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夢や目標は持っていてもいい(ただしある条件のもとで)【ユタカジン】

かめりんです。1週間ぶりですね。
そろそろ名前を覚えてもらえたころでしょうか。

今回もユタカジンへの寄稿記事です。
ユタカジンとは「自分らしい時間的豊かさを追求する」をテーマとして、タスクシュート協会メンバーが、時間や習慣、タスクシュートなどなどにまつわるお話を連載していくマガジンです。

さて、タイトルを読んで違和感を感じながらこの記事を開いたかもしれません。
タスクシュートや順算思考に馴染みのない方は、

「持っていてもいい」ということは「持たなくてもいい」ということ?夢とか目標は持つべきものじゃないの?

と思ったかもしれないし、タスクシュートを実践している人は、

「夢や目標は掲げないで行こう」という話を聞いたことがあるけど、どっちなの??

と思ったかもしれません。
この記事の目的は、タイトルを読んだときに感じたかもしれない違和感をときほぐし、「順算思考」をより理解してもらうことです。

「逆算思考」と「順算思考」

初めて「順算思考」という言葉を聞いたかもしれませんので、ここで簡単に説明しておきましょう。対になる言葉は「逆算思考」です。こちらはいくらか馴染みがあるでしょう。

逆算思考:目標やゴールを立てて、その達成にやるべきことをリストアップして計画を立て、その計画に沿うように行動するような考え方。トップダウン的な思考方法。

順算思考:目の前のことに集中し、今できることに手をつけて成果を積み重ねていくような考え方。ボトムアップ的な思考方法。

順算思考は、このマガジンのテーマでありタスクシュート協会の理念でもある「自分らしい時間的豊かさを追求する」上で役にたつ思考スタイルですし、タスクシュートととても相性がいいです。
僕は、タスクシュート認定トレーナーになるくらいですから、もちろん「順算思考推し」であり、日ごろからそういう風に過ごしています。というか、タスクシュートを実践していく中でできるようになっていきました。

逆算思考がデフォルトな社会

僕ももちろん皆さんと同じ社会に生きていますから、当たり前のように目標を掲げるよう求められます。
具体的には、僕が勤めている会社はMBO*1を採用していて、毎年その1年の目標を書く必要があり、その達成度合いによって評価が決まったりします。会社自体が、目標を立てることを前提とした評価や人材マネジメントをしているわけですね。
また、チームでプロジェクトを推進する場合、必ずゴールはつきもので、そのための計画が立てられるのも当たり前なことでしょう。

*1 MBO:  Management by Objectives(目標による管理)の略。

会社勤めでなくとも、夢や目標を持つことが推奨される社会であることはすんなりと受け入れてもらえると思います。
そのような社会と順算思考の折り合いの付け方。僕なりの解釈を伝えてみようと思います。
もしかしたら、このあたりの考え方はタスクシュート協会のメンバー間でも多少なりとも違いがあるかもしれません。あくまで僕個人の考え方、ということで参考程度に読んでみてもらえると嬉しいです。そしてあなたなりのスタンスを考えてみてください。

夢や目標は持っていてもいい(持たなくてもいい)

「順算思考」とは端的に、逆算思考とは逆の考え方のことです。
逆算思考には目標や夢が前提となりますから、順算思考では逆に目標や夢を「持ってはいけない」と考えてしまうかもしれません。

しかし、これはあまり正しくありません。

夢や目標は持っていてもいいのです。もう少し正確にいうと、順算思考に夢や目標を持つ・持たないは関係がないのです。夢や目標を持っていてもいなくても、順算思考で生きていくことはできます。

ただし、夢や目標を持つ上では注意が必要です。夢や目標は、とある条件のもとでのみ正しく機能します。
僕の考える条件とは、簡潔にいうと

夢や目標・ゴールと一定の距離を保てること

です。もう少しいろんな言い方をすると、

  • 夢や目標への道のりはあくまでもゲームのようなものだと考えられること

  • 達成にこだわりすぎないこと

  • 夢や目標をしばらく忘れられること

  • 夢や目標をアイデンティティ化しないこと

などといった言い方もできるでしょう。一定の距離を保つ、ということのニュアンスが伝わりますでしょうか。
ではなぜこのような条件が必要か。僕の経験も踏まえてお話します。

