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【FAQ】特発性過眠症の有病率は?

「現在の特発性過眠症の有病率を知りたい」というお問合せがありましたのでこちらに回答を記載させていただきます。

特発性過眠症の有病率に関しての結論は下記のものです。

有病率の正確な数値はわからないというのが最終結論です。
特発性過眠症の有病率に関する公式な研究は一部存在するものの、すべての調査結果が違う数値を示しており、極端なものでは100倍以上の差があるものです。
特発性過眠症の診断基準が施設や研究ごとに違うのは日本国内でも同様です。
特発性過眠症の診断基準には問題があり、現在の診断基準では健康な一般人口の3〜5人に1人が特発性過眠症です。
https://note.com/kaminshousupport/n/n54af7951cb54


特発性過眠症の診断基準は緩い病院と厳しい病院の差が激しく、一人の患者さんが一つの病院で診断を受けても別の病院で違うと否定されたり逆のことが起きたりということが日本国内でも当たり前のように起きています。

特発性過眠症の有病率に関して、一つの研究機関が特発性過眠症の有病率を公式に発表していて専門家の人が「この研究ではこういう統計が発表されているからこれが正しい」と主張していることもあります。
しかし、ある1人の専門家が一つの研究発表や論文を提示しても、別の専門医が「いや、こっちの別の研究機関からこういう違う結果が発表されている」「いやこっちの研究でも違うものが発表されている」という議論が永遠と続いてしまう状況です。

つまり、特発性過眠症の有病率に関して永遠に結論に辿り着くことはできません。


しかし、現在の特発性過眠症の有病率に関して、今ある限られた情報の中から推測をすることはできるものです。
現在の定義の特発性過眠症は誤診で診断を受けている人や病院を変えるごとに診断名が変わる診断が曖昧な人が多いものです。
その全てを含めた場合の「特発性過眠症」の有病率の推測値はナルコレプシーと同数もしくはやや多い位/過去の診断基準の時の約100倍位です。


下記に論拠を記していきます。


特発性過眠症の有病率に関して日本国内で公式の論文として発表されている研究論文はこちらです。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsrcr/28/3/28_440/_pdf/-char/ja

下記の画像は上の論文の引用ですが、

一つの調査では
ナルコレプシー24.4%
特発性過眠症14.6%

もう一つの調査では
ナルコレプシー40.2%
特発性過眠症35.9%
という結果だそうです。

「日本では地域差がある」とありますがこれは普通に考えて地域差ではなく単純に特発性過眠症の診断基準の問題が根源であるように思えます。

この論文でもそうなのですが、今までも日本の医療機関は特発性過眠症の診断基準の問題について言及を極力しないようにしていると感じることがあります。



英語でIdiopathic Hypersomnia Prevelance(特発性過眠症の有病率)  の検索をしてみましょう。
すべての論文がかなり異なった数値(論文や調査ごとに100倍以上も違う)を出しているものです。

https://www.google.com/search?q=idiopathic+hypersomnolence+prevelance&rlz=1C5CHFA_enJP990JP990&oq=idiopathic+hypersomnolence+prevelance&gs_lcrp=EgZjaHJvbWUyBggAEEUYOTIJCAEQIRgKGKABMgkIAhAhGAoYoAHSAQg1NDMyajBqN6gCALACAA&sourceid=chrome&ie=UTF-8

下記の論文では特発性過眠症の各施設ごとの有病率に差がありすぎることで特発性過眠症の診断基準が疑問を呈されています。

https://www.sciencedirect.com/topics/agricultural-and-biological-sciences/idiopathic-hypersomnia

Hypersomnolence Australia (特発性過眠症の世界一の研究啓発機関)も
「特発性過眠症は歴史上存在した様々な別の研究グループが別の診断基準を用いて研究を行なっていたため、比較研究が困難である。」と下記で発表しています。

The terms idiopathic hypersomnia and hypersomnia of unknown origin are not synonymous. Different research groups have historically used different diagnostic criteria, making comparisons across studies difficult.
https://www.hypersomnolenceaustralia.org.au/single-post/2017/12/29/idiopathic-hypersomnia-a-comprehensive-review


日本国内でも特発性過眠症の診断基準は医療機関や先生ごとに異なり、同じ患者さんが別の医療機関を受診するだけで過去に特発性過眠症の診断だった患者さんが別の病院でそれを否定されたり、逆のことが起きたりします。
もっとひどいケースでは同じ病院なのに担当医さんが受診をする曜日を変えるだけで変わりその担当医さんごとに別の診断名(特発性過眠症→睡眠不足症候群、ロングスリーパーの相対的な睡眠不足状態、別の併発疾患に起因する過眠の症状など)を告げられたりします。

