokota presented me with a letter for Secretary Blinken. We continue to stand with families of all Japanese citizens abducted by the DPRK, and we support their efforts to seek the return of their loved ones.」
「本日午後、横田早紀江さんと横田拓也さんから、ブリンケン国務長官宛の手紙をお預かりしました。我々は、北朝鮮に拉致されたすべての日本人のご家族に引き続き寄り添うとともに、大切な方々の帰国を求めるご家族の取り組みを支援いたします。」
(↑ トランプ前大統領は、横田さんご夫妻とお話される際に、ご夫婦が高齢であることに配慮し椅子を用意したり、横田滋さんが亡くなられた時はお悔やみの手紙を送られたと伺っています。国連でも拉致問題を追求してくださったトランプ前大統領の人権問題への関心は、現政権でも継続されてほしいです。ブリンケン国務長官が2021年3月16日、東京で行われた日米安全保障協議委員会(SCC)に出席された際にブルーリボンバッジをつけてくださったことや解決に向けての動きは、日本で頑張ってくださる方々への励みになりますし、世界にとっても良い流れになるのではないでしょうか。なお今回のSCCには、アントニー・ブリンケン国務長官、ロイド・オースティン国防長官、茂木敏充外務大臣、岸信夫防衛大臣の四閣僚が出席されました)



 19世紀、自然科学は飛躍的に発展しました。公衆衛生の分野では、疫学によって感染症の流行を抑える方法が発見されたり、統計学が形を整え、疾病の原因の特定や臨床研究での新薬の有効性など、あらゆる分野で応用されるようになりました。原因と結果の因果関係をはっきりさせることができたら、いろんなことがうまくいくことがわかりました。人々は、もしかしたらこの方式は、経済にも応用できるのではないかと期待したのかもしれません。

 もし当時の人々がそう思っていたと仮定したら、結果として、同じ方式を採用するのは難しいことを痛感した、ということが言えるでしょう。コッホの世界観では、原因微生物と感染症は、1対1関係で考えられていました。しかし実際には、たとえば風邪の原因となる微生物はひとつではないことがわかっています。おそらく政治や経済も、そんなに単純に割り切れるものではないのでしょう。
 
 当時の人々の夢と希望をのせた社会主義・共産主義を実験した国で、成功している事例はいまだかつてありません。それどころか抑圧体制によって多くの人々の命を奪っていることさえもわかっています。

 プラトンは、『国家』第三巻で私有財産の禁止を主張しました。同じく『法律』でも、妻子や財産の共有という、いわゆる「共産主義」の制度を提唱しています。しかしそれは国家を一つに結合させるための理想( V. 739C〜D )であり、しかもその方法は神の直接支配が前提ですから、もはや人間社会では不可能な形態であるとも言えます。結局プラトンは、「熟慮と経験とをつめば、国家の建設というものは最善というわけにはゆかず、次善にならざるをえない」( V.739A )という認識のもと、「次善の国制」として妻子や財産の私有を認めているのです。のみならず、「哲学の支配という考え方は根本的には変わらないけれども、人間の本性の弱さを考慮に入れて、人間の支配の代わりに、法律の支配」(加来彰俊)を説いていることは、気をつけておかなければなりません。

 社会主義・共産主義の理念がいかに素晴らしいものであったとしても、処方箋においては間違っていると言ってよいのではないかと、私は思います。「小さな政治」(京極純一)を軽視し、一気に大きなことができるという考え方は、やはり相当に無理を含んでいると言えるのではないでしょうか。

 「共産主義政権下で生活したことのない人が、共産主義を崇拝している」という言葉が繰り返される時、私はいつも、「自由権>参政権>社会権」の構図を思い出します。

 「福祉国家は,資本主義経済と民主主義政治という歴史的文脈の中で生まれてきたのである。・・・福祉国家は単なる物質的再分配の政治ではなく,社会権を保障する「権利の政治」としてある」(新川敏光)

〈参考〉
〜「イデア」〜|紙徳真理子(かみとく)|note「3、公式的な結論??」
https://note.com/kamitoku/n/naf5456ab2d86


* *

(4)権力をもっているのは本当は誰なのか


 オーウェルの『動物農場』では、権力機構の普遍的なパターンが描かれています。
 革命の指導者は、まず人々(小説では動物たち)の頭の中に仮想の敵(人間)を作りあげます。そして敵の危険性を説明し、「一致団結」の必要性を強調します。そうしますと人々は指導者のすべての蛮行を「しばらく我慢する」ようになります。ひとつの権力が確立し、存続して体制化すると、腐敗や堕落を生みますので、(多少よそおいを変えた)新しい勢力に倒されます。その勢力はいずれまた倒され、すぐにまた新しい権力機構が生まれてきます。結局、権力闘争は繰り返され、抑圧される側の暮らしが良くなることはありません。物語の結末としては、動物たちは救われないままですが、しかしオーウェルは一般大衆のエネルギーに未来を託していると読むのが自然なような気がします。

 ところで権力が腐敗する構造は、ハイエクが指摘したように実は極左も極右も同じであり、コンスタンが危惧したように数千年単位の時間の経過くらいではびくともしていません。第一次世界大戦のさなか、A.J. トインビーは、大学でトゥキュディデスの講義をしていて「現代のヨーロッパが現に経験しつつあることやこれから経験しようとしていることを古代ギリシア人は既に経験してしまっている」と気がついたと言われています。つまり私たちには考えるヒントが与えられているわけです。

 しかし考えるといっても、何をもとに考えたらよいのでしょうか。もしかしたら自分の思想は、権力者の考える一定の方向性に(自分で気が付かないまま)引っ張られているのかもしれません。



 そもそも、権力とは、何でしょうか。

・政治学の分野では、「政治の手段」として説明される。
→経済活動はお金によって、政治活動は権力によって実現される。
・M. ウェーバーの定義:
AとBの間の非対称的関係、A>B;選好の対立;Aの意思の貫徹
・集団による決定の拘束力を保証する。
・支配:権力の制度化
→権威(自発的服従)(←物理的強制が不要になる)
・支配の正「統」性:決定の内容は嫌でも、決定に至るまでのプロセスは正統である。
1)伝統
2)カリスマ(非凡なる能力を持つ人)
3)合法性(ルールに基づく支配)(←これだけ、官僚制の話が出てくる)
・政治権力が最終的に支配として確立し、権威化されることを正「当」化する概念。
・誰が支配するか、ではなく、誰が統治するか、という議論と混同されている。

〈参考〉
(新川敏光先生の放送大学面接授業「現代民主主義論」2018.7/7,7/8, 2019.4/27,4/28, の内容からカミトクフィルターを通したもの)



 なるほど。「権力=権威」と「権力≠権威」は注意しておいたほうが良いかもしれません。
 ちなみに現行の日本国憲法の前文では、「権力≠権威」が明記されていますね。

 そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。
(日本国憲法前文より)

 それでは、現在、「権力」は誰が持っているものなのでしょうか。行政機関や公権力に言論を統制されていなければ自由と言えるのでしょうか。第四の権力と言われるマスコミの偏向報道やビッグテックの恣意的な弾圧は私たちにどのような影響を及ぼしているのでしょうか。

 1859年に出版されたミルの『自由論』は、(ミル自身の言葉ではないものの)「いわゆる他者危害の原則」を定式化したと言われています。ですので国家権力「からの」自由が強調されることが多いのですが、見落としてはならないメッセージのひとつを思い出してみましょう。

 確かに、大臣を任命し、法律に署名する総理大臣は「権力者」かもしれないが、その総理の念頭を占めているのは次の選挙に勝つこと、つまり「多数派」の票を得ることである。また、市場も、「貨幣による投票」という一種の民主政であることを思えば、巨大企業のCEOの心を悩ませているのも、新製品の売り上げをいかに伸ばすか、「貨幣による投票」においていかに「多数票」を獲得するかということなのである。われわれ庶民が通常イメージする「権力者」は、実は顔の見えない匿名の「多数派」−− つまり「われわれ」という真の権力者の奴隷なのである。
 もちろん、ジョン・スチュアート・ミルが生きた時代(十九世紀中葉)のイギリスは、ジェントリーなど貴族を頂点とした階級社会だったが、十九世紀前半の議会改革やチャーチスト運動などに見られるように、当時のイギリスにおいても、民主主義は着々と伸長し、「多数派」の意向を無視しては政治を行えない状況になりつつあった。
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(佐藤光「解説 二十一世紀に寛容であること」J.S.ミル 著/山岡洋一 訳『自由論』2011年. 日経BP社. p. 248. )→※B


 すなわち権力者とは、政府の高官や特権官僚、大企業の社長などとは別に、顔の見えない匿名の多数派、つまり「われわれ」自身である、ということなのですね。貴族政や独裁政では考えられなかったことです。しかし、現在の米国や日本をはじめ多くの国の国民は、民主政を選んでいます。ちなみに同じく民主政を選んでいた古代ギリシア人も、「裁判官席に座っているところの主人」は裁判官そのものよりも裁判官として現れる国家社会の全体だとか国民の総体だと考えられていたようですね(参考:プラトン『テアイテトス』23章 172E, 173A、なお選挙というシステムが現代とは逆の概念に関して「1、民意は反映されていたのかな…(+Time誌の記事)」にて後述)

 ところでミルは、国民が個人として成熟していくことの重要性も説いています。「積極的に政府を担い、政治に参加する政治的主体の存在が自由主義国家にとって不可欠だ、という論点」(※B、佐藤. p. 251. )も見受けられます。

 つまり、私たちは単に国籍を保持する国民であることにとどまらず、人為的なものである国家の政治的主体としての構成員であることを意識しなければならないと。すなわちそれは「市民」になる、ということですね。さらに、「多数派」の意向に傾きがちな状況において、いかに自由主義国家を守っていくか、それには市民ひとりひとりの心がけが大切であろうということも、言えるかもしれません。

 実際にミルは、「市民としての徳」を学ぶことも強調しているのです。


 ですので、私たちの仕事は投票して終わり、ではなく、自分の選んだ人がちゃんと仕事しているのか、多数派の言いなりになっていないか、ということをたまにはチェックしておかないといけません。

 しかし私たちは何しろ忙しくて、普段は政治のことより今晩のごはんのこととか、このマスクは今日あんまり使ってないから明日も使えるかなとか、子どもの教育費はなんでこんなに高いんだろうとか、そういうようなことを気にして生活しています。日々生きるために働いているのに、政治に参加なんて無理っしょ!という気持ちになることもあります。コンスタンが19世紀に、「奴隷制の廃止→余暇時間が減る」「商業活動は、人間から知的な時間を奪う」→「政治を負担に感じる」と指摘したことを思い出します。

 ですので政治を気にするといっても、マスコミの都合のいいように切り貼りされた政治家の発言を、その真偽や背景を確かめる余裕もなく、「本当は何が問題になっているのか」ということまで考えられないまま、SNSで拡散してしまったりすることもあります。でもそれは仕方ありません。私たちが使える時間には限りがありますし、一次情報だと思っていた内容がそうではないこともよくあります。ですので次善の策として、なるべく信用できそうなサイトや人などから、安くて速くてわかりやすい情報を得て、自分の限られた時間と知識の中で、総合的に判断していくしかありません。

 本来であればチェックだけではなくて、政治家が間違った方向に行きそうな場合は指摘したり、政治家が自らの責務を果たすことができるようあれこれのお節介を焼く人が必要です。「それは庶民の感覚からずれている」とか、「学校の実態はこうだから、子どものための予算はこっち方面に多くつけてほしい」とか、市民である私たちが困らないように、私たちの生活の実態を政治家に届けることも大事な役割のはずなのです。でも結局は声の大きい人の意見が目立ってしまい、実際にはまさにそういう人たちが既得権益によって守られているのかもしれません。

 ひょっとして、既得権益(vested interest)という言葉は、われわれ庶民のふわふわして変わりやすい心をコントロールしやすくするために考え出された、「政治と商業の固定化されたシステム」を表現しているのかもしれませんね。そういえばコンスタンも、商業が発達すれば政治的エージェントでない人が力を持ってしまうことを危惧していました。

 さらに、十九世紀、二十世紀になると、それまでの消極的自由の観念について、もう一段進んだ疑念が問いかけられることになる。人々がメディアの伝える世の中の多数意見に同調してしまうという、順応主義(コンフォーミズム)の傾向。個人に対する国家権力からの規制が取り払われたとしても、そこで自由な活動の領域とされた社会それ自身のなかに、人を支配する強い力が働いている。そうした現象は、すでに十九世紀から、ジョン・スチュワート・ミルやアレクシ・ド・トクヴィルといった思想家によって、政治上の権力と区別された「社会の権力」もしくは「多数者による暴政」として指摘されてきたものであった。
 こんどは、かつてのような政治権力ではなく、そうした社会そのものに浸透する同調の圧力に対して、個人がみずからの主体性をいかに確保するか、それが問われるようになったのである。
----
(苅部直「三、権力と自由 −政治学のこれから」『ヒューマニティーズ  政治学』2012年. 岩波書店. pp. 72-73. )

 さて、ここまでかなりたくさん書いてきました。現在のいわゆるリベラル勢力がどんな感じかもだいたい分かったような気がします。「リベラル」の概念については、本当はもっときちんと考えてリベラル嫌いにならないようにしたいのですが、ここらへんが私の限界かなと思いますし、論文ではなく雑感なので、一応宿題は片付いた、ということにしておきます。

 しかし、最初に書いた「わからなくなってしまったこと」は、まだまだあります。

 次の節では、2020年の米国大統領選挙を振り返りながら、選挙の公正を目指す目的について考えてみたいと思います。
 おっとその前に、民主主義の自己矛盾についておさらいをしておきましょう。

 いずれにしても、民主主義というのは、自己矛盾を含むものであり、必ずしもそれ自体のみでは充分ではないものなのである。これを首尾一貫の合理体系に組み立てることは、わが国の一部に偏愛される法律家的合理主義の満足にはなっても、かえってそれは民主主義の敵によって利用され、自己否定に陥るような危険をもつと言わなければならない。多数決の民主主義というようなものでも、それ自体は多数決できめられることではなくて、かえって全員の一致を要求しなければならなかったのである。
・

 自由の原則も、これを無制限に拡張すれば、自己否定となり、それの制限をつければ、これもまた無制限に進行して、自由の否定になる危険をもっている。民主主義というのは、そういう不安定さ、不徹底さ、不合理性を含んでいるのであるから、これを保つにはかえってかかる不安定、かかる不徹底、かかる不合理に堪えながら、その間のバランスを保つ精神の強健さを必要とするのである。

・

 民主主義というのは、それだけで完全な原理というようなものではない。晩年のプラトンは、神の直接支配というような形でしか理想社会は考えられないとした。人間の行う政治には、もはや、理想社会も黄金時代もあり得ないが、民主制はそのうちにあって、最良でもなければ、また、最悪でもないという意味で、まずは危険度の比較的少ない政体と考えた。

・

 われわれにとっても、民主主義はむしろ最小限度の条件として要求されるのであって、なお多くのものを付け加えて行かなければならないものなのである。しかしこの最小限度の条件を全くすてて、いきなり他の理想社会を求めても、それは悪魔の誘惑の如く、むしろ最悪の社会を得るに過ぎないかも知れない。民主主義は多数決にしても、制限された自由にしても、あまり魅力的ではなく、力弱くあいまいな感じをまぬかれない。しかし最小限度の条件を守ることにおいては、強くまた戦闘的でなければならない。その戦意、時には武器をとっても戦う勇気がなければ、もはや守ることのできないものである。



 あまりにも平凡で、理想主義的な光彩にとぼしいけれども、しかしそのままでも、例えばトマス・マンをして、ナチスのイデオローグの嘲笑に抗して、デモクラシーのためのアポロジーを書かせたのである。古代都市国家の市民たちが、その城壁を守るために命をとして戦ったように、わたしたちの強健な市民的な常識が、民主主義を守るのではないだろうか。

・

 必要とされるのは感激や熱狂ではなくて、しらふの冷静な勇気である。

----

田中美知太郎「民主主義の自己矛盾」

発表:1965(昭和40)年5月『潮』 

今回の引用:

1)1970(昭初45)年1刷, 1977(昭和52)年2刷『田中美知太郎全集第十巻』筑摩書房. pp. 322-324. 
2)1971(昭和46)年『直言、そして考察 − 今日の政治的関心 − 』講談社. pp. 226-228. 
3)1983(昭和58)年『市民と国家』サンケイ出版. pp. 128-130. 

〈参考〉
〜「過去」− 記憶と歴史について − 〜|紙徳真理子(かみとく)|note

2、(4)主権ってなんだ?
https://note.com/kamitoku/n/n478fbb5e943a

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1、民意は反映されていたのかな…(+Time誌の記事)

 『一九八四年』が最近話題になっています。
 昔のポーランドの作家が、「『一九八四年』は失敗作ではあるが、極めて重要な作品だ」「『動物農場』も『一九八四年』も地下出版物で読んだのだが、まるで自分たちのことが書いてあるかのように感じた」と言っていたと、開高健は紹介しています。(談話「一九八四年・オーウェル」)

 最近米国でよく読まれている(FOX)というこの書物は、処罰による管理がテーマのようです。それに対してハックスリーの『すばらしい新世界』は、非暴力による管理がテーマのようです。

 ところで、オーウェルの『一九八四年』としばし並び称される、逆ユートピアの未来社会を描いたSF『すばらしい新世界』(Brave New World, 1932年)を出し、二十世紀の予言者と讃えられたA. ハックスリーが、その『すばらしい新世界』の改訂版ともいうべき『すばらしい新世界再訪』(Brave New World Revisited, 1959年)の中で、オーウェルの『一九八四年』を、自分の『すばらしい新世界』と比較して次のように評している。

  「……『一九八四年』に描かれている社会は、殆どもっぱら処罰と処罰に対する恐怖によって管理されている社会である。私の描いた寓話の架空の世界では、処罰は滅多に行なわれないし、行なわれたとしても、概して寛大である。政府が実施する、殆ど完璧に近い管理は、肉体的と心理的の両面を含む、非暴力といえる多くの種類の操作と、遺伝的標準化とにより、好ましい行為を組織的に奨励する、という方法によって達成される……」
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(高畠文夫「改版に当って」ジョージ・オーウェル 著/高畠文夫 訳『動物農場』. 昭和47年初版発行, 平成23年60版発行. p. 278. )

 非暴力で管理される世界…。

 今回、「あの大統領は危険な独裁者なので次の選挙で落選させなければならない」と一部の人は考えました。
 米国最大の組合連合であるAFL-CIOアメリカ労働総同盟・産業別組合会議の政治局長であるマイク・ポドホルツァー氏は、1日数時間のzoom会議に取り組み、いわゆる左翼団体やレジスタンスグループ、ドナーと財団の代表者、州レベルの草の根組織者、人種平等活動家などに働きかけました。この動きは民主党周辺のみならず、「共和党にも」広がりました。
(「Republican In Name Only(RINO)名ばかりの共和党員、という言い方があるようです。1910年代、セオドア・ルーズベルト大統領の時代から問題視されており、RINOの用語自体は1990年代に普及したとのこと)
 
 そして、(憲法に抵触する恐れのあるものも含め)州政府に選挙制度を変えさせ、第四の権力と言われるマスコミも結託して情報を統制し、FBのザッカーバーグ氏を説得して言論の弾圧をさせました。BloombergやWaPo、GAFAらによる巨額の献金と選挙管理システムへの資金提供及び介入は、候補者のイメージも投票ルールも変えてしまいました。「秘密の超党派キャンペーン」は成功し、トランプ氏は落選に至りました。その経緯を、2021年2月15日にタイム誌に掲載された記事は伝えています。

 「陰謀論というが、それは大企業や権力者(カバル)達が壮大な大統領選の裏で”奮闘”したという点においては事実なのだ」(Time)

〈参考〉
1)The Secret Bipartisan Campaign That Saved the 2020 Election | Time

(BY MOLLY BALL   FEBRUARY 4, 2021 5:40 AM EST)

https://time.com/5936036/secret-2020-election-campaign/?utm_source=twitter&utm_medium=social&utm_campaign=social-share-article&utm_term=politics_2020-election
(この記事はかなり長いので、「ポドホルツァー」で検索して、翻訳や要約をしてくださっている記事に助けてもらいました)

2)この投稿の「8、不正選挙疑惑関連資料」■スレッド6
・莫大な資金と権力を持つFacebookのCEOがいかにして一組織を通し大統領選に大きな影響を与えたのか。
・元カンザス州司法長官フィリップ・クレイン氏による詳細リポート。
・これまで様々な形態の不正疑惑が取り沙汰されたが、この大規模かつ慈善事業を装った大胆な選挙介入法は注目すべきだろう。
Zuckerberg Election Meddling Exposed – Got Freedom
https://got-freedom.org/zuckerberg-election-meddling-exposed/ 

3)この投稿の「2、有権者登録は信用できるのかな…(+複数の問題)」
・ウィスコンシン州では3月上旬の公聴会において、FBのCEOが350億円を寄付した選挙支援基金団体(CTCL)が、選挙スタッフの人選にも関与していたのみならず、州法に違反していた疑いのある事案も明らかとなっている。



 Timeに寄稿した左派の執筆者はジャーナリストとしては定評のある方のようです。何年か前に取材を受けたとされる日本の国際情勢評論家の方も、モリー氏の取材力を高く評価されていましたので、この分析はおそらく間違っていないのでしょう。実際に、TwitterやFBなどによる保守派のアカウント凍結は未だに続いていますし、複数の銀行は保守系のSNS企業へサービス提供することを拒否しています。

 現在のWhiteHouseの動画の視聴率の低さや、Instagramでの「ブロックしても勝手にWHをフォローさせられている!」事件、また複数の世論調査や周囲の声などを見聞きしていると、選挙は本当に民意を反映した結果だったと言えるのか疑問でしたが、なんとなくその理由もわかった気がしました。ですので私には、モリー氏の「In a way, Trump was right.」(ある意味、トランプは正しかった)という文章には納得できます。

 一方、「民主主義は勝った」という最後の段落の文章をどう解釈したら良いのかわかりません。この状態って、本当に民主主義と言えるのでしょうか。

 今回は、「一部の」「ある一定の方向性を持った人たち」がキャンペーンを張り、「自分たちの思うような選挙の結果」を出すことに成功した、つまり「選挙を管理」していた、ということですよね。少数者による支配は、非暴力であっても権威主義的と言えるのではないのでしょうか。それに、「自分たちの正義」のためなら手段を選ばない(”Any means necessary”)、組織的な攻撃というのは、全体主義に通ずるものがあるような気もします。

 しかし私に法を教えてくださる先生は、「先進国で全体主義?もっと広い世界を見て、全体主義の恐ろしさとはどういうものかもう少し勉強したほうがいいね」と忠告してくださいます。まだ社会主義国であった旧ユーゴスラビアで10代の一時期を過ごされた経験や、東欧の経済をご専門にされていたお父様の研究成果などを思想の背景に持っておられるその先生は、旧ソ連の残虐な人権侵害の研究もされており、現在の北朝鮮、東トルキスタン、香港、ロヒンギャなどの問題に対しても強い怒りを持っておられますので、私の無知に驚かれたのかもしれません。ちなみに、「今の米国はこのまま進むと少し危ない気がするね。だが米国には底力があるからおそらく自浄作用が働くだろう」というのが先生の見立てのようです。

 暴力で管理するのか、それとも非暴力で管理するのか、ということも含め、全体主義の定義を考えるのは今の私には難しいので今後の課題にするとして、とりあえず管理できる者というのは権力をもった者である、ということはできそうです。

 しかしミルからのメッセージは、「権力者とは、庶民のわれわれでもある」ということでした。けれどもそれには「多数派」という数の力が必要です。
 全体主義は少数者が支配する形態ですから、ピンときませんね…。

 ところが権力者には二通りあったのでした。もうひとつはいわゆる既得権益を持っているのほうの権力者です。今回の件は、「一部の人」がいわゆる政治権力と一体化して被支配者を管理した例なので、権威主義的と考えても良さそうです。こちらのほうなら全体主義に進む可能性がありそうです。

 もっとも、全体主義はよくないこと、というのは既に共通理解になっています。なので先人たちは「個人の尊重」を守るために様々な仕組みを考え出してくれました。

 国家権力を縛る近代憲法の構成としては、人権保障の目的(人権規定)と手段(統治規定)から成っており、統治機構の基本原理は国民主権と権力分立です。権力分立は、国家権力が単一の国家機関に集中し権力が濫用されるのを抑止するため、権力を区別し、それを異なる機関に担当させるよう分離し、各権力相互間の抑制・均衡を保たせる制度です。そのねらいは、国民の権利や自由を守ることにあります。(参考:芦部2015. p. 287)

 国家を統治している機関のうち、立法と行政を担当する政治家は、国民が選んだ者です。
 つまり国民は、統治されている者であると同時に、統治している者でもあります。これはコンスタンの代議制のところで見てきたとおりです。

 国民が幸せに暮らせる制度を作るためには、国民の意見が、すべては無理にせよある程度は反映されていなければなりません。そのために私たちは専門的にその役を担ってくれる人を選挙で選んでいます。なのでそのシステムが、「われわれが権力を持っている」理由のひとつになるということも、ミルから学びました。

 そのような考えが正しいとすると、選挙の公正を目指す目的とは、「もしも私たちの投じた票が正しく反映されなかったならば、私たちの幸福の実現につながらない恐れがあるため」ということがいえないでしょうか。

 しかし私たちは考えます。自分の考えはいつも正しいのだろうかと。「もし自分の選んだ人が変な人だったらどうしよう」という思いが、投票を躊躇させるひとつの理由となっていることもあります。

 けれども、自分一人だけの票がそのまま結果につながるシステムにはなっていません。たくさんの人の、いろんな思いがまとまった結果が、選挙の結果なのです。そしてもし選ばれた人が期待外れだった場合でも、選挙は次も、その次もあります。

 そしてTimeの記事はコンスタンの指摘が正しいことも教えてくれています。すなわち政治と商業の話です。国家権力が適正に保たれる仕組みは近代憲法の中に組み込まれていますが、商業の分野での権力者に対しては、私たちはどのように立ち向かって行ったら良いのでしょうか。その答えは、私にはまだわかりません。

(注意すべき点として、コンスタンは、商業が発達すれば政治的エージェントでない人が力を持ってしまうことについては指摘していますが、政治と商業の結託について、また結託した場合にどのような影響があるのか、ということまで書いているのかどうか、私は確認できていません、すみません、これも課題に含めます…)

〈参考〉
・More Examples of Election Fraud Prove the Left Is in Denial About It | The Heritage Foundation/ Oct 15th, 2020 
https://www.heritage.org/election-integrity/commentary/more-examples-election-fraud-prove-the-left-denial-about-it 
・Opening the CIA’s Can of Worms – OffGuardian/ Feb 14, 2021
https://off-guardian.org/2021/02/14/opening-the-cias-can-of-worms/ 
・<オピニオン>ビッグテックの検閲を禁止するポーランドを見習え(epochtimes)/ 2021年02月26日 08時00分
https://www.epochtimes.jp/p/2021/02/68981.html 

・アメリカはバイデン政権下で全体主義国家になりつつある 元クリントン政権のアドバイザー、ナオミ・ウルフ氏が友人を失う覚悟でFOXニュースに出演 -/ 2021.02.24
https://bonafidr.com/2021/02/24/アメリカはバイデン政権下で全体主義国家になり/
・JUST SHOCKING! Joe Biden Delivers Speech on Anniversary of COVID Lockdowns - Only 7,141 Tune In to White House YouTube Page for His First Address/ Published March 11, 2021 at 7:11pm
(3/11、ホワイトハウスの「East room」(注:大統領執務室ではなく「東の間」)でのCOVID-19に関する演説を配信したWHの公式YouTubeの視聴者は、わずか7,141人だったようです。それまでにも公式チャンネルの視聴数は少なく、しかも高評価より低評価の方が多いことは知られていましたが、大統領に就任して初めての正式な演説を、国民はそれほど気にしていないということなのでしょうか。余談ですが、トランプ氏のCPAC演説(2/28)は、FOXのライブ放送で570万人が視聴、日曜日の番組で過去最高。その後のアーカイブ視聴は3,100万人とのこと。もちろんYouTubeとTVの違いはあるのでしょうが)
https://www.thegatewaypundit.com/2021/03/just-shocking-joe-biden-delivers-speak-anniversary-covid-lockdowns-7141-tune-white-house-youtube-page-first-address/ 
・Instagram deletes post of President Biden falling up the stairs under its "violence and incitement" policy/ March 20, 2021
(3月19日、ジョー・バイデン大統領は、エアフォースワンに搭乗するために階段を上っていく間、何度もつまずかれました(この日は強風だった)。Instagramにこの動画を投稿した人は、「コミュニティガイドラインに違反しているため、あなたのストーリーを削除しました。Instagramのコミュニティをサポートおよび保護するために、これらのガイドラインを作成しました」という理由で削除されたということです)

https://reclaimthenet.org/instagram-deletes-post-of-president-biden-falling-up-the-stairs/ 
・ホワイトハウスは、各省庁に対して公式文書に「バイデン・ハリス政権」と記すよう指示——「ジョー・バイデンが職務を1人では果たせないという兆候だ」 -/ 2021.03.23
https://bonafidr.com/2021/03/23/ホワイトハウスは、各省庁に対して公式文書に「/ 

