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トップ下をやればよかったかも

「ずっとサイドバックで、だいぶ昔にボランチだった」

サイドバックとボランチ、サッカーで使われるポジションの名前である。サッカーにはフォワードやミッドフィルダー、ディフェンス、そしてゴールキーパーといったポジションの名前がある。そしてさらに細かくするとディフェンスにはサイドバックやセンターバック、ひと昔前はスイーパーやストッパー、今ではリベロという役割に応じた名前が与えられている。ミッドフィルダーについてもサイドハーフやボランチ、センターハーフ、セントラルミッドフィルダーなどと、これもまた主とするプレーエリアや役割に応じて名前が付けられている。これだけカタカナが続くとやや難しく聞こえてくる。そして僕が学生時代に、ずっとやっていたのはサイドバックだった。当時のサイドバックの印象は足の速い選手か他のポジションに本当は置きたいけど、他の選手と比較するとそっちを選びたいからしょうがなくサイドバックで宜しくといった感じ。そして、最後にどこのポジションにも適正がなく、プレーの質も高くなくてどこで使ったらいいか分からないから、一番ゲームに支障をきたすことのないポジションに使おうと思われる選手が置かれるのがそこだった。僕はそのポジションだった。つまりは、そういう選手だったわけだ。ただ今ごろ、どうしてこんなことを思い出したのだろうか。それは確か、日本代表の試合かJリーグのどこかのチームの試合を観ていたときだったような気がする。誰かは覚えていないが、ある選手をみていて、他のポジションで使えばいいのにと思ったのである。今与えられているポジションではどうやらその選手本来の良さが引き出されていないような気がしたのだ。彼に他のポジションという選択は監督から与えられたのだろうか。彼は、今のポジションを適正と判断されて与えられたのだろうか。少しばかり疑問の残る采配だった記憶がある。もし、他のポジションだったら、どんなプレーをしていただろうか。どれだけ伸び伸びと躍動感あふれるプレーをしたのだろうか。はたまた、まったく使えないくらいのプレーをする選手だったのだろうか。それは全く分からないわけなのだが、もしそうだったらということは誰もが何度も考えたことがあるはずだ。もし、お金をもっていたら。もし身長が高ければ。もし、イケメンだったら。いくらでも思いつくだろう。

そこで疑問を抱いたのだ。僕もサイドバックじゃなくて、トップ下つまり司令塔という立場でプレーをしていたらどんな選手になっていただろうか。全然チームをコントロールすることができないかもしれないし、ゲームを壊すこともあるかもしれない。はたまたトリッキーなプレーで見ている人を楽しませるような奇想天外なプレーをするかもしれない。

今与えられたポジションで出来ることをやれ。『置かれた場所で咲きなさい』といった本がベストセラーになった記憶がある。これ、置かれた場所で頑張ることにフォーカスを当てているからこそ、そう思うのだが、他の場所で咲く花にフォーカスを当てたらどうだろうか。たまたま与えられたことでラッキーな運命をたどる人もいるだろう。しかし、もっと他の場所でプレーする機会を与えてもらったら、その人の才能は咲くかもしれない。こういう話は結局どっちがいいのという答えを求めることになり、その答えもあなたが選択した方が答えであるという自己責任という結論に陥りがちだ。これは決して間違いはないと思う。僕らの選択は全て自己責任を伴うものだからだ。ただ僕は、与えられたからといってそこで頑張り続ける必要はないと思うのである。見切りをつけて、新しいチャレンジを繰り返す。はっきり言ってどんな性格診断や適性診断でも自分にピッタリなものというのは見つからないと思っている。それはあくまで傾向であり、確信ではない。最近流行りのめちゃくちゃ当たる占いとはこれは異なるものだと思う。あれはおそらく本当に当たっているのかもしれないし、綿密なリサーチからくるものなのかもしれない。ポジションの話も診断の話もそうだが、さらに今話した占いの話もそうだが、全て僕らは見てないことの話をしていることに気づいて置かなければならない。サイドバックのままの方がいいのかも知れないし、トップ下をやってみた方がいいのかもしれない。やってみてやっと分かるのであある。ということは、何度もチャレンジさせてくれるような環境に属しているということは一番恵まれているのかも知れない。

僕は意外とトップ下になればよかったのかも知れない。

~fin~

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