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ああ、空は青い

マイナンバーカードの保険証で知らない人の名前が出るんだとか、住所の名寄せ問題が大変ホットな話題ですが


「出来て当たり前」という無慈悲な声に対する、
「色々難しいんだよ」と飲み屋で愚痴を語る熱い想いが重ねられていて、
「俺にも一家言あるぞ」という気持ちにさせられるものです。

これは、私がまだ若い頃の話です

クライアントの目の前で、「入力された住所が正しいものか」の品質チェックを受けたことがありますでしょうか。

私はあります。

恐ろしい。。
ああ、恐ろしい。。

だだっ広い会議室で、監査担当者の声が響きます

いちまーい
にまーい

と、書類を無作為にとりだしIDを検索します。

「それでは読み上げます」
「〇〇県〇〇市〇〇町〜」
「あってますね」

「それでは次を読み上げます」
「〇〇県〇〇市〇〇町〜」

ああ、恐ろしい。


某企業のキャンペーン申込書に手書きで記載された
氏名、住所、電話番号、メールアドレスを、データにおこすという、

恐ろしい。。
ああ恐ろしい。。。

少々よろしいでしょうか、、、、
毛布を。
羽織りたいと。
はい。


サービスレベルアグリーメント(SLA)という言葉を初めて使ったのもこの仕事でした。

そこでは、クライアントの監査があり、そのサービスレベルに見合った仕事ができているかを確認するのです。

手書きのものを、パソコンに入力する

これが、みなさん。

まず、「当たり前にできることではない」のです。

みなが出来ないから仕事になり、お金がもらえるわけです。

試しに、GoogleMapを開いて、適当にクリックしたところの住所を一度打ってみていただけると。

自分の実家ではなく、はい、
本当に適当に、西日本にお住まいの方は東日本を選んでみると

ええ。
ええ。
わかっていただけるかと。
ええ。

1つ打つのも、スムーズにいかなかったのではないでしょうか。

とはいえ、商売ですので、量をこなさねばなりません。
一つの入力に1時間かかりました。では困るわけですので
これが、1日中、目標件数をもって打ち続けるのです。
そうなると、どうしても、打ち損じが生まれます。

当時の私は、そういったキャンペーンの申込書の管理から、キャンペーンに関するお問い合わせの電話やメールを受け付ける窓口の管理までを担当しておりました。

そのため、「打ち間違い」が、ありえますよねー
じゃあ、困るわけです。

ただ、じゃあ、どうしたら、従業員が、当たり前にできるようになるのかというと、「ミスがないことを祈る」という、祈祷師の力が必要になります。

人間は機械じゃありませんので、毎回同じ動作をしているとは限りません。
機械の作った電化製品であれば、何個かに1個検査すればいいのでしょうが、人間の作った成果物は全件チェックしなければならず、一つのデータを第三者がダブルチェックしてから納品します。

それでも、
それすらも
すり抜けるミス

、、、

それが、あるのです。

ああ、恐ろしい、、

すみません。。
少し、水を飲んでもよろしいでしょうか。
はぁはぁ、、


くだんの、住所の件ですが
人間それぞれ、自分の生きた環境で物事を考えますから、番地に「イロハ」が使われてることがあるとか、「東入ル」のような住所があるなどと思わないもので
そうなると、それは、「書き間違いかな」と思って、入力時に省いたり、それぞれの解釈で「イ→1」「ロ→0」「ハ→8」などと、変換したりします。

名寄せとか、紐づけが間違ってるだとか、そういう以前に
そもそも「ちゃんと入力することが難しい」のです。

インターネットで検索すれば「正解が出てくる」住所でさえそうなのです。
それが、氏名や、メールアドレスでは。。

ああ恐ろしい

斉藤、斎藤、齊藤、齋藤、、、!

I.l.1.o.O.0…!(アイ、エル、イチ、オー、オー、ゼロ)

とうてい、表記ゆれや、ミスをなくすということはできないのです。


ちゃんとチェックしろ

と、人は言います。
しかし、見る側も人間です

なんとなく最初と最後が合ってると、人は読めてしまうので、今度は
「チェックするときは、右から一文字ずつ指差し確認しよう」
というコツがうまれます。

それも、つまりは「ミスがないことを信じる」祈祷師力に集約されるのでございます。


ミスの原因を「人」に求めるな。
「環境」「仕組み」で改善しろ。

と、いう風潮がございます。
これはとても良き風潮でございます。

なんで間違ったんだ!
もっと間違わないように頑張れ!!

こんな先生や上司に出会ったこともあるかと思います。

昨今は、そういう熱血指導ではなく、

入力するキーボードに不調はないか
チェックする際のチェックポイントは整っているか

など、間違えた過程を分解し、問題を洗い出すのです。
ロジカルに考えます。

すると、社内体制は面白いほど改善されます。
そうか、学生時代や初めてバイトをしたあの日あの時、理不尽に感じていたものは、これだったのか!
と、過去の自分へのメッセージまでこめて改善します。

しかし、ある時気づきます。

それでもミスはなくならない。のです。

空は青い。のです。

ちくしょー。なのか
もう諦めるしかない。なのか

労働集約型のサービスを展開している企業は困ったことになります。
人が作った物を売っているわけですから、欠陥があったら、それは、人がミスをしたわけなのです。

それでも、人はミスをするものであって、そこに原因を求められないので、

「機械で入力しよう」
「機械でチェックしよう」

ということになります。

その結果が、いまの状況かと思います。


EXCELでいいだろ
とか
そんなものまでエーアイをつかわなくても
など、
おっしゃっているということで

いやはや、
それはそれは、
随分と現場をわかっていらっしゃらないようで。
ええ、
ええ。

当時、人がすべてをやっていた頃に比べ、格段にスピードも正確性も上がるかと思います。

どうぞ、人も機械もミスをする前提でお話を進めていただいて。

開発される方には、「そんなの簡単なことさ」という気持ちで取り組んでいただき

それを受け取る我々は「そんなの簡単なことじゃないか」と押し付けずに

新しい技術を取り入れた先に迎える世界を楽しめればと思いましてございます。

どうか、「新しい技術を使わない」という結論にだけは近づけないよう、お話を進めていただければ、と思いましてございます。


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