・アメリカ人だからこそ言いたい、この大統領選挙には納得できない(ロバート・D・エルドリッヂ) | 現代ビジネス | 講談社(1/5)/ 2021.02.14
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/80172?imp=0 
・今回の選挙でも第三の政党に投票された筆者(トモダチ作戦で有名な方ですね)「今回の選挙は不真面目な結果で終わった」
・カリフォルニア州弁護士「絶対に読んだほうが良い。リベラルメディアと民主党の「回転ドア」の話」
・民主党候補に投票したミシガン州の大学教授「この記事の50%位に同意できるが、今はそれどころではなくて、コロナ+経済+外交対策をお願いします、というのが真ん中辺りに住む普通のアメリカ人の正直な気持ちだと思いますね、つまりそこまでワシントンDCに期待していない。オバマ当選直後の高揚とその後の落胆が理由かも」
↑補足↓
・Opinion | Democrats Repent for Bill Clinton - The New York Times/ March 14,2021
https://www.nytimes.com/2021/03/14/opinion/democrats-bill-clinton.html 
・バイデン政権の法案はクリントンドクトリンに影響されているという内容。今になってやっと左派のNYTは、クリントン政権がマイノリティや貧困層の支援をしていなかった事実を載せています。クリントン政権は多くの黒人を刑務所に送って家庭崩壊を加速させたと言われています。多数の刑務所は民間企業によって運営されていますので、もしかしたら業界団体からのロビー活動の影響があったのかもしれません。黒人にアンフェアな刑事法が改正されたのは、トランプ政権になってからです。ちなみにBLMはオバマ大統領・バイデン副大統領の時代に生まれています。オバマ政権はサブプライムが崩壊しても庶民を助けませんでしたし、多くの家庭を崩壊に追い込んだオピオイドが蔓延し続けても規制しなかったと言われています。

・Dick Morris to Newsmax TV: Dems Moving Toward Using 25th Amendment on Biden | Newsmax.com/ Tuesday, 09 March 2021 11:05 PM
https://www.newsmax.com/newsmax-tv/dick-morris-25th-amendment-mental-incapacitation/2021/03/09/id/1013206/ 
・(共和党ではなく)民主党は「現大統領は職務遂行不能」と判断して憲法修正25条を使って罷免するという憶測。実際に、民主党は大統領の核兵器使用権限及び軍事行動権限の剥奪を要求しているとおっしゃるディック・モリス氏は、ビルクリントン大統領顧問の後、共和党の顧問も勤めておられた方。もし大統領が罷免された場合、大統領代行は副大統領が務めることになります(弾劾の時と同じですね)。既に外交関連で目立った動きをしておられるハリス副大統領ですが、メディアでの扱われ方が就任前の異様な盛り上がりと違い就任後は冷静な記事が目立つようになってきたように感じます。けれどもモリス氏は「そこはあまり問題にはならない(飾りは誰でもいい)」とのこと。この説はどこまで信憑性があるのかわかりませんし、こういう考え方もあるのだというくらいに考えても良いかもしれませんが、3月25日の単独記者会見といい、息子さんの事件が次々と明らかになっていることといい、ご本人の健康状態(もう本当に心配になるレベル…)も含めて思うところが多々あります…。

・就任初の単独記者会見までの日数
オバマ:20日後
トランプ:27日後
バイデン:64日後(過去100年で最長。なお今まで大統領令を37本発出)

・大統領就任して50日後までの単独記者会見の回数
クリントン:5回
子ブッシュ:3回
オバマ:2回
トランプ:5回
バイデン:0回


・合衆国憲法修正25条4項
「Whenever the Vice President and a majority of either the principal officers of the executive departments or of such other body as Congress may by law provide, transmit to the President pro tempore of the Senate and the Speaker of the House of Representatives their written declaration that the President is unable to discharge the powers and duties of his office, the Vice President shall immediately assume the powers and duties of the office as Acting President.」
(副大統領と閣僚の過半数の同意で大統領の職務継続困難を宣言することができる)
https://constitutioncenter.org/interactive-constitution/amendment/amendment-xxv
・ちなみに修正25条は1965年に追加されて以来、今まで発動されたことはありません。発動されかけた直近の例は、ペロシ下院議長が「トランプに対して発動しろ」とペンス副大統領に圧力をかけた件です。ペンス氏が事前に丁重なお断りのレターを出されていたことを思い出します。

* 

 さて、民主主義を意識した政治体制ということで、国民が政治に直接参加する直接民主制を導入した古代アテナイのことを少し考えてみます。今から2,500年くらい前、少しだけ古いお話です(しかし地球が誕生した約46億年前、生命が誕生した38億年前に比べると(諸説ある)つい最近のような気もしますね)。

 この頃の執政は、まさに統治者=被治者です。五百人評議会員の任期は一年で、同一人の再選は一度以上許されませんでしたから、選挙と抽籤によって国民のほとんどすべてが政府の要人となる機会をもったわけです。輪番制といえますから、選挙というのは、代表を選ぶという発想とは逆の概念です。選挙の意味あるのかなって感じもしますが、当時のギリシア人は抽籤を重んじていたことが、古代ギリシアの悲喜劇(国家主導で行われていたが官営ではなく公営)の優勝作品を決める方法からも見てとれます(10名の審査員の票のうち評決に使用されるのは一つの壺の中から手当たり次第につかみ出された5票のみだが偶然を天命と信じていた人々から苦情が出ることはさほどなかった)。

 つまり「選挙=民主主義」とは言えないということですね。ですので自由民主主義は、「擬制としての民主主義」(前述:新川先生の授業より)という言い方もあるようです。

 それはさておき、立法家のソロンは、民主制、そして【法律遵守の意識】も導入してくれました。国政が少数有力者の恣意によって左右されず、ただ国憲に従って運用されるべきことや、少数者の専断を制限するさまざまな方法が考えられています。

 そのおかげでアテナイ市民の法律上の不平等は解消されました。しかし、経済的な不平等はすぐには解消されませんでした。そのため国民はせっかくの民主制を停止して、35年間ほどペイシストラトス父子の独裁政治を必要としました。もっともこの時の政治はきわめて穏健で、自己独裁的というよりは、むしろ国家本位、国民本位だったようですね。観念的な復古思想や少数貴族の特権意識から生じたものではなく、ソロンの改革によっても救われなかった貧農その他の不平分子の、極端に民主的な要求を背景とするものだったと言われています。

 経済発展が無事に遂げられた後、過渡的な現象は過ぎたということで、ペイシストラトスの子であるヒッピアスはアテナイを追われてしまいます。つまりアテナイには再び民主制が戻ってきています。そしてクレイステネスは陶片追放(オストラキスモス)の制定によって、独裁政治が再び起こることを防いだのであります。なおクレイステネスの民主制では、三つの異なる地方の区民が一部族をなし、これが各五十人の代表を出して、五百人の評議会(政務審議会)を形成する方法がとられたようです。

 アテナイにおいて、ソロンの改革(前 594年)からソクラテスの死の年(前 399年)までの間に、いわゆる民主制が停止されたのはおよそ三回です。そのうちの一回は前述したとおりです。あとの二回はペロポネソス戦争期に生じていますが、一回目は四ヶ月、二回目は約一年と、いずれも短命に終わっています。

 けれどもこの政治経済の中心地たる繁栄の都は、「民主政治の欠陥を歴史家によって指摘されるペロポネソス戦争」の終結からしばらく後に、やがて没落してしまうのです。

〈補足〉
1)有名な三十人政権と現代の米国についての興味ある論説。
「The Thirty Tyrants - Tablet Magazine」/ 2021/02/04
https://www.tabletmag.com/sections/news/articles/the-thirty-tyrants 

2)民主制が実現したのはアテナイだけではありません。アフリカのキュレネ、ペロポネソスのアルゴスやエリス、アッティカの隣国ボイオティアなどをはじめ、スパルタにおいてさえ同じ政治運動が現れましたし、南イタリアではほとんど全部のギリシア人都市が民主化されたようです。しかしアテナイと同じ成果を収めるのは難しく、しかもそのアテナイでさえも没落してしまうのですから、民主制を継続するというのはそんなに簡単なことではないのでしょうね。「民主主義の自己矛盾」(田中美知太郎)は、時間が経てば勝手に消えてしまうものではありません。幸か不幸か、私たちはいつも挑戦しているのだということを、忘れないでおきたいです。
 キュレネの共和制について。場所は、ギリシア本土の真南に当たり、今日のリビアの内でエジプト寄りに地中海へ突出した部分の中とされています。ギリシア人のアフリカ植民地中最も重要なこの都市は、前600年代後半、テラ島のドリス系ギリシア人の移住以来しだいに繁栄し、前500年代中葉、さらに他の一般ギリシア人の移住もあり、多くの哲学者も輩出されました。はじめは王制でしたが、前400年代の中頃には共和制となっていたようです。(参考:プラトン 著『テアイテトス』2章, 田中美知太郎 訳註より)


3)当時、もし自分の住んでいるところの政治が嫌だなと思ったり、法律や風俗が自分に合わないなと思ったら、我慢せずに家財をまとめて自由に他の地へ移ることができたし、亡命も日常茶飯事だったそうです。そんな中でもアテナイにこだわったのがソクラテスです。ソクラテスは、ポテイダイア、アンピポリス、(しんがりをつとめた)デリオン等への出征と、一度のイストモス行きの他にはほとんどアテナイから出ることはなかったと言われています。死刑が宣告された時も、古くからの友人クリトンが亡命する準備を整えてくれたのに、ソクラテスはアテナイ以外の地で暮らすことは望まず結局死刑を受け入れました(あくまでもアテナイの法廷の判決に従ったということで、決して自殺ではありません。しかし、法律なら何でも守るべきという立場でもなく、前406年のアルギヌゥサイ島海戦に係る国民評議会での委員会ではただ一人、最後までその違法を主張しています。また、スパルタの武力を背景とする独裁派政権が樹立され、反対派の市民を拘禁するための手先となって働くことを強要された際に、その命令を受け取りながらも黙って家に帰ってしまったのはソクラテスただ一人だけだったようです)。
 アテナイはソクラテスにとって必ずしも住み良いところではありませんでした。「議會も法廷も劇場も市場も喧騒にみちて」いましたし、悪口を言われたり嘲笑されたり、挙げ句の果てに不当の罪で死刑です。しかしソクラテスは、アテナイを立派な国にし、アテナイ人をすぐれた国民にしたいと願っていました。「役に立たない無駄話」と呼ばれながらも、未来を担う若者と議論を交換していたのは、自分を育ててくれたアテナイを愛していたからこそです。ソクラテスの愛国心は、「憂ふべき現實を美辭麗句で飾り立てたりして、國民の低調な虚榮心に阿諛するデマゴーグ的行爲を許し得なかつた」のです。しかしその行為は、戦争と革命によって傷つけられたアテナイを回復しようと考える人たちの目には疑わしく見えました。ソクラテスを架空の不敬事件で訴えたのは年少の狂信家メレトスですが、その背後には「新生アテナイの再建に最も功勞のあつた一人」と賞賛されていたアニュトスがいました。もはやソクラテスの行為は「無駄話」ではなく「危險なもの」と、「熱烈な愛國者」の目には映っていたのでしょう。私利私欲と知って追求することはまだ救われますが、これを「國家のためであると信じ込む人間」や、自分たちの正義のためなら手段を選ばない人たちというのは、いつの世にも存在しているようですね。私もソクラテスと共に「自己批判を嚴に」し、常に気をつけるよう心がけたいと思います。
(参考:田中美知太郎「愛國心について」『哲學的人生論』河出書房. 昭和26年. pp. 90-103. )



4)この投稿の「7、田中美知太郎「第五章 その時代」」では、アテナイ民主制の政治史がわかりやすいです。そろそろ疲れてきたなと思われる方は、私の文章などすっ飛ばしてすぐにそちらに飛んでいってもらうのも時間の有効な使い方かと思われます。第二改訂版は1969(昭和44)年ですので、もしかしたら現在は研究が進んで細かい部分に修正が入るのかもしれませんが、大きな幹の部分はさほど変わっていないのではないかと思います。ほんまにおもしろいですよ(^^)


(抜粋↓)
 「ところで、ソピステース時代のアテナイであるが、それはクレイステネス改革から半世紀以上を経た後の時代に属するのではあるが、その政治体制はだいたいにおいてクレイステネス時代と異なるものではなかったようである。否、いわゆる民主政治の欠陥を歴史家によって指摘されるペロポネソス戦争の苦い経験にもかかわらず、アテナイ人はその戦争後においても永く同じ政治体制を保っていたのである。アテナイ人にとっては、それはペルシア戦争におけるマラトン(四九〇年)サラミス(四八〇年)の輝かしい勝利の原因であり、ペロポネソス戦争期においてさえ、シシリイ島遠征の失敗(四一三年)後も、なお十年間も最も不利な条件の下に孤立して頑強に戦うことができたのは、政治が真に国民のものであったからであると思われたであろう。ヘロドトスは( V. 78 )アテナイ人を最強の国民としたものは、国民のすべてが直接政治に参与するその国家体制にあることを断じている。いずれにしても、われわれはアテナイというものを、この政治体制から離して考えることはできないであろう。」(註:年はすべて紀元前)

・ 
 「ところで、そのアテナイ文化の基礎をなすものは、かの isonomiā の原則の上に立ついわゆる民主政治であった。むろんわれわれは、民主制がペルシア戦争後の特別な現象であるかのごとく考える誤謬に陥ってはならないであろう。ペルシア戦争はクレイステネスの改革後約十五年にしてきたったものなのである。民主制については、ペリクレスの仕事も単に補足的な意義をもつに過ぎないと思われる。アレイオス・パゴス審議会の権限縮小とかアルコーンの資格制限の緩和とか、民衆裁判すなわち陪審廷( dikastērion )の権威や国民の全体会議すなわち国民議会( ekklēsiā )の威力が増大したことも、それはすでにソロンやクレイステネスによって原則が定められていたことの自然の結果にほかならない。しばしば誇張して語られる一部官職の有給制のごときも、他に職業をもつ貧しい国民にも政治参与をならしめようとする合理的な手段で、べつに専門の政治遊民を作るほどの額ではなかったように思われる。」


 「民主的ということでは、ペリクレスはむしろ逆行的な点をもつと言われるであろう。かれはソロンやクレイステネスにおいては開放的であったアテナイ市民の資格を制限して、これを市民たる両親から生まれた者にのみ限ろうと( Athen. resp. XXVI. 4 )したからである。かれはアテナイ市民を特権階級化したのである。むろん、すべてのギリシア人は奴隷に対しては特権階級であるが、これは古代社会、否、現代社会にも共通することで、特にアテナイ人のみが責められることでもなく、アテナイ人がすべて奴隷をもっていて安楽に暮していたなどと考えるのは、全く誇張された空想に過ぎないのであり、奴隷の取り扱いは、他の都市に比べてアテナイがやはり自由であったのではないかと考えられるのであるが、ペリクレスの市民権制限はデロス同盟に君臨するアテナイ市民を、他のギリシア人に対して特権階級化するものであるから、その民主政治の狭い都市国家主義的限界を示すものとして特に注意する必要があるであろう。」

 「いずれにせよ、民主政治はアテナイにとって、ペルシア戦争後の特別な現象ではなかったのである。しかしそれは全ギリシア世界にとって、特にペルシア戦争後流行した新現象であった場合が多かったということができるであろう。ところで、この民主制は各地に政治闘争を激発し、ところによってはかえって反動勢力を刺戟強化する結果となり、これがアテナイのデロス同盟諸国に対する強圧的手段への反撥、あるいはコリントスその他の都市とアテナイとの貿易上の対立などと結んで、やがて帝国主義アテナイ打倒の十字軍が形成され、ペロポネソス戦争の終局とともに、アテナイ王国は崩壊しなければならなかったのである。しかしこの神聖な戦争も別に新しい秩序を創り出すことには成功せず、ただちに民主制を回復したアテナイは、その後ローマ時代に至るまで永く地中海世界の文化の中心地となったのである。」
・ 

 「氏族を基礎とする昔の社会では、すぐれた人というものは家柄と地位によって決定された。勇気とか才知とか節制とかいう人間的な徳も、すでに身分によってすぐれている人たちの上に冠せられる徳であって、まだそれだけで独立の徳としては存しなかった。しかし今は、ひとは氏族によって差別されずに、国家の一員としてみなが平等の権利をもっているのである。人間がすぐれた人として差別されるのは、もはや特権によらず、ただ人間的に卓越した性質、すなわち人間的な徳によるのである。」

 国家が会計や監査を行うようになると、会計と倫理に政治が絡んでくる。古代アテネでは、会計は政治の責任と切っても切れないものとされていた。このように古い時代から、面倒な簿記と公的監査が民主的統治を支える重要な柱とみなされていたのである。アテネの国庫は神聖なものとして扱われ、デロス島に保管されて監督官が厳重に監視した。身分の低い市民や奴隷は教育され、帳簿係として雇われた。アテネ市民が奴隷を帳簿係や監査人に雇いたがったのは、疑わしいとなったら拷問にかけられるからである。自由民はそうはいかない。アテネには、公的機関の会計を監督する高級官僚や監査官も存在した。寡頭政治では一握りの権力者が支配し、誰も会計責任を負わないのに対し、民主制を掲げるアテネでは、会計責任を果たす仕組みが整っていた。官僚が作成した会計報告は、民主政治の原則に則り、漏れなく監査の対象となる。元老院や最高裁判所の役割を兼務していたアレオパゴス会議のメンバーでさえ例外ではなく、また神官も、公務のみならず贈答品まで含めて会計報告を義務づけられていた。アテネ市民は、国家に対する債務をすべて清算してからでなければ、国外に出ることはできず、財産を神に献納することはできず、遺言状を作成することはできない。アリストテレスの最後の著作『アテナイ人の国制』には監査官( logistae )に関する記述があり、官僚や裁判官の会計報告を監査していたことがわかる。不正疑惑が持ち上がった場合、事情聴取を行う前に、まずは問題の人物の帳簿を公的に監査する仕組みだった。

 こうしたシステムが確立されていたにもかかわらず、腐敗ははびこっていた。アテネ市民は会計責任という概念をよくわかっていなかったようである。敬愛された将軍であり政治家でもあったアリステイデス(紀元前五三〇〜四六八年)でさえ、あまり厳しい監査をするのはどうかと思う、とこぼしている。不正はある程度までやむを得ないとして容認され、むしろ厳格な監査はいたずらに平穏を乱すと見なされた。歴史家のポリュビオスは、国家が監査官を一〇人雇って公的監査を徹底したところで、人間が正直になるわけではない、頭のいい人間は必ず帳簿を操作する、と示唆している。
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(ジェイコブ・ソール 著/村井章子 訳「第一章 帳簿はいかにして生まれたのか」『帳簿の世界史』2015年. 文藝春秋. pp. 23-24. )




 国家の在り方を論じたルソーは、直接民主制を重要視していました。しかしその問題点として、衆愚政治に陥ってしまう危険が指摘されています。それでは間接民主制になってその問題は解消されたのでしょうか。選挙というものが導入されたことは、果たして本当によかったのでしょうか。

 選挙権の付与は、労働者の政治の拡大、そして労働者政党の発展をもたらしました。しかしそのことが民主的階級闘争につながりました。つまり、民主主義政治は階級者闘争の「制度化」(ダーレンドルフ)を引き起こす側面があります。さらに選挙する者とされる者の距離が遠くなったことにより、選挙によるエリート支配は正統化されてしまっています(選挙民主主義)。

 けれども、国家の規模が大きくなり、人々の生活も社会も複雑になった現在、直接民主制は現実的ではありません。1848年に建国されたスイス連邦では直接民主制を伴った代表民主制が取られていますが、政策を決定するための投票率の低さが問題になっていることも丁寧に見ていかねばなりません。

 やはり現代の私たちは、選挙というシステムを使って政治をしていった方が良いのではないでしょうか。そして、「有権者が選挙を通じて政治家を選び、政治家が政策決定を行う」(待鳥聡史)仕組み、すなわち代議制民主主義が機能不全に陥らないためにはどうすれば良いのか、そのアップデートも含めて考えていくことが大事なのだと思います。



 2020年11月3日、米国民で有権者登録をしている人々は大統領選挙に投票しました。
 2021年1月6日、上下両院合同議会が開かれました。上院議長である副大統領が、50州の選挙人投票の結果を確認する会議です。なおこの時に、最低でも上院議員1名および下院議員1名の署名を得た文書を議長に提出し、異議申立てができることは、選挙人算定法「Electoral Count Act of 1887」(ECA)で法定されています。

 1876年の選挙は、南北戦争が終わりまとまりかけていた国家がまた分裂しそうな時期に行われました。憲法だけでは解決できない!ということで、1877年に合同調査委員会が発足(上院議員5名・下院議員5名・最高裁判事5名)します。この時の混乱の反省を踏まえ、10年かけて成立した連邦法がECAです。

〈参考〉
1876年米合衆国大統領選挙

・共和党のRutherford Birchard Hayes氏と、民主党のSamuel Jones Tilden氏が選挙人の獲得本数を巡り、熾烈な戦いを繰り広げた。

・民主党ティルデン氏が一般選挙で共和党ヘイズ氏を破り、選挙人投票でも184票を獲得してヘイズ氏の165票を上回る。

 →しかしまだ集計されてない票が20票あった。

 →フロリダ  州、ルイジアナ州、サウスカロライナ州で、それぞれの党がその候補の勝利を報告、またオレゴン州の選挙人1人は違法と宣言され交代させられる。

 →「3月2日」、選挙人の議論の結果、最終的にヘイズ氏の得票とされる。

 →共和党ヘイズ氏が第19代大統領に就任。
・なお合衆国憲法修正12条には、3月4日までに大統領が決まらなかった時のための規定が用意されている。
  →代行の順位1位は上院が選んだ副大統領、2位は下院議長。

 このように、選挙がより良いものになるように様々な努力がなされてきています。

 ちなみに「ECA」は複雑すぎるので改正が必要、と指摘している文書もあります。より良い方向に改良されてほしいと思うのは私だけではないと思うのですが、3月にはびっくりする法案が登場しました。「H.R.1」という、選挙法を改悪する連邦法の法案は下院で可決されましたが、上院ではさすがに難しいのではないでしょうか。つまり民主党内からも否定の声が出ているということです。透明性を高める、という部分では評価できると思いますが、合衆国憲法に違反しているのではないかという疑いの濃いものです。

〈参考〉
「Electoral Count Act of 1887」

・National Task Force on Election Crises

https://www.electiontaskforce.org/
・「The Electoral Count Act & The Process of Electing a President (About the National Task Force on Election Crises )」
https://static1.squarespace.com/static/5e70e52c7c72720ed714313f/t/5f59223d94b21d2ebe8e6957/1599676990875/Electoral+Count+Act.pdf

「H.R.1」
1)この法案がどれだけとんでもない内容なのか。
・9 Huge Reasons Why HR 1 'For the People Act' Is Disastrous for American Election Integrity – PJ Media/ MAR 04, 2021 12:35 PM ET
(HR1「人民法のために」がアメリカの選挙の完全性にとって悲惨である9つの大きな理由)
https://pjmedia.com/news-and-politics/victoria-taft/2021/03/04/9-huge-reasons-why-hr-1-for-the-people-act-is-disastrous-for-american-election-integrity-n1429917 

2)「The Heritage Foundation」という保守系シンクタンクの発表。
・The Facts About H.R. 1: The “For the People Act of 2021” | The Heritage Foundation/ February 21, 2021 
https://www.heritage.org/election-integrity/report/the-facts-about-hr-1-the-the-people-act-2021 
▼明らかな合衆国憲法違反、過去に連邦最高裁に合憲判決が出た制度を否定する規定が盛り込まれている。 
1、有権者登録の改悪
2、有権者の範囲拡大
3、郵送投票の拡大
4、選挙プロセスの改悪
5、選挙関連訴訟防止
6、その他の改悪



3)しかしバイデン氏は、いつもの大統領令(同氏は就任直後から記録的な数の大統領令を発出)でこれを乗り切ろうとされたようです。
 ・Biden Signs Executive Order Aimed at Expanding 'Voter Access' by Beth Baumann/ Mar 07, 2021 12:05 PM
https://townhall.com/tipsheet/bethbaumann/2021/03/07/biden-signs-executive-order-expanding-voter-access-n2585836 

4)けれどもさすがに保守の州の司法長官は抗議しておられます。実際のレター。
・HR1-Letter-332021 | Voter Id Laws In The United States | Electoral Fraud/  March 3, 2021
https://www.scribd.com/document/497243041/HR1-Letter-332021 
→3/3に、20州の司法長官が連邦議会に意見書を提出。
(IN,AL,AR,FL,GA,ID,KY,LA,MS,MO,MT,NB,OH,OK,SC,SD,TN,TX,UT,WV)
(インディアナ州のTodd Rokita司法長官が中心人物なのでINが連名のトップに来ている)
▼憲法の構造をひっくり返し、
▼州の権限を奪い取り、
▼選挙の手続きを混乱させめちゃくちゃにし、
▼選挙と統治機構の信頼性を損なうことになる!

5)レターの説明。
・20 State Attorney Generals Issue Response To ‘Illegal’ HR1 Election Rigging Law - Conservative Daily Post/ 5:31 PM 5 MAR 2021
(20州司法長官が「違法な」HR1不正選挙法への対応を発表)

https://conservativedailypost.com/20-state-attorney-generals-issue-response-to-illegal-hr1-election-rigging-law/ 
→下院の民主党員は水曜日にHR1、いわゆる「人民法」を可決した。この法案はアメリカの民主主義を根本的に変え、選挙を国有化し、民主党員が次の選挙に負けないことを事実上保証する投票規則に恒久的な変更を加えるだろう。そして37の重要なポイント。

6)ID確認に関する世論調査(有権者対象)。
・Poll: 75% Support Voter ID Law, Including 60% of Democrats/ 17 Mar 2021
https://www.breitbart.com/politics/2021/03/17/poll-75-support-voter-id-law-including-60-of-democrats/ 
→ラスムセンレポート:各州のID確認義務付けを支持する人の割合は、全米で75%(共和党:89%、民主党:60%、無所属:77%)。黒人の有権者の69%が投票者IDを支持する(ただし、差別的と感じる:43%、差別的ではないと感じる:43%)。

7)選挙の完全性は国家の義務。そして選挙制度改革は州レベルで行う、というのが合衆国憲法に定められていること。
・Election Integrity Is a National Imperative | The Heritage Foundation/ Mar 3rd, 2021 
https://www.heritage.org/election-integrity/commentary/election-integrity-national-imperative 

 ↑
 今後、心配ですね…。別に他国のことだから日本人がとやかく言うのはおかしい、内政干渉ではないか、というご意見もあるかもしれません。しかし21世紀の現在、民主主義を守ると強調されている国家において、「自分たちの正義」のためなら手段を選ばない(”Any means necessary”)様相の法案が連邦議会で審議されている現実に、私はびっくりしてしまうのですが、いかが思われますでしょうか。何しろ米国は他国に与える影響が大きいので、あまり変な方向に行ってもらっては困ります。けれども私の先生がおっしゃるように、米国には底力があるので、そこまで心配しなくてもよいのでしょうか…。



 さて気を取り直し、次の節では、選挙の公正を達成するための手段について考えてみたいと思います。

□■□■


2、有権者登録は信用できるのかな…(+複数の問題)

 私は、今回の選挙は公正ではなかったと思っています。
 理由は、前々回「2020年12月1日から Vol.1(仮題)」と前回「同、Vol.2(仮題)」に書いたとおりです。
 特に有権者登録の問題はずいぶんと前から放置されているようです(にも関わらず、有権者登録を改悪しようとする「H.R.1」って本当におかしいと改めて感じる…)。

 2012年のピューリサーチセンターの調査では、米国内の有権者登録のうち2,400万件以上が「無効」もしくは「著しく不正確」であることがわかっています。実に、「8件につき1件」に問題があることになります。

・180万以上の【死者】が有権者として登録されている。

・約275万8千人が【複数の州】で有権者登録されている。(2州=2,688,046名、3州=68,725名、3州以上=1,807名)

・約1,270万人の記録が最新でない。

・約1,200万人の有権者登録データが誤っているため、郵政公社が住所に辿り着けない可能性がある。

・有権者の4人に1人(約5,100万人) が有権者登録していない。

・Inaccurate, Costly, and Inefficient - Evidence That America’s Voter Registration System Needs an Upgrade (Pew Research Center)/ FEBRUARY 2012 
https://www.pewtrusts.org/~/media/legacy/uploadedfiles/pcs_assets/2012/pewupgradingvoterregistrationpdf.pdf

 また州単位で見ても、たとえばジョージア州(スイングステート:知事は「一応」共和党・darkred)では、有権者登録の際の最低居住要件に問題があります。
・州法「同州の合法的な永住者は12/7までに有権者登録をすれば上院選に投票可。身分証は同州発行でなくても良い」
→North Florida大学Enrijeta Shino教授「同州に滞在する意思がなく投票するためだけに引越をするというのは詐欺行為」と指摘し選挙管理委員会に注意を呼びかけた。
→同州に住む気がないのに「投票だけ」しようとした者は、10年以下の禁固刑&10万ドルの罰金を科される可能性があるとのこと。
・12/18、「大統領選「後」に同州に引っ越してきた者の集計をすべきでない」という共和党上院議員候補2名が提訴(連邦地方裁判所)。
 →新規登録者(11/4-12/7:76,000人!)の投票は別に分け、過去に他州で投票をしていないかをチェックするべき。
 →判決「原告適格なし」「州内の調査はできるが他州の調査は無理」と退けた。
 →なお連邦最高裁は過去の判決で「進行中の選挙に関しては介入しない」という判決を出している。
→ということで民主党支持者やCNNは同州への移住を11月からずっと呼びかけていた。


 日本にしか住んだことのない私はびっくりしてしまいます…。
 ちなみに、1月5日の上院議員選挙で当選された民主党のWarnock議員に捜査のメスが入るようなのですが、こちらもGwinnet郡での有権者登録関連の案件だということです。

 ところでGA州では今回、郵便投票に関する選挙プロセスが変更されました。これは民主党と州務長官が決定したものです。この変更には州議会の承認が必要なのですが、それがなされていないということで、憲法違反の疑い(連邦法、州法ともに)があると言われています。これには無人投票箱の設置も含まれています。

 その無人投票箱の件で、市民団体が管理記録(回収場所、回収日時)の開示を求めていますが、どうも不明なようですね。ちなみにその数は404,691票。全体の67.5%にのぼるそうです…。ちなみにこの投票箱設置費用ですが、FBのCEOが350億円を寄付した選挙支援基金団体(CTCL)から25億円がGA州に流れてきており、そのお金で、300以上の無人投票箱が設置されたとのことです。
 
