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「僕といっしょ」の笑いには人生への不安が内包されている

「稲中」の古谷実先生の漫画ですから。ぜったい底抜けに笑えるっしょ!
笑えるよ。笑えるけどね。笑えないんだよね。

ギャグ漫画なんですけどね。設定が全然笑えなくて、過酷な境遇に生まれ育った兄弟(たしか中学生と小学生)が主人公なんですけどね。それが母が亡くなって義理父に捨てられ上京してホームレスとなって生きていくんですけど。

んまーーーギャグの合間に垣間見える怖い人間の怖さが怖い。怖くて語彙力が失われるほど怖い。
古谷先生の漫画は僕といっしょ以降、ギャグと怖さの比率が少しづつ逆転していって、最近の漫画とかはほんと怖いんですけど。おもしろ怖い。

私は「僕といっしょ」の設定も後期の作品に比べても非常に怖いですね。
ギャグターンが非常に面白いのでそこで声出ちゃうくらい笑うんです。笑うんですけど、「ああでもこの子達、親がいなくてホームレスなんだよな…」っていう笑えない設定が脳裏についてまわるんですよ。
ずーーーっとその不安感を抱えながら読み進めるんです。ギャグシーンの時も。キャラクターが爆笑している時も。

何となくこの笑いと不安のバランスが、自分の人生の笑いと不安のバランス具合に似ていて、そこに同調して印象深いのかな。
ふつうに暮らしてる。割と幸せ。でも私若いころからガンを患ってて、切除しては再発したりしてるんですけど、こう毎日の幸せの中でたまに「あーまたガン再発してるかもな…」って不安がよぎるんです。その瞬間の絶望感が、すごく僕といっしょに似ていて、そしてリアルなんだな、と思うんです。

何となく、人生けっこう普通だけど、たまにふと不安になる人に読んでほしいです。「読んだとき、人生の中のふっと頭をよぎる不安のあの感じがしない?」って聞きたいです。

一番初めは若いころに読んだけど、年取ってから読むと余計に突き刺さるんだよなぁ!この漫画のキャラクターたちが幸せになることを願ってやまないですよほんと。読んでね!


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