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両脚羊は明日の夢を見るか

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明日は待ちに待った私の20歳の誕生日。
明日からいよいよ神子としての役目を得ることができる。

ああ、私を神子になれるよう教え導いてくれてくれた神父様には頭が上がらない。
いや、それどころではないか。
隣国では捨て子であった私を受け入れ、これまで何不自由なく育ててくれた教会の家族たち。
隣国から過大な支援をくださった貴族の皆様。
私たち孤児を暖かく見守ってくださった村民の方々。
私を果物だけで生きていけるよう薬を処方してくださったお医者様。
誰もが、私が神子になることを願い、手助けしてくださった。
感謝の念は筆舌に尽くせないが、神子として立派に責務を果たして恩返しするとしよう。
最近は体が重く動きにくいが、戴冠の儀では立派な姿を見せ、皆を安心させてあげたい。

そういえば、昼頃に裏口で神父様が貴族の方とお話をしていたが、あれはなんだったんだろう。
肉がどうこう言ってたけど、教会に肉でも寄付なさるおつもりなのだろうか?
まぁ貴族様は異教徒だから、我々が果物しか食べないことを知らなかったのだろう。
神父様もいちいち教義を教えなければいけないのだから大変だ。

さあ、今日はもう休むとしよう。
この軋みがうるさいベッドともお別れかと思うと、少し寂しいな。
明日を思うと寝れるか不安になるほどだ。
羊でも数えながら寝るとしよう。

おかずが一品増えます