 で、さすがにそれはあかんやろということで、期日前投票に関する様々な改正を含む法案(531号)が、GA州の下院で、97-72で通過、その後、上院(56議席/共34・民22)でも通過し、州知事も無事にサインされたようです。不在者投票には写真付き身分証明書の提出を義務付ける、不在者投票の申請期間、ドロップボックスの設置場所とアクセス時間などなど。

 ちなみにIDチェックの話ですが、GA州民のうち11%がID(運転免許証)を持っていないためこの法案は権利侵害だとして、民主党系の団体が下院の審議中、「議事堂内に侵入」したらしいです。しかし日本と違って米国では、運転免許証の発行にはほとんどお金がかからず、なんなら運転免許センターで免許証以外の身分証明書「NON DRIVERS License」が発行してもらえるし、SSNと住んでいる所に公共の手紙2通証明できれば、「State ID」というのがもらえるらしいです。しかしそもそも米国ではIDが生活上必要不可欠だし、IDが取れないというのは不法移民の場合が多いのでは(レジデントであれば、ホームレスなど無料でもらえるシステムもあるので、手数料の問題より、書類の問題だと思われる)、という意見もありますね…。

〈参考〉
・「2020年12月1日から Vol.1(仮題)」
・Ami Horowitz: How white liberals really view black voters - YouTube/ 2016/11/04
(黒人は直接投票が大変だとか身分証明に抵抗があると言われているけど本当にそうなのか?そんなことないよっていう動画。「かわいそうな人達」とか「社会的課題」を「作り出す」ことによって自分の利益にしている人達というのはどこにでもいる)
https://www.youtube.com/watch?v=yW2LpFkVfYk&t=0s 
・[選挙]軍人の投票方法とアメリカの郵便投票について [日系仮面] - YouTube/ 2021/03/19(2020/10/20)
https://www.youtube.com/watch?v=df-rfa1ccHs 
・郵便投票の問題点や、ヒューマンエラーなど(たとえば、PA州で2万9千近くの間違った投票用紙が送られた等)、概要欄のソースが充実しています。「ちゃんと対策すればアメリカ国民が直接投票できない理由は無い」とファウチ博士はおっしゃっていたのに、強引に郵便投票を進めたことが今回のかなり怪しい結果につながっています。
・日本では郵便が届かないということは滅多にないですが、米国の郵便システムはあまりアテになりません。私も実際に国際郵便が日本に送り返されてきて、また送り直したということがありました(もちろん自腹…)。二回目は無事に届きましたが、受取人が郵便局に何度も確認してくれなかったらどうなっていたことか。

・Georgia House passes GOP bill rolling back voting access/ 2021.03.01
https://apnews.com/article/senate-elections-bills-legislation-elections-georgia-842d9ad16a78901322f4b952f6c0d8dd?utm_source=Twitter&utm_campaign=SocialFlow&utm_medium=AP 

・三つの連邦高等裁判所は、保護すべき権利の範囲を限定している。
2014年 WI州:白人の方がID所有率が高い→「ID取得の機会は平等。それを活用していないだけ」
2016年 VA州:投票にID提示を義務付けするのはけしからん→「投票者IDは無料で発行できるので問題なし」
2016年 OH州:期日前投票の期間短縮と当日登録の禁止。


・Georgia Legislators Addressing Election Vulnerabilities That Fueled Controversy | The Heritage Foundation/ Mar 23rd, 2021
(公民権、民事司法、第一次改正、移民、法の支配、政府改革などがご専門のハンスA.フォンスパコフスキー氏の解説(米国では有名な先生らしい)。同氏は米国選挙支援委員会の諮問委員会並びにGA州フルトン郡の登録および選挙委員会の委員も務めておられたそうです。内容としてはほぼ上述の通りですが、もう1つの重要な規定は、選挙管理人の私的資金提供を禁止することです。Facebookの創設者であるマークザッカーバーグ氏は、GA州を含む全国の地方選挙委員会にこれらの資金を分配する組織(CTCL)に3億5000万ドルを寄付しました。これらはおそらく「無党派」の助成金でしたが、キャピタルリサーチセンターによる分析では、助成金は「戦場の州に拠点を置くために既知の民主党地区を対象とした」ことが示されています)
https://www.heritage.org/election-integrity/commentary/georgia-legislators-addressing-election-vulnerabilities-fueled
・Critical Race Theory Would Not Solve Racial Inequality: It Would Deepen It | The Heritage Foundation/ March 23, 2021
(批判的人種理論は人種的不平等を解決せず、むしろ分断を深めるだろう。:ドキュメンタリー映画製作者で、現在はディスカバリー研究所の富と貧困センターのディレクターも務めておられるクリストファー・ルフォ氏のレポート)
https://www.heritage.org/progressivism/report/critical-race-theory-would-not-solve-racial-inequality-it-would-deepen-it



 違憲の恐れがある法改正が問題となっているのは、GA州だけではありません。

 ペンシルバニア州(スイングステート:現在の知事は民主党)の第77号法案(Act77)の中には選挙法を改正する内容が含まれていました。PA州の憲法では、選挙法を変更する場合、同州の「州憲法」を改正しなければなりませんが、今回、州憲法は改正されていません。控えめに言っておかしいと思います。

 そしてなんと、「同州では州議会が選挙日の午後8時という明確な期限を設けたにも関わらず、州最高裁は期限を3日延長し、投票用紙が選挙日までに郵送された証拠(消印など)がなくても投票用紙を集計するよう命じた。」(Ben Weingarten)とのこと。

 えーーーー!(◎_◎;)

 しかしさすがに、連邦の最高裁判所判事のアリート氏、ゴーサッチ氏、クラレンストーマス氏(全員保守)の「共同意見書」には、「PA州裁判所の判断は憲法に反した【高い可能性】がある」と書かれています。そりゃそうですよね…。(11月6日、アリート判事は、選挙日以降に到着した投票用紙は分けておくようにと命じておられます)

 なお連邦最高裁は2月22日、選挙日の3日後までに受け取った投票用紙の集計を許可したPA州最高裁の判決に係る共和党議員らの訴えに対し、6対3で審議入りをしないと決定しました(審議入りするためには4名の同意が必要)。

 この投稿のはじめのほうでも書きましたが、たまに、このような決定をもって、不正はなかったとか違憲ではなかったとかおっしゃる方がおられます。しかしそうではないですよね。審理がされていないので、どちらかに決まったわけではない、というのが正しい言い方かなと思います。

 そして繰り返しますが、今回も、アリート氏、ゴーサッチ氏、クラレンストーマス氏の御三方は、レビューするべきとおっしゃってくださっていたようです。
「Supreme Court refuses to review #Pennsylvania election cases. No standing before an election, moot after. Justices Alito, Gorsuch, and Thomas dissent from the denial.」(Disclose.tv @disclosetv)

クラレンストーマス最高裁判事(保守・黒人)
●「今回の訴訟は、州議会以外の機関が選挙規則を制定する権限について明確にする理想的な機会である。これを拒否するとは不可解だ」


●「この法廷は何を待っているのだろうか。私たちは選挙前にこの論争を解決し、明確な規則を示す事ができなかった。今回、私たちは将来の選挙についても明確な規則を示せなかった。選挙法を疑惑のベールに包まれたままにしておくという決定は不可解だ。何もしないことによって更なる混乱を招き、有権者の信頼をさらに低下させてしまう」


●「幸いなことに、これまで見てきた事例の多くは、不正行為ではなく、選挙規則の不適切な変更のみを主張している」

●「しかし、これはわずかな安心でしかない。組織的不正の強力な証拠がないことだけでは、選挙に信頼性をもたらすには十分ではない。また、不正行為は必ず暴かれるという保証も重要である」

THOMAS, J., dissenting
https://www.supremecourt.gov/orders/courtorders/022221zor_2cp3.pdf

 私は司法を信じる者ですが、この決定はやっぱり残念な気もします。
 けれども、そもそもこのような法案(州憲法を改正せずに選挙法だけを改正するのは州憲法に違反していることや、3日間延長以外にも問題点がたくさんある)がなぜ通ったかというと、州議会の責任でもあります。共和党が多数派のはずの州議会は、憲法に違反してでもこの法案を通さなければならない「よっぽどの」理由をおそらく提示されてないと思われます。なぜでしょうか…(前述のTimeの記事の中に答えはあるのですが…)。けど、さすがにこれはやばいということで州議会で見直しの動きは出てきているという情報もあるようです。良い方向に動いてほしいなと願うばかりです。

 ということで、PA州では、2019年10月までは下記の郵便投票を集計したら犯罪行為だったのですが、今回は破棄されることなく集計されているということなのです。控えめに言っておかしいと思います…。

・署名なし
・登録されている署名と、郵便投票用紙にサインされた署名が一致しない
・選挙日を過ぎている
・日付を記入していない
・日付がわからない
・インクに汚れがある

〈参考〉
・Supreme Court’s Decision Not to Hear Elections Cases Could Have Serious Repercussions | The Heritage Foundation/ Feb 24th, 2021 
(選挙事件を審理しないという最高裁判所の決定は深刻な影響を与える可能性がある)
https://www.heritage.org/election-integrity/commentary/supreme-courts-decision-not-hear-elections-cases-could-have-serious 
 ・トーマス米最高裁判事、選挙訴訟の却下に反対「明確な規則を示すべきだ」(epoch times)/ 2021年02月24日 18時34分
https://www.epochtimes.jp/p/2021/02/68959.html 
・<オピニオン>誰が選挙の信頼を回復できるのか(epoch times)/ 2021年03月02日 11時13分

https://www.epochtimes.jp/p/2021/03/69112.html 

・米最高裁、投票不正をめぐるパウエル氏の訴えを却下(epoch times)/ 2021年03月02日 20時38分
https://www.epochtimes.jp/p/2021/03/69209.html 

・米最高裁、トランプ氏とリン・ウッド氏の訴え退ける(epoch times)/ 2021年03月09日 19時55分
https://www.epochtimes.jp/p/2021/03/69583.html 
・【速報】米連邦最高裁判所は2020年選挙に関する全ての訴訟ケースで裁量上訴を棄却 -/ 2021/02/22

https://bonafidr.com/2021/02/22/【速報】米連邦最高裁判所は2020年選挙に関する全/ 
・米・連邦最高裁は2020年選挙結果に救済を求める2件の訴訟を棄却——シドニー・パウウェル弁護士がウィスコンシン州とアリゾナ州で起こした訴訟 -/ 2021/03/01
https://bonafidr.com/2021/03/01/米・連邦最高裁は2020年選挙結果に救済を求める2件/ 

・シドニー・パウウェル弁護士がコメントを発表:今週、連邦最高裁判所が2020年の不正選挙に対して救済を求める訴訟2件を棄却したことに対して -/ 2021/03/02

https://bonafidr.com/2021/03/02/シドニー・パウウェル弁護士がコメントを発表:/ 

・自称大統領じじに逮捕歴 連邦議事堂に不法侵入 最高裁裁判の進捗(カナダ人ニュース) - YouTube/ 2021/02/23
https://www.youtube.com/watch?v=cMfhT_DhgGg 
(カナダ在住の日本人、やまたつさんの説明。いつも「ファクトチェック」のファクトチェックや、疑わしいニュースは一次資料や条文等を調べてなるべく正確な情報を配信するべく努力してくださってます。今回はタイトルにある逮捕歴の真偽の説明もしてくださってます。隠語を使わないとYouTubeの変な規約に引っかかってしまいますので、じじとか失礼な言い方になってしまっています)
https://www.supremecourt.gov/orders/courtorders/022221zor_2cp3.pdf
(↑この中の、クラレンストーマス判事の長い意見書も翻訳してくださってます。必見)



 ちなみに、保守派のEd Martinさんの2月5日のメルマガによると、クリスチャンの50%が有権者登録をされていないそうです…。
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Good morning,
If we've learned anything in recent days, it's that we cannot trust Big Tech to let conservatives make a difference on social media. We need to think beyond our smartphones for action going forward. What are you doing now to prepare for future elections? Does your church hold a voter registration drive? If not, start one! 50% of Christians are not even registered to vote. Click below to hear this and more great ideas for what you can do right now to make a difference.
All the best.
Ed

Phyllis Schlafly Eagles – Official Website
https://www.phyllisschlafly.com/
----------------



 それでは署名確認に意味がないかというと、もちろんそうではありません。
 しかしペンシルバニア州では選挙監視人が双眼鏡を使わないと見えない位置から開票作業を監視していたことは左派メディアも報じています(なお数え直し時にも是正はされず)。

 またジョージア州では投票用紙の精査をすることなく単に数え直しだけをして問題なかったと発表していますが、前述のように選挙法是正の動きもあります。WashingtonPostが1月3日に報じた有名な事件、ラッフェンスパーガー州務長官(この方はどこからも支持されなくなり2022年の再選はほぼ無理なようです)とトランプ氏との電話の内容は、切り貼りされた5分のものではなくて1時間ほどある全音声を確認すると、WaPoの印象操作がよくわかります。
 ちなみにこの件とは別ですが、WaPoでは「GA州の選挙に関するトランプ氏の発言が誤報だったとして、大幅訂正(3/15)」が入りました。弾劾裁判のところですでに述べましたが、トランプ大統領がGA州捜査官に圧力をかけたという報道(1/9)に関してです。12月中旬に電話でGA州捜査官に対し「選挙犯罪の証拠を見つけろ」「国民的英雄になることができるぞ」と圧力をかけたと言われているが、GA州当局が管理するPCのゴミ箱内に残っていた音声ファイルを確認したところ、そんなことは言っていない事実が発覚。実際には、「念入りに調査をしてくれ」「君は米国で最も重要な仕事をこなしているんだよ」という内容だったため、WaPoは謝罪をしたとのことです。(3/16 07:27MT, FOXハニティ、ゲストはケイリーマケナニー氏)。なおこの記事は他のいろんなメディアで引用されていますが、訂正をしているところとそうでないところと、あるみたいです。

 そしてニュージャージー州(現在の知事は民主党)では、投票詐欺で4名の男性が起訴されており、そのうち2名は市議会議員です。「自分のものではなく、許可された所有者として識別されなかった」いくつかの郵送投票用紙を調達して所有していた等、主に郵送投票による詐欺などで、選挙法に違反していたようです。

 さらにこちらは、ウィスコンシン州(スイングステート:現在の知事は民主党)の、「州」最高裁の判決です。
・2020年12/14、トランプ陣営の、選挙結果をひっくり返してほしいという訴えを棄却。
【注1】ただし、215,000人が【違法に】郵送投票をしたということは認定。
:WI州の規定では「年齢・病気・障害等の理由の人のみ」がIDチェックなしで郵送投票に申請可能。
→しかし、Dene郡の選挙スタッフは、ID提示にトラブルのあった人を、なんとすべて病気扱いとし、郵送投票の許可を出すという指示!
→さすがにこれは違法…(【注1】の部分)

・前述の結果を受けて、「連邦」地裁に提訴→denied

→「連邦」高等裁に控訴→12/25、棄却
→選挙法違反に関する訴訟は選挙前に起こすべきである(告示前ということ?)
→選挙人に関しての命令は裁判所では出せないので、州議会に掛け合うべきである(三権分立を尊重?これはその通りかなという気もする…)

 なおWI州ではこの他にも、3月上旬の公聴会での下院議員の情報開示請求により、州法に違反した疑いのある事案が発覚しています。Brown郡Green Bay市(以下GB市…Eric Genrich市長は民主党)の開票所のスタッフに、元民主党員で選挙団体を運営している人物であるMichael Spitzer-Rubenstein氏が入っていました(普段はWI州に住んでいないのに、GB市職員のIDを首から下げていた)。州法の規定では同氏が選挙運営スタッフとして働く資格はないとのことです。GB市のKIセンターは郵送投票のメイン集計所であり、GB市は同氏に集計施設の鍵を渡していたのみならず、同氏はKIセンターの現場指揮を執っていたこと(70頁以上もあるメールの証拠)もわかっています。ちなみに同氏は、FBのCEOが350億円を寄付した選挙支援基金団体(CTCL)とつながりがある組織の一員です。WI州は、CTCLから6.3億円の援助を受けているのですが(GA州で25億円でしたね)、そのうちの1.6億円がBrown郡に投入されています。この時に、CTCLは選挙スタッフの人選にも関与していたことが、市長の証言から判明しています。SSIDの件(会場のネット環境がセキュリティ的に驚くべき低レベル)も気になりますし、WI州議会では選挙犯罪の調査をすることが議決されていますので、今後の展開に期待したいところです。

 ところでミシシッピ州(現在の知事は共和党)では、昨年6月に行われた選挙における裁判で、ジェフ・ワイル特別裁判官が、アバディーンの第1区の市会議員席のために新しい決選投票を行うよう命じています。84のうち66、なんと不在者投票の78.5%が無効であり、決して数えられるべきではなかったと結論づけられたためです。同氏が示した「不在者投票の処理方法、投票数のカウント方法、投票所での一部の行動における詐欺と犯罪行為の証拠」(64頁!)によりますと、署名に関する問題がよくわかります。

〈参考〉

・ジョージア州
・The Washington Post Story About Trump 'Pressuring' Georgia Election Officials Was Total Garbage by Katie Pavlich/ Posted: Mar 15, 2021 3:30 PM
https://townhall.com/tipsheet/katiepavlich/2021/03/15/the-washington-post-makes-a-major-correction-about-the-georgia-election-n2586279 
・WaPo's Story About Trump's Call with GA Secretary of State Was Fake. Here's How the President Responded. by Beth Baumann/ Posted: Mar 15, 2021 6:30 PM
https://townhall.com/tipsheet/bethbaumann/2021/03/15/hoax-trump-addresses-the-wapos-fake-story-about-the-phone-call-surrounding-th-n2586295 
・Trump Slams Media After Wash Post Admits Mistake in His Call to Georgia Official | Newsmax.com/  Tuesday, 16 March 2021 02:12 PM
https://www.newsmax.com/politics/trump-washington-post-georgiaofficial/2021/03/16/id/1014025/ 

・ニュージャージー州
Victors Of Mail-In Ballot Election Indicted For Stealing, Faking Votes. - The National Pulse/ MARCH 4, 2021
https://thenationalpulse.com/breaking/mail-in-ballot-election-fraud-indictment/ 
・ウィスコンシン州
Breaking: Judge Rules Over 200,000 Biden Votes Are Illegitimate In Wisconsin THIS IS A HISTORIC MOMENT TO SAVE THE COUNTRY! -/ December 23, 2020
http://americanconservatives.today/breaking-judge-rules-over-200000-biden-votes-are-illegitimate-in-wisconsin-this-is-a-historic-moment-to-save-the-country/
・ミシシッピ州
Judge Orders New Election After Discovering Unsettling Truth About Majority of Absentee Ballots/ March 4, 2021 at 1:09pm
https://www.westernjournal.com/judge-orders-new-election-discovering-unsettling-truth-majority-absentee-ballots/ 



 集計機の問題については、「今回の不正はなかった」と報道している多くのメディアが、過去に主流メディアがドミニオン機(以下、D機器)の欠陥を報道(2017年:NYT、2018年:CNN)していることに、FOXやNewsmaxなどの保守系メディア以外はなぜか触れていません。

 2020年11月、大統領選の直後でしたでしょうか、カナダの選挙管理委員会が「Elections Canada does not use Dominion Voting Systems. We use paper ballots counted by hand in front of scrutineers and have never used voting machines or electronic tabulators to count votes in our 100-year history. (連邦選挙は手集計で実施しています。D機器は使っていません!)」とTwitterで声明を出していたのが思い出されます(ちなみに地方選挙(州単位の選挙)ではD機器を含め機械集計を導入している)。 

 なお、NY22区の下院選の選挙結果は2月上旬にやっと確定され、共和党候補のクラウディアテニー議員が勝利しました。なぜ3ヶ月もかかったかというと、民主党の候補が「集計機に問題がある」と提訴していたためです。集計機については党派問わず問題視されていることがわかります。
 (ちなみに、クラウディア議員の宣誓式に息子さんの同席は許されませんでした。民主党のペロシ前下院議長の判断です。理由は明らかにされていませんが、ロックダウンの解除が進んでいる現在では感染症対策ではないのでしょう。余談ですがこの一人息子さんは、海軍学校卒業で、2017年のイラク派遣の際にトランプ大統領から直接電話を受けておられた方のようです。参考:Claudia Tenney氏のTwitter等)
(余談ですが3月29日現在、アイオワ州第二地区では2020年の連邦下院議員選挙結果(6票差)についてまだゴタゴタしていて、州裁判所に持ち込まずに下院議会委員会に異議申立てをするとのことですがおそらく最終的には裁判になるかなと思われます…)

 また、ニューハンプシャー州(現在の知事は共和党:大統領選挙の予備選挙が最初に行われる州)で、D機器の検査が決定しました。経緯としては、
→NH州下院議会選挙では手作業による再集計(一部のみ)が実施されていた。
→4名の共和党候補者の得票数に、きれいに各6%のズレがあることが判明。
→しかも該当地区ではすべてD機器が使用されていた(NH州全体では75-80%の使用率)。
→そのため、上院議会は全会一致でD機器の検査・メモリーカードの検査を実施することを決定。
→比較のために、州知事・連邦上院議員・州下院議員選挙(全部)も、手作業による再集計を行うことと決定。

 さらに、アリゾナ州(スイングステート:現在の知事は共和党)の上院司法委員会は、Maricopa郡の選挙管理委員会に対してD機器の検査をするよう求め、2月2日から検査(という名のあまり意味のないテスト)が始まっています。
 投票用紙の検査は当初拒否されていましたが、AZ州議会で「完全な検査の強制実施案」が可決されました。AZ州の州法では「一度封印された紙の投票用紙を開けることはできない」と規定されているのですが、選挙管理委員会からの訴え(AZ州上院議会が決議した2つの完全な検査実施の召喚状が違法である判断を求める裁判)をAZ州高等裁判所は棄却し、Maricopa郡が封印した210万票をAZ州上院議会に提供するように命令が出されました。
(参考:日本時間2/27, am03:26「Statement from Senate Republicans on judge's ruling allowing access to election equipment, ballots in #Arizona.」)

 まとめ&進捗は、
上院議会が召喚状→選挙委員会は拒否→召喚状→拒否
→選挙委員会側で検査事業者を選定することを条件に検査実施(後に検査業者の認可が有効期限切れと発覚)
→投票用紙の検査のための召喚状→選挙委員会が提訴→敗訴→業者選定
→投票用紙保管場所のドアが全開(共和党上院議員が「管理がなってない!」と注意喚起もしくは激おこ)
→その翌日、シュレッダーにかけられた投票用紙が施設の敷地内のゴミ箱から発見された。サンプル検査により、2020年の投票用紙であったことが既に確認されたという報道(Gateway pundit)もあるが未確認 。

 ちなみにアリゾナ州では選挙法に関する超重要な裁判が進行中とのこと。Ballot Harvesting(第三者が有権者から票を回収し、投票所や郵便局まで届けること)に関する内容のようです。4年越しの裁判の判決が出るのはおそらく6月頃になる模様。なお、Ballot Harvestingが原因の選挙不正で選挙が無効・再選挙になった事例はこちら。
→1994年PA州、1998年FL州、2004年IN州、2004年NC州。

〈参考〉
・Arizona Enacts Election Reform Bill Containing Heritage Recommendations | The Heritage Foundation/ March 26th, 2021
(月次レビューを法定化。州の有権者登録データベースと年次市民死亡レポートを相互参照する州の既存の年次レビューに加えて行われる。州の有権者名簿の精度が大幅に向上することが期待されている。)
https://www.heritage.org/impact/arizona-enacts-election-reform-bill-containing-heritage-recommendations
・隠れた重要連邦最高裁裁判 AZ州vs民主党(カナダ人ニュース) - YouTube/ 2021/03/03
https://www.youtube.com/watch?v=z-irq0jXe1Y&t=6s 

・Biden's Texas Political Director Accused of Illegal Ballot Harvesting At Texas Supreme Court - National File/ October 18, 2020
(テキサス州最高裁判所での違法なバロットハーベスティングで告発されたバイデンのテキサス州政治局長)
https://nationalfile.com/bidens-texas-political-director-accused-of-illegal-ballot-harvesting-at-texas-supreme-court/

 そして投票用紙の問題がかなり重大なことは、ジョージア州で年末に開かれた公聴会の内容からも明らかです。投票用紙が正規のものかどうか、どこから来た用紙なのか、触った人が喫煙者かどうか、なども調べたらすぐにわかるそうです。
〈参考〉
 12/30,GA州上院委員会の公聴会
・LIVE: Georgia State Senate Holds Meeting on 2020 Election Fraud(Right Side Broadcasting Network) 12/30/20 - YouTube
(1:13:33頃〜後述のハットン氏、3:08:00頃〜「議員さん、動いて!」という魂の叫び)
https://www.youtube.com/watch?v=u5ZP_HpBKos 
・Hutton氏:バーコード等の読み取りや紙に関する専門家。24年間の経験で、ナノレベルで分析する技術をお持ちとのこと。前述のAZ州の投票用紙の検査では、(なぜか)「中立でない」という理由で業者の選定からは外れてしまっておられる。おそらくその理由は、GA州の公聴会で証言しておられるまさにその時に、「ちょうどいま私の友達がD機器のハッキングに成功していますけどー!」と中継されたことかと思われる。正しい方向へ解明しようとする人々がキャンセルされてしまういつものパターン。
https://stanford.academia.edu/JHuttonPulitzer

*


 さらに、ミシガン州(スイングステート:現在の知事は民主党)アントリム郡の法医学監査報告書公開の件です。
 投票報告の矛盾は人為的なミスであり機器の問題ではないという当局の発表が「ファクトチェック」の根拠となっているようですが(2020年12月7日   DailyWire)、第13巡回裁判所のケビン・エルゼンハイマー裁判官は、報告書の結論、つまりD機器は「ミシガン州では使用されるべきではなく」、アントリム郡の結果は「認定されるべきではなかった」ということを承認しています。

 なおミシガン州の地方裁判所の発表によりますと、ジョスリン・ベンソン州務長官は、選挙監視団体が提訴した不正選挙訴訟で示談に応じ、1月末に、17万7,000人の有権者を登録者名簿から削除したとのことです。理由は、同州に居住していない、または州が彼らの住所について問い合わせを行なった際に返答がなかったこと等です。ちなみに昨年11月の同州の認証結果によると、バイデン候補はトランプ候補に対して15万4,000票の得票差で勝利したとされていますが、今回有権者名簿から削除された数は、実にこの得票差より多いことになります。

 同じくミシガン州ですが、同州国務長官(民主党)が不在者投票の規則を一方的に変更したことは州法に反すると3月9日に判示されました。内容は、
→MI州州務長官は、2020年10月6日に出したガイダンスで、署名確認の基準を設けた。
→これは、不在者投票用紙の署名(サイン)に「わずかな類似性」があれば「有効」としカウントして良いものとする、つまり「サイン似てるからOK」にするというわけのわからないもの。
→MI州共和党(原告)が、州務長官の選挙ルール変更は違法だったとしてMI州裁判所に提訴。
→裁判長は、州議会が決めるべきものだったとして、原告の訴えを支持。
→原告は、署名確認の命令も求めていたが、こちらは退けられた。理由は、
・選挙の監査は選挙結果に対して行える(MI州憲法の規定)。
・監査を行うかどうか決める権限は州務長官が有している。

・MI州の選挙改革法案
→州議会は通過する見通しだが、州知事の承認を得られそうにない。
→共和党は知事承認なしでの成立を目指す(340,000人分の署名が集まれば可能)。
改革案
・ID確認:無料の投票者IDを発行する
・投票箱の営業時間厳格化:土曜日に投票所を開く
・郵送投票用の封筒を指定

〈参考〉
・【Antrim Michigan Forensics Report】Allied Security Operations Group / REVISED PRELIMINARY SUMMARY, v2 Report Date 12/13/2020
https://www.depernolaw.com/uploads/2/7/0/2/27029178/antrim_michigan_forensics_report_%5B121320%5D_v2_%5Bredacted%5D.pdf
・Judge Releases Dominion Audit Report: System 'Designed' to 'Create Systemic Fraud'/15th December 2020
 — Court unseals details of audit on machines in Michigan’s Antrim County
https://neonnettle.com/news/13586-judge-releases-dominion-audit-report-system-designed-to-create-systemic-fraud- 
・ミシガン州のアントリム郡、手作業による投票集計でトランプ氏の勝利を確定 – 看中国 / VisionTimesJP/ 2020.12.21
https://www.visiontimesjp.com/?p=12543
・Michigan Removes 177,000 Voters From Voting Rolls After Legal Challenge/ FEBRUARY 16, 2021 6:10 PM

https://freebeacon.com/2020-election/michigan-removes-177000-voters-from-voter-rolls-after-legal-challenge/ 
・Exclusive: The TCF Center Election Fraud - Newly Discovered Video Shows Late Night Deliveries of Tens of Thousands of Illegal Ballots 8 Hours After Deadline/ February 5, 2021 at 7:20am

https://www.thegatewaypundit.com/2021/02/exclusive-tcf-center-election-fraud-newly-recovered-video-shows-late-night-deliveries-tens-thousands-illegal-ballots-michigan-arena/ 

・MI Judge: Sec. of State's Absentee Ballot Order Broke Law, Vindicating Trump/ 16 Mar 2021
(MI州の裁判官は、ジョスリンベンソン国務長官が不在者投票に関連する規則を一方的に発行したときに州法を破り、2020年の選挙への法的な異議申し立てでトランプキャンペーンが行った重要な主張を正当化したと裁定した)
https://www.breitbart.com/2020-election/2021/03/16/mi-court-michigan-secretary-of-states-absentee-ballot-order-broke-law-vindicating-trump-claim/ 
・Michigan court rules that Secretary of State's absentee ballot order broke the law | The Post Millennial/ Mar 17, 2021 5:04 AM EST

