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障害のある子の支出のこと

実務家、専門職の方へ


ワイちゃんである。
本来なら三が日の間に一通り書き終えてしまいたかったが、甘い見積りであったと反省しきりである。

言うまでもないが、一連のnoteで障害のある子のおられるご家庭のライフプランニングや、資産承継が網羅的にカバーできるわけではない。

ただ、ニーズや問題が顕在化しているご家庭とマッチングした際に、バックグラウンドとしてある程度の情報を持っていないと、尻込みしてしまって深く聞き込めないのは間違えがないので、実際そういった機会があれば、その都度ケース化するためにも是非色々お話を聞いてみて欲しい。

健常のご家庭では想像もつかないような、苦しみや悩みが存在している。
親御さんからよく言われたのが、相談しようにも我々の事情を詳しく理解している専門家が少ない、という根本的な問題である。
相続というものはパッケージである。法律関係の構築を入れ物とすると、中身は財産物である。
多岐に渡る権利関係や財産処分を、ご家庭の将来に渡ってメンテナンスしていかなくてはならない。
横断的にできるほどの経験や知識、資格を持つ方はそうそうおられぬから、チームで当たられるのが一番と思う。
会社方針で協業の難しい募集人もおられるだろうが、日頃から紹介し合える関係先の構築には励まれておかれたい。

本当にお金がかかるのか?

さて、前置きは長くなったが支出の部分について続けていこう。

実を言うと、前々回あたりに書いた通り、意外に支出は、特に親が健在のうちはそれほど心配しなくて良い。
まだ昨年の調査がまとまっていないため平成28年調査のリンクを紹介する。(公表は平成30年)

障害者手帳を持つ方、本人や家族を対象として行われる調査であるが、P59あたりから経済状況に関する調査結果が記載されているので、お手隙の折に参照されたい。
特にP65には一ヶ月あたりの支出額に関する調査がのっており、

18歳以上~65歳未満では「6万円以上~9万円未満」と答えた割合が17.0%と高く、65歳以上では「3万円以上~6万円未満」と答えた割合が12.3%と高くなっている。

平成28年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)

とあり、障害年金のみの収入であってもそれほど収支の差はない。
もちろんボリュームゾーンとしてなので、状況によっては過不足が生じることはあろうが、年金が受給できるのであれば、どうにもならないと言うことはないともいえる。
給付額や生活費の現状を維持できれば、と言う条件はつくが。

個別のケースとしては、やはり一定の知的・能力水準があるため、年金受給ができず、かつ就業先で人間関係の失敗などにより継続不能となり、引きこもりになるようなものがある。
健常の人でも耳にする状況ではあるが、特性によりより起こりやすく、また、リワークなども実施しづらいと思われるため、なかなか社会復帰するのはむつかしい。
そのため、何より予防的措置が肝心となるため、親御さんは施設や事業所に対して言い出しづらい部分があるかもしれないが、日ごろから密接に関係を保てるようなところを中心に、事業所選びや就労先を選択していくことが望ましい言える。
地方のため選択の余地がないというようなこともあるため、住環境含めて選定していくことも考えておかれたい。
(お子さんの特性ゆえ、転居は論外というケースもあろうが。)

ところが、介護保険の被保険者になるころから気を付けていかねばならないことが発生してくる。
軽度の障害の子はともかく、基本的に障害福祉サービスを活用されるご家庭が多いかと思われるが、給付サービスの内容を見ると、介護保険サービスと重複する部分がある。
そのため、介護保険が使える場合は、介護保険で、というのが国の考えであり、実際収入にもよるが、自己負担なしということもある障害福祉サービスよりも、福祉全体の持続可能性を考えると、最低1割負担の介護保険の利用を進めていくのは当然と言える。
そうなると、月々の支出が一定額増える可能性が出てくるし、なにより一割負担できる原資がなければ、サービスを利用することができない状況も生じ得る。

ここでは詳しく説明しないが、一定の条件で回避することも可能であるため、また、将来制度が変わる可能性も高いため、介護保険の被保険者のお子さんや兄弟がいるご家庭は、一度社協などに確認されておかれたほうがいいかもしれない。

足りる?足りない?それだけでいいの?

長くなったが、結論としては、足りる足りない、だけでいえばそこまで心配しなくてもいいのかもしれない。日本が極貧国に転落しない限り、金額は減るかもしれないが、セーフティーネットとしての生活保護もある。

ただ、相談に乗る皆さんが親御さんと一緒に、そして真剣に考えてほしいのは、どうお子さんに暮らしてほしいのか、この一点である。
正直、暮らしていくだけでは何とでもなる。

ただ、お子さんは、今まで何でもしてくれた最愛の親がいなくなった世界に暮らしていくのだ。
足りる足りないの境界線上で、おやつも食べず、電車に乗ることもなく、ただただ部屋と事業所を往復するような生活をつづけたうえ、そこそこ健康なうちから特養に入り、また地蔵のように暮らす未来でいいのか?

すくなくとも、さみしさを忘れて暮らせるようでいてほしい、と呟いた
あの母親の寂しい笑顔を、ワイちゃんは今でも忘れることができない。

つづく

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