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【読書日記】6/19 追悼 平岩弓枝さん 「御宿かわせみ」

昨日、ラジオで平岩弓枝さんの訃報を聞きました。91才とのこと。
私は平岩弓枝さんの作品を特に「御宿かわせみ」シリーズを愛読しているので哀しいお知らせでした。

御宿かわせみ、私が時代小説に目覚めた思い出深い作品です。
高校時代、諸般の事情で学生寮にいたのでTVは共有でチャンネルは多数決でした。私はTV時代劇のファンだったのですが、まず、その希望が叶うことはなく。
それまで、史実に基づく実在の人物を描くような歴史小説は読んでいましたが、いわゆる捕物帖のような時代小説は読んだことがありませんでした。多分、TVで満足していたからだと思います。
しかし、TVが見られないのなら仕方ない、と小説に活路を求め、試しに何冊か読んでみたのですが、その頃の私には合いませんでした。
何を読んだのか忘れましたが、主人公がアウトローのケースが多くて、TV時代劇好きの女子高生の好みにあわなかったのが大きな理由。
チャンバラ場面ばかり詳しくて血腥いのと、女性の扱いがひどい(高確率で手籠めにあう女性が出てくる)のもいやだなあ、と。
当時は、ネットがあるわけでなし、あまり高校生が書籍の情報を得る手段がありませんでした。人伝に聞いたり新聞の書評欄や書店で出版社が出しているリーフレットを読んだりして探していたように思います。ちなみに雑誌ダ・ヴィンチの創刊は1994年。これは、それより前の話です。

そんな中で、出会ったのですよ。御宿かわせみ。
まさに私の希望にぴったりでした。
八丁堀与力の次男坊で二枚目、春風駘蕩の人柄、剣の腕前は一流の東吾さん。
幼なじみのおるいさんは同心の娘でしたが事情があって八丁堀を出て大川端で小さな宿屋かわせみの女主人になっています。美人で気働きがあり、情があってしっかりもの、年下の恋人に惚れ込んで悋気持ちなのがかわいらしい。
東吾さんの親友で定廻り、真面目ないぶし銀の源さん(畝源三郎)。東吾さんは、源さんの助っ人のような立場でお江戸で起きる事件にかかわります。
江戸の町と人々の情緒あふれる物語。

夢中になって読みました。

最初の1巻は、図書室で借りたと思うのですが、手元に置きたくて文庫本を買うことにしました。学校帰りに本屋さんに寄ったのですがやっぱり親の仕送りで暮らしている身ですからまとめ買いははばかられて2冊にしました。
そして、寮の部屋で読みふけり、ああ、続きが読みたい!明日の放課後まで我慢できない!と。
よし、門限まであと15分ある。現金も一応手元にある、と。部屋着のまんま寮を飛び出して本屋さんに五分で走り、そのとき出ていた文庫本(おそらく文庫9巻の「一両二分の女」まで出ていた)をごそっと五分で買って五分で走って門限ぎりぎりで滑り込みました。

あの時の満足感といったらなかったですね。
その後夜っぴて読みふけり、翌日の授業はほぼ寝てたとか、散財の帳尻合わせのためにしばらく朝ご飯を節約(寮は食券方式)して、体育の授業の後、力が抜けて階段を上がれず踊り場でへたったとか、若気の至りの後日談もあるのですが、それも含めてきらきらの思い出です。
ちなみに私のお気に入りは東吾さんのお兄さん。登場回数は多くないのですが与力の神林通之進様がかっこよくて憧れたなあ、というのも今は昔。

御宿かわせみを中心に集う人々の物語と共に年月を重ね、明治時代の新・御宿かわせみまで。
御宿かわせみの後、たくさんの時代小説を読みましたが、私の中で特別のシリーズとして君臨しています。

平岩弓枝さん、ありがとうございました。