(MI州裁判所のクリストファー・マレー裁判長は、州務長官の不在者投票命令(ガイダンス)はミシガン州の行政手続法に違反していると裁定した)
https://thepostmillennial.com/michigan-court-rules-that-secretary-of-states-absentee-ballot-order-broke-the-law 
・ミシガン州のウィットマー知事が州保健局長と「裏取引」を行っていたと報じられる——同州共和党は捜査を要求 -/ 2021.03.02
https://bonafidr.com/2021/03/02/ミシガン州のウィットマー知事が州保健局長と「/ 


 さて、D機器社は複数の各個人やFOXニュースなどに対し名誉毀損で巨額の損害賠償を請求しています。訴えられているうちの一人であるMike Lindell氏(トランプ支持で有名な方)は、2月4日公開の「Absolute Proof(確実な証拠)」に続き、新たな映画「Absolute Interference(確実な妨害)を4月頃に公開すると、スティーブ・バノン氏の番組に出演された際明らかにされました。現在も全米のいたる場所から1日あたり100件のemailが送られてきているそうです。

 また、Look AheadAmericaの事務局長であり、トランプキャンペーンのデータおよび戦略の元ディレクターであったMatt Braynard氏は、「大統領の近代の母」であるオハイオ州(スイングステート:現在の知事は共和党)スターク郡の選挙管理委員会に、「ドミニオン投票装置はブラックボックスなので購入を進めないよう警告するよう求める」という活動をされています。

 ところで、OverStock社の元CEOで調査に定評のあるPatrick Byrne氏の発表によりますと、2020年の大統領選挙の際、外国からのハッキング攻撃により書き換えられた票数は実に200万票以上で、そのうちの1万8,904票は、「日本で」行われていたとのことでした…。

〈参考〉
・マイク・リンデル氏
・投票機械ドミニオン社の告発者2名が選挙不正について名乗り出る——寝具会社マイ・ピローのリンデル社長が明かす -/ 2021.03.28
https://bonafidr.com/2021/03/28/投票機械ドミニオン社の告発者2名が選挙不正につ/ 
・マット・ブレイナード氏
・LAA’s Braynard Calls on Stark County, OH to Reject ‘Black Box’ Voting Equipment Contract – Look Ahead America/ FEBRUARY 3, 2021

https://lookaheadamerica.org/stark/
・パトリック・バーン氏
・Former Overstock CEO Patrick Byrne Publishes Preliminary Data On Foreign Vote Flipping In 2020 US General Election - CD Media/ February 14, 2021
https://creativedestructionmedia.com/news/politics/2021/02/14/former-overstock-ceo-patrick-byrne-publishes-preliminary-data-on-foreign-vote-flipping-in-2020-us-general-election/
・Deep Capture – Investigating naked short selling, economic warfare, and the financial crisis

https://www.deepcapture.com/ 




 以上、ほんの一部ですが、不正の問題や憲法違反の問題など、公正な選挙を確保できているとは言いにくい状況を確認してきました。この他にも、この投稿の「8、不正選挙疑惑関連資料」にてもう少し詳しい内容をご紹介しています。

 現在もコツコツと地道に、「実際に起こっていたこと」を調査してくださっている方々がおられます。さらに、有権者登録の内容を見直したり、選挙法の改正(改悪ではなく改良)を進めたり、今後も続く選挙のために改善の努力をしてくださっている方々がおられます。共和党民主党問わず、州議会がきちんと機能していれば、不適切な法案は通さないとか、怪しげな機械は使わないとか、透明性の高い運用をしようという流れになっていくはずです。そして州議会を動かす原動力はやはり有権者の力だと思います。



 未来を考えることは、「現在を」注意深く見つめなおし、考えなおすこと。しかし私が現在考えていることも、すべてが正しいとは限りません。ですので新事実が明らかになったり、私の考えが間違っているとわかった時には、新しい認識に基づいて改めて考えたいと思っています。

 なお私は日本で生まれて日本で育ち、日本国のパスポート(現在は期限切れですが)を持ち、日本の法を学び日本の国家資格を有しており(ただし登録はしておらず、資格保有者としての身分です)、日本の国益を第一に考えている者です。次の節では日本の状況について考えてみます。

画像4

画像5


神戸市選挙管理委員会からのお葉書。
18歳になった人に送られてきます。
写真はうちの娘に来たものです。

 娘のお友達に来た時は、「葉書を送ってくるのは別にいいけど、選挙に行きやすくなるような対策をしているのかどうか問いたいし、正直、税金はそっちのほうに使ってもらいたいと思う」というような趣旨のことを聞きました。ごもっともですね…彼は今どうしているのかな、娘が引っ越してから連絡を取ることもなくなりましたが、また話ができたらいいな。

□■□■


3、日本の選挙制度はどうかな…(+開票作業の実態)

 日本の選挙では、主に5つの原則があると言われています。

普通選挙
選挙権は、一定の年齢に達した全ての国民に与えられる。
〈憲法第15条第3項〉
 公務員の選挙については,成年者による普通選挙を保障する。

平等選挙
一人に一票。
〈憲法第14条第1項〉
 すべて国民は,法の下に平等であって,人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において,差別されない。
〈憲法第44条〉
 両議院の議員及びその選挙人の資格は,法律でこれを定める。但し,人種,信条,性別,社会的身分,門地,教育,財産又は収入によって差別してはならない。

秘密投票
誰が誰に投票したのかわからないようにする。
〈憲法第15条4項〉
 すべて選挙における投票の秘密は,これを侵してはならない。選挙人は,その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

直接選挙
有権者は公職に就く人を直接選ぶ。
〈憲法第第93条2項〉
 地方公共団体の長,その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は,その地方公共団体の住民が,直接これを選挙する。

自由選挙
政党の組織は自由。選挙運動も自由。有権者は自由意思で投票できる。
〈憲法第21条第1項〉
 集会,結社及び言論,出版その他一切の表現の自由は,これを保障する。

 これを具体化するための法律が、公職選挙法です。

 


 そして日本では、自分で有権者登録をしなくてもいいようになっています。住民基本台帳(住民票)に基づいて、「選挙人名簿」というのが作成されているからです。各市町村では、積極的要件と消極的要件をチェックし、定時登録と選挙時登録がなされています。ですので選挙が近くなれば、特別な事情がない限り、住民票に登録されている住所に、投票所入場券、いわゆる「選挙のおしらせ」が郵送されてきます。もし入場券を忘れて行ったとしても、投票日当日に選挙権があることが確認されれば、その場で投票できます。
 ↓
公職選挙法施行令31条1項

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325CO0000000089
第三十一条 (投票所入場券及び到着番号札の交付)
 市町村の選挙管理委員会は、特別の事情がない限り、選挙の期日の公示又は告示の日以後できるだけ速やかに選挙人に投票所入場券を交付するように努めなければならない。

 便利な制度ですね。しかし盲点もあります。たとえば鳥取県東伯郡北栄町に住民票がある18歳の人が東京都新宿区の大学に入学したとします。ここで、住民票を異動する人と、そうでない人に分かれます。もし大学卒業後は鳥取に帰ることが決まっているなどの事情がある場合、住民票をそのままにしておく人も少なくないようです。(これはもちろん鳥取県民だけの問題ではなく全国でこの問題が指摘されています)

 しかし正当な理由がないのに速やかに住所変更の届出をしない場合は、5万円以下の過料に処されることがありますのでご注意ください。
 ↓
総務省|住民基本台帳等|住所の異動届は正しく行われていますか?
https://www.soumu.go.jp/menu_kyotsuu/important/topics081127.html
(※転入した市区町村に「住民基本台帳事務におけるDV等支援措置」を申し出て「DV等支援対象者」となることで、加害者が新住所を知ろうとして「住民票の写し等の交付」等の請求等をしても拒否される措置が講じられます)

 そうなんです、選挙のたびに鳥取に帰りますかって話なんです。せめて転出先が兵庫県神戸市だったらお隣の県なのでそれも可能かもしれませんが、その交通費は自腹ですからね…。通常であれば、18歳以上で転入届出をした日から3ヶ月以上、住民基本台帳に記録されていれば、その後自動的に登録されるのですが、もし転入届を出していない場合には、その人の登録はずっと北栄町のままなのです。

 念のため。実はこの3ヶ月要件のタイミングの加減で空白ができてしまい、投票できなくなってしまうことがありました。現在はその空白を防ぐために、転出直後の定時登録・選挙時登録の際に、旧住所地において選挙人名簿への登録を行うこととする、というふうに、選挙人名簿の登録制度が改正されています(平成28年6月19日施行)。

〈参考〉
・総務省 公職選挙法改正(選挙人名簿の登録制度の改正法) 概要
https://www.soumu.go.jp/main_content/000457615.pdf
・総務省|選挙人名簿の登録制度の見直しについて

https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/touhyou/meibo_touroku/index.html
・会津若松市 選挙に関するQ&A 引越しした場合はどうなるの? 
https://www.city.aizuwakamatsu.fukushima.jp/docs/2015012900017/files/hikkoshi.pdf

 私は、高知か姫路かどちらか忘れましたが、この3ヶ月要件の空白に引っかかったことがあります。しかし新住所地の役所で旧住所地の役所とのやりとりをしてもらい、無事に投票できました。小さな子どもを連れていたこともあり正直めんどくさいなぁと思いましたが、役所の担当者さんが丁寧に対応してくださって助かりました。現在の住所要件は前述のように改良されていますし、選挙の公正を担保するために必要な制度だと思います。


 以上見てきましたように、「住民票を動かしてないため投票に困る」場合があるにせよ、さすがに「死者が登録されていたり」「複数の県で登録されていたり」ということはなさそうです。データとしては確認していませんが、私は引っ越しのたびに住民票の厳格なチェックを目の当たりにしていますので、かなり信用できるシステムだと思います。つまり、「投票する際にIDチェックもないし本人確認も緩め」という面もあるにはありますが、有権者登録の精度が高いということは少なくとも二重投票は防止できている、ということは言えないでしょうか。



 それでは次に、開票作業の現場で何か操作ができるのかというお話です。正直なところ、日本では難しいと思います。私は実際の開票作業をリアルに見学したことはないですが、実際に立ち会った方から何度か直接お話を伺ったり、現場の写真や動画や文章などを総合しての自分なりの結論です。

 いやそれは違う!カミトク甘い!とお気づきになられた方は、後述の説明のどの部分に問題があるのか、または私がまったくカバーできていない部分などありましたら、具体的にご教示いただけますと大変に助かります。なお、某宗教系の政党が選挙の3ヶ月以上前に住民票を大量に異動させて…というのは、複数の方からお伺いしておりますが、今回は「開票作業」の話ですので直接には関係しないかなと。でも決して推奨されることではないので、次の節でちょっと考えてみます。余談ですがこの政党、NPO関連では良い動きをしてくださるので助かっている一方、国家安全保障の面では頼りにならないどころか憤りを感じる面もあります。政党の支持の難しさを感じます…。

 以下の記事は、選挙の管理執行の実務に44年、開票事務の現場を最もよく知る人物の一人、選挙ドットコム顧問の一般社団法人 選挙制度実務研究会代表理事で選挙管理アドバイザーの小島勇人氏と、選挙ドットコム株式会社 取締役で選挙プランナーの松田馨氏のお話です(肩書きは2018年当時のもの)。

■ネットで騒がれる「不正選挙」本当にできるのか? 選挙ドットコムが徹底追及(前編) | 日本最大の選挙・政治情報サイトの選挙ドットコム/ 2018/1/29
https://go2senkyo.com/articles/2018/01/29/33980.html

前編の内容
・選挙の公正が担保されるための様々な厳しい法制度。
・開票業務にあたる市町村の公務員が不正開票に関わった場合のあまりにも大きいリスク。
・過去に発覚した不正開票はいずれも特定の候補者を勝たせるためではなく、投票した人の数と投票数のつじつまを合わせたかった、というのが主な動機。

・投票用紙は印刷会社において切手や株券と同じ扱いで厳重に作られている。
→選挙管理委員は印刷工場に視察に行き、その際に上がる試し刷りも鍵のかかる保管庫に格納し、絶対に流失しないようにしている。選挙が終わった後は立会いのもとで崩すようにしている。
例1)A市の事件では地検の捜査にあたって「過去の選挙で余った白票」を混入させて隠蔽をはかったが、実は毎回の投票用紙は少しずつ違っているので、すぐにバレた。
例2)北九州方面の選挙で偽造された投票用紙が混入されたことがあったが、やはりこの場合もすぐに発覚している。

・期日前投票が終わった夜には、投票箱に3つの鍵がかかっている。
1)印刷所から投票用紙が届く。
→投票用紙の入った段ボール箱には封緘紙が貼ってあって、途中で開けられないようになっている。
→それを各投票所に分けたり、期日前、不在者投票に使用する際にも複数の担当者が厳格に管理する。
→投票用紙は鍵のかかる部屋で鍵のかかるロッカーに入れて保管する。それぞれ鍵は別々の職員が保管する。

2)公示日や告示日翌日の朝、期日前投票に訪れた最初の投票者には投票箱の中がカラである確認をしてもらって(零票確認)、「一の鍵」「他の鍵」というのをかける。
→「一の鍵」は投票立会人、「他の鍵」は投票管理者が持つ。投票中は投票箱を立会人と管理者が監視する。

3)投票が終わると投票投入口のフタにまた鍵をかける。
→投票箱は鍵のかかるロッカー、鍵のかかる部屋で保管する。
→そのような場所がなければ選挙管理委員会のある市役所に運んで鍵のかかる場所で厳重に保管する。


■ネットで騒がれる「不正選挙」本当にできるのか? 選挙ドットコムが徹底追及(後編) | 日本最大の選挙・政治情報サイトの選挙ドットコム/ 2018/1/30

https://go2senkyo.com/articles/2018/01/30/33982.html

後半の内容
・投票用紙の集計機は、1975年にビルコン(bill counter)つまりお札を数える機械を改良してできた。基本的に変な構造はない。また、機械だけで開票作業をしているわけではないので、書き換えることは不可能。
・投票用紙の集計は2回行うが、機械での集計の際も「別の機械」を使って2回数えなければならないことになっている。
・また、開票の際には各候補者の陣営から、開票作業に不正が無いか公益的立場で「開票立会人」が監視することになっている。
・過去に選管の不正があったことによって開票事務自体が厳しくなっている。例えばA市では開票事務にビデオが導入されている。


 以上が記事の内容です。
 「ムサシが怪しい」というご意見をネット上でよく目にしますが、万が一怪しいとしても、別の機械で再度数えなければならないことや、機械で数える前に人の手で数えた束がどれくらい積まれているかというのを立会人が監視していますので、票の動きが少しでも怪しい場合はすぐにバレてしまいます。そしてこの立会人も、「各候補者の陣営から」選出されていますので、もしこの場で不正が行われるとなったら、この場にいるほぼ全員を買収しなければならず、かなり巨額のお金が動くことになります。まったくありえない、とも言い切れませんが、あまり現実的でないような気もします。

 とはいえ、この投稿の1節「民意は反映されていたのかな…(+Time誌の記事)」でも見てきたように、ものすごく大掛かりなことが仕掛けられていないとも限りません。けれども日本の場合は、世論調査と選挙結果はそんなに乖離していないようですし(JX通信社さんの非常に精度の高い調査には定評がある)、おおむね民意が反映されていると言っても良いのではないでしょうか。


 ちなみに、統計学を使うと不正というのはすぐにバレてしまうようです。(ベンフォードの法則 選挙、などで検索すると興味深い記事が出てきます)

□■□■


4、民意の反映を再び考えてみた(しかし答えは出ず)

 以上、気になる部分だけざざっと見てきました。
 よほど大きな力が働いて、すべての関係者を買収するとか、脅迫メールを山ほど送る、職場に圧力をかける、自宅を襲う、家族ごと脅すとかしないと、不正は起こり得ないような気がします。残念ながら海外ではそういうことはよくニュースになっていますが(そして危害を加えられても屈しない勇敢な方々もたくさんいらっしゃいます)、日本ではあまりそういうことは聞きませんよね。もしかして国民性の違いなのかなという気もしますが、私が知らないだけかもしれません。

 しかし、関係者の方々の努力によって制度も開票作業も公正を担保されたとしても、そもそも投票する人に対する買収問題というのが出てきます。
 ただし日本の場合、この手の事件というのはすぐに捜査のメスが入りますよね。記憶に新しいところでは、河井夫妻選挙違反事件があります。2021年2月5日午前0時に妻の案里氏の有罪が確定し5年間の公民権停止、同時に第25回参議院銀通常選挙での当選が無効となっています。この資金がどこから出ていたのかも明らかになっていますね…。

 けれどもこの場合は、民意が正しく反映されていないといえるのか、それとも、買収されたとはいえ確かにその人の意思で投票しているのだから、それも民意といえるのか、難しいところではあります。

 そして前節でも述べましたように、自分の支持する政党から立候補した候補者に投票しようと思ったら、要するに3ヶ月前までに住民票を異動させておけば問題なく(おそらく合法的に)その選挙区で投票できるわけです。公職選挙法第236条には、「選挙人名簿に登録させる目的で嘘の転入届を提出した場合」の罰則が規定されています。ただし、罰則があるのは嘘の転入届の場合です。つまり、転入届を出す→でも実際に引っ越ししてない、という場合には選挙違反に問われる事になりますが、本当に引っ越しをして、継続して生活している実態があれば問題はない、とされています。

 でももやもやしますよね。しかしこれも、誰かの票を奪って投票したとかではなく、確かにその人の意思で投票しているわけですから、民意とはいえない、と断じてしまっていいのか、決めかねる自分がいます。とはいえ極端な場合は選挙が無効になることもあり、これは当然のことでしょう。しかしたとえば、まったく縁もゆかりもない地で、本当にその地域の将来を考えているのかわからないけれども立候補して当選する候補者もいるわけですので、投票する側だけに厳しい要件を求めるのもどうなのかなって思うわけです。

 「民意」を英語で表現すると、 "the will of the people" (齋藤純一)なのだそうです。willとは意志。意思よりももう少し未来に向かっている感じのする言葉です。どの一票も、願いのこもった一票であってほしいなと思いますが、そのために必要なことってなんでしょうか。たくさんあるとは思いますが、まずは、「自分の一票は無駄ではない」と信じることができるかどうか、というのは大きいと思います。

〈参考〉
・公職選挙法 第二百三十六条(詐偽登録、虚偽宣言罪等)
 詐偽の方法をもつて選挙人名簿又は在外選挙人名簿に登録をさせた者は、六月以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。
2 選挙人名簿に登録をさせる目的をもつて住民基本台帳法第二十二条の規定による届出に関し虚偽の届出をすることによつて選挙人名簿に登録をさせた者も、前項と同様とする。
3 第五十条第一項の場合において虚偽の宣言をした者は、二十万円以下の罰金に処する。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC1000000100
・「当選させるために450人引越しさせますんで」本当にあった不思議な選挙シリーズ | 日本最大の選挙・政治情報サイトの選挙ドットコム/2017/3/27
https://go2senkyo.com/articles/2017/03/27/28530.html
・政治経済:オピニオン:教育×WASEDA ONLINE
https://yab.yomiuri.co.jp/adv/wol/opinion/gover-eco_140210.html

* 

 さて民意といえば、一票の価値の問題があります。

 参議院合同選挙区(合区)は仕方のないことなのかもしれませんが、正直なところ鳥取県出身である私の思いは複雑です。もし鳥取で投票するとなった場合、お隣の島根県のほとんど知らない候補者について調べて、さらに選挙後もほとんど接点がないわけですから、政治がすごく遠くになってしまいそうです。でも、国会議員と地方議員の役割は違いますし、役割分担と考えたらいいのかもしれません。万が一、町議会議員選挙に「全然知らない、他所から来た人ばかり出馬する」ということにでもなったら戸惑いますが、今のところそこまで心配しなくてもよさそうです。

〈参考〉
・これまでの鳥取県選挙区と島根県選挙区が一つの選挙区になりました/とりネット/鳥取県公式サイト

https://www.pref.tottori.lg.jp/258444.htm
・総務省|参議院選挙区選出議員の選挙区及び定数の改正等について
https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/senkyo/san_gouku/ 

・総務省|選挙管理機関
https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo06.html 




 余談ですが、「一人一票実現国民会議」は、「認定」NPO法人なんですね、びっくりしました。(通常は「認証」です。東京都で「認定」を取ろうと思ったらかなり大変なんです…平成31年3月18日に認定されているのですね。おめでとうございます!)
https://www.seikatubunka.metro.tokyo.lg.jp/houjin/npo_houjin/list/ledger/0008952.html

 仕事柄どうしても気になってしまうのでつい提出書類を拝見してしまったのですが…。定款が平成30年に変更されているようです。おそらく法改正に伴い公告の部分を変更されたと推察しますが、収支の文言を収益に変更する作業も同時にされたらよかったかもしれませんね(余計なお節介です、すみません)。会費の滞納は一年までですか…厳しいですね…でももしかして多くの会員さんが(おそらく)弁護士さんなので、滞納とかあんまりないのかもしれないですね。会費の管理は、システムをどうするかという問題も含めてみなさん苦労されるところですので、「一年滞納したら退会」というのは検討してみてもよいかも…。とにかくうらやましいなというのが感想です。

 そして事業報告書と財務諸表。
https://www.seikatubunka.metro.tokyo.lg.jp/houjin/npo_houjin/list/ledger/0008952/8952-JH-R01-I1611539561302.pdf
 8月決算!素敵ですね。会計士さんや税理士さんには高評価だと思います。そして注記ですが、非常に丁寧な説明ですね、素晴らしいです。ただ一点、気になるところ…。特定非営利活動促進法では現在、会計基準は経過措置となっていますので、どの会計基準を採用するのかは自由です。逆にいうと、どの会計基準を採用しているのかを最初に書いておかないと、見る人が比較しにくい、という面があります。おそらくNPO法人会計基準に準拠していると思われますので、以下の文章を入れておかれると親切かなと思います(余計なお節介で本当にすみません)。

1、重要な会計方針    
財務諸表の作成は、NPO法人会計基準(2010年7月20日 2017年12月12日最終改正NPO法人会計基準協議会)によっています。 

〈参考〉
・ 2017年12月改正 NPO法人会計基準の新旧対照表【みんなで使おう!NPO法人会計基準】
http://www.npokaikeikijun.jp/download/kaisei_balancesheet_201712/ 

・初心者向け会計税務Q&A/ 認定NPO法人NPO会計税務専門家ネットワーク(略称:NPO@PRO)
https://npoatpro.org/qa.html
50.税理士・会計士が、初めて NPO 法人に関与する際に気をつけること はありますか?
https://npoatpro.org/user/media/npoatpro/page/qa/QA_50.pdf
「NPO 法人会計基準は、NPO 法で強制されている会計基準ではありませんが、H23 年に内閣府が開 催した特定非営利活動法人の会計の明確化に関する研究会で「NPO 法人会計基準は、現段階において NPO 法人の望ましい会計基準と考える」と報告しています。」

・所轄庁認定・特例認定NPO法人名簿 | NPO法人ポータルサイト - 内閣府

(認定を申請した法人がすべて認定されるわけではありません。しかし、実に半分の法人が取り下げをしている、異例とも言える所轄庁は東京都のみです。奈良県も相当ひどかったですが昨年から改善されてきました。あるきっかけがあったのですが、まさにあれは神風だったなと私は思っています…)
https://www.npo-homepage.go.jp/npoportal/certification
・コングラント株式会社
(データの並べ替え等ができて便利)

https://data.congrant.jp/index.php 


* 

 さてさて余談は終わりまして、このように日本の制度は、完璧ではないにせよ、かなり良いところまでいっているのではないでしょうか。完璧にしようと思ったらガチガチの管理体制にしないと難しいですし、自由との兼ね合いが難しいところかなと思います。また、ネットで投票できたら便利ですが、他国の先行事例の問題点等を見聞きするとなかなかハードルが高いなぁと思います。

 公職選挙法に関して今回は考える余裕がないのでここで触れるだけですが、投票する側ではなくてされる側、つまり被選挙人の選挙運動は、「おまんじゅうはOKだけどケーキはNG」とか、ちょっと意味がわかりにくいものも「かなりたくさん」あることを聞いています。古い時代には適正だったのでしょうが、現代の基準に合わない条文が多いのだそうです。いくつか判例を勉強したことがありますが、司法判断はなかなか難しそうですね。それこそ選挙に一番関係のある立法府で法改正を進められた方がいいと思うのですが、こちらもすぐには難しいみたいですね。良い方向に進んでほしいなって思っています。

 ところで日本の場合、投票するしないは自由です。投票する権利は義務ではなく、文字通り権利ですので、私は投票を棄権する人や白票を投じる人に対し、できれば有効票を投じてほしいとは思うものの、その方のお考えも尊重したいと思っています。

 しかし、投票したいのにできない場合、これは困ります。

 「誰を選んだらいいのかわからない」という場合は、候補者や政党の政策を比較するサイトなども充実してきましたので、選挙公報が配布される前から調べることもできるようになってきました。

 身体が不自由で投票が困難な場合にも、代筆や代理投票、点字投票をはじめ様々な対応策がとられています。しかし改善すべき点はまだまだあるようです。平等に、というのは難しいので、なるべく公平に、を目指したいところですが、しかし選挙の公正を担保するためにはハードルが高いのでしょうね。テクノロジーの発達で良い方向に向かってほしいと願うばかりです。

〈参考〉
・参院選挙、投票所のバリアフリーはまだまだ?障害のある有権者869万人の現状/ 2019年07月17日
https://www.mirairo.co.jp/blog/post-12894
・選挙Q&A(投票) | 東京都選挙管理委員会
https://www.senkyo.metro.tokyo.lg.jp/
・体が不自由な人の投票は? - 広島市公式ホームページ
https://www.city.hiroshima.lg.jp/site/senkyo/14888.html
・身体に重度の障害等がある方の郵便等による不在者投票 | 四日市市選挙管理委員会
https://yokkaichi-city-senkyo.com/absentee-voting/av03/
・選挙に関するよくある質問(選挙Q&A)【選挙権】・【投票】編 | 香芝市公式サイト
https://www.city.kashiba.lg.jp/shisei/0000001056.html
・投票について | 長野原町
https://www.town.naganohara.gunma.jp/www/contents/1355038333409/index.html
・総務省|郵便等による不在者投票ができます

https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/touhyou/yuubin/yuubin01.html
(郵便投票についてはもう少し対象者を広げてほしいと思いつつも、今回の米国での郵便投票であれだけの疑問票が出てきたことを思うと、なかなか悩ましいところではありますね…)


 
 また、日本国外に住んでおられる日本人の投票制度ですが、不平等の問題は徐々に改良されつつあるようです。


 「在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件」という訴訟がありました。
・裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52338

 日本国外に在住する在外国民が、国政選挙における選挙権の行使について、その全部または一部を認めないことが日本国憲法に違反しているとして、当時の公職選挙法の違憲確認と損害賠償を求めた裁判です。

 2005年9月14日、最高裁判所大法廷は違憲判決を言い渡しました。そして原告らに対して、衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙、参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において、在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることができることを確認するとともに、被告に対し1人あたり5,000円及び遅延損害金の国家賠償を命じています。

 なお日本における違憲判決、つまり、法令や行政措置が憲法に違反していると裁判所が認めた判決というのは数が少なく、2021年3月30日現在で、最高裁判所における法令違憲は10、適用違憲は13(第三者所有物没収事件はこちらで数えた、また令和3年2月24日の孔子廟訴訟違憲判決までを数えた)しかありません。今回の判決はその内の一つで、超重要な判決です。ちなみに違憲判決がなぜ少ないかというと、立法の際に違憲にならないように内閣法制局によって事前に審査されるシステムが組まれているからです。


 ここまで、選挙の公正の目的と手段、つまり民意と制度について確認してきました。
 次の節は、投票についてのもやもやです。

□■□■


5、投票する時にもやもやしてしまうのはなぜなのか

 自分にとって選挙は身近なものでした。
 親戚のおじさんが立候補したり、お世話になっている方の町長選挙でウグイス嬢を経験したり、生まれ育った鳥取県に住んでいた時には選挙はいつも生活の延長線上にありました。民主主義がどうとか考えることも特になく、選挙には当然行くもの、と思っていました。

 兵庫県西宮市に住んでいた時、いわゆるジャイアントキリング(選挙の世界では、有利と言われる現職を無所属の新人が破る時など、まさかの結果の時に使われることが多い)と話題になった市長選挙に関わっていたことがあります。3月末で契約社員の任期が切れ、時間に余裕ができた私は、気になっていた候補者さんの選挙を少しだけお手伝いしようと思いました。そこで2014年4月1日に選挙事務所に行ってみたところ、人も物資も不足していることがわかりました。正確に言えば、ボランティアさんの数は多いけれども指揮命令系統の整備まで手がまわっていないという状態でした。ボランティアコーディネーターの経験のある私は、中枢部が最大限の力を発揮できるようにわずかながらの支えとなるべく、投票日の4月20日まで毎日事務所に通いました。実は新しい職場には投票日の1週間前に入社することになっていたのですが、代表から「選挙で忙しいと思うので入社は投票日の翌日からでもいいよ」と提案していただき、ありがたくそのお言葉に甘えることにしたのです。当時小学生だった私の娘は、「これを読んで、いいなと思ったらこの人に投票してください。そうでなくても選挙に行って、いいなと思った人に投票してください」とご近所さんに「マニフェスト」を配ってくれました。

 私が応援していた候補者は現職を破り無事に当選されましたが、任期を全うされることなく愛する街を去って行かれました。議員としては有能だったけれども首長としては難しかったということなのでしょうか。予想されていたこととはいえ残念でした。関係者の方々は当選直後から、最悪の事態を防ぐための方法を考え実行されていました。その苦悩の一端は神戸市に転居していた私のところにも伝わってきており、心が痛みました。けれど、もし現職の市長さんがそのまま当選されていたことのデメリットを考えると、あの時の選択として私は今でも間違っていなかったと思っています。

