50歳超えの大学院留学(オンライン)‥実生活の体験が、邪魔をする

毎度、毎度、心理学修士課程に留学してみて、いかに自分が上手く出来なかったを書いています。愚痴みたいなものです。
でも、どういう風にマズかったのか、ああかこうかと考えをめぐらせて、自分なりに整理がついてきたように感じています。こうすれば良かったのかもという考えもチラホラと湧いてきます。
この作業が学期中に完了すれば、良い成績がとれたのかも知れませんが、出来れば今後に活かしたいと野望を抱いています。
宜しければ、振り返りにお付き合いください。

修士課程が始まってからの2年間で、6科目を教わる。その5つめは選択科目で、痛みの心理学をとった。
いつもと同じく10週間で、最後に提出する課題の点数だけで成績が決まる。
課題は、慢性の痛みを特徴とする疾患を選んで、患者向けと医療者向けの部分からなる説明文書を作りなさい、と。

加えて毎週いろんな観点から指導があり、成績に影響しない課題が出る。他の生徒の課題にコメントしなさいとも言われる。
‥もちろん毎週の課題は最後に提出する課題をより良く書くための練習であり、ヒントがいっぱい‥なのだろう‥だけど、毎週の課題の出来は成績に関係ないので提出率というか、掲示板への投稿率は芳しくない。
他の生徒の課題にコメントするなんて面倒なことをする人も、そうはいない。

私も殆ど毎週の課題は投稿しなかった。
やった方が成績アップには繋がるだろうけど、とにかく10週間後に提出する課題が間に合わないといけない‥それまでの科目を考えれば、最終の課題に集中だ、全力投球するしかない!と思っちゃったのだった。

提出する課題である説明文書の作成に向けて、孤独な作業であるが、私は別に孤独は嫌いじゃない。
疾患は繊維筋痛症を選んだ。それなら時々みるけど、他にあがっていた慢性関節リウマチは仕事で関わることは、まずない。鎌状赤血球症なんて教科書で習っただけで、実際に会ったこともないし。
そして‥自分が仕事上で感じている興味関心のままに突っ走った。

つまり私が会う繊維筋痛症の方というのは、ほぼ全員がまず痛みを訴えて他科に通院していて、そこから紹介されてくる。
鎮痛薬や抗うつ薬、抗てんかん薬、睡眠薬・抗不安薬が大量に処方され、なかには乱用になっていて、もっともっと処方してと言われる方がいる。
薬で症状がよくならず、心理的要因が強いと他科の医師が判断した方がいる。
治療関係がうまく作れず、他科の医師が扱いに困った方がいる。
もしかすると元の科では治療がうまく行くのが多数派で、そうでないのが精神科に紹介されるのかも? 知らんけど。
一方で、精神科に来られる繊維筋痛症の方には、そのような理由がありがちということになる。

そういうことから、精神科医である私がつくる説明文書は、繊維筋痛症の方一般とか、痛みを治療する他科に通われる方に当てはまるものでは無くなったのだった。
なにしろ繊維筋痛症の方一般に相応しい説明文書って、私には想像がつかないのだもの。

例えばテレビ番組で、カカオが身体に良い、バナナが健康に良いと言うと、スーパーでそれらが激売れするらしい。
だけど全員の身体に良いということはなく、身体の状態によっては食べるべきでない方もいる。
いわば食べるべきでない方ばっかりを、私は毎日診てるようなものだ。
普通にカカオやバナナが身体に良い方は、私の眼中にはないから、興味もないってことになる。

そのような私が作った課題の文書は、他科(だけに)通っている繊維筋痛症の方には当てはまらない内容になった。
といっても普通の精神科クリニックで、認知行動療法とか瞑想といった特異的な心理療法はあんまりしないし、それに焦点を当てて書く気もなかった。各国のガイドラインをそのときに調べた限りでは、特異的な心理療法が繊維筋痛症に有意に効果的とはされていなかったからだ。
では、何を書くか? 他科で診ている方が紹介されてくる場合、こちらとしては言いたい事がいろいろあったりする。その一つとして、心身二元論‥どうやら他科の医師は身体と精神を独立なものとして見てるようだ、私のモウソウかも知れないが‥それでは紹介される側としては困るので、ギャップを埋めようとした。
つまり、視床下部-下垂体-副腎系について医療者向けの頁に詳しく書いた。患者向けの頁には、薬は注意して使った方がいいよ、心理療法はあんまし効かないみたいよと書いた。
心理学の課題である。それじゃあダメである。

もちろん宜しくない成績だった。
ついでながら、課題には各所にコメントが付けられ、文章で評価が記され、最後に何かあったら連絡しなさいと採点者のアドレスが書いてある。
‥もちっと点数を上げて貰えないかと、イタズラ心も働いて、メールしてみたけど全然取り合ってくれなかった。
連絡していいよってのは、本気でなくただの挨拶だったのかも?
それに、直接の不利益はないけれど、採点者がコースのボスだったこともあって、何となく間接的にマイナスかもと思ったりする‥。

今になって思うのは、私情を交えずに薬物療法・心理療法の良い点・悪い点を列挙するとか、非特異的な心理療法について書くとか‥んー自分の仕事を考えても多様だろうし、引用できる論文が見つかるのか心配、視床下部-下垂体-副腎よりも他科医師との連携を直接強調して書くとかすれば、少しはマシだったかも?

あーそして、も一つ問題点を思い出した。
日本みたいに保険医療でやってる痛みのクリニックから、保険医療でやってる精神科クリニックへ紹介するって、イギリスでも普通なのか?
家庭医で診て、それ以上に詳しい検査なり治療なりが要らなければ紹介する先はないんじゃ? 日本以上にイギリスの保険医療は財政がキビシイという噂なので、2軒目の受診なんて許されないんじゃ?
まして私費で一つの医療機関で治療が完結したりすれば、話は全く違うんじゃないか?

あとイギリスでは当事者団体の活動が盛んな印象があるが、そうすると情報元がいろいろとあるのでは?

そういう医療システムや健康に関する行動の違いによって、どんなのが説明文書かは変わるんじゃないか?
ここまで書いて、課題の説明には対象が誰とも指定されてなかった気がした。そうすると、私の対象は他科から紹介されてきた患者ですって説明をつけ、学期中にそれでいいか先生と議論しとけば、それで許されたのかなぁ?
まさかダービー大学はイギリスのダービシャーにありますから、そこの医療事情に応じた説明文書を作るのが当然でしょとか、説明文書に地域の医療事情による配慮は必要ありませんってこと無いよなぁ?

結局、今の時点でも自分がどのような文書を作れば良かったのか、結論は出ていない。
次に似たような課題があったら、また考えよう。

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