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【書評】中国における女性研究者支援の現状

石崎 裕子
「中国における女性研究者支援の現状」
担当:レイン



[本書選択理由]
 今回の論文の選定理由は、中国の女性研究者支援の現状と論文数の関係について知るためである。科学技術指標を参考にすると中国の論文は量・質ともに10年前に比べ飛躍的に向上していることがうかがえる。このことから、中国の飛躍の歴史に女性研究者の支援と何か因果関係、相関関係がないかを調査するための足がかりとして、現在の中国の状況を理解するために本書を選定した。

[要約]
 この研究の目的としては2013年当時、女性研究者比率が14.0%ととても低く(現在16.6%)この解決策を探るために「女性研究者支援のためのシステムの構築と政策 提言のための研究―日中韓の比較から」に取り組んでおり、この研究の一環として中国で学術調査を実施したものである。内容としては中国主要な大学、女子大学の教授への聞き取り調査により中国の女性研究者支援政策の実態を調査している。

 本書から、中国独特のジェンダー問題があることがわかった。1949年に中華人民共和国の成立から教育の男女格差が撤廃され、1960、70年代には、「女性は天の半分を支える」というスローガンによって、女性の社会進出支援が行なわれた。しかしこのような状況だったため、ジェンダーの問題が表面化されづらかった。清華大学の史静寰氏はこの問題を理解しやすくするため、基礎教育で使われる教科書の分析から、ジェンダーバイアスの可視化を行ない、中国の教育がジェンダーイデオロギーが深く作用していることを証明した。このような問題を解決するため史氏は北京の女性研究者のネットワークを作り、女性教員の総合的な活躍の促進のため、「首都女教授協会」を設立した。この団体は女性教授だけでなく、女性学生にも支援を行なっている。

 中国における女性研究者支援制度では、中華全国婦女連合会婦女研究所の「高レベル人 材女性育成の必要性」の提言により、男女の能力が同じであった場合、女性を優先するという提言により、2010 年には、女性の研究助成金採択率が、一般基金で 32%上昇した。「青年基金」と呼ばれる若手研究者向けの助成金でも女性研究者の採択率が 36%アップした。若手研究者対象の助成金の年齢制限は、これまで男女共に35歳だった。女性には出産・育児で研究を中断する時期があることを考慮し、年齢制限が女性のみ40歳へと引き上げられ、研究期間の融通も利くようになった。

[批判・感想]
 女性研究者支援団体の提言により国の政策が大きく動いていることから、中国での女性研究者支援の存在感が大きい事を感じた。しかし、日本と同様一流大学で教授職を得た女性の中には女性研究者支援への忌避感を感じる層がいることも理解できた。今後も研究緑芽向上している中国について調査することで日本の研究力向上する上でのヒントがないかを探っていく

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