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夜勤休憩で寝坊した理由

あれはまばたきほどの一瞬の出来事だった。日勤スタッフが休憩室のドアを開けた音で目を覚ました。ピッチにはリーダーからの着信履歴が多数。設定はマナーモード。どうやら僕は随分と長い眠りについていたようだ。

そして僕は思う。「あ、これやばいやつだ」

夜勤休憩の寝坊はこれで3度目である。

勤務中最後の30分程度の小休憩で横になったことがいけなかった。普段ならお茶飲んだり、歯磨いたりして過ごす小休憩だが、その日は少しでもいいから横になろうと思ってしまった。それはなぜかと言うと、本来寝るはずの長い休憩で一睡も出来なかったからだ。

なぜ眠れなかったのか、それは休憩時間に仮眠室で胸と上腕を追い込んでいたからではない。今年度で退職する同期達との最後の夜勤だったからだ。


 入職当時、7人だった同期は1年目に1人、3年目に3人が辞めて、今年度まで残ったのが僕を含めて3人。その2人が今年度をもって退職する。

他の同期は職場の環境に馴染めず、辞めていった者もいる中で、この2人とは諸先輩達からのバッシングにも耐え、新型コロナウイルス対応に追われながらも共に奮闘してきた2人だった。

右も左もわからなかった1年目の時から、今では周りからも認められて、同期同士が同じ夜勤に入ることがすごく新鮮だった。そういう日にかぎって病棟は忙しく、夜勤なのに座れない時間が続いた。ちょっとしたトラブルにも自然と協力し合い解決し、フォローしあったり、とても楽しく、自然とアドレナリンが出て、心地よい高揚感があった。彼女たちと働けて良かったなと思った。そして休憩時間は寝れず、特にやることもなく筋トレに励むことにしたのだった。その甲斐あってか腹筋が筋肉痛だ。

同期との関係はいいことばかりではなかった。時には強めの意見を言い合ったりしたこともあった。僕は3年目まで同期との仲はあまり良くない方だと思っていた。「所詮同期も人、気が合わなければ仲良くする必要もないよな」と思っていたし、プライベートでの関わりも少なかった。

しかし、それは間違いだった。避けていたのは僕の方だったのだ。体調不良や仕事での失敗が続き、同期とのステップアップの差が開いたときに僕が一方的に避けていたのだった。思い返せば、勤務が一緒になれば声をかけてくれていたし、COVID19に感染して苦しんでいるときにはいち早く差し入れを届けてくれたりしていた。そんな同期を避けていたことは今となっては恥ずかしい話だ。今ではとても感謝している。


そして彼女らは進学という道を選び、新しいステップアップへの一歩を踏み始めている。僕は心から応援したいと思う。

僕にはもう同期はいないが、彼女達のような応援してくれている人がいる。その人たちにいい報告ができるように、今の職場で目標に向かって頑張っていこうと思う。


旅路/藤井風

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