 それに何よりも、最後だけちょろっと選挙事務所の中だけで関わっていた私とは違い、告示日の一年以上前から広い範囲でずっと活動してきてくださった方々の功績があります。西宮市は転勤族が多く、また行政の支援を必要としない層が一定数以上あることから、市政に興味のある人がそんなに多くありません。ですので投票率も毎回低めです。そんななか、候補者を応援するサポーターの方々が熱心に働きかけてくださったおかげで、「投票する」ことの意味を考える人が増えたことや、草の根的な運動が民意を反映する重大な要素となった証明は、もっと評価されていいんじゃないかなと思っています。

 投票率を上げることが第一の目的というよりも、政治に参加する人が増えることによって、結果として投票率が上がる、というのが正しい順番だと私は考えています。「政治への参加は選挙だけだと思っていたけど、そうじゃないんだ!自分たちは普段から政治に参加しているんだ!」と、多くの人が気がつきました。私も、改めてそのことを考える機会に恵まれました。この時にお世話になった方々には本当に感謝しています。

 常日頃から議会の傍聴をするとか政治家とお話する住民は決して多くありません。しかし、小さな座談会やランチ会などで、普段から相談しやすい関係性を築いておくことは双方にとってとても有益です。特に、国会議員と違って地方議員の場合は、私たちと同じ街に住んでいますし、とても近い存在です。「今まで議員さんは遠い存在だったけど、同じ人間なんですね」と気づいてもらえたら、政治ももっと身近に感じられるのではないでしょうか。政治家は選挙の時だけ働いているわけでもないし、むしろ選挙期間以外に何をしているのか、それこそが重要です。住民と政治家との距離を縮め、より良い政策につなげる、そのための基礎を築いてきてくださった方々がたくさんいらっしゃるのです。

 そうしたことが積み重なると、投票の時に判断する材料が増えますので、自分なりの納得いく投票に近づくこともできるのではないでしょうか。

 今のところ、投票には偏った情報や人情などに左右されにくい意思(または意志)というのが大事なのかなと思っています。しかしこれはなかなか難しいですね。共和政ローマを執政していたはずなのに権威主義的になり恐れられることになったユリウス・カエサルは、「人は見たいものしか見ない」と言ったようです。2,000年以上経った今も「情報の偏りには注意しよう」という注意喚起がなされていますので人の性質はそんなに変わっていないのかもしれません。また、社会の中で生きていくというのは人と関わることにほかなりませんので、人情とはまったく無縁だと言える人もそんなに多くないと思われます。

 投票する時にはたいてい、なるべく自分の意見と近い人を選ぶことになります。しかし自分の意見と「すべて一致」している政策を掲げる候補者はそんなにいません。おそらく自分が立候補するほうが早いでしょう。
 A候補者の、1と2の政策には期待できるけど3を許すことはどうしてもできないとか、B候補者の全体的な考えには賛同できないけど、この政策を訴えているのはこの人だけなのでどうしても当選してほしいとか、この候補者はいい人なんだけど、この政党は嫌いなんだよなとか、投票したいと思う候補者が全然いないので困るとかいうのは、よくあることです。

 さらに、C候補者はいい人なんだけどやりたいことが明確でないとか、逆にD候補者は人当たりが良さそうだからうまく立ち回れるんじゃないかとか、E候補者は友達にはなりたくないけどこういう人でないと魑魅魍魎とした政界では無理なんだろうなとか、有機的な政治の世界の内情を考えると、政治家の資質みたいなものも気になってくるものです。実際に、良い政策を掲げているからといっても一人で進められることには限界があります。地方議員であれ国会議員であれ、政治部門は数の力の府であります。理性の府である司法部門とは違う特質が求められるということは、言えるかもしれません。

 有能な方であったとしても、地域や組織との相性もありますし、すべてにおいて完璧に合致する人などいないわけですから、誰か一人に決めて投票する、というのは本当に難しいことです。結局は、ほとんどの人がいろんな妥協をした上で、もやもやした気持ちを抱えながら「よりマシな」候補者に投票する練習を続けていると言っても良いのかもしれません。

 しかし実は逆のパターンもあります。一例ではありますが、前述した西宮市の市議会議員選挙では、「投票したい人がたくさんいるのに、一人にしか投票できなくて困る」という悩みを話し合ったことがあります。選挙運動を通じて魅力的な議員さんとたくさん仲良くなったことに伴う現象でした。全国的に見れば定員割れしている自治体も少なくないなか、非常に稀な例だと思いますが、非常に幸福な例と言えるかもしれません。「政治家を育てる」という言葉がありますが、前述したサポーターの方々は、まさにそういった面でも活躍されてきたのだと思います。

 当時の話。難聴部会の関係はじめ何でも相談できた議員のSさんは毎回高得票率で当選されていましたので、「今回もおそらく大丈夫でしょう、だから他の人に投票しますね」と言うと、「いやいやそうおっしゃる方が多いんですがそれは危険なので困ります(汗)」と言われ、私もSさんにいてもらわないと困るので、結局Sさんに投票したことがあります。やっぱりもやもやすることには変わりないですね。なお、Sさんには今でもお世話になっています。

 やはり、一人に決める、ということ自体がもやもやの原因のひとつですね、でも代表を選ぶのですから仕方ありません。さらに選挙には様々な思惑が関係してくるわけです。そう考えると結局、「民意の反映」といっても、どこまでが「民意」なのかなっていうのは、答えが出ないままです。

 誰が当選したら正解なのかというのは、当選が確定された時点では誰にもわかりません。任期中は良い政治家だと思っていても何年か経った後に評価が著しく低くなることを私たちはよく見聞きしています。逆に、任期中は酷い評価だった政治家が退任したしばらく後に、その人が蒔いていた種が花を咲かせ、実はとんでもなく素晴らしい人だったことが判明してびっくりすることも、私たちは経験しています。

 いずれにせよ、「一部の権力者が当選させたい候補者ではなく、多数の意見を代表する候補者が当選」することは、代議制民主主義の最低限の条件かなと思います。しかし多数者の横暴に対して少数者の権利を保証するにはどうしたら良いのでしょうか。理想ですが、もし国民のすべてに平等の機会が与えられ、国民はだれでも等しく政治上の発言権をもつことができる状況の中で、正当に選ばれた代表者が政治をする、というような雰囲気の社会だったらどうでしょうか。少数者の意見や声の小さい者の意見も(行き過ぎた配慮ではなく)「正しい方法で」立法や施策に反映されやすくなるのではないかと、私は考えているのですが、どうでしょうか。古代ギリシア人は、俗衆の圧制に対する批評的な意味にも用いられる「デモクラシー」という言葉ではなく、 isonomiā (法の下の平等)とか、 isēgoriā (言論の自由における平等)とかいうような言葉でこの政治理想を示そうとした、といわれています。

 今回の米国大統領選挙の教訓として再掲しますが、「陰謀論というが、それは大企業や権力者(カバル)達が壮大な大統領選の裏で”奮闘”したという点においては事実なのだ」(Time)という言葉は重いものです。そしてこのままこの状態が続いて良いかというと、私はそう思っていません。

 今回のあまりにも疑問の多い選挙を見過ごすことは、代議制民主主義をアップデートしていこうと考えている人たち全員にとって、非常に危険なことだと思います。いつもいつも気にかけるということは難しいけれども、少なくとも「不正はなかったと結論づけることを避け」、そして現在も地道に検証を続けておられる方の活動を自分なりに可能な範囲で見守る、ということくらいならば、できるのではないでしょうか。お金を出さないと応援できないかというと、そんなこともないと思います。

 米国の有権者でない私は「不思議な旅」(Donald John Trump)に参加できないかもしれないけど、でも応援しています。




 私はこの投稿の最初に、「私たちはなぜ投票するのでしょうか。」と書きました。
 その答えとしては、代議制民主主義を選んでいるから、とか、有権者として、また主権者としての責任があるから、とか、いろんな理由が考えられます。
 それに付随するものとして、選挙の公正の目的と手段、つまり民意と制度についても確認してきました。


 でも私はまだやっぱりもやもやしています。
 選挙は、所詮は手続きでしかありません。手続きを適正にすることはもちろん重要視されるべきなのですが、でももう少し何か大事なものがあるような気がします。

 「古代都市国家の市民たちが、その城壁を守るために命をとして戦ったように、わたしたちの強健な市民的な常識が、民主主義を守るのではないだろうか。必要とされるのは感激や熱狂ではなくて、しらふの冷静な勇気である。」(田中美知太郎)


 「市民としての徳」(John Stuart Mill)を学ぶ旅は、まだまだ続きそうです。

 

 それではまたいつの日か。
 どうかみなさま、ご自愛くださいませ。私も気をつけます(^^)




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 鳴門の渦潮は、発生してもすぐに消えてしまいます。でもまたすぐに発生してきます。私は次々と発生する時間帯に合わせて船に乗りましたが、たまには穏やかな時に見に行くのもいいかなと思っています。



 ここまで、私の拙い文章を読んでいただき、どうもありがとうございました。
 
 実はこの投稿の冒頭の疑問は、当初はこれでした。
→「私たちは選挙の時に一票を投じたら、それでやれやれと安心できるのでしょうか。」

 これだけだったら、その答えは否です。今回は珍しく結論が出ているし、1万字くらいにおさまるかなぁと思っていたのですが、日を追うごとに気になるところが次々と出てきて、冒頭の疑問の内容も変更せざるを得なくなり、書き出すとやっぱり長くなってしまいました。それでやっぱり今回も結論は出ていないままということになっています。

 「徳」とか「善」とかを語るだけで政治の世界…もっと言えば私たちが生活しているこの世界を生きていくのは無理であることは、一応わかっているつもりです。けれども今回の投稿には、「高度の演技の世界」「悪さ加減の選択」「偽善のすすめ」(丸山眞男)とか、「偽善の勧め」(渡辺一夫)とか、「小さな悪」「うそ教室のすすめ」(神島二郎)とか、そういったところに踏み込むことはしませんでした。それらが重要な概念だとは思いつつも、もうちょっと違った角度から、もう少し自分の言葉で語れそうな要素を主体にし、考えたいと思ったからです。



 さて次の節からは参考文献として、田中美知太郎先生の書物からの引用です。
 古代ギリシアのアテナイ人の国制のお話です。
(おさらい)
・ソロンの立法(紀元前 594年)により法律上の不平等解消
:国政が少数有力者の恣意によって左右されずに、ただ国憲に従って運用されるべきことをはじめとした、少数者の専断を制限するさまざまな方法が考えられました。
→ペイシストラトスの独裁政治により経済上の不平等解消
→クレイステネスの改革により政治上の不平等解消
:三つの異なる地方の区民が一部族をなし、これが各五十人の代表を出して、五百人の評議会(政務審議会)を形成します。三つの異なる地方とは、一つが都市の区域、他の二つは海岸地方と田舎からとられた区域です。

(余談)この、「異なる地方の区民が一部族をなし」と似たような事例が現在の日本でも見られます。兵庫県神戸市東灘区は洋菓子店や高級スーパーの多い地域ですが、実はだんじりが盛んな地域でもあります。神功皇后を祀る本住吉神社の春季例大祭は毎年5月4日と5日に行われます。このお祭りには、山側の阪急沿線、海側の阪神沿線、そしてその中間のJR沿線と、縦に長い地域からなる「旧住吉村」の合計9地区(観音林地区のみ御神輿)が参加します。なおこの地域は神戸市立住吉中学校の校区と重なっています。北部、南部、その中間、で区切られることの多い阪神地域(主に神戸、芦屋、西宮、尼崎など)において非常に珍しい区割りといってよいかもしれません。おそらく六甲山最高峰付近を源とする住吉川の存在が大きいと思います。古代アテナイの、「後から作られた区割り」とは逆バージョンと言えるかもしれませんが、結果的に似たような状況になっているのは興味深いところです。このあたりのお話、まちづくりや地区の財産管理、また現在の行政区とは別に昔の荘園時代の区割りがまだ残っていることなど、いつか詳しく書けたらよいのですが。そして、今回の投稿では主に権力の話を書いてきましたが、「権威=権力」(神功皇后の時代)と「権威≠権力」(現行の日本国憲法)のお話も、「1、民意は反映されていたのかな…(+Time誌の記事)」での課題と大いに関係してきますので、いつの日か書けたらいいなと思っています。ちなみに私は天皇制には賛成の立場です。
〈参考〉
・【神戸市東灘区】週刊誌に取り上げられて話題!「日本一の富豪村」これが噂の新型コロナ復興支援金「一世帯3万円給付」のお知らせポスターね! | 号外NET 神戸市灘区・東灘区/ 2020/07/24 12:20
https://kobehigashinada.goguynet.jp/2020/07/24/sumiyosigakuenn/
・住吉学園からの手紙|林 万平/Mampei Hayashi|note/ 2020/07/07 10:20
https://note.com/mampei/n/n11ab15697d55


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6、田中美知太郎「第五章 その時代」


 田中美知太郎『ソフィスト』初版(1941(昭和16)年)

 まえがきより抜粋:
 「むかしソフィストの悪名を負わされた人たちが、事実どんな人たちであって、どんな時代に、どんな仕事をしたのかということを、根本史料にもとづいて、直接に著者が見たままを明らかにしたのが、この書物である。べつに新解釈とか、哲学的な見方とかいうものを心がけることはしなかったが、材料の分析が導くままに、普通の見解とは異なるような結論に到着したところもないではない。」
 
 文庫版裏表紙の説明:
 「ソフィストとは「にせものの知識を売物にして人を欺くような言論を試みる者」というような悪名を被されているが、本来はけっしてそのような悪い意味ではないのだというところに、本書の著者は出発点をおく。そしてソフィストの概念を克明に追求して明らかにし、ソフィストが西洋の思想史において持つ意味や果たした役割を積極的に評価し、その上で古来ソフィストに冠せられてきた悪名の由来を丹念に解き明かそうとするものである。」

 引用者註:
 紀元前のお話の解説。今回は自分の文章に関係ある部分だけを引用させていただきましたが、この書物でもっとも重要な部分は前述のとおりです。
 なお、書き写しに関しましては、田中美知太郎先生の著作権継承者である田中氏より、長い引用大丈夫ですと許可をいただいております。


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 「第五章 その時代」

 さて、ソピステースがどういう人たちであったかということは、以上において一応これを明らかにすることができたといえるであろう。しかしながら、ソピステースは、ヘラクレイトスやクセノパネスのような孤高の存在ではなかった。かれらはプラトンの『プロタゴラス』に描かれているヒッポクラテスのような青年の要求に応じて、「人間として、また国家社会の一員として、ひとがすぐれた者となるための徳」を授けることを仕事とする人々だったのである。したがって、このような教育目的も、かれらが自分たちだけで考え出したものとは信じられないのである。すなわちわれわれはこういう教育が求められる時代と社会についても、一応考えてみなければならないであろう。

 かれらの時代については、最初のソピステースであったプロタゴラスの年代を、すでに見られたように、紀元前五〇〇 − 四三〇年頃と見ると、その活動は四十年間と言われたから、ソピステースの時代は四七〇年頃から始まると考えることができるであろう。それはペルシア戦争が終ってから約十年の後で、アテナイのペリクレス時代(四六一 − 二九年)が始まる少し前であった。だいたいにおいて、プロタゴラスの時代というものは、ペルシア戦争(四九〇 − 七九年)とペロポネソス戦争(四三一 − 〇四年)の間にはさまれたいわゆる五十年期で、ギリシア史の最も光輝ある時代であった。これに対して、ゴルギアスの登場は四二七年以後であり、ヒッピアスの活動はプロタゴラスの晩年(四三〇年近く)に始まっている。これらの人々がソクラテスの死の年(三九九年)になおソピステースとして働いていたことは、すでに見られたとおりである。そしてこれらの人々が経験したペロポネソス戦争というものは、あらゆる不幸な戦争の典型であった。すなわちわれわれは、プロタゴラスの時代において、ペルシア戦争後の興隆アテナイを見、ゴルギアス・ヒッピアスの時代において、ペロポネソス戦争の結果没落するアテナイを見るわけである。簡単にいえば、ソピステースの時代はアテナイの興隆から没落までの時代を中心とするものなのである。そしてかれらがこのアテナイとそれぞれ密接な関係をもっていたことは、すでに見られたとおりである。事実、かれらが世界の歴史に記憶されているのは、かれらの出身地のためではなくして、かれらがアテナイという光明の舞台に登場したためなのである。

 ところで、この時代において、特にソピステースの教育が要求されるようになった、その事情はいかなるものであったろうか。われわれはこのことを理解するためには、むしろソピステース以前の時代に溯って、ソピステースの時代が生まれてくるそもそもの原因を明らかにしなければならない。ソピステースの周囲に集まってきた青年たちは、『プロタゴラス』のヒッポクラテスがそうであったように、多くは名家の子弟である。これはソピステースの要求する報酬額が比較的大であったことからも想像される事実である。ために悪名としてのソフィストは、金持の青年を獲物にして金儲けをする者のように考えられていたのである。ところで、これらの青年たちが求めるところのものは何であったかといえば、ペリクレスのごとく「言論においても行為においても最も有能有力の人」となって、国政を料理する手腕が欲しかったのである。しかしこのような手腕が何ゆえこの時代において特に求められたのであろうか。

 昔であったならば、かれらは当然その家柄によって国家枢要の地位につき、何びともその手腕を云々するような者はなかったはずなのである。アリストテレスの『アテナイ人の国制』第三章の記すところによれば、古い時代においては、「役人は名門や富裕者の間から任ぜられ、最初の時代は終身、後の世になって十年間勤める定めであった」ということである。役人のうち最も重く最も古いものは、アルコーン(長官)の三役で、そのうちバシレウス(王)の名をもって呼ばれているアルコーンの地位は、昔は実際の王の地位だったのである。むろん、この王は中央集権的な近代国家の君主ではなかった。それはホメロスの物語に出てくるアガメムノン王のごとく、戦争や祭事に関してはすべての人の王のごとくであるが、しかし直接に支配しうるのは自己の家族、家士郎党だけで、他の人々はまた別に主人をもっていて、王はこれらの人々をただ間接的に支配するにすぎなかったのであろうと想像される。人々は何よりも氏族に属し、それ以上の統一体には直接に属さなかったのである。しかしたびたびの外敵の来襲や氏族間の紛争調停などは、最有力氏族の長であった王の地位にますます多くの重みを加えることになったであろうと想像される。いずれにしても、王の仕事が重要性と複雑性を増加するに及んで、これを輔佐するために軍事専門のポレマルコスが設けられ、さらに後には政治の実務は政務長官ともいうべき狭義のアルコーンの手にうつり、王は祭事と司法の一部をみるにすぎなくなったことは事実のようである。しかしこのような由来の三役であるから、これが古来有力氏族の独占するところとなっていたのも、またもとより怪しむに足りないであろう。アルコーンにはさらに六人の司法関係の長官(テスモテタイ)が加わって、総勢は九人となったのであるが、その資格は依然として制限されていた。その任期も一年ということになったが、しかし任期を終えたアルコーンたちは、アレイオス・パゴスの審議会に終身官の地位を得て、国政に重大な発言をなすことができたのである。

 しかしながら、これらはソピステースの時代においては昔の夢に過ぎなかった。これらの貴族的な地位はまったく有名無実で、ペリクレスのような人が実際に国家を支配したのは、これらの地位によってではなかったのである。青年ヒッポクラテスにとって、家柄や財産は、ひとが国家有数の人物となるためには、それだけではほとんど何の足しにもならないもののように思われたのである。これにはいったいどういう事情の変化があったのであろうか。

 アテナイにおいて、このような変化がはっきりと現われてきたのは、ソロン( Solon, c. 640 - 558 B.C. )の立法(五九四年)以来のことであって、それはゴルギアスやヒッピアスなどのソピステースたちが活動中であったソクラテスの死の年(三九九年)からおよそ二百年以前のことであった。ソロンの時代まで、国家権力のすべては上述のごとく少数貴族の手中にあった。のみならず、富の一切もまたその少数者の手中にあったのである。アリストテレスは前掲書( Athen. resp. II )のうちにおいて、当時のアテナイの国内情勢を、「その国家体制は他の点でもすべて少数者だけが支配するようになっていたが、なかでも貧しい人たちは、自分たちばかりでなく妻子までも富める者の奴隷となしていたので、名門の人たちと一般大衆とは久しきにわたって反目抗争するような結果になった。土地はすべて少数者の手中にあって、賃借料を支払わぬ者は、当人もその子供も奴隷となるのが一般であった。そこで当時の国家体制のもとにおいては、この奴隷となっていることが大衆の最も苦痛とし、また忍び難しとなしたところなのであるが、しかしその他にもいろいろの不満があった。なぜなら、かれらはいわば何事にも参与しえなかったから」と述べている。ソロンはこのような情勢のもとに、五九四年選ばれてアルコーンとなるや、まず応急の措置として公私一切の負債を帳消しにしてしまい、以後ひとの身体を担保として金を貸すことを禁止する法律を発布したのである。かれはこれによって人が負債のために奴隷となることを救おうとしたのである。他方、かれは国政が少数者の手に一元化されていることの不満を緩和するために、新たに国民の代表として選ばれた四百人の評議会(政務審議会)を設け、また別に民衆裁判の制度を始めるなど、いろいろに政治を多元化して、少数者の専断を制限する方法を講じた。

 しかしながら、かれの仕事として最も大きな意味をもつと考えられるのは、国政が少数有力者の恣意によって左右されずに、ただ国憲に従って運用さるべきことを定めたということであろう。「かれは国憲を定め、その他の法律を発布し、かつその法律はこれを廻転板に記録して、バシレウス(アルコーン)の役所のある列柱館に立てた。そしてすべての者はこれに従うことを誓った。すなわち時のアルコーン九人は、中央広場の石の祭壇に誓いを立て、もしこの法の何なりとも犯した場合には、黄金人像を献納する旨を宣誓した。これが今日もなお行なわれる誓いのそもそものはじめなのである」( Athen. resp. VII )とアリストテレスも述べている。国家の政治は法律の明文によって行なわるべきであって、たまたまアルコーンの職についた者の無責任な意志によるべきではないということ、すなわち国法が国家の主人であるということ、このことがソロンによって原則を明らかにされたのである。しかもこの国法の前には国民のすべてが平等なのである。エウリピデスはアテナイの誇りとして、このことをテセウスに語らせている。「国家のために独裁者ほど悪〔にく〕むべきものはない。かれのもとにあっては、公けの法律が第一位を占めずに、ただ一人の人間が法律を自分のところに独占して権力を振う。そこにはもはや平等というものがない。これに反して、法律の明文が厳存するところでは、力弱い者も富める者と同じ権利をもつ。弱き者ももし誹謗されるなら、勢のよい者に同じ言葉を返すことができ、弱小者も正しければ大いなる者に勝つ」( Suppl. 429 - 437 )というのである。国法がたえず恐怖の念をもってその意志を忖度しなければならないような権力者の気まぐれな命令ではなく、だれでも安心して保護を求めるためにそれに訴えることのできるような明文であるということ、このことがソロン立法の精神であった。かれは大衆の弱さに多くの助けが与えられなければならぬと考えて、ひとが不正を受けて訴えることのできない場合には、だれでもその者に代って訴えをすることができるようにした( Plutarch., Solon 18 )と言われ、アリストテレスは( Athen. resp. IX )これをソロンの三つの政治上重要な事績の一つに数えている。国民がだれでも同胞の不正な目にあっているのを他人事として看過しえずに、これをわが身の上のことのように堪え難く思い、これを国法に訴える、その公共的精神が正しい国政のもとである( Plutarch., ibid, ; Diogenes Laert., I. 59 )とソロンは考えたのである。

 しかしながら、ソロンの仕事は主として立法家の仕事であって、実際はなお原則だけに止まるものが少なくなかった。たとえば、身体を抵当とする金銭の貸借はソロンの法律によって禁止され、ひとはそのために奴隷となることを免かれるようになったと見えるけれども、しかしそういう条件でもなお借金をしなければならなかった貧しい大衆の生活は、このような法律だけでは少しも改善されなかったのである。したがって人々は法律上の平等( isonomiā )のほかに、なお経済上の平等( isomoiriā )を求めて抗争し、これの解決のためには一時的なペイシストラトスの独裁政治をも必要としたのである。同様に、政治上の平等ということも、ソロンの改革ではまだ充分でなかった。国政に対するアルコーンやアレイオス・パゴス審議会の発言権はなおきわめて大であり、これらの人びとの資格は依然として制限されていた。またこれに対して新しく創始された四百人の評議員も、古い四部族制を基礎としているため、旧勢力が不当に多く代表されて、まだ国民の総意を政治に反映させるに足りなかった。すなわちアテナイ人は古く四つの部族に分けて組織されていたのであるが、その部族は氏族という血縁団体を基礎とするものであった。一つの部族( phȳlē )は三つの小部族( trittys )から成り、その小部族の下に多数の氏族( genos )を包括するものだったからである。四つの部族というのは一年の四季に倣ったもので、小部族の数は各部族に三つずつあるから、総計十二で、これは一年の月数十二ヶ月に応ずるもの、各小部族の下に含まれる氏族の数は、一月の日数と同じく三十であった( Aristoteles, Athen. resp. Fr. 3 )とも言われ、小部族はまた兄弟団( phratriā, phatriā )とも呼ばれている。これらの事柄はかかる区分の原始性を暗示し、古い由来を物語るものと見ることができるであろう。しかしながら、政治がこのような古い制度にもとづいて運用されるということは、古い家柄をもたない人々にとってはなはだ面白くないことであった。ペイシストラトス一派の独裁政治というようなものも、一部分は、このようなことを原因としていたのである。ペイシストラトスはその徒党のうちに、素姓の明らかでない者どもを加えていた( Athen. resp. XIII. 5 )と言われている。

 これらの諸懸案に一応の解決を与えて、ソロンの政治原則( isonomiā )を徹底させたのは、クレイステネス( Clisthenes )の改革(五〇八/〇七年)であって、ソロンの改革以後一世紀に近い歳月を経てからのことであった。かれは過渡期のペイシストラトス独裁制や、その顚覆後に復活された少数貴族の反動政治などに対する闘争者として、亡命生活を余儀なくされたことも一再にとどまらなかった模様であるが、ついに国民大衆の圧倒的支持を得て、政治組織の根本的改革を断行したのである。しかしながら、かれは観念的ないわゆる革新論者のごときものではなかったから、古い歴史をもつアルコーン制をただちに廃止するとか、あるいは氏族そのものに手を触れるとかいうようなことはしなかった。ただ、氏族が国家組織の単位となっていて、政治がその基礎の上に行なわれるというような点に根本的な改革を加えて、実質上アルコーン制や氏族制を無力なものとしてしまったのである。かれが新しい政治体制の基礎に選んだものは、氏族のような血縁団体ではなく、区( dēmos )によって分けられた地域団体であった。

 アテナイを中心とするアッティカ全土は、紀元前三世紀において、一七四の区に分けられていた( Strabo, IX. 396 )と言われるが、それはクレイステネスの時代の数と大差ないものであったろうと思われる。そしてクレイステネスの新体制では、国民はもはやどういう家柄に属するかというようなことを問われずに、ただどこの者であるかということを問われるようになった。人名はこれまで父称とともに「誰々の子何某」と唱えられたものが、以後はただ「何々区の人何某」と呼ばれるようになった( Athen. resp. XXI. 4 )とも言われる。そしてこのような区民としての資格において、国民は政治の実際に参与することができるようになったのである。生まれた家柄が特権をもたらす貴族政治に対して、われわれはここに生まれた地区が平等にあらゆる政治上の権利を保証するデモクラシー( dēmokratiā )というものを見る。デモクラシーとは dēmos (区、区民大衆)の優位( kratiā )であり、区民という資格がすべてであるような政治を指すのである。ただし、デモクラシーという言葉は、俗衆の圧制に対する批評的な意味にも用いられるので、ギリシア人はやはり isonomiā とか、 isēgoriā とかいうような言葉でこの政治理想を示そうとするであろう。意味は国民のすべてに平等の機会を与えるとか、国民はだれでも等しく政治上の発言権をもつとかいうようなことを指すのである。したがって、多数者の横暴に対して少数者の権利を保証することにもなるわけである。実際、反民主派の人々さえもこの語をスローガンに選んでいる。

 ところで、クレイステネスの改革の実際はどういうものであったかというと、かれはまずこれまで四つの部族に分けられていた国民を十部族に分けることを試みた。そしてその各部族は、これまでと同じように、さらに三つの小部族に分けられた。慎重な改革家であったクレイステネスは、ここで昔のままの部族( phȳlē )とか三つの小部族( tritys )とかいう名前を用いているけれども、その実はまったく異なるものであった。なぜなら、昔の小部族は氏族から成っていたけれども、今の小部族は区民から形成されているからである。そして氏族は同時に地方的勢力でもあるので、これの対策として、一年十二ヶ月になぞらえた昔の十二小部族に対して、これとは対応しない別の十部族をあらたに分け、それと同時に各部族を構成する三つの小部族は、一つを都市の区域からとり、他の二つを海岸地方と田舎からとるようにした。そしてこの三つの異なる地方の区民が一部族をなし、これが各五十人の代表を出して、五百人の評議会(政務審議会)を形成するのであった。これはソロンの四百人評議会に代るものであるが、政治上の実権ははるかに大であった。なぜなら、一年は十期に分けられ、その一期(三十五日ないし三十六日)を十部族の代表各五十人ずつが交代で、国務を総覧し、事実上の中央政府となっていたからである。

 この五十人の執行委員はプリュタネイス( prytaneis )と呼ばれ、その委員長は毎日交代した。しかも五百人評議会員の任期は一年で、同一人の再選は一度以上許されなかった( Athen. resp. LXII. 3 )から、選挙と抽籤によって国民のほとんどすべてが政府の要人となる機会をもったわけである。これは国民全体に政治教育をほどこすことであり、政治的才能のある者に対しては、大成に必要な機会と経験とを恵むものであった。事実、ペルシア戦争前後のアテナイは幾多のすぐれた政治家を輩出したのである。そして国民全体のこのような政治的進出に対して、特権階級のアルコーンやアレイオス・パゴス審議会などが後退を余儀なくされ、全くの名目だけの機関とならなければならないのもまた自然の勢であった。アルコーン三役のうち軍事を統帥するポレマルコスさえも、その実権は十部族から選出される十人の将軍の手に移ったのである。