現在の特発性過眠症の診断基準は健常者の約22〜30%が満たすもので、再検査で40%以上の症例が陰性になってしまい、検査の再現性にも乏しいものです。

私たちは過眠症のサポートを10年以上行っています。

特発性過眠症は睡眠不足の誤診が多いと言われていますが、これは本当にその通りです。
正直、現在の特発性過眠症は健常者の睡眠不足の人でも複数の医療機関を受診すればほぼ誰でも診断が受けられる状態になっています。


特発性過眠症の診断を受けている患者さんで「有名な先生のもとで大きな病院で適切な検査を受けているから誤診は起きない」と言われる方がいらっしゃいますが、実際に私は「大きな病院の有名な先生の元で特発性過眠症の診断を受けている」という患者さんの誤診の症例を山ほど知っています。
特発性過眠症はそもそもその診断基準に問題があるので特発性過眠症の診断の際に適切な検査を受けているか、診断をしている先生が有名だったか、検査をした病院が大きかったかということはあまり関係がなく誤診が起きてしまう疾患なのです。

特発性過眠症の有病率については現在の特発性過眠症の診断基準が病院ごとに違う状態ですので「現在の特発性過眠症の有病率を正確に測定することは不可能です」というのが正しい回答となると思います。


しかし、このような状況であっても、誤診の方を含めた現在の特発性過眠症の有病率を「推測」することはできると思います。

特発性過眠症の有病率に関しての私の推測は「現在の特発性過眠症の有病率はナルコレプシーと同数もしくは特発性過眠症の方がナルコレプシーに比べてやや多いくらい/過去の診断基準の時の約100倍である」というものです。

下記に論拠を提示していきます。

①私がお話をしてきた別の地域の別の病院に勤務している複数の睡眠専門医
さんが「特発性過眠症とナルコレプシーの患者さんの人数の比率は同数くらいである」と発言をしていました。(※特発性過眠症は病院ごとに診断基準が変わるので全ての病院の全てのお医者さんが同じ発言をしているわけではありません。)

②私がお話をした東京にあるとある大きな睡眠専門病院のお医者さんも「今の診断基準の特発性過眠症の人数は昔の診断基準の頃と比べて約100倍くらいである」と発言していました。東京の大きな病院は日本のどこの病院よりも患者数が多いと思いますので、こちらの証言は信憑性があると思います。

③私がお会いしてきた患者さんの個人的な経験則でもナルコレプシーと特発性過眠症の比率は約同数もしくは特発性過眠症の方が若干多いくらいであると感じています。

④TwitterなどのSNSで診断名を限定しない過眠症のオフ会に何回も出席したことがある方に聞いたところ、ナルコレプシーと特発性過眠症の人数の比率は約同数とのことでした。

⑤過眠症サポートネットワークの関連の国際過眠症研究啓発協会/国際過眠症協会がSNSでナルコレプシーと特発性過眠症の人口比率に関する簡易的なアンケートを行い下記の結果でした。
特発性過眠症とナルコレプシーの人数は約同数であるという結果です。

⑥厚生労働省の公式データによる全国の各睡眠障害1日の推定来院数「過眠症」1日約100名です。
現在過眠症と呼ばれる疾患の中で一番診断を受ける人数が多いのが特発性過眠症なので、この人数であれば約100倍が頷けると思います。



特発性過眠症の有病率は過去に「10万人に数人の割合である」と推測されている文献があります。
ナルコレプシーの有病率は600人に1人と言われていますが、この有病率はナルコレプシー1型に限定をしているものなので、実際のナルコレプシーの人数は600人に1人よりも多いものとなります。
ナルコレプシー2型の診断基準には特発性過眠症と同様の問題があるため2型の有病率に関する正確なデータが存在しないのですが、ナルコレプシー1型と2型の比率は同数くらいもしくは2型の方が少ないという推測がされている文献が多いです。つまりナルコレプシーの2型を入れた有病率は最低でも600人に1人〜最高で300人に1人と推測ができます。

特発性過眠症の有病率が10万人に数人であると言われてきた頃の特発性過眠症の診断基準と今の診断基準は完全に別のものです。

現在の特発性過眠症がもしも推定有病率が300〜600人に1人のナルコレプシーと同数であると仮定するならば、現在の特発性過眠症の有病率は10万人に数人の頃の約100倍であると推測できます。


ちなみに海外では特発性過眠症の人口が2013-2016年に33.8%増加したという研究発表もあります。


日本国内においても現在の診断基準が使用され続ければ、特発性過眠症の人口は今後も増加していくことが見込まれます。



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