見出し画像

【書評】最低賃金 生活保障の基盤

日本弁護士連合会 貧困問題対策本部編
「最低賃金 生活保障の基盤」 
担当:ロドス

[本書選択理由]
 最低賃金の研究を行う中で、賃金の引き上げか同一賃金化もしくは新たな提案を行うのか改めて考え直す必要があると考えた。本書では、最低賃金の大幅の引き上げが必要としている要因を把握するため。また賃金と働き方、生活の仕方について日本弁護士連合会貧困問題対策本部の観点から考えるため。

[要約]
 最低賃金の大幅な引き上げ「健康で文化的な最低限度の生活には1500円」が必要。静岡県立大学の中澤氏は、2015~2017年に行った最低生計費調査では25歳単身者がワンルームマンション(アパート)に住んで人並みの生活をするには、22万円から24万円がかかる。労働時間が月に173.8(法定労働時間の週40)時間とすると、1300円から1400円が必要(150時間では約1500円)。また、地域間格差については、地方ではガソリン代などの自動車関係の経緯費が嵩むことから、交通が発達した都市部と比べて最低生活費には大きな差が生じないという報告がある。

 経済協力開発機構(OECD)の統計によると、フルタイム労働者の賃金(中央値)を100とした際の最低賃金の割合の国際比率では、日本は40%で最低に近いランクである。一方ヨーロッパ諸国や韓国では50%前後である。50%の国では1時間あたりの最低賃金が1000円を超えているのに対し、日本では2018年度の地域別最低賃金は全国加重平均で時給847円。フルタイムで月に173時間働いても月収は15万1千円でそこから社会保障量や税金が控除されるため手取りはさらに少ない。
 パートタイム制度の違い。欧米では、所定労働時間よりも短い時間で働いている労働者を指す。一方、日本では雇用に関する保障が正社員のように整備されていなく、臨時職扱い。また、約3割のパートタイム労働者はフルタイム労働者(正社員)と同じ労働時間を働く「技術パート」と呼ばれている。

中央最低賃金審議会の課題。使用者は「政府主導の最低賃金引き上げに対する圧力は、賃金は労使間で決定するという原則に反する」と述べる。元鳥取地方最低賃金審議会会長の藤田氏は「何を根拠に引き上げ額を出したのか、議事録を見ても不明であり、根拠を示すように求めても明らかにしない。哲学を持たず、時々の政治状況によって揺れ動くからではないか」と述べた。

[批判・感想]
 世界的に日本の賃金が低いことは問題である。その一方、フルタイム(社員)の場合は日給制度を導入している企業のほうが多く最低賃金✖️時間に当てはまらないケースが多いのではないか。その場合、フルタイム労働の月給料➗勤務時間が最低賃金額を上回っているかという視点から賃金問題の研究を行ったほうがいいのではないだろうか。
雇用形態によって賃金のシステムを分けて検討を行う必要がある。(正規労働者と非正規での課題は別ではないか)
 藤田氏の弁解は、今年の最低賃金の引き上げが見送られたことから一理あるだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?