 ところで、ソピステース時代のアテナイであるが、それはクレイステネス改革から半世紀以上を経た後の時代に属するのではあるが、その政治体制はだいたいにおいてクレイステネス時代と異なるものではなかったようである。否、いわゆる民主政治の欠陥を歴史家によって指摘されるペロポネソス戦争の苦い経験にもかかわらず、アテナイ人はその戦争後においても永く同じ政治体制を保っていたのである。アテナイ人にとっては、それはペルシア戦争におけるマラトン(四九〇年)サラミス(四八〇年)の輝かしい勝利の原因であり、ペロポネソス戦争期においてさえ、シシリイ島遠征の失敗(四一三年)後も、なお十年間も最も不利な条件の下に孤立して頑強に戦うことができたのは、政治が真に国民のものであったからであると思われたであろう。ヘロドトスは( V. 78 )アテナイ人を最強の国民としたものは、国民のすべてが直接政治に参与するその国家体制にあることを断じている。いずれにしても、われわれはアテナイというものを、この政治体制から離して考えることはできないであろう。

 アテナイにおいて、ソロンの改革(五九四年)からソクラテスの死の年(三九九年)までの間に、いわゆる民主制が停止されたのはおよそ三回ほどである。そのうち二回はペロポネソス戦争期に生じたもので、第一回は四一一年に四百人の人間がアテナイの政権を独占した時である。これはアテナイがシシリイ遠征に失敗して、海軍兵力の大部分を失ってしまった時、スパルタとペルシアの同盟の報が伝わり、戦時緊急の処置として、ペルシアとの外交関係を調整するために、民主制を修正することが必要と認められるに至った形勢を、一部の極端派が利用したものであった。それはソロンやクレイステネスの政治を排撃して、国制をドラコン( Draco, c. 621B.C. )の古〔いにし〕えに復すと称していたけれども、その四百人も最初はクレイステネスの定めた十部族から四十人ずつを出す( Athen. resp. XXXI )もののごとくであった。ちょうどこの年にはアリストパネスの有名な『リュシストラテ』(女の平和)が上演され、長期戦に倦んだ人々の心には平和の希望が浮び、その期待が反民主派すなわち親スパルタ派とも考えられる人々の独裁をも一時は可能にしたのではないかと思われるのであるが、かれらはそれにも失敗し、四百人政権はわずか四ヶ月( Athen. resp. XXXIII )存続したに過ぎず、翌年には完全に民主制が回復されたのである。第二回の独裁制は、四〇四年のアテナイ敗戦の直後、スパルタの武力を背景に、クリティアス等三十人が樹立したものであるが、これもきわめて短命で、翌年には民主制が取り戻されたのである。

 これらの場合に比べると、ソロンとクレイステネスの間に現われたペイシストラトス( Pisistratus )父子の独裁政治はかなり長期にわたるものであった。かれが親衛隊を率いてアテナイの中心アクロポリスを占領したのは五六一年頃で、かれの子ヒッピアスがアテナイを追われたのは五一一年頃だからである。ただし、最初のかれの独裁制は五年くらいしか続かず、その後は十四、五年も海外に亡命して、五四〇年にようやく武力による政権獲得に成功したのであるから、その政権は前後を通じて実際のところ三十五年くらい続いた勘定になる。アリストテレスは『政治学』第五巻第一二章(一三一五b一一以下)において、この種の独裁政治が一般に短命であったことを述べているが、しかしペイシストラトスの場合はその例外をなすものであった。このことの主要な原因は、かれがソロンの懸案であった経済上の不平等をある程度まで是正することに成功したためではなかったかと思われる。もともとかれの独裁制は、観念的な復古思想や少数貴族の特権意識から生じたものではなく、ソロンの改革によっても救われなかった貧農その他の不平分子の極端に民主的な要求を背景とするものだったのである。かれの率いていた山岳党は、海岸地方の民主正統派にも、また寡頭政治を求める平原党の一派にも対立するもの( Athen. resp. XII. 4-5 )だったのである。ホメロスの原文校訂事業や悲喜劇の上演に重大な意味をもつアテナ神やディオニュソス神の祭礼は、ペイシストラトスから特別の保護奨励を受けたのであるが、それは氏族的祭礼の代りに全国民的祭礼をさかんにする意図の下に行なわれたのであって、クレイステネス改革の精神的準備をなすものであったと解されるであろう。ペイシストラトスの政治は、アリストテレスが繰り返し( Athen. resp. XIV. 3, XVI. 2 )述べているように、きわめて穏健で、自己独裁的というよりは、むしろ国家本位、国民本位であった。かれは自己のために何らの特権も設けず、ひとに訴えられた時、自分で法廷に出頭して弁明を試みた( Athen. resp. XVI. 8 )と言われている。かれの経済政策、なかんずくその農業政策の成功は、後の人をしてかれの治世をクロノスの治世(黄金時代)とも考えさせるほどであった。しかしながら、かれの独裁政治は要するに過渡的現象に過ぎなかった。それは経済問題の解決とともにその任務を終えて、つぎのクレイステネスの改革に場所を譲らなければならなかった。クレイステネスは有名な陶片追放(オストラキスモス)の制定によって、独裁政治がふたたび起ることを防いだのである。

 以上によってわれわれは、青年ヒッポクラテスが、国家有数の人物となるためには、家柄と財産だけでは足りないということを認めなければならなかった当時のアテナイがいかなる国家であったかということを、一応その基本的な点に関して明らかにすることができたと信ずる。しかしながら、これは一人のアテナイ青年ヒッポクラテスの立場の説明とはなっても、まだソピステースたちの立場を明らかにするものではないと考えられるであろう。アテナイ人ならぬソピステースたちが、海を渡ってこれら青年たちのためにアテナイへ集まってきたという事実は、アテナイの内政をどんなに調べてみても、それだけでは説明できないことだからである。われわれはここにおいて、アテナイの国際的地位というものを考えてみなければならない。それはペルシア戦争とともに重大な変化を遂げたのである。

 ペルシア戦争期において、アテナイはマラトン(四九〇年)サラミス(四八〇年)などの勝利によって、ペルシアのギリシア本土侵略を撃退したばかりでなく、さらにミュカレの海戦(四七九年)セストスの占領(四七八年)などによって、イオニアや黒海地方のペルシア勢力を駆逐して、その地のギリシア人都市の独立を回復したのであるが、戦後これらの諸都市と多島海各地のギリシア人都市とは、アテナイを盟主として同盟を結び、アテナイ海軍の保護を受けることとなった。これが有名なデロス同盟である。ところが、その同盟国の大部分は独立の海軍をもたず、アテナイ海軍のために年々献金し、アテナイと同じ政治体制を採用し、後には重要な事件をアテナイの法廷に訴えることとなったので、ほとんどアテナイの属領のごときものとなった。したがってアテナイは、アッティカ一国の首都ではなく、その数約二百六十五から三百にも上るデロス同盟諸国に君臨する大帝国の首府となったわけである。しかもその支配は空虚な軍事的支配や形式的な政治的統治に止まるものでなく、さらに経済的文化的なものであった。同盟諸国の献金はアテナイの主要な財源であり、各地の産物はアテナイを中心に集配されたのである。なかんずく、黒海地方はアテナイの宝庫であった。そして前世紀から地理的条件に恵まれて地中海貿易にいちじるしい進出を示してきたアテナイは、トゥリオイ市の建設やレオンティノイその他との同盟によって、西方シシリイ島や南イタリアにも勢力をのばしてきたことは、すでにゴルギアスのことに関連してわれわれの見たところである。

 ソピステースたちが政治経済の中心地たる、繁栄の都アテナイを訪れたということは、かくて充分理解しうる事実となる。プロタゴラスの故国アブデラも、プロディコスの故国ケオスも、エウエノスの故国パロスも、トラシュマコスの故国カルケドンも、エウテュデモスの故国キオスもみなデロス同盟に加わっていたのである。かれらがこの大帝国の首都を訪れて、青年たちのために治国斉家の道を説く光景は、われわれの想像にとってけっして困難なものではないと言わなければならぬ。のみならず、ゴルギアスが故国を去って後に移り住んだテッサリアも、ヒッピアスの故国エリスも(四二〇年以来)アテナイの盟邦であった。われわれはソピステースの各地巡歴を同一の文化圏内に想像しうるであろう。

 デロス同盟の各都市がアテナイの国制に倣ったことはすでに述べた。しかしこの政治傾向はこの範囲に止まらなかったもののようである。アフリカのキュレネ、ペロポネソスのアルゴスやエリス、アッティカの隣国ボイオティアなどにも民主制が実現し、スパルタにおいてさえ同じ政治運動が奴隷の叛乱(四六四 − 六一年)となって現われたのである。さらにソピステースが最も多く訪れたと思われるシシリイ島においても、四八〇年ギリシア本土へのペルシアの来寇と時を同じくして、シシリイ島のギリシア人たちがカルタゴ軍の来襲によって最大の危機に直面した時、これを撃攘したのはシュラクサイの独裁者ゲロン( Gelon )であって、その権勢は絶大と見えたのであるが、かれの後を襲った弟ヒエロン( Hieron )の死(四六七/六六年)の後には、独裁制が倒れて民主制がこれに代ったのである。哲学者エンペドクレス( Empedocles )が、テロン( Theron )政権の圧迫から開放されたアクラガス( Agrigentum )において、民主派の政治家として活動したのもこの頃であったであろう。事情は南イタリアにおいても同様で、ほとんど全部のギリシア人都市が民主化された模様である。

 しかしながら、これらの場合がすべてアテナイと同じ成果を収めたとはいわれない。ゴルギアスの故国、シシリイ島レオンティノイにおける独裁派のクーデターがゴルギアスの生涯にどんな影響を及ぼしたかは、すでに見られたとおりである。シシリイ島のアテナイともいうべき大都市シュラクサイにおいても、民主制が布かれて以来、これを覆えそうとする陰謀などがあって、政情は安定しなかったのであるが、アテナイのシュラクサイ遠征(四一五 − 一三年)以後、プラトンとの交渉で知られているディオニュシオスが現われて、独裁制(四〇五 − 三六七年)を回復した。また、かのエンペドクレスの晩年の悲劇( Diogenes Laert., VIII. 67-70, 71 )も、アクラガスにおける政治的不安を多分に反映しているように思われる。無限分割や「アキレウスと亀」の論証によって有名なエレアのゼノンは、独裁派との断乎たる闘争において悲壮な最期を遂げた( Diogenes Laert., IX. 27 )と伝えられている。

 しかしこのようなことは、シシリイ島や南イタリアだけのことではなかった。ギリシア本土や小アジアにおいても同様であった。アテナイの隣国ボイオティアにおける政変は、ただの国内問題に止まらず、民主国アテナイと反民主国スパルタの対立を激化する結果となった。かのペロポネソス戦争なるものは、一面において、ギリシア各地に見られた両派のこのような国内闘争が国際戦争に発展したものだったのである。それはいわば一種の内乱であった。したがって、いかなる戦時政府も内外に敵をもっていたのである。この内部的矛盾は戦争の危機的な場合や、敗戦の場合において暴露されなければならなかった。国民のすべてが政治に参与することによって最も強固な国民的統一をもっていたかのように見えたアテナイも、この戦争において二回ほど −− すでに見られたようにきわめて短命のものではあったが −− 反対派の独裁制を許さなければならなかったのである。

 さきにわれわれは、ソピステースの時代がペリクレス時代やペロポネソス戦争期に重なるものであることを述べておいた。いまわれわれは、それがどんな時代であったかということを、輪郭だけでも思い浮べてみることができるであろう。それはまず、ペルシア戦争の殊勲者であり、デロス同盟の盟主であるアテナイが、地中海沿岸の全ギリシア世界に対して、さまざまの強い影響を及ぼした時代なのである。ところで、そのアテナイ文化の基礎をなすものは、かの isonomiā の原則の上に立ついわゆる民主政治であった。むろんわれわれは、民主制がペルシア戦争後の特別な現象であるかのごとく考える誤謬に陥ってはならないであろう。ペルシア戦争はクレイステネスの改革後約十五年にしてきたったものなのである。民主制については、ペリクレスの仕事も単に補足的な意義をもつに過ぎないと思われる。アレイオス・パゴス審議会の権限縮小とかアルコーンの資格制限の緩和とか、民衆裁判すなわち陪審廷( dikastērion )の権威や国民の全体会議すなわち国民議会( ekklēsiā )の威力が増大したことも、それはすでにソロンやクレイステネスによって原則が定められていたことの自然の結果にほかならない。しばしば誇張して語られる一部官職の有給制のごときも、他に職業をもつ貧しい国民にも政治参与を可能ならしめようとする合理的な手段で、べつに専門の政治遊民を作るほどの額ではなかったように思われる。

 民主的ということでは、ペリクレスはむしろ逆行的な点をもつと言われるであろう。かれはソロンやクレイステネスにおいては開放的であったアテナイ市民の資格を制限して、これを市民たる両親から生まれた者にのみ限ろうと( Athen. resp. XXVI. 4 )したからである。かれはアテナイ市民を特権階級化したのである。むろん、すべてのギリシア人は奴隷に対しては特権階級であるが、これは古代社会、否、現代社会にも共通することで、特にアテナイ人のみが責められることでもなく、アテナイ人がすべて奴隷をもっていて安楽に暮していたなどと考えるのは、全く誇張された空想に過ぎないのであり、奴隷の取り扱いは、他の都市に比べてアテナイがやはり自由であったのではないかと考えられるのであるが、ペリクレスの市民権制限はデロス同盟に君臨するアテナイ市民を、他のギリシア人に対して特権階級化するものであるから、その民主政治の狭い都市国家主義的限界を示すものとして特に注意する必要があるであろう。いずれにせよ、民主政治はアテナイにとって、ペルシア戦争後の特別な現象ではなかったのである。しかしそれは全ギリシア世界にとって、特にペルシア戦争後流行した新現象であった場合が多かったと言うことができるであろう。ところで、この民主制は各地に政治闘争を激発し、ところによってはかえって反動勢力を刺戟強化する結果となり、これがアテナイのデロス同盟諸国に対する強圧的手段への反撥、あるいはコリントスその他の都市とアテナイとの貿易上の対立などと結んで、やがて帝国主義アテナイ打倒の十字軍が形成され、ペロポネソス戦争の終局とともに、アテナイ王国は崩壊しなければならなかったのである。しかしこの神聖な戦争も別に新しい秩序を創り出すことには成功せず、ただちに民主制を回復したアテナイは、その後ローマ時代に至るまで永く地中海世界の文化の中心地となったのである。

 ソピステースは、このような時代に、アイスキュロス、ソポクレス、エウリピデスの悲劇、アリストパネスの喜劇、ピンダロスの詩、ヘロドトス、トゥキュディデスの歴史、ペイディアス、ポリュクレイトスの彫刻、ポリュグノトスの絵画、ゼノン、メリッソスの論理、エンペドクレス、アナクサゴラスの自然哲学、レウキッポスのアトム論、ヒッポクラテスの医学、そしてソクラテスその人などとともに、古典ギリシア文化を飾るために生まれ出た特異の存在であった。東と西において強敵ペルシアとカルタゴを打ち破ったギリシア人は、パルテノンを中心とするアテナイのアクロポリスの建築、オリュンピアのゼウス宮、アクラガスのゼウス宮などによって、神々への感謝とともに自分たちの光栄を永く後世に記念しようとした。それは政治的にも、経済的にも、また文化的にも、きわめて活気にみちた時代であった。そしてこの活気の原動力となったものはアテナイなのである。「アテナイ人は機敏な工夫家で、新奇なことを好み、思ったことをすぐ実行にうつし、力量以上のこと、思案外のことでも思いきって断行し、危険のうちにあっても楽観する。かれらはたえず何かを得ようとしているから、今あるものではけっして満足することがない。かれらの考えでは、なすべきことをなすよりほかに祭日はないのであって、何もせずにじっとしていることは、どんな忙しい労働よりも呪うべきことなのである。約言すれば、かれらは自分自身もじっとしていられないし、また他人をじっとさせておくこともできない生まれつきだと言ったらよいであろう」とトゥキュディデス( I. 70. 1-3, 8-9 )も述べている。

 ソロン、クレイステネス以来の新しい政治、デロス同盟の上に築かれたアテナイ帝国の経済的繁栄とそれによる生活の向上、激烈な政治闘争と各方面にあらわれたギリシア人特有の競技意識の刺戟などのうちに、新奇を好むアテナイ人のうちでも新奇を好む青年たちにとって、新時代の教育を約束するソピステースたちが魅力ある存在として現われたのは、少しも怪しむに足りないことであろう。氏族を基礎とする昔の社会では、すぐれた人というものは家柄と地位によって決定された。勇気とか才知とか節制とかいう人間的な徳も、すでに身分によってすぐれている人たちの上に冠せられる徳であって、まだそれだけで独立の徳としては存しなかった。しかし今は、ひとは氏族によって差別されずに、国家の一員としてみなが平等の権利をもっているのである。人間がすぐれた人として差別されるのは、もはや特権によらず、ただ人間的に卓越した性質、すなわち人間的な徳によるのである。ギリシア人的な競技意識によって優越をねがうアテナイの青年たちが、「人間として、また国家社会の一員として、ひとがすぐれた者となるための徳」を授けると称するソピステースの周囲に集まったことは、まことに当然である。そして同じ事情は、多少の差をもって、アテナイ化された地中海の全ギリシア世界について見ることができたであろうと想像される。

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初版:1941(昭和16)年2月 弘文堂書房「教養文庫」八七
改訂版:1957(昭和32)年6月 筑摩書房
第二改訂版:1969(昭和44)年1月 筑摩書房(「田中美知太郎全集」第三巻収録)
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(田中美知太郎「第五章 その時代」『ソフィスト』1976(昭和51)年. 講談社学術文庫. pp. 69-90. )
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7、田中美知太郎「第六章 徳育」

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 「第六章 徳育」

 ところで、人間として、また国家社会の一員として、すぐれた者になることを求める青年たちにとっても、また、そういうすぐれた人を作るというソピステースにとっても、あらかじめ解決を必要とする重大な問題があった。それは何であるかといえば、すぐれた人という者ははたして作られるものかという問題である。それは教えたり学んだりできるものではなく、ただ生まれつきによるのではないかという問題である。すぐれた人というものは、昔は家柄や身分によって限られていたので、それは生まれによるのであった。いまは家柄が特権をもたらさず、ひとは国民として平等であって、すぐれた人というものは人間的な徳によって決定され、その人間的な徳はだれでも心掛けひとつで学ぶことができると思われたのであるが、しかしそれははたして真実そのとおりであろうか。すぐれた人というものは、万人平等の政治原則の上に立つアテナイのような国家においても、ついに生まれつきによるよりほかはないのではないだろうか。もしそうならば、青年たちの希望は無駄ごとであり、ソピステースの約束は無意味であろう。『プロタゴラス』(三一九A )において、身のため、国のためによく計ること、すなわち人間として、また国家社会の一員として、すぐれた者となるゆえんのものが伝授を約束された時に、ただちにソクラテスが問わなければならなかったのも、はたしてそれは可能であろうかという問題であった。なぜこのようなことが疑問となるのかといえば、それを疑わせるような事実が存するからである。アテナイのすぐれた指導者であったテミストクレス、アリステイデス、ペリクレス、トゥキュディデスなどの人々は、その子弟の教育においてけっして不熱心ではなかった。かれらは教育の可能なあらゆる技芸を子供たちに仕込むことを試みたのである。しかし子弟たちは、馬術や相撲は上達したけれども、肝心のテミストクレスやペリクレスが万人に卓越したゆえんのものに関しては、何も学ぶことができなかったのである。もしもすぐれた人間や政治家のまさにすぐれている点をなすところのものが、だれにでも学べるものだとしたら、このことは不可解である。またアテナイ人が集まって国事を議する国民議会においては、建築とか造船とかの技術的な問題を取り扱う場合には、それぞれ専門家を呼び出して、その意見を聴取し、素人の議論などには耳をかさないのであるが、しかし治国一般の政治問題については、何びとにも発言を許しているのである。これはプロタゴラスのいわゆる「身のため国のために計る」ということに関しては、他の技術におけるがごとき専門家は存在せず、したがって別に教えたり学んだりできるものではないということを示すものでなければならぬと考えられるであろう。

 しかも、この問題は、プラトンが『プロタゴラス』や『メノン』において、ソクラテスの問答に劇的な展開を与えるために、自分で考案した架空の問題ではなかったのである。それはペロポネソス戦争を最近の出来事として記すドリス系方言のノート『両論』( Dialexeis )のうちに、プラトンの問題となるよりも前に、すでに問題として取り扱われているのである。すなわち『両論』の第六章には、智徳が教えも学びもできないものであるということに関して、五つの論点が紹介されている。 一、もし人がそれを他人に伝授するならば、もはやその伝授されたものを自分で持っていることはできないであろうというのが一つ。 二、もし教えられるものなら、音楽におけると同様、それを教える者が指摘されたはずであるというのが他の一つ。 三、もし教えられるものなら、ギリシアに生まれた智徳すぐれた人たちは、自分の技能をその息子たちに教えたはずである。 四、すでにある人々は教師(ソピステース)たちのもとに赴いたが、何ら得るところはなかった。 五、また、ソピステースとは交わらなくても、相当の人物になった者はたくさんあるというのである。このうち第一の論点は、論理的難問の形を取っていて、プラトンでは使用されていない。問題の取り扱いがプラトンとは独立であることの一つの証拠ともなるであろう。第二の論点は、それ以下の諸論点の総括で、第三の論点は、上述の『プロタゴラス』第一〇章の所説と同じである。しかし第二から第五までの全論点は、むしろ『メノン』第二六章から第三七章に至るもの(八九C −九六D )と同じだということができるであろう。

 『メノン』においては、すぐれた人をすぐれた人たらしめるゆえんのもの、すなわち徳が、もし学問的知識ならば、学ばれうるはずであるという大前提について、もし徳が人のためになるものなら、人生において本当にためになるのは富でも健康でもなく、また勇気その他の徳でもなく、これらを上手に用いる知識でなければならぬから、真にすぐれた人を作る徳は知識でなければならぬということが明らかにされて、すでに問題は解決されようとした時に、しかしもし学問的知識ならば、それを教える者がなければならぬ。もし教える者が存在しなければ、それは学問的知識ではありえないであろうという疑問が起り、期待された解決が覆されるのである。ソピステースについての、「すでにある人々はソピステースのもとに赴いたが、何も得るところもなかった。また、ソピステースと交わらなくても、相当の人物になった者はたくさんある」という議論は、今日の学校教育に対する俗論に似ているようであるが、『メノン』ではプラトンは、ソクラテスの告訴者アニュトスをして、ソピステースは徳の教師どころか、むしろ青年を腐敗させる者であるという意見を吐かせている。それはとにかくとして、はたして事実ソピステースが徳の教師であるかどうかは問題であり、すぐれた人もその子供をすぐれた者になしえなかったことは事実として、『プロタゴラス』『メノン』『両論』等に指摘されているとおりである。これに対して、国民議会では誰でも国事を論ずることができるという事実は、プラトンの『プロタゴラス』(三一九B 以下)にのみ語られていて、『両論』の筆者には知られていない新しい論点である。プラトンが用いているペリクレスやテミストクレスの実例とともに、プラトンの問題取り扱いが直接『両論』に依存するものではなかった一つの証拠である。

 ところで、「徳育は可能なるか」という問題が、プラトン対話篇内部だけの問題ではなくて、すでにソピステースの時代における一般の問題であったとすると、これの解決は徳の教師であるソピステースにとって、死活的重要性をもつものと見なければならぬ。かくて『両論』の筆者は、「真実性のない不充分の論が一つ行なわれている。それはすなわち、智徳は教えられも学ばれもしないものであるという主張である」という書き出しで、以上五つの論点を紹介するとともに、これに全面的反駁を試みている。 一、まず、徳を伝授すれば、自分のが無くなりはしないかというのは、たいへん愚かな議論である。教師は文字や音楽を他人に教えても、自分はやはりその知識を所持しているではないか。 二、もし教えられうるものなら、それを教える者が指摘されるはずだというが、ソピステースの教えるのは智と徳でないとしたらいったい何であろうか。またアナクサゴラスやピュタゴラスの弟子たちは何なのだ(*)。 三、息子に技芸を伝ええない例を挙げても、それだけでは教えられえぬことの証拠にはならぬ。ひとつでも伝授の実例があれば、教えることの可能性は証拠だてられるのである。ところが、ポリュクレイトスは息子に彫像を作ることを教えたのである(**)。 四、ソピステースのもとから何も得ずに去った者があるとしても、それは他の場合にもあること、文字を学んで覚えなかった者はたくさんある。 五、またソピステースについて学ばなくとも充分間に合ったというのは、生まれつきによって、よい素質の者は、言葉の場合と同様、父母などから少しの手ほどきを受けただけで、容易に多くを覚るものなのである。しかし言葉はやはり学ばれるものであって、けっして生まれながらに知られるものでないことは、ひとが生まれたばかりの子供をペルシアに送って、そこでギリシア語を少しも聞かせずに育てるならば、ギリシア人でもペルシア語を話して、ギリシア語を知らないことから明らかである。すなわちわれわれは言葉を学ぶのではあるが、それを教えた者は誰なのか知らないのである。ソピステースから学ばなかったということは、それが全然学ばれなかったということを意味するものではないであろう。

(*) これはアナクサゴラスやピュタゴラスの弟子があるからには、かれらはアナクサゴラスやピュタゴラスから智と徳を学んだことを示すものでなければならぬという意味であろう。アナクサゴラスやピュタゴラスは、報酬に応じてだれにでも教える意味のソピステースではなかったであろうが、智徳の教師としてここに引き合いに出されたものと思われる。
(**)彫刻を教えたのでは、徳の教えられうることの証拠にはならないが、初めの議論が「ギリシアに生まれた智徳すぐれた人たちは、自分の技能をその息子たちに教えたはずである」というふうに、技能とか智徳すぐれた(賢い)とか言われただけなので、これも一応はその反駁として成り立つわけなのである。

 この駁論を『両論』の筆者は、「わたしが言おうとするのは、徳が教えられるという主張ではない。ただ以上において述べられた教育不可能論の証明がわたしを満足させないということである」として、一種用心深い消極的な言葉で結んでいるのであるが、プラトンの『プロタゴラス』(三二〇D − 三二八D )では、徳の教えられうることが積極的に主張されている。プロタゴラスはまず、人間の生活技術と社会道徳とを区別する。生活の技術というものは、かのプロメテウスが人間のためにアテナ神とヘパイストス神のところから、火と共にこれを盗んで与えたものなのであるが、これだけでは衣食住その他の工夫は出来ても、団結して事に当るのには役に立たない。しかも人間は孤立していては、他の動物に敵しえないのであって、人類はいかに火を取り扱うことを知っていたとしても、亡びるよりほかはなかったであろう。ゼウスの大神はこれを憐んで、人類の亡びないように、後から「いましめ」( dikē )と「つつしみ」( aidōs )とを人類に贈って、これを国家社会成立の基本となし、もって人類の団結を可能ならしめたということである。そして他の技術は、一人の医者があれば、他の多くの者はそれの素人であって差し支えないというように、分業的に与えられているけれども、「いましめ」と「つつしみ」は、万人がこれに与からなければ国家社会は成り立たぬというように、共通に与えられていて、もし共にこれに与かることのできない者があるならば、それは国家社会を害する病根として、これを取り除くべきであると定めた。ひとが国民議会において、他の技術に関しては専門家の意見を聞くのに、国政一般のことに関しては何びとの発言をも許しているのは、国のために計るということが、国家存立の根本条件たる「いましめ」と「つつしみ」に付随して、当然すべての人に属しなければならないからなのである。

 しかしそれならば、国家社会の一員として必要な徳というものは、生得のものであって、べつに学ばるべきものではあるまいと考えられるであろう。しかし事実はそうではない。プロメテウスの贈物である生活の技術に関しても、ひとは学ばなければならず、専門家は生まれつきだけでは出来ないのである。ゼウスの贈物についてもまたしかりである。国家社会成立の根本をなす徳としては、「いましめ」を支える正義、「つつしみ」にもとづく節制、敬神など、いろいろのものが数えられるであろうが、ひとはこれらに欠けるところがあると、怒ったり、窘〔たしな〕めたり、教えたり、懲らしたりする。それはこれらの徳が学ばれうるものであって、当人の心がけひとつでよくなる見込みがあると思えばこそである。もしそれが生まれつきで、後からどうすることもできないものならば、生まれつき醜い者とか、小さい者とか、虚弱者とかの場合のように、だれも怒ったり、窘めたり、教えたり、懲らしめたりはしないであろう。全く改善の見込みのない異常者は、ゼウスの定めに従って社会から取り除くほかはないが、大多数の者については改善を望みうるのであって、一切の懲罰はすでになされた罪への復讐ではなく、将来への懲らしめのため、他人への見せしめのためなのである。そしてこのことは人々が徳を学ばれうると考えていることを示すものでなければならない。事実、人々は生まれてから一生の間、それなくしては国家社会に生きて行くことの許されない徳に関して、たえず教育されているのである。すなわち家庭にあっては、子供が少し言葉を解するようになると、父母、乳母、養育掛りなどが、言葉や行為の一つ一つについて、その是非善悪を教えて世話をやき、従わない時には、威嚇〔いかく〕や打擲〔ちょうちゃく〕をも辞さないのである。やや長じて学校へ通うようになれば、両親は何よりも子供の躾けを教師に頼み込むのである。学科としては読み方、音楽、体操などが課せられるが、それはいずれも徳育を主眼とするものなのである。まず文字の読み書きを習うと、教師は昔のすぐれた詩人たちの作品を与えて暗記させるのであるが、その作品のなかにはいろいろな教訓や、昔のすぐれた人々の事績が讃美称頌の言葉をもって語られているので、これを読む者はいずれも発奮して、その範例に倣おうとするに至るものなのである。また音楽の教師のもとでは楽器の奏法を学ぶと、また他のすぐれた詩人の作品が節づけされて、これを楽器にのせて学ぶようにさせられる上に、音楽のリズムの規則正しい運動や音の全体的な協和が心に取り入れられて、やがて言行も調和のとれた規則正しいものとなるのである。そして体育は、いざという時に身体を立派な精神のために不自由なく使うことのできるように鍛錬するものなのである。良家の子弟はこのような教育を早期から授けられて、できるだけ長期間それを続けるのであるが、ひとは学校を卒業してもまだ教育は終らないのである。すなわち実社会に出ると、そこにはさまざまな法律や習慣があって、ひとは勝手に行動することが許されず、国家はひとが法律に従って生活することを強制するのである。この法律は昔のすぐれた人が治国の大本として定めたもので、これに背く者は懲らされるのである。すなわち人間は一生涯教育されているのである。われわれは徳が教えられうるということを人々一般の信念として認めなければならないであろう。

