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【FAQ】特発性過眠症の有病率は?

「現在の特発性過眠症の有病率を知りたい」というお問合せがありましたのでこちらに回答を記載させていただきます。


特発性過眠症の有病率に関する公式研究発表は多く存在するものの、すべての調査結果が違う数値を示しており、極端なものでは100倍以上の差があるものです。つまり、今現在どこか一つの研究で特発性過眠症の有病率に関する具体的な数値が発表されていてもその数値を鵜呑みにしない方が良い/その数値がどのようにして計算されたものなのかを他の情報と合わせてすべてを総合して考慮した上で理解した方が良いということです。

特発性過眠症の診断基準が施設や研究ごとに違うのは日本国内でも同様です。
特発性過眠症の診断基準には問題があり、現在の診断基準では健康な一般人口の3〜5人に1人が特発性過眠症です。

実際、当団体の経験上でも特発性過眠症の診断基準は緩い病院と厳しい病院の差が激しく、一人の患者さんが一つの病院で診断を受けても別の病院で違うと否定されたり逆のことが起きたりということが日本国内でも当たり前のように起きています。

特発性過眠症の有病率に関して、一つの研究機関が特発性過眠症の有病率を公式に発表していて、一人の偉い専門家さんが「この研究ではこういう統計が発表されているからこれが正しい」と主張されていることもありますが、ある一人の偉い専門家/専門医さんが一つの研究発表や論文を提示しても、別の同格くらいに偉い専門家/専門医さんが別の同格くらいに信憑性のある研究発表を引用して別の主張をされているので「いや、こっちの別の研究機関からこういう違う結果が発表されている」「いやこっちの研究でも違うものが発表されている」「こっちの偉くて有名な学会はこういう発表をしている」という議論が永遠と続いてしまう状況です。
この状況では「こっちが正しい」「いや、こっちのほうが正しい」という研究発表論文の出し合い/堂々巡りが永遠に続いてしまい結論に辿り着くことはできません。

しかし、現在の特発性過眠症の有病率に関して、今ある限られた情報の中から推測をすることはできるものです。

その有病率の推測値はナルコレプシーと同数もしくはやや多い位/10万人に数人と予想されていた過去の診断基準の時の約100倍位というものです。
(*現在の「特発性過眠症」は誤診が非常に多く、どこからどこまでが「特発性過眠症」であるのか非常に線引きをしづらいものなのですが、ここでの「特発性過眠症」はそういった臨床医療現場での誤診を含めた「特発性過眠症」の診断を受けている全ての症例としたいと思います。)



この件に関する論拠を下記に記していきます。

英語でIdiopathic Hypersomnia Prevelance(特発性過眠症の有病率)  の検索をしてみましょう。すべての論文がかなり異なった数値(論文や調査ごとに100倍以上も違う)を出しているものです。


下記の論文では特発性過眠症の各施設ごとの有病率に差がありすぎることで特発性過眠症の診断基準が疑問を呈されています。
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/B9781416066453000864


Hypersomnolence Australia (特発性過眠症の世界一の研究啓発機関)も
「特発性過眠症は歴史上存在した様々な別の研究グループが別の診断基準を用いて研究を行なっていたため、比較研究が困難である。」と下記で発表しています。

”The terms idiopathic hypersomnia and hypersomnia of unknown origin are not synonymous. Different research groups have historically used different diagnostic criteria, making comparisons across studies difficult.”


特発性過眠症は診断基準が何度も改定になっており例えばICSDでは過去に3回も診断基準が改定になっています。

しかし、論文を把握する限り、特発性過眠症は同じ時代の研究であっても有病率に差があるものなので、特発性過眠症の診断基準の改定歴と有病率の数値の多様性にはあまり関係がないと思います。
特発性過眠症の診断基準はどこの時代のどの診断基準でも問題があるということです。

例えば、当団体が把握している日本国内の状況でも特発性過眠症の診断基準は医療機関や先生ごとに異なり、同じ時代であっても、同じ患者さんが別の医療機関を受診するだけで過去に特発性過眠症の診断だった患者さんが別の病院でそれを否定されたり、逆のことが起きたりします。
もっとひどいケースでは同じ患者さんが同じ病院を受診していても診察担当医師が受診をする曜日を変えるだけで変わり、その担当医さんごとに別の診断名(特発性過眠症→睡眠不足症候群、ロングスリーパーの相対的な睡眠不足状態、別の併発疾患に起因する過眠の症状など)を告げられたりします。
繰り返しになりますが、現在の特発性過眠症の診断基準は健常者の約22〜30%が満たすもので、再検査で40%以上の症例が陰性になってしまい、検査の再現性にも乏しいものです。

私たちは過眠症のサポートを10年以上行っています。

特発性過眠症は睡眠不足の誤診が多いと言われていますが、これは本当にその通りです。
正直、現在の特発性過眠症は健常者の睡眠不足の人でも複数の医療機関を受診すればほぼ誰でも診断が受けられる状態になっています。

https://note.com/kaminshousupport/n/n26d22c3e941b

特発性過眠症の診断を受けている患者さんで「大きな病院に在籍しているテレビにも出ている有名な先生/有名な学会の認定睡眠専門医さんの元で規定の入院検査を受けているから誤診は起きない」と言われる方がいらっしゃいますが、実際に私は「大きな病院に在籍しているテレビにも出ている有名な先生/有名な学会の認定睡眠専門医さんの元で規定の入院検査を受けて特発性過眠症の診断を受けている」という患者さんの誤診の症例を山ほど知っています。

