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同一労働、同一賃金?

最近遭った元同僚との会話で、ざらりと感じた違和感について書いてみたいと思います。

「もう3年なんだ。どうするの?」
3年ルール、5年ルールができて派遣仲間では時々こんな会話が飛び交う。
「すんごい悩んだんやけど、直接雇用に決めた」
「よかったね」
よくないよ、と彼女は即答し、
「パートだよ、時給聞いて、ホント最低賃金に毛が生えたような額で、ひっくり返りそうになった」と。

そういえば。
私は、自分の時のことを思い出した。
そうだった。あの会社には、フルタイムのパートというものが存在する。
「正社員は無理やから、パートで」
というようなことを、私も人事担当管理職に提示された。
私は、生活していかなくてはならないから、短時間のパートではとてもやっていけないんです、というようなことを返したと思う。
パートといっても、勤務時間は今までと同じフルタイムですヨ。
安心して下さい、という風に人事担当は笑った。

パートって、part time jobでしょう?
昔々習った英単語では、パート=パートタイムの略で短時間労働のはず。
フルタイムのパート?って、単語としてなりたたない。
でも、日本の慣行ではパートは非正規の呼称のひとつで拘束時間は関係なくて、そしてこの場で語源がどうのということにこだわってもしょうがない、ということなのだろう。
でも、じゃあ、アルバイトとの違いは?
職業欄がパート?
派遣から直接雇用になって余計に(世間的には)信頼がなくなるってこと?
パートになって当社で3年5年が経過したら、再度3年や5年のルールにのっとって・・・、これって日ごろの仕事ぶりを認められた結果といえる?
気持ち的には、なんだこりゃ?、なんだけど。

きっと私は腑に落ちない顔をしていたのだろう。
人事担当の管理職氏は続けた。
「コミスさん(私)については、部署から、どういう形でもいいから残ってもらいたいといわれている。コミスさんは無期派遣も検討されているということなので、時給は少し落ちますがボーナスで調整して、年収は同じ額になるよう調整します。
ただし、これは長年勤務してるパートさんより高額になってしまうので秘密にしてくださいね」と。

やっぱり、なんか、おかしくないか?
時給は下げにくい。でもボーナスは簡単に下げられる。業績次第でなくなることだってある。
そんなアテにならないもので調整するといわれてもなあ。
秘密っていっているけど、契約書にそれを書いてくれるのだろうか?

さすがに、ボーナスで調整なんてずっと守ってもらえるか疑っている、とは言いにくかったので、月給で生活しているからそれが下がってしまうと生活に困る。年収が同じならいいというものではないというようなことを言った。
それなら月給を同額にすることもできますといわれたけれど、結局のところ、個人的な事情もあって私は無期派遣を選んだ。

私はてっきり彼女にも同じような話があって決めたのだろうと思い、よかったねと言ってしまったが、彼女は無期派遣の条件を満たしていなかったので、そこと競る必要がなかったから、最低賃金並みの条件を提示したのだろう。

同一労働、同一賃金。
平たくいえば、同じ仕事をする正規と非正規間での格差を認めないということで、ぱっと見画期的な法改正に見える。
しかしそんなものは、正規が一つでも非正規と違う仕事をしていればなんとでもいいわけができること。何もかわらない。と思うのは、私の勉強不足だろうか。

すっかり脱線してしまった。
元同僚の彼女の場合、仕事内容は、派遣最終日と直接雇用初日とで何もかわらない、まさに同一労働のはずだが、賃金は3分の1近くになってしまう。
新たなパートを探すより、はるかに即戦力である人材が、今までの約3分の1の給料で買いたたかれる。
そして派遣で過ごしたタイマーはリセットされ、ここから直接雇用における3年5年のルールのカウントが始まる。気の遠くなるような話ではないか。
これが働き方改革、なのか。

救いというか、哀しさを感じたのは彼女が話を締めくくった言葉だ。
「でも、自分で決めたことやから、ぶすっとしていてもしょうがない。気持ちよく働かんとね」と。
彼女のような人が報われる制度こそ、働き方改革ではないのだろうか。

#派遣 , #同一労働 , #同一賃金 , #パート , #フルタイム #働き方改革