 それならば、何ゆえに徳の教師というものが存在しないように考えられたのであろうか。それは父母をはじめ一家の者がすでにその教師であり、読み方、音楽、体操などの教師も実は徳の教師であり、国家の法律、社会の習慣などがやはりかかる教師であるために、すべてのものが徳を教えているから、特別に徳の教師と考えられる者がかえって見られなくなるためである。それはちょうど自国語の教師を探すようなもので、われわれは生まれて以来、すべての人からこれを学んだので、特定の教師を指名することはできないのである。われわれはすでに高度に教育されているのであって、何も学ばずに、生まれながらにして、かくあるのではない。そのわれわれをさらにそれ以上教育する者を求めるとすれば、その発見はきわめて困難である。しかし子供たちのような者のためには教師はいくらでもいると考えられる。ソピステースというのは、家庭、学校、社会などで教育された人々を、さらにその上教育しようとするのであるから、世にたやすくは得られない教師なのであって、人々がその教育に多額の報酬を出すことを惜しまないのもけっして怪しむに足りないであろう。従来は徳の教育は、純粋に徳の教育として与えられずに、詩文、音楽、体操などの教育に混ぜて行なわれたが、プロタゴラスがはじめてこれを独立に取り扱うことを試みたのである。むろん、徳の教師と名のることは、その社会教育上の影響のゆえに為政者や父兄の注意をひき、一言一行警戒を要することとなって、きわめて不利ではあるが、プロタゴラスはあえてソピステースと称したのである。なお、すぐれた父の子がかならずしもすぐれた人とならないということは、べつに徳育の不可能を証するものではない。素質のいかんによって、教育の効果はかならずしも各人に平等ではないからである。「教育には、素質と練習が必要である」( Fr. 3, Diels )ことを忘れてはならない。

 以上、プラトンが対話篇のなかでプロタゴラスに語らせたことは、問題がすでに架空の問題でなかったように、この答弁もまたプラトンが自分だけで宙に考え出したものではないであろう。自国語をわれわれは学んだのではあるが、それを教えた者は誰とも指名できないという例は、すでに『両論』の筆者によって語られているから、五世紀末のドリス系言語を用いる社会にまで知られていた普通の議論であることをわれわれは認めなければならぬ。ソピステースを智徳の教師として規定することが、『プロタゴラス』だけではなく、『メノン』『ラケス』『両論』に共通するものであることは、すでに見られたとおりである。また、すぐれた人がその息子に徳育をほどこすことができない事実についての説明も、プラトンが『メノン』(九九E 以下)においてソクラテスをして語らしめているものは、このプロタゴラスの説明とはまったく異なるのである。世のすぐれた人々が、他の人をも自分と同じような者にすることが出来ないのは、そのすぐれているゆえんのものを自分で明確な知識として把握していないで、自分でも分らずに、ただ神の恵みによってすぐれた者としてあるに過ぎないからだとしている。徳を家庭や学校や社会が教えているようなものから区別して、学問的吟味に堪えうるような確実のものとして把握しようとするのがソクラテスの努力であって、徳はただかかるものとしてのみ教えられうるというのが、『メノン』においても示された、ソクラテスの根本命題なのである。そしてまたこの点が『プロタゴラス』篇のプロタゴラス対ソクラテスの問答を動かす根本の動因となっていることは、プラトンみずから全篇の終り(三六一A 以下)においてこれを明らかにしているとおりである。したがって、『プロタゴラス』におけるプロタゴラスの徳育可能論は、むろんプラトンの自説ではなく、自国語の教師の例にも見られるように、おそらく世上に流布していた多くのソピステース説を利用して、プラトンがプロタゴラスのために考えたものと見るべきであろう。プラトンがプロタゴラス自身の書物をどの程度に利用したかは全く不明である。プロメテウスやゼウスの物語については、これをプロタゴラスの『原初状態について』( Fr. 8b, Diels )と題された一書に結びつける試みが学者によってなされたのであるが、要するに推測以上には出ることができないようである。

  (Anonymus Iamblichi( Fr. 6. 1, Diels )に、「そもそも人間は単独で生存することの出来ない者であるから、必要に屈して互いに集まって、そこにかれらの全生活とこれに必要な一切の技術品とを見出したのであるが、しかし共同生活には法律がなければかなわず、しからざれば孤独の生活よりも大いなる苦痛が生ずるであろうから、これらの必然によって法律と正義とが人類の支配者となった。云々」ということが言われていて、これが上述のプロタゴラスの説話に共通するところがあるので、もしこの書が発見者ブラス( Blass, Kieler Progr. 27, Jan. 1889 )の主張するように、ペロポネソス戦争期のものだとすると、プラトンがプロタゴラスのために書いたプロメテウス・ゼウスの説話には、このような前代一般の思想が利用されていたと考えねばならないであろう。ただし、これの根源がプロタゴラスにあるかどうかは全く不明である。)

 徳育を中心とする教育の可能について、ソピステースが考えたであろうと思われることは、だいたい以上のごとくであるが、われわれはこれに関連して、ソピステースの教育説の一端に触れることができる。いまわれわれはプロタゴラスの「教育には素質と練習が必要である」( Fr. 3 )という言葉を引用したのであるが、この素質のことは、『両論』においても、すでに「生まれつきによって、よい素質の者は、父母などから少しの手ほどきを受けただけで、容易に多くを覚るものなのである」と言われた。しかし教育の可能という立場からは、素質は教育によっていかんともなし難いものとして、教育の限界外にあり、『プロタゴラス』や『両論』においても、教育の効果が疑われる事柄の説明に用いられている。「みずからすべてを覚る者こそ最上、されどまたひとの忠言に従う者もよし」というヘシオドス( Hesiod., Opera et dies, 293, 295 )の言葉は、「第一によきものは素質、第二は学習」というエピカルモス( Epicharmus, Fr. 40 )の言葉とともに、育ちより氏が重んじられた昔の時代に、教育がいかに考えられたであろうかを暗示する。しかし新時代においては、クリティアス( Fr. 9 )やデモクリトス( Fr. 242 )が、すぐれた人は素質よりもむしろ勉強や練習から生ずることを強調している。エピカルモスも他の場所( Fr. 33 )では、よい素質よりも勉強のほうが多くを恵むと述べている。プロタゴラスはただ両者を必要と言うだけであるが、「学習は幼にしてこれを始めねばならぬ」( Fr. 3 )というかれの言葉は、教育者としてのかれが、当然のことながら、学習に重きをおいたことを示すものと解されるであろう。しかしこれはまた、素質と練習のほかに時間というものが、教育の完成には必要と考えられていたので、それに関係のある言葉とも解されるであろう。徳の完成には「まず素質がなければならぬ。これは偶然の賜物であるが、その他はすでに人間自身の努力によって用意されなければならないものである。それは善美なるものを求める向上心、労苦を厭わぬ辛抱、できるだけ早期に始められる勉学、そして長期にわたってこれを続行することなどである。云々」ということが、だいたいペロポネソス戦争期の作と認められる無名氏の書( Anonymus Iamblichi, Fr. 1, Diels )にも記されているからである。プロタゴラスには、このほか「技術も練習がなければ無である。練習も技術がなければ無である」( Fr. 10 )とか、「教養が精神のうちに芽をふくためには、ずっと深いところまでいかねばならぬ」( Fr. 11 )とかいう言葉が伝えられているが、いずれもかれの教育家としての言葉と見ることができるであろう。

 ところで、教育には素質や時間が必要であるにしても、とにかくそれが可能であるとすれば、問題の徳育はどんな方法で行なわれたのであろうか。ヒッピアスは青年の心掛けねばならぬことがらについて、ひとつの美しい文章を綴り、これをスパルタやアテナイで講演して名声を博したということ( Plato, Hippias major 286A - B; Philostratus, p. 495 )が伝えられているが、それはトロイア戦争の終った一日、アキレウスの遺児ネオプトレモスがネストルに、どういうことに心掛けたならば、青年としてよい評判をとることができるかと尋ねたのに対して、いろいろためになることを教訓するというような筋であったらしい。ソピステースの徳育は、こういう文章によって青年を感奮させるものだとすると、読み方や音楽の教師のそれと根本は異なるものでなかったと言わなければならないであろう。ただ少年の教師たちは詩人の作品や音楽を用いるのに対して、青年の教師ソピステースは弁論を用いる点が異なるだけであるように思われる。『プロタゴラス』(三一六D 以下)におけるソピステースの規定が、これをホメロス以来の文学者、宗教家、体育家、音楽家などの伝統につづくものとしているのも、この意味において充分理解できることなのである。しかしこれによって見れば、ソピステースもまた弁論文章による徳の教師であって、プロタゴラスの自負したような、徳そのものの教師ではないことになるであろう。上述のプラトン『プロタゴラス』のプロメテウスの贈物とゼウスの贈物との説話も、すでにかくのごとき性質の文章を模したものではなかったかと疑われるのであるが、クセノポンの『ソクラテス追想記』第二巻第一章(二一 − 三四)にその内容を保存されている。プロディコスの『青年ヘラクレス』の一文は、いっそうよくソピステースによる「徳のすすめ」がいかなるものであったかをわれわれに教えてくれるように思われる。

 ヘラクレスの話はギリシア英雄談のうちで最も特色のあるもので、ゼウスとアルクメネの間に生まれたヘラクレスは、ゼウスの正妻たるヘラの憎しみを受け、幼児すでにヘラの送った蛇を殺したのを始めとして、いろいろな困難と戦うのであるが、なかんずく有名なのは、ヘラが送った狂気のために己が妻子を殺して、のち、その償いとしてなす十二の難業である。最後はヒュドラの血に染んだ肌着のために苦しめられ、オイタ山上に生きながら火を掛けられて焚死するのであるが、死後昇天してはじめてヘラと和解し、その娘ヘベと結婚する、どちらかといえば、不幸な悲劇的英雄である。このヘラクレスがこのような生涯を選ぶそもそもの出発点が、プロディコス説話の取り扱うところなのである。すなわちヘラクレスは、少年期を過ぎていまや青年となり、自分で自分のことが出来るようになった時、これからいかに生きていくべきかを一日静かに考えていると、二人の大きな女人の姿をした者がヘラクレスに近づいて来た。プロディコスはこの二人の女性を対照的に描き、一方を清らかな女人の姿にし、他を魅惑的な女性として語っている。先を越して話し掛けるのは、その魅惑的な女性であって、「ヘラクレスよ、わたしはおまえがどっちの道を行くべきかに迷っているのを見る。もしわたしを友としてくれるなら、わたしはお前〔原文ママ〕を最も楽しくかつ安易な道に導くであろう」と言って、快楽は何ひとつ味わわないものとてなく、困難は何ひとつ経験することもなく一生を送れるだろう、面倒なことには心を煩わされることなく、ただ何を食べたらうまいか、何を飲んだらうまいか、何を見たら楽しいか、何を聞いたら心地よいかということだけを考えて、それをどれでも苦労なしに得ることができるようになるだろうと約束する。ヘラクレスはこれを聞いて、その何者であるかを尋ねると、わたしを愛する者はわたしを「幸福」と呼び、わたしを悪〔にく〕む者はわたしを「悪徳」と呼んでいると答える。

 そこへもう一人の女性が追いついて来て、「わたしはおまえの両親も知っているし、またこれまでのおまえの教育とおまえの素質とを知っているから来たのだ。わたしはおまえがわたしの道を選んでくれるなら、きっと美しい高貴なことを立派になしとげてくれるだろうと信じている。わたしは甘い約束でおまえを欺こうとは思わぬ。わたしはただ神々がものごとを定めておかれた、その通りを真実ありのまま話してあげようと思う」と言い、「真に善きもの美しきものは、どれも骨折りと勉強がなくては、神々は人間に与え給わぬのだ」と述べて、努力の生活を説く。すると、悪徳の女性はこれを聞いて、ヘラクレスに、「このひとの説く精神的なよろこびへの道は、かくも困難な長途であるが、わたしがおまえをつれて行く世間的幸福の道は、短くかつやさしい道なのだ」と説き、これに対して徳の女性は、その幸福なるものが、飢を感じないのに食べ、渇を感じないのに飲む不自然なもので、無理な刺戟を人工で作り出すものだから、本当の楽しみはないと駁し、快い飲食も、安らかな眠りも、徳の生活にのみあるとして、徳を友とする人々には、徳はよき共同者であることを説く。現存の文章は、善徳と悪徳とのこのような言い争い( agōn )だけで終っているのであるが、むろんヘラクレスは、ここで困難をきわめたその一生を選ぶことになるのであろうと思われる。

 われわれはプロディコスのこの文章において、その説くところの道徳が、理想主義的な高邁の精神によって貫かれているのを感ずる。しかしながら、これはかのヘシオドスの「劣悪なものはたくさんあるから、これを手に入れることはやさしい。その道は滑らかで、その住まいはきわめて近い。けれども、すぐれたもの(徳)に達するためには、まずその前に、汗しなければならないということを不死なる神々が定め給うたのだ。そしてそこまで行く道は長くて険しいのだ」( Opera et dies, 287-290 )という言葉に始まるギリシアの伝統的精神なのであって、べつにプロディコスの発明したものではないのである。またヘラクレスの選択は、トロイア戦争のそもそもの発端をなすパリスの選択と同趣向であって、言い争い( agōn )はギリシア文学、なかんずく劇作品に常に用いられるもので、ギリシア人の最も愛好するところである。したがって、内容形式ともに、プロディコスの説話は伝統的である。かれは詩人や音楽家のすでになしたところを、新しく雄弁の形式に翻訳して見せただけである。それは昔ながらの道徳に新しい感激を与えるであろう。しかしながら、ソピステースは、すでに家庭や学校や社会において、父母や教師や国法がなした以上に、はたして徳育に成功することができるであろうか。詩を散文に翻訳するだけで、はたして徳育は進歩するであろうか。生まれてからひき続いて徳の教えを聞かされ、高度に教育された人々は、はたしてソピステースの弁論によって、新しい一歩を更に進めることができるであろうか。家庭教育の失敗、学校教育の失敗、社会教育の失敗は、すでに見られたように、たえず徳育への疑惑と絶望とを生んでいるのである。ギリシアの伝統道徳はかならずしも偏狭なものではなく、その精神もきわめて高尚ではあるが、しかし与えられたままの伝統的道徳を説教するだけのことでは、いかに形式を工夫しても、徳育上の効果はついに一定の限度を越えることはできない。その限界をのり越えるためには、徳は伝統的なものを越えたかなたにまで探求されなければならない。真にすぐれた人とは何であるか。このことがそもそもの出発点にかえって問われ、根本的に探求されなければならない。徳はいかに教えられるべきかではなく、徳とは何であるかが問われなければならない。すなわち徳育の問題は同時に知育の問題とならなければならない。しかしこれは徳の本当の教師ソクラテスの仕事であって、ただ巧みに与えられた道徳を説くことを工夫したソピステースの仕事ではなかった。徳の探求はソクラテスに死をもたらしたが、徳の説教はソピステースに称讃と金銭とをもたらした。しかし徳育の問題は、今も昔も充分に解決されてはいない。われわれの徳育といえども、ソピステースに至るまでのギリシアの徳育以上に出ていないことを忘れてはならない。われわれはソピステースの徳育を軽蔑することができないのである。
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初版:1941(昭和16)年2月 弘文堂書房「教養文庫」八七
改訂版:1957(昭和32)年6月 筑摩書房
第二改訂版:1969(昭和44)年1月 筑摩書房(「田中美知太郎全集」第三巻収録)
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(田中美知太郎「第六章 徳育」『ソフィスト』1976(昭和51)年. 講談社学術文庫. pp. 91-109. )
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8、不正選挙疑惑関連資料

(1)Blah(@yousayblah)さんのスレッド
(2) THE NAVARRO REPORT
(3)Sidney Powell's Legal Team report

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(1)Blah(@yousayblah)さんのスレッド

 在米の日本人?の方が、気になる記事やスレッドなどを邦訳してくださってます。数字で検証している内容や、いわゆるファクトチェックに反論する内容など(投票者リスト、データアナリシス、現場動画、選挙関係者の実名宣誓証言、専門家による統計など)。たまに、「不正はあったかもしれないけど選挙結果に影響しないのだったらコストをかけて調査する必要はないのでは」と仰る方がおられますが、とんでもない!これだけの大掛かりな不正疑惑があること自体、民主主義の根幹を揺るがす大事件だと私は考えているんですが。

 「正義のためには何をしてもよい」と考えておられる方に届く言葉を私は「まだ」持っていませんが、「何かおかしいとは思うけど、何がどうおかしいのかよくわからない」という私のような人と共有したい内容です。

 かなり長くなりますが、いつ削除されるかわからないので(実際に、この中に引用されている何本かは削除されている…TwitterやFBでは「よくあること」になってしまいましたね…)大事だと思われるものを転記させていただきました。

不正選挙疑惑スレッド一覧
Blah(@yousayblah)さん

https://twitter.com/i/events/1339648794712010753 


■スレッド1 日本時間2020.11.11,pm03:24

・トランプ選対チームのストラテジスト、スティーブ・コルテス氏 @CortesSteve の「数字で見るバイデン票の不可思議」記事を紹介します。本人が動画版もツイートしています。
(**統計は不正の有無を決定付けるものではないことを念頭に置いてください)
Cortes:バイデンの勝利に対する統計的事例
CORTES: The Statistical Case Against Biden’s Win/ NOVEMBER 9, 2020
https://thenationalpulse.com/news/case-against-biden-win/ 

1、投票率
・バイデンの得票が重要だった地域は投票率が極めて高い。
・ウィスコンシン→州全域で90%以上の投票率(参考ー投票が法律で義務付けられ、罰金が科せられているオーストラリアの投票率は92%)。中でも最大都市のミルウォーキーは84%の投票率でバイデンに145,916標をもたらした。
・ちなみにミルウォーキー(人口590,000人、マイノリティ67%)と似たデモグラフィックの都市、オハイオ州クリーヴランド(381,000人、60%)を比較対象にしてみると、クリーヴランドの投票率は51%で、より現実的な数字。
・突出した数値はいつも重要州に見られ、不自然にバイデンに利するようになっている。

2、オバマを圧倒的に超える数字
・例として重要州ペンシルベニアのチェスター郡、カンバーランド郡、モンゴメリー郡で、バイデンの得票数はオバマの1.24-1.43倍。
・モンゴメリー郡はオバマが2012年に59,000票差で勝った地区。バイデンはなんとトランプ大統領に131,000票もの差を付けた。2倍の数字。
・2012年再選時のオバマはモンゴメリー郡で233,000票を獲得。対してバイデンは313,000票。この8年でこの郡の人口は22,000しか増加していないのにも関わらず。
・[Blah's Note: カリスマと安定した人気を誇ったオバマを軽々超えるバイデン、確か選挙期間中は殆ど地下に篭っていた]

3、バイデン・オンリーの数字
・トランプ弁護団のスーザン・パウェル弁護士によると、全米でバイデン・オンリーに投票(上院や下院の投票"down-ballot"をせず、大統領選のみ)した票数は450,000。接戦であった上院下院戦も無視してバイデンのみ。
・これもまた激戦区の重要州に突出した現象。
・バイデン・オンリー票は重要州のジョージア州などに多いが、共和党地盤のワイオミング州などには見られない。
・ジョージアでトランプに投票した人はほぼ皆共和党上院候補に投票した。しなかったのは2.43M票のうちおよそ818票のみ。対してバイデン票は民主党上院候補への票を95,801票も上回った。
対照的にワイオミングでバイデン・オンリー票は民主党上院候補への票を725票で上回った。パーセンテージにしてジョージア票差の1/4。
・バイデン・オンリー票=不正決定ではないが、この数字は何かおかしい。
・[Blah’s Note: ベンフォードの法則 https://www.scribd.com/document/483484973/PA-Voter-Analysis-Young#from_embed



4、見過ごされる郵送投票
・民主党地区のリーダー達は郵送投票が現場を混乱させ厳正なチェックが行き届かないことを知りながら無理やり押し通した。
・例えばペンシルベニアではウォルフ州知事が州法も国選挙法も無視して州議会にルールを改正させ、従って選挙管理者も郵送票の適切な取扱いを怠った。
・これは彼らも認めたことだが、今回ペンシルベニアで(記入漏れなどで)弾かれた郵送投票の比率はわずか0.03%で、これは2016年と比べ1/30でしかない。
・はじめての郵送投票が受理されない確率はおよそ3%である。言い変えれば今回のペンシルベニアの100倍ということ。
・ちなみに近隣州のニューヨーク州が郵送投票に踏み切ったこの夏、彼らの選管は6月だけで実に21%の投票用紙を不受理としなければならなかった。ペンシルベニアの700倍だ。
・この壊滅的な郵送投票の杜撰な取り扱いは、ペンシルベニアの票数に非常に不穏な影を落とした。

(有)果たして不正はあったのか?
・数値を見ただけでは不正を立証することはできない。しかし不自然な数字の集合は疑問を呼ぶ。
・上記4つのうちひとつをとっても、集計結果を怪しむだろう。
・4つ全てが揃うとあまりにもでき過ぎた話となる。
・スポーツで例えるとワールドシリーズでチームがパーフェクトピッチをするようなもの。
・1試合だけじゃなく、2試合目だけでもなく4試合全てで。
・それは可能か?
・理論上はね。果たして起こりうるか?
・起こりっこない、だからこそこれからのためにも積極的に監査を始めないといけない。


■スレッド2 日本時間2020.11.12,am10:20

・ジョージア再集計の発表を受け、トランプ陣営ストラテジストのスティーブ・コルテス氏が再び「数字で見るバイデン票の不可思議〜ジョージア州編」をアップしているので、ここで改めてジョージアの不可思議な数字をおさらいします。
・ジョージア再集計での鍵はなんといってもバイデン・オンリー票です。投票用紙は長い一枚のチェックシートで、上から順に大統領、上院議員、下院議員を選ぶ項目があります。
・バイデン・オンリー票とは大統領にバイデンを選んだのに、上院・下院が空欄あるいは民主党議員以外に投票した用紙を指します。

・バイデン・オンリーの傾向は重要州に顕著で、これはジョージアも例外ではありません。
・トランプに投票 2,432M
・トランプに投票&上院に共和党 2,433M
・トランプ・オンリー票 計818 票

・バイデンに投票 2,414M 票
・バイデンに投票&上院に民主党 2,319M 票
・バイデン・オンリー票 計95,801 票

・対照的に激戦区でない州、ここでは共和党地盤のワイオミング州のバイデン・オンリー票を見ます。
・バイデンに投票 73,4M 票
・バイデンに投票&上院に民主党 72,7M 票
・バイデン・オンリー票 計725 票

・激戦区のみで見られる圧倒的なバイデン・オンリー票に関しては、わたしもずっと疑問でした。「不正するならなぜ上院下院も民主党に入れないのか」と。
・↓のような意見、不正否定派スレッドもあります。
・大統領はバイデン選ぶけど地元からのプレゼンスは共和党の議席を守りたい共和党の人がたくさんいる当たり前の投票行動だと思ってました…。日本でも小選挙区は元々応援している議員に入れて、比例は別の党入れる人とか沢山いますよね?

・しかし上院が激戦になることがわかっていたパープル・ステート(両党がせめぎ合う)のジョージアで、上院下院を無視する人が95,801人もいるとは非常に考えにくい。
・同じく激戦区のペンシルベニアでもバイデン・オンリー票は突出しており、統計的にかなり不自然との研究結果。

・繰り返しますが、統計的に不自然=不正があった、とはなりません。しかしこのジョージアの不可解な数字にとどまらず、おかしなバイデン数値はあちこちに見られますので、監査&再集計は両陣営のために喜ばしいステップです。


■スレッド3 日本時間2020.12.08,am09:39

・ジョージアの集計システム管理マネジャーをはじめ、反トランプ勢が一斉に疑惑の深夜集計映像に反論。
・それにさらに反論する形で立てられた良スレッド。丁寧に事実関係を反芻し、映像に対し10の質問を投げかけている。ぜひ議論に活用してほしい。

・まず前提として以下のことは事実です。
1.フルトン郡の選挙管理員達により本日の集計は終了したので監視員たちは帰るように言われた。
2.しかし集計は続けられていた。
・ほら。(票箱のある部屋の配管が水漏れ、集計は中止されたという地元紙)
Fulton County election results delayed after pipe bursts in room with ballots/ Nov 4, 2020
https://www.ajc.com/news/atlanta-news/fulton-election-results-delayed-after-pipe-bursts-in-room-with-ballots/4T3KPQV7PBEX3JVAIGJBNBSVJY/ 
・そしてほら。(郡が水漏れについて知らされたのは午前6時頃という記事。郡はなぜ不在投票の集計が中止されたのか説明をしていない、とある)
Fulton County stopped counting absentee ballots for the night | North Fulton Neighbor | Nov 3, 2020
mdjonline.com
https://www.mdjonline.com/neighbor_newspapers/north_fulton/fulton-county-stopped-counting-absentee-ballots-for-the-night/article_91ee4c04-1e56-11eb-b8dd-ab745d920a95.html 

3.数名の人間がState Farmアリーナ(集計会場名)に残り、少なくとも午前1時辺り*まで作業を続けた(それより長居した可能性もあるがビデオの続きを見る必要がある)
(*共和党監視員が集計が続いていたことを知らされアリーナに戻ったのがこの時で、守衛に集計員が入れ違いで去ったことを伝えている。防犯カメラにもその様子が写っている)

4.州務長官室から派遣された州公認の監督者が問題の集計現場に現れたのは、元々いた監視員達が帰され該当の集計員達が”作業”に取りかかった実に90分後のことだった。

5.集計用スキャナーは室内にあり、ビデオの映像は2人の人間が投票用紙、あるいは”何か”を州公認監督者が現れるまで長時間に渡りスキャンしているのを間違いなく写している。なぜ州務長官室の監査員は12:15にやってきたのか?何の理由で?