夢や目標は諸刃の剣

夢や目標は、とある成し遂げたいことに向かって行動するための燃料になることはあるかもしれません。

実際のところ、僕自身が数年前までは高い目標を掲げた生き方をしていて、中学生の頃からは想像できないくらい遠いところまで来れたと思っています。それを否定するつもりはありませんし後悔もありません。

一方で、上記に挙げた条件がないと、自分自身を傷つけることもある諸刃の剣になってしまうということも、しっかりと認識しておいてほしいと思います。

僕の経験談に少しお付き合いください。
ちょっと恥ずかしいのですが、以下は僕が学部4年生のころ、大学の研究室に入ったころに描いた将来設計です。パソコンの奥底に眠っていました。
ガチガチの逆算思考人間だったことがわかると思います。

ちょうどこの頃、研究者として成功するにはどう生きればいいか不安で、いろんな本を読み漁っていました。
あまり詳しい内容は覚えていませんが、とある本に「研究者として生きていくための将来設計を立てよう」といったことが書いてあり、まさに下の図のような図が描いてありました。
それに基づいて、自分も将来設計を立ててみた、というわけです。

さて、現在は30歳。このころから8年(も!?)経ちました。現在との差異を逐一述べるなんて野暮なことはしませんが、いろんな点で大きく違っています。
この人生設計を立ててからの数年間、タスクシュートに出会って順算的に生きられるようになるまでは、息苦しく強張った生活を送ってきてしまいました。

人生という観点で逆算で考えてしまうと、それは容易に自分自身と一体化してしまいます。自分自身の人生を考えているわけですからある意味当然かもしれません。
実現していないのにそれが自分自身であると錯覚し、その理想にそぐわない行動を取ってしまうと強く自己否定してしまうこともあります。そんな高い目標を持っている自分は崇高だ、なんて思い上がり周りを蔑んだりしてしまいかねません。
そして悲しいことに、高い目標を掲げたのに、そのあまりの高さに体がこわばり足がすくんで、目標のための行動を取りにくくなってしまうという矛盾をはらんだ状態に陥ってしまいやすいのです。

この僕のケースは極端かもしれませんが、夢や目標を掲げ、一定距離を保てずに逆算的に生きていると、大なり小なり似たようなねじれた状態に苦しんでしまうのではないかと思います。
(あくまで個人の経験に基づいた物言いなので、そうでない人がいることも理解しています)

「見えない化」が順算思考を可能にする

さて、ではどうやって、夢やゴールを持ちながらも順算的に生きるのでしょうか。どうやって先に述べた条件を満たすことができるのでしょうか。

ポイントは「見えない化」です。

もちろん「見える化」を打ち間違えたわけではありません。
(タスクシュートの教科書的には「見えなくする化」ですが少し変えました)
夢や目標は必ず未来にあります。だからその未来を見えない(見ない)ようにするのです。
夢や目標があったとしてもそれが見えなければ、あまり考えずに今目の前にあることに着手し続けていくことができ、夢や目標があっても一定の距離を保てるでしょう。

タスクシュートが順算思考と相性がいい理由の1つはここにあります。
タスクシュートでは、今日という1日にこだわります。
プランを立てるときに未来のことを考えたりしますが、そのプランは必ず今日という1日限定で立てます。そして、その中だけでプランしたことを1つずつ着手していきます。
1日にやることしか見えないので、夢や目標をいったん忘れ、目の前のことに集中して取り組み、成果を少しずつ積み重ねていくことができます。そして、次に来る「今日」にまたフォーカスし、目の前のことに集中して取り組んでいく。
タスクシュートはこの繰り返しです。こうして、夢や目標から一定の距離を保ち続けることができます。
一定の距離を保ちながらも夢や目標に近づくという不思議なことができてしまうのです。

