どのような仕事をしたいか

私なりの紆余曲折の末に、精神科臨床医として生きていくと決めました。
次に考えるのは、どんな風に診療しようか、です。
言いかえれば、一人一人の診察にどれだけ時間をかけようか、です。

長く時間をかけて診察すればするほど、より良いんでしょうか⁇
私は、そう思いません。
確かに症状を聞いて、治療を決定するには、判断材料が要ります。
例えば、前回受診時よりウツ症状が改善したかだけを聞いて薬を継続・中止、増量・減量するだけだと、判断材料が少なすぎて最適な薬物投与は出来ないでしょう。

来る途中に嫌な事があって、気分が不安定になったかも?
起きてから、家族と口論したのかも? それは、たまたまか・以前からの根深い問題なのか?
夜がよく眠れなかったからか? たまたまか?・ずっと眠れないのが続いているのか?
季節のせい? 冬は例年うつになるのか?
今の仕事に就いてから、ずっとウツ? きっかけは?
思春期から、それともモノゴコロついてから、ずっとウツ? きっかけは?

ちょっと思いついただけでも、これだけは区別して治療を考えないといけないと思うし、区別するためには訊ねる時間がかかります‥もちろん毎回これ全部を訊くのではないし、一回の診察では判断できませんが。

ただ、時間をかければかけるほど、状態が正確に把握できるのかって、違うと思います。
本人が事実を言ってるとは限らないからです。
そりゃそうですね、誰でも自分のことに一番関心があるからといって、自分のことを全部分かる訳がありません。
こちらも千里眼ではないので、相手の生活を逐一側で見ている訳でもなし、診察時に相手の様子をみて、話を聞いたら、全て分かりますとは当然、言えません。

何より良くないのは、そうして時間をかけて聞くうちに、相手がその方自身の問題に主体的に向き合うのでなく、解決を他者に委ねる態度に、しばしばなってしまうことです。

例えば、環境が良くないといくことを「自分が」判断する、環境が良くないかもと「自分」が他人に尋ねてみる、環境をどう変えるべきか「自分が」他人の意見を求める、環境をどうやって変えたらいいか「自分が」他人に相談する、、、誰も自分の代わりにはなれないので、自分を守り、自分のために助けを求める責任があるのです。
(私のクリニックは、知的、年齢的、その他の理由で、自分に主体的に向き合う態度をとれない方は対象としていません)

・こんな状況で困っているので、「自分」がどうしたらいいのかを相談したい。‥意義を感じます。🙆‍♀️OKです。
・こんな状況で困っていて、「自分」としてはこのように対処している。それでいいか、確認したい。‥意義を感じます。🙆‍♀️OKです。

・こんな状況で困っているので、話を聞いて欲しい・つらいですねと言って欲しい。‥❗️私の脳裏に赤信号が点滅します。聞くことは、治療としてどうなのよ⁉️
実際には、聞くことが治療にプラスだと判断したときだけ、そのまま聞きます。そうでないときは、遮っています。

カウンセリングでは、そのように自分に主体的に向き合えない方であっても、カウンセラーがじっと耳を傾けて、本人が気づくのを待つというやり方をとることもあると思いますが、自分の臨床経験では、時間をかけてとことん聞いていたら本人がやがて気づいて自分に主体的に向かい合うようになるという方は殆どいません。上に書いたように、逆効果になる場合が圧倒的に多いです。
ですから、そのような費用対効果の悪すぎる診療行為は、保険医療として認めるべきでないと私は思います。
‥自費診療としても、私自身は、やりたくないです。

開業した殆ど最初から、こんな方針で診察しています。
ただ‥問題がない訳ではないんです。
一つは、これで食べていけるのか?‥長くなるので、別に投稿します。

もう一つは、このようなスタイルだと、時間に余裕をもって診察してるんだなと、★誤解❗️★されることです。
必然的に診察時間が長くなりがちです‥空いた時間をなくさないと、経営がより苦しくなります。
つまり遅刻されると非常に困ります。たった5分、10分遅れたとおっしゃいますが、なら診察を5分、10分短くしていいですか?
診察中に電話がかかってきて、出ていいかって、論外です。
ご家族が診察の途中で来られて、それから同席していいかも論外です‥さすがに最初から話を繰り返す時間はありません!

ふーっ、仕事の仕方について、つい熱が入っちゃいました。
以上です。

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