特発性過眠症はそもそもその診断基準に問題があるので特発性過眠症の診断の際に適切な検査を受けているか、診断をしている先生が有名だったか、検査をした病院が大きかったか、有名な学会の認定医さんだったかということはあまり関係がなく誤診が起きてしまう疾患なのです。


 
ちなみに特発性過眠症の有病率に関して日本国内で公式の論文として発表されている研究論文はこちらです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsrcr/28/3/28_440/_pdf/-char/ja
下記の画像は上の論文の引用ですが、

一つの調査では
ナルコレプシー24.4%
特発性過眠症14.6%

もう一つの調査では
ナルコレプシー40.2%
特発性過眠症35.9%
という結果だそうです。

「日本では地域差がある」とありますがこれは普通に考えて地域差ではなく単純に特発性過眠症の診断基準の問題が根源であるように思えます。

この論文でもそうなのですが、今までも日本の医療機関は特発性過眠症の診断基準の問題について言及を極力しないようにしていると感じることがあります。(言及規制があるのでしょうか?よくわかりません。)


また「現在の特発性過眠症の有病率はナルコレプシーと同数もしくは特発性過眠症の方がナルコレプシーに比べてやや多いくらい/過去の診断基準の時の約100倍である」という推測値に関して、下記に私的な経験上での論拠を更に提示していきます。

①私がお話をしてきた別の地域の別の病院に勤務している複数の睡眠専門医
さんが「特発性過眠症とナルコレプシーの患者さんの人数の比率は同数くらいである」と発言をしていました。(※特発性過眠症は病院ごとに診断基準が変わるので全ての病院の全てのお医者さんが同じ発言をしているわけではありません。)

②私がお話をした東京にあるとある大きな睡眠専門病院のお医者さんも「今の診断基準の特発性過眠症の人数は昔の診断基準の頃と比べて約100倍くらいである」と発言していました。東京の大きな病院は日本のどこの病院よりも患者数が多いと思いますので、こちらの証言は信憑性があると思います。

③私がお会いしてきた患者さんの個人的な経験則でもナルコレプシーと特発性過眠症の比率は約同数もしくは特発性過眠症の方が若干多いくらいであると感じています。

④TwitterなどのSNSで診断名を限定しない過眠症のオフ会に何回も出席したことがある方に尋ねたところ、ナルコレプシーと特発性過眠症の人数の比率は約同数とのことでした。

⑤過眠症サポートネットワークの関連の国際過眠症研究啓発協会/国際過眠症協会がSNSでナルコレプシーと特発性過眠症の人口比率に関する簡易的なアンケートを行い下記の結果でした。
特発性過眠症とナルコレプシーの人数は約同数であるという結果です。

⑥厚生労働省の公式データによる全国の各睡眠障害1日の推定来院数「過眠症」1日約100名です。

現在「過眠症」と呼ばれる疾患の中で一番診断を受ける人数が多いのが特発性過眠症なので、この人数であれば約100倍が頷けると思います。


特発性過眠症の有病率は過去に「10万人に数人の割合である」と推測されている文献があります。
ナルコレプシーの有病率は600人に1人と言われていますが、この有病率はナルコレプシー1型に限定をしているものなので、実際のナルコレプシーの人数は600人に1人よりも多いものとなります。
ナルコレプシー2型の診断基準には特発性過眠症と同様の問題があるためナルコレプシー2型の有病率に関する正確なデータが存在しないのですが、ナルコレプシー1型と2型の比率は同数くらいもしくは2型の方が少ないという推測がされている文献が多いです。つまりナルコレプシーの2型を入れた有病率は最低でも600人に1人〜最高で300人に1人と推測ができます。

特発性過眠症の有病率は過去に10万人に数人であると言われてきたことがありますが、その頃の特発性過眠症の診断基準は今の診断基準とは完全に別のものです。

もしも、現在の特発性過眠症の推定有病率が300〜600人に1人のナルコレプシーと同数であると仮定するならば、現在の特発性過眠症の有病率は10万人に数人の頃の約100倍であると推測できます。



ちなみに海外では特発性過眠症の人口が2013-2016年に33.8%増加したという研究発表もあります。
Retrospective Study Finds Increase in Narcolepsy and Idiopathic Hypersomnia PrevalenceOver 4 years, narcolepsy prevalence in claims data increasedsleepreviewmag.com

日本国内においても現在の診断基準が使用され続ければ、特発性過眠症の人口は今後も増加していくことが見込まれます。
つまり、今現時点で特発性過眠症の人口の増加が見込まれるということは現在までの発表で提示されている有病率の発表は将来再度意味をなさないものになるということですね。


上記の論拠を持ちまして、とりあえず今の段階では

「特発性過眠症の有病率に関して、一人の偉い専門医さん、一つの偉い研究機関が一つの具体的な数値の発表をしていても、別のところで同ランクに偉い専門医さんや偉い研究機関が矛盾した100倍ほど異なる数値を発表している状況なので、一つの発表を鵜呑みにしない方が良い/さまざまな要因を総合的に考えるべきである」

「特発性過眠症の有病率は全ての研究機関が別の数値を発表しているので正確にはわからない」

「全ての統計の全ての発表元の機関が同格くらいに偉くて有名で100倍ほど異なる数値を発表しているので『あの偉い有名な専門医の先生が言っているから』『あの偉くて有名な研究機関/学会が発表しているから』という議論は意味がない」

「今ある中の情報でできる限りの総合的な予想をした場合の現在の特発性過眠症の有病率の推測値はナルコレプシー(1型と2型の両方を含む)の有病率の推測値(300〜600人に1人)と同数かやや多いくらい/10万人に数人と言われていた過去の厳しい診断基準の時の約100倍である」

という結論で締めたいと思います。



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