実はみんな日頃から順算思考で過ごしている

タスクシュートを実践していれば、上に書いたことはイメージしてもらいやすいでしょう。
しかし、実はタスクシュートの実践に関わらず、私たちは日ごろから順算思考を発揮して過ごす時間があるのです。
そのうちの1つが、とある目的地があり、そこに向かっている時間です。
(ここでいう目的地は比喩ではなく実際の場所のことです。会社とか。)

どこか目的地に歩いているところを想像してみてください。
当たり前なことを言いますが、目的地に向かって歩くときの一歩は今現在のこの地点からの一歩です。
「5分後にいるであろうところから一歩踏み出す」などできるはずもありません。

歩いている自分からは、常に現在地から見える範囲しか見えません。遠い場所や建物に遮られているところは見えません。これが「見えない化」のようなものです。
しかし、目的地に向かう上では見えないところまで見える必要はそこまでないでしょう。ある程度の範囲が見えていて、どこに向かって歩けばいいかが分かれば十分です。

歩いている途中で、信号が変わりそうなところに出くわしたりします。そのときはちょっと小走りして横断歩道を早めに渡り切ろうとするかもしれません。
あるいは、歩いていて喉が渇いたとき、時間にちょっと余裕があればコンビニに寄って飲み物を買ったりすることもあったりしますね。
常に「今」の自分の視点から、その時々の状況に応じて限られた情報をもとに「今」の手をうつ。日頃から行なっていることだと思います。そしてこれが順算的な考え方です。

これを逆算的な表現にすると「目的地までの距離と辿り着きたい時刻までの残り時間から計算するとこのペースで歩かなきゃ」とか「この時間までにここまで行っていなければ遅刻してしまう」とか「xx地点では通行止めになっているかもしれないから早いうちに迂回しなきゃ」といった思考になります。

これが不自然なことはすぐ伝わると思います。
しかし、私たちはなぜか夢や目標といったものを掲げるや否やこういう不自然な思考をしてしまうのです。不思議なものですね。

プロジェクトの中で順算思考を練習する

組織の中で、チームやグループ単位でプロジェクトを進行させるとき、何らかのタイムラインやガントチャートといった計画のもとで、とあるゴールに向かって逆算思考的に進んでいくのが一般的だと思います。
全員がタスクシューターであれば話は別で、そういう未来があってほしいなあという個人的な願望はありますが、少なくとも今はそうではありません。
とはいえ、悲観的になる必要はありません。

このプロジェクトという機会は、順算思考を試す上でうってつけだと思います。
というのも、プロジェクト上のゴールとは距離がとりやすいからです。プロジェクトのゴールが自分自身と一体化するようなことは、ほとんどのケースでないはずです。

何らかの計画があっても、それはチラ見する程度に留めておきます。自分自身は、その推進に必要な今やるべきことを考えて今日1日のプランに組み込み、きっちりと着手を目指して仕事をする。
これを毎日繰り返していけばきちんとプロジェクトは進んでいきます。
安心して、今日という1日に没頭していって良いのです。



さて、今回は順算思考に関してお話ししてきました。
タイトルを見て感じたであろう違和感は払拭できましたでしょうか。

  • 順算思考では、夢や目標は持っていてもいい。持っていなくてもいい。
    夢やゴールの有無は関係がない。

  • 夢や目標を持つ場合は、自分自身と一定の距離を保つ必要がある。

ということがこの記事のポイントです。この2点さえ理解してもらえたら嬉しい限りです。
そして、やはりこれを可能にするのがタスクシュートです。気負うことなく安心してタスクシュートを日々実践してみていってください。

もしもしかめよ かめりんでした。

順算思考に関する参考リンク


ここまで読んでいただきありがとうございました。
明日以降も続々と「ユタカジン」に記事がアップされていきます。
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