6.ジョージア州法では「監督者、投票所職員、その他の役員は予備選及び本選において…公共の場で作業を行うこと(O.C.G.A. §21-2- 406)、集計センターにおける全ての作業及び管轄区は公衆の目に解放されいること(O.C.G.A, § 21-2-483(b))」と定められている。

・上記6項目は全て事実で質問はたくさんある。全てを仔細に知ろうというのではないが我々の仕事は疑問を抱くことであって、例えばどうして彼らは皆を家に帰し作業を続けたのか、そして何をやっていたのかというように。

・11月3日の選挙当日深夜の監視カメラに納められていた、ジョージア州フルトン郡の選挙管理員達が取った不可思議な行動について、以下10の質問には”必ず”答えてもらわねばならない。
1.11月3日の選挙当日午後10:30頃、State Farmアリーナにいたフルトン郡の選挙管理員達は、監視員達とメディアに何と言って帰途につかせたのだろうか?何が本当の話で、また水道管の水漏れ事故はあったのか?
2.午後10:35から翌午前12:55あたりまで票に触っていたフルトン郡の選挙管理員とおぼしき4−6名の人物は誰か?
ー名前と役職は?
ー雇用主は?
ー直属の上司は?
ーすでに事情聴取はされたのだろうか?
3.およそ2時間半の間、具体的に彼らは何をしていて、監査ログには何が残されているのだろうか?この2時間半の間における投票用紙のスキャンデータ、票加算記録は調査されたのだろうか?
4.彼らの作業風景を元々現場にいた監視員達が見ることを許されなかった理由は何だろうか?
5.この時間帯に彼らは何をスキャナーに投入していたのだろうか?
6.これらのスキャナーにおける11月3日の選挙当日午後10時と翌11月4日朝8時の総票数の違いを調べた者はいるだろうか?
7.州務長官室より派遣された匿名の”監督者”は当日夜11:52から翌午前12:45まで現場にいたと主張するが、これははじめのおよそ90分間はその場にいなかったことを認めている。彼はなぜ深夜に現れたのか?人々を帰宅させてから彼らは作業をしていたわけだが、深夜にどんな理由で彼が出向いたのだろう?監視員がいない理由を彼は問いただしただろうか?
8.日付をまたいで4日の午前12:15、州務長官室より捜査次長がState Farmアリーナに派遣された理由は?
9.選挙当日の夜半過ぎ、彼らはどんな票作業をしていたのだろう?どうして布で覆われたテーブルの下から票箱を取り出したのか?
10.公式封筒に折り畳まれて郵送された形跡の無い、いわゆる”新品同様”の不在投票用紙があったという証言について捜査はなされたのだろうか。映像の中の部屋でそういった投票用紙が処理されていたように見える。なぜあそこに無効票ともされずに折り目のない不在投票用紙があったのだろうか?
・フルトン郡がメディア、投票所職員、監視員、そして我々大衆に「翌朝まで集計は停止する」などと伝達していなかったなら、我々は今これらの質問を抱えていないのである。
・州務長官室は2020年の予備選挙時も、選挙をめちゃくちゃにしたとしてフルトン郡に対して5万ドルの罰金を科していたけれども、我々が彼らの質問に答える義理があるだろうか?答えはノー。我々が彼らに回答させねばならないのである。
[邦訳終わり]


■スレッド4 日本時間2020.12.09,am07:05

・不正選挙疑惑は多岐に渡り、情報も氾濫していて追いつけない感がありますが、一部をEpoch Timesがインフォグラフにして纏めています。
・今回は勇気を出して宣誓書に署名した市民の声を紹介すべく、上部と左部のコラムを翻訳してスレッドにしました。
・*宣誓下で虚偽の証言をすることは罪に問われますが、法廷で証言しなければその限りではありません。しかし各州で行われた公聴会で発言した人達は相当なリスクを背負って出席したことは事実です。
・*不正を訴える声を紹介するスレッドであり、不正を決定付けるまたは否定するスレッドではありません。

コラム上部:
・大規模一般郵送投票
コロナウィルスを理由に郵送投票はかつてない規模で普及しました。これまでなら投票者は不在者投票用紙の申請に加え、送付先と本人証明をする立会人が必要でした。今年は9州とDCが本人証明の手続きを撤廃し有権者全員に投票用紙を郵送しました。

・郵送投票の簡素化
進歩派グループはあちこちの州で様々な郵送投票における署名や証人要請などのセキュリティ手続きを簡略化し、場所によっては選挙日後の消印も許可しました。

・集計監視員への妨害
ペンシルベニアやミシガンの監視員達は規則に従った集計作業の監視を拒否されたと証言しています。あるケースではあまりに遠くに立たされたため双眼鏡の使用を余儀なくされました。集計所の外に立たされた監視員もいました。

・電子投票集計システム
古い技術に頼った集計マシンはハッキングの脆弱性があります。全米で2大シェアを占めるドミニオンとESSは中国産のパーツで組み立てられ危険です。他社にはスマートマティックがありますがベネズエラなどとの関係が怪しまれています。

・外敵による干渉の可能性
リーダーの習近平がバイデンと蜜月にある中国共産党にはバイデン当選により利益が生まれます。バイデン一家も中国内での共産党員とも関わるビジネスで儲けてきました。共産党系国営メディアも公にバイデンへの支持を明確にしています。

・メディアとビッグテク
マスメディアもTwitterやFacebookなどのビッグテクも司法手続きを無視し、またトランプ大統領のツイートを含むあらゆる情報をデマや事実誤認として、時期尚早にバイデンを次期大統領であると後押ししています。

・4年に渡る反トランプ・キャンペーン
今回の不正選挙はロシア疑惑から弾劾裁判など、過去4年間に渡って繰り広げられてきたトランプ追い出し作戦の一環です。

コラム左部:
【90%以上がバイデン票】
20年の経験を持つある監視員は宣誓書の中で「ジョージアでの再集計中に、まっさら*かつ記入されたマーキング箇所が全て同一に見える票箱を見た」と証言。おおよそ98%がバイデン票であったと述べています。(*通常の郵送投票用紙にある折り目が無い)

【完璧な黒円】
複数のジョージア監視員が、再集計の折に「完璧な円」で記入された投票用紙(マークシート)を目撃したと宣誓書で証言しました。その内一人は「全てのマークは正円で全てバイデン票だった」とも。集計スタッフがマーキングを読み上げた中で「500回以上連続でバイデンだった」とも証言。

【署名確認なし】
ミシガンとジョージア両州の投票所職員たちは郵送投票の署名確認の措置が全く取られなかったと言います。デトロイトでは宣誓書に同意した職員が身元確認はしないよう指示されたと証言しました。

【深夜に届いた数万票】
ウェイン郡ミシガンでは選挙日翌日の早朝4時半頃、封も無く剥き出しの数万票が州外ライセンスの車両により搬入されたとの宣誓書による証言があります。「特筆すべきなのはわたしが観察した全ての票がバイデンへのものだったことです」と宣誓した職員は語りました。

【重複して加算された票】
ミシガンでは7名の承認が宣誓書にて一枚の投票用紙が何度も集計機を通ったと証言しました。共和党監視員の一人は識別番号がテープで隠された27枚の投票用紙の束が、5回に渡って集計機に入れられたと話しました。

【投票用紙の日付改竄】
デトロイトの選管委員は宣誓書に署名し、投票用紙の記入漏れや誤りを無視し又日付を改竄し有効期限内に変えるよう指示があったと証言しました。ペンシルベニアのデータ分析によると、51,000枚にものぼる郵送投票用紙が有権者に発送された翌日に返送された記録がありますー異常な配達速度ですーそして35,000枚が発送日当日に返送され、23,000枚が発送日より前の消印で返送されてきました。

【締切日後に加算された票】
9月17日にペンシルベニア最高裁は、選管が不在者投票も併せ全ての郵送投票用紙を選挙日当日の3日後まで受理して良いとの判決を下しました。
しかし11月6日に連邦最高裁のアリート判事は、選挙日以降に到着した投票用紙は分けておくようにと命じています。

【妨害された集計監視員達】
フィラデルフィア、デトロイト他の共和党集計監視員達は、集計作業や票の取り扱いをしっかりと観察することができませんでした。何も確認できないほど遠くに立つよう言われたり、作業室への立ち入りを禁じられたりしたそうです。また別の監視員達は公式の監視免許を持っていたにも関わらず入場を拒否されたと証言しました。ジュリアーニ弁護士によれば682,000通もの郵送投票が共和党側の監視のない部屋で処理されたとのこと。フィラデルフィア監視員の一人は「ほとんどの郵送投票用紙は15から200フィート離れたところで処理された」と語り、「誰が何をやってるのか全くわからない状態」で「それらの郵送投票用紙の扱いに関しては異議申し立てが全く通らなかった」としました。

【署名確認が皆無または緩い】
「選挙法に基づいた真贋不明の署名や記名の有無、宣誓の無い無記名用紙などの確認が各郡で適切に行われず、無効となるべき票が取り除かれなかった」として、11月30日にジョージアで訴訟が起きました。似たような訴訟は各州で起こされ、アリゾナでは共和党に郵送投票用紙の封筒にある署名の確認を許可する判決が11月30日に出されました。ジョージアでは今のところ退けられています。

【州外転居組を騙る票】
データアナリストのマット・ブレイナードとチームによると、国内転入出データベースを精査したところ数万人が激戦州(ペンシルベニア、ジョージア、ミシガン、ウィスコンシン、アリゾナ、ネヴァダ)から転出したにも関わらず彼らの名前で投票がなされていました。例えばジョージアでは138,221票が転出者の名で投票されていました。

【私書箱を居住地として登録】
またブレイナードのチームは有権者登録データを調べ、私書箱を現住所として登録するもそれとわからないように偽装しているケースを発見しました。ジョージアだけでもその数は1,000名にのぼります。

【異常に低い無効票率】
北コロラド大学の統計専門家ベンジャミン・オーヴァーホルト氏は宣誓書の中で2016年の本選の無効票率は0.28%であったのに対し2020年はたったの0.15%*だったと述べました。2020年の予備選は0.28%、2018年の0.20%です。
(*郵送投票率が圧倒的に多いのに無効票率が低すぎる)

(以上翻訳終わり)
「不正は無い!」と断言する否定派は数百名の証人の話が矛盾もなく噛み合う事実についてはどう説明するのでしょうか。
残念ながら大小規模の差はあれど不正も収賄も米国選挙には今も昔もつきものでした。
「不正はあっただろうが票差を覆すほどではない」ならばまだ誠実ですが。


■スレッド5 日本時間2020.12.17,pm03:46

・マイケル・フリン補佐官の弁護団の一人で今回の大統領選不正疑惑にも心血を注いできたジェシー・ビナルによる国土安全保障省&政務公聴会での冒頭陳述です。
・ネヴァダでの驚くべき不正調査が詳しく説明されていました。

・メディアも民主党もこれは我々による「でっちあげ」と言いますが…これらの証拠はデータ・サイエンティストと勇敢な告発者達によってもたらされました。我々がネヴァダ州で調べたものはこちらです。

ーまず42,000もの有権者が複数回投票しました。我々の専門家が実際に投票した人のリストと、同じ住所氏名誕生日を持つ人物を他の有権者リストと比べて確かめたのです。この方法ではファーストネームの表記を変えて複数投票した人や…旧姓と結婚後の姓の両方を使った人たちも見つけることができました。

ー郵送投票者リストと国民死亡者名簿を照らし合わせたところ、少なくとも1,500人の故人が投票した記録がありました。

ー約8,000人が存在しない住所から投票しました。これはCASシステムにより配達不可能な住所を割り出して確認しました。

ー19,000名以上の投票者が現在ネヴァダに住んでいませんでした。これは軍人投票者や学生を含みません。これらの投票者達はUSPS(米国郵政公社)の転出届などのデータを用いて確認されました。

ー15,000人以上が商業用あるいは存在しない住所から投票しました。我々の専門家は、非居住用住所や90日以上居住の事実がない住所を列挙するUSPSの公式記録を元に割り出すことができました。

ー驚いたことにDMV(車両管理局)のデータベースと照らし合わせたところ4,000人の非居住者も投票していました。

ー大まかにまとめると、我々の専門家はネヴァダ州内で130,000件あまり個別の不正投票を突き止めたことになりますが、しかし実数はさらに大きいことは確かでしょう。

ーこれらの数字は推測や統計サンプルではなく、我々のデータ・サイエンティスト達が「実在」の投票者リスト並びに一般公開されているその他のリストを比較して割り出したものです。端的に言えば、第三者も簡単にチェックできる方法です。我々の根拠は覆されたことはなく、ただ無視されています。

ー2名ばらばらにクラーク郡の技術者が名乗り出て、集計終了後の夜と翌日の朝とで、集計機に残された票の数字とUSBに記録された数字が異なっていたと証言しました。言い換えれば数字が夜を跨いで増えたり減ったりしたということです。

ー我々が集計機の監査を要求すると、許されたのは何の意味もないマシン本体とUSBの外側を確認することだけでした。鑑識は拒否されました。

ー最後に我々の捜査では、選挙広報チームがマイノリティにギフトカードやテレビなどの景品抽選会をちらつかせ、不法に投票を促していたことも突き止めました。

ー我々の熱心なチームはこれらの不審な点の数々を捜査するのに陪審員も令状もFBIのような司法の手も借りられませんでした。むしろひと月足らずの時間の中で批判的思考と腕仕事を持って証拠を集めたのです。

ー証言や書類をクラーク郡から集めようとしましたが、役人達はそれを拒み障壁となりました。彼らを訴えると、法廷日を遅らせ、いざとなると弁論の時間も充分に与えてくれませんでした。

ー終わりになりますが、議長、今回の発見は恐ろしく危険で、自由な社会において許されません。公明正大な選挙の慣習は守られるべき宝です。民による政治は勝ち取るのは難く失うのは容易い。不正票が一票認められるごとに、清き国民が一名、抹消されるのであります。ありがとうございました。
(終わり)


■スレッド6 日本時間2020.12.27,pm03:32

・マーク・ザッカーバーグの選挙介入
・莫大な資金と権力を持つFacebookのCEOがいかにして一組織を通し大統領選に大きな影響を与えたのか。
・元カンザス州司法長官フィリップ・クレイン氏による詳細リポートをKanekoa氏がスレッドに纏めていたので、一部抜粋して訳しました。

・フィリップ・クレイン氏らが活躍するAMISTAD PROJECTによる膨大な資料はこちら。詳細な資金の流れや用途、各機関の相関図など非常にわかりやすい。
・これまで様々な形態の不正疑惑が取り沙汰されたが、この大規模かつ慈善事業を装った大胆な選挙介入法は注目すべきだろう。

Zuckerberg Election Meddling Exposed – Got Freedom
https://got-freedom.org/zuckerberg-election-meddling-exposed/ 

1:ザッカーバーグによる$350Mの支援を受けて、活動家の組織達は民主党地盤と共和党地盤によって有権者への対策を変える二層の選挙システムを作り出した。

2:ザッカーバーグは集計所の中に招かれたが、米国市民達は締め出された。彼が出資したCTCL(=Center for Tech and Civic Life)は民主党地盤において有権者一人当たり$47を捻出したが、伝統的に共和党が強い地域においては有権者一人当たり$4-7のみに留めた。

3:ミシガンでは、前回ヒラリーが勝利した地区に$5,939,235が注ぎ込まれたのに対し、トランプが勝った地区では$402,878のみ。
ペンシルベニアでは$13,063,828がヒラリー地区へ使われたが、トランプ地区には$692,742だけ。
CTCLはコロナを隠れ蓑に民主党候補のバイデンに票を集めることを画策した。

4:連邦政府が選挙予算に割り当てたのが$400Mに対して、ザッカーバーグ及び他の左翼組織が今回の選挙につぎ込んだのは$500Mにも上る。これこそが”二層の選挙システム”であり選挙を動かした”影の政府”である。

5:ウィスコンシン
ウィスコンシンの”Wisconsin Safe Election Plan”の立案者は州ではない。CTCLは事実上これら5つの都市で選挙を仕切った。
ー”ほぼ無期限ともいえる”有権者ID不必要案を推進
ー時間外投票箱による証拠保全の原則の不履行
ー集計所の統合

ウィスコンシンの違反行為(一部抜粋)
ーウィスコンシン都市部の選管は民間の基金を受け取り、その見返りにNGOに選管を仕切らせた。ウィスコンシンでは市や郡が税金、公債、罰金、手数料、州の助成金以外から収入を得ることを禁じている。

ー税収入を除き、ウィスコンシン各市の選管は連邦HAVA(選挙助成金)以外の金銭受領を禁じられている。資金はウィスコンシン選挙委員会を経ねばならない。

ー州法により不在者投票用紙は有権者によって郵送あるいは自治体窓口に届けられねばならないが、ウィスコンシンの各都市は、公共のあちこちに監視のない”モバイル”投票箱を設置することで過程管理を怠った。

6:ミシガン
CTCLによって雇われた選挙管理人達は有意義な両党による監視体制を損なった。彼らはRock The Voteのような”サヨク”団体に州投票者ファイルへのアクセスを許可。何千もの票が両党の監視人抜きに”訂正”された。
(cure=不備のあった投票用紙を無効にせず一定期間内に”訂正”し有効票とする)

7:ペンシルベニア
CTCLから資金を受け取ったフィラデルフィアの選挙判事と委員は、投票所及び投票用紙回収ポストを仕切った。
民主党地盤のデラウェア郡では4平方マイル当たりに1つの投票ポストが設置されたのに、59の共和党が強い郡ではなんと1,100平方マイル当たりに1つの投票ポストのみだった。

8:ジョージア
フルトン郡は政府の有権者登録ファイルに私的アクセスを許し、早期投票へと促した。
CTCLからの資金を得た郡は14平方マイル当たりに1つの投票ポストが設置されたのに対し、CTCLの支援を受けなかった郡の投票ポストは294平方マイル当たりに1つの投票ポストに留まっていた。

9:投票用紙回収ポスト(Drop Box) 
ザッカーバーグの資金提供は投票用紙の回収に投票ポストを用いることで著しく過程管理の原則を損ない、集計されるべき有効票と弾かれるべき無効票の仕分けを怠ることとなった。

10:ザッカーバーグの選挙介入
ザッカバーグのチャリティ、CTCLは選挙判事への資金提供をし、投票ポストを購入し、集計所をひとまとめにし、例の窓を段ボールで塞いだ選挙委員達の給与を支払い、州法に違反するポリシーを行使した。

11:アメリカ国民は不正選挙があったと知っている
我々はザッカーバーグの用意した大規模なアリーナ会場が集計所として使われ、監視員達が双眼鏡で遠くから集計作業の監視を余儀なくされた事実を目の当たりにした。選挙委員達も州法違反を認めた。

(スレッド翻訳終わり)

↑Blah(@yousayblah)さんのスレッドは以上です↑



(2) THE NAVARRO REPORT
https://navarroreport.com/

VOL.1: T H E I M M A C U L A T E D E C E P T I O N: Six Key Dimensions of Election Irregularities(2020.12.17)
(完璧な偽り:不正選挙に関する6つの重要な特徴)
https://img1.wsimg.com/blobby/go/be36dc6d-0df4-4c20-addf-fca72be46150/The%20Immaculate%20Deception%2012.15.20.pdf

VOL.2: T H E A R T O F T H E S T E A L Volume Two of the Navarro Report January 5, 2021(2021.01.05)
(『盗みの芸術』−民主党による大戦略)

https://img1.wsimg.com/blobby/go/be36dc6d-0df4-4c20-addf-fca72be46150/The%20Art%20of%20the%20Steal%201.5.21%20FINAL.pdf

VOL3. :Yes, President Trump Won: The Case, Evidence, & Statistical Receipts(2021.01.14)
(Yes,トランプ大統領は勝利した:事実、証拠、そして統計的計算値)
https://img1.wsimg.com/blobby/go/be36dc6d-0df4-4c20-addf-fca72be46150/The%20Navarro%20Report%20Volume%20III%20Final%201.13.21-0001.pdf


(3)Sidney Powell's Legal Team report
 [PDF: Sidney Powell's Legal Team 2020 'Election Fraud' Document Binder 12/23]
https://www.zenger.news/sidney-powell-document-binder-2020-election-fraud/

[Dominion_Serbia_Redacted_Affidavit_01_09_2021_Redacted.pdf]
https://mcusercontent.com/1051113c6f6d8825da118b2e3/files/72a27dd9-9d94-4b2b-ab76-33bfa4d76dba/Dominion_Serbia_Redacted_Affidavit_01_09_2021_Redacted.pdf?mc_cid=4238297f4f&mc_eid=4ddad5773d

(余談)Samir Abdelli : Top 5 Influential Lawyer around the world.
https://www.law.com/legalnewswire/news.php?id=2848812&mc_cid=745c76914b&mc_eid=4ddad5773d 



 かなり物議を醸している件について。
 「合理的な人なら私の言うことを信じないだろう」と訳されていることが多いようです。
 「論争に興味を持った人は自由に証拠を確認し、それに基づき自らの結論を出すなり裁判結果を待つなりするだろう」という趣旨のことがあまり重要視されていないのはなぜなのかな…という気もします。

Sidney Powell | Author of the Bestseller Licensed to Lie
https://www.sidneypowell.com/ 
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Official Statement from Sidney’s Lawyer
HOWARD KLEINHENDLER, ATTORNEY FOR SIDNEY POWELL, RESPONDS TO MEDIA ALLEGATIONS CONCERNING MOTION TO DISMISS FILED AGAINST DOMINION COMPLAINT
New York, New York March 23, 2021


Yesterday, several news media outlets cut and paste out of context portions of our motion to dismiss the Dominion complaint to “spin” a message that the election fraud allegations that Ms. Powell presented to various courts and to the public were not credible. I’d like to clarify what actually was presented to the court. First, let me be clear: any suggestion that “no reasonable person” would believe Ms. Powell or her comments on the election is false. The language these reports referred to is a legal standard adopted by the courts to determine whether statements qualify as opinions which are exempt from defamation liability.

As the DC Circuit reaffirmed just last week, there is no claim for defamation when the alleged “defamatory” statement is a legal opinion. Ms. Powell’s statements fall precisely into this category. Ms. Powell reviewed sworn affidavits, declarations, expert testimony, and other highly corroborated evidence concerning the election which Ms. Powell filed with the courts and shared publicly. She continues to stand by those opinions today. Our motion, in part, argues that the Dominion case should be dismissed because legal opinions are not grounds for defamation.

In sum, the legal standard of a technical legal defense crafted by the courts has been improperly manipulated by the media to tell a false narrative. Ms. Powell is not backing down or retracting her previous statements concerning Dominion. Dominion’s case lacks legal merit and should be dismissed in its entirety.

For further information contact (917) 793-1188

HOWARD KLEINHENDLERは パウエル氏の弁護士としてドミニオン社の訴えに対する反訴に関して
メディア数社の報道に反論する。
ニューヨーク州、ニューヨーク
2021年3月23日

 昨日、メディア数社が我々のドミニオン社に対する反訴内容を切り貼りし、パウエル氏のコメントを歪曲し、同氏が提訴し公表した内容に信憑性が無いと発言したかのごとく伝えた。私はここに実際の提訴内容を明確にする。先ずハッキリさせたい事は、いかなる者であっても、まともであれば選挙に関してパウエル氏自身または同氏のコメントを信じる事は無いだろう、という示唆は誤りであるという事だ。このような報道に使われた言葉は、法廷での陳述内容がドミニオン社に対する名誉棄損になるかどうかを規定する法律用語に触れたものだ。

 コロンビア特別区巡回裁判区は「名誉棄損」と称するドミニオン社による陳述は法的意見であるが、名誉棄損は成立しない事を先週再度確認した。パウエル氏の言葉は正にこの範疇に当てはまる。パウエル氏は選挙に関する宣誓供述書、各種宣言、有力な証言、高度に裏付けの取れた証拠を調査した上で提訴、公表を行った。同氏の姿勢はいまだに変わらず一貫している。我々の提訴は、ひとつには、ドミニオン社が起こした訴訟は、名誉棄損とする根拠の欠如を理由に却下されるべきと主張している。

 要は、法的防衛手段の法的標準がメディアの不当な虚偽報道によって操作されたという事である。 パウエル氏は決してこれに屈する事なく、ドミニオン社に関する主張を撤回することは無い。ドミニオン社か起こした訴訟は法的価値を有せず、完全に撤回されるべきものである。

 追加情報の問い合わせは、以下にご連絡乞う。 (917) 793-1188
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〈参考〉
P弁護士vsD機器裁判「まともな人は信じないだろう」訴状を読んで事実確認してみた(カナダ人ニュース) - YouTube/ 2021/03/25
https://www.youtube.com/watch?v=bQvFyVyBzWA 



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9、一行三昧


毎月FBで、月のはじまりをお知らせするカレンダー。
うらべきよこさんという方が、作っておられます。

みの紙工房 F きよこハウス  minogami Japanese handmade paper

https://kiyokohouse.com

3月はこんな感じでした。

画像6


このカレンダーに寄せる文章を書いている段階で、私の心に浮かんでは消えまた浮かんできたものが今回の投稿の文章を書くきっかけとなりましたので、一応参考資料としてここにも置いておきます。

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◯□和紙カレンダー 3月□◯

一行三昧

Ichi gyo zan mai 

Strive for just one thing

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一つのことに専念し、ひたすら純粋に精神を集中して心を安定させること。

今回も、私にとっては難題です…。
継続してこれをやってきた、と言えるものがないからです。
けど、継続、というのはもしかして求められていないのかな。
じゃあ、一つのことに専念する、ってどういうことなのかな。

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この切り絵の牛さんは、「山菜を摘む」という「一つのこと」をやっています。

しかし摘んでいる山菜は、つくし、うるい、わらび、こしあぶら、などなど、さまざまな種類のものがありそうです。

(牛さんの手前にあるのは「こごみ」にも見えますが、おそらく「ぜんまい」…今回のテーマが「ざんまい」なので…)

そしてどうやら、好きなものから摘んでいくというより、自分の目の前に現れた順番通りに摘んでいっているように見えなくもありません。

「一つのこと」を、「一つの目的のためになされる総体的なこと」に限定して考えた場合、「ひたすら純粋に精神を集中して心を安定させること」と、「山菜採りをしている牛さんが自分の足元を見ていること」とは重なる部分があるような気がします。

でも牛さんは、少し遠くの山菜にも気がついているのではないでしょうか。

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 いずれにしても、私にとってフィランソロピーとの出会いは文字どおり、わが生涯の決定的なポイントであったことは間違いない。未来研究も、大学における教育の実践も、ともに、私の生涯の大目標たる、よりよき未来の構築のための一里塚であったが、フィランソロピーこそは、そのゆるぎなき道しるべに違いなかった。私はトヨタ財団での日を重ねるにしたがってその思いを強くしたのであった。
 現世での私の生涯は、ようやく終わり近くになってたどりついたフィランソロピーへの道であったが、来世生まれ変わってきたら今度はその生涯のはじめから真っすぐにこの道を歩みつづけてゆこう、とひとりひそかに思い定めている。
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(林雄二郎「フィランソロピー」『日本の繁栄とは何であったのか −私の大正昭和史』1995年. PHP研究所. p. 305)

林雄二郎先生。
(1916(大正5)年7月27日 - 2011(平成23)年11月29日)
検索するとたくさんの情報が出てきます。経済企画庁の主要ポストから東京工業大学社会工学科教授に転職され、さらに、財団法人未来工学研究所や財団法人トヨタ財団へ所属が変わることは、当時としてはそんなに一般的ではなかったようです。ちなみに林先生は日本NPO学会の初代会長であり、林先生の名を冠した学会賞「林雄二郎賞」は同学会において「日本のNPO等に関する研究や活動の発展に多大な貢献をした最優秀の1点」とされています。

後段の補足。
林先生は「チベット密教を少しばかりかじっている」ので「輪廻転生を信じて」おられたようです。厳密にいえば、いわゆる仏教と輪廻転生は直接結びつかないと思われます。しかし、魂という固定的存在の実存を想定するのではなく、たとえば、行為の作用であるとか(縁起)、心が転がり続ける状態の比喩(六道輪廻)、という面から考えてみると、もしかしたら興味深い解釈につながるかもしれません。

(余談)帯の文章。
「息子の私が言うのもいかがと思うけれど、やはり面白い。ひと味違った「自分史」になっている。生きた昭和史・戦後史としても、多くの方に読んで頂きたいと念願する所以である。 林望」
(リンボウ先生の文章に付け足すなど恐れ多いのですが、ほんとうに面白いです。海軍、早稲田中学、工業化、東南アジア、戦後の官僚、などに興味のある方はぜひ!)

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 社会は常に変化をする。しかし、それはすべてのことが同じテンポで変化してゆくということではない。速やかに変化することからきわめてゆるやかにしか変化しないことまで、時代により、事象によって、その変化のテンポはさまざまである。そしてわれわれにとって大切なことは、一見、変化しているように思えなくても、注意深く観察すると、ゆっくりではあるが、将来、大きな変化の潮流となるかもしれないような “ 変化の兆候 ” を見つけ出すことである。この変化の兆候を目ざとく見つけ出すことが現代のわれわれにとってきわめて重要なことである。だから未来を考えることは注意深く現在を見つめなおし、考えなおすことでなければならない。
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(林雄二郎「フィランソロピー」『日本の繁栄とは何であったのか −私の大正昭和史』1995年. PHP研究所. pp. 230-231. )

社会は常に変化しています。
自分は変化しないのでしょうか。
さまざまなことにとらわれている私には想像しにくいです。

変化していく中で心を安定させるとは、どういうことなのでしょうか。

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 問答競技は、パルメニデスに発した論理的思惟が、プラトンの問答法やアリストテレスの論理学に発展する重要な一段階をなすものであって、ギリシア思想が伝統的な治国斉家の教えや、狭い日常経験と世俗的人情のみに即するレトリックを越えて飛躍的な発展を遂げるためにも、これらの一切を無視するエリスティケー論理の破壊的な仕事が充分な意義をもつものであったことを認めなければならないであろう。
(1941(昭和16)年)
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(田中美知太郎「エリスティケー」『ソフィスト』1976(昭和51)年. 講談社学術文庫. p. 167. )


問答競技という言葉にあまりよい印象はもたれず、アリストテレスは特に悪い意味に限って使っているようです。しかしその問答競技の問答形式と、エレアのゼノンを始祖とする問答法のそれとは異なるところがありません。

もし当時、問答競技なんてけしからん!と禁止されていたら、現代に続く哲学の基礎は整えられなかったのかもしれませんね。

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ソロンの改革(前 594年)がアテナイ市民にもたらしたものは法律上の平等でした。
しかし経済上の不平等は解消に至らず、人々は一時的に独裁政治を必要とします。
ペイシストラトスの国民本位の農業政策は成功した後、その任務を終えました。
クレイステネスの陶片追放により独裁政治から再び民主政の時代になります。

そのような政治の中では市民一人ひとりの心がけが大切だったかと思います。
立身栄達だけにとらわれず、弁論家の強大な説得力にも支配されない態度等。
しかし当時のアテナイでそれを重要視していた人はどれだけいたでしょうか。
繁栄の都であり直接民主制を誇ったアテナイはやがて没落していったのです。

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ところで今月も、自分の考えを補強するための文章しか引用していません。
自分も変化すると書いておきながら、実はそうでもないのかもしれません。
もう少し根本的な部分から考え直さないといけないような気がしています。


未来を考えることは、「現在を」注意深く見つめなおし、考えなおすこと。
今月も、自分にできないことをやってくださる方を心の中で応援しています。

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 何が正であり、何が不正であるかということも、何が見好いことであり、何がみっともないことであるかということも、国家社会の風習や法律によって、それぞれに違っていて、それはその国家社会 “にとって” そう “ある” だけの、相対的なものだと考えられるかもしれない。しかしそれらの風習や法律によって定められていることが、その国家社会にとってためになるものであり、利益になるものであるかどうかということは、もはや法律や習慣で定めることはできない。そこに立法の仕事を主とする政治のむずかしさというものがある。また同じく各個人も、何が本当に自分のためであり、自分の幸福となるかを知ることはできない。それは自分が勝手に考えてきめることのできるものではなくて、それはそれとしての自体的なあり方があって、それを知らなければ、どうにもならないことなのである。そしてこれらはいずれも将来にかかわるものが主となるが、将来の予測については、誰でも尺度となりうるのではなくて、そこには専門の知識が要求されることになる。われわれは将来をいろいろに予測しても、未来はそれ自体のあり方をもって、われわれを失望させたり、意外の驚きにおとしいれたりするだろう。未来はプロタゴラス説の限界を示す広大な領域なのである。そこでは誰でも知者になれるというようなプロタゴラス説の安易さは、たちまちのうちに破砕されてしまうのである。
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田中美知太郎「解説」, プラトン 著/田中美知太郎 訳『テアイテトス −知識について』1966年1刷. 2014年改版1刷. 岩波文庫. pp. 350-351. )


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(2021年4月1日 紙德真理子)

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