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大人は変わらないという絶望「タコピーの原罪/タイザン5」感想

 毎週金曜日になると同時にジャンプ+のアプリを開き、今週のタコピーでは何が起きるのかとドキドキしながらタップする。これは一体何に対するドキドキなのだろうかと毎週考えていた。
 子どもたちがもっと悲惨な目に遭う姿が見たいのだろうか。どうにかハッピーエンドに辿り着いて欲しいと願っていたのだろうか。可哀想は可愛いから?

​ 以下はネタバレ満載の感想になりますので、未読の方はご注意下さい。


 結末を知ったうえで読み返すタコピー、恐ろしく穏やかな気持ちで読める。作中で繰り広げられている暴力や心を切り裂くような言葉は恐ろしいままだが、東くんは救われるし、しずかちゃんとまりなちゃんがいずれは友人になることも分かっている。

 けれどそれはタコピーの存在と自己犠牲で導かれた未来で、彼が現れなければ遅かれ早かれしずかちゃんは死を選んでいただろうし、その死でまりなちゃんの家庭が元通りになることもなかっただろう。彼女の不幸の原因はしずかちゃんではないのだから。

 まりなちゃんが本来怒りを向けなくてはいけなかったのは、しずかちゃんでなく、身勝手な父親と母親であったはずだ。

 だが、パパとママが一緒に居て幸せだった頃の思い出もちゃんとある彼女は、親に反抗することが出来ない。愛するパパとママには怒りを示せない。自分に暴力を振るう母親の弱さを受け入れ、自分の体や尊厳が傷つけられても、寄り添って支えてあげてしまう。親への愛情が彼女を縛って歪めてしまったのだ。

 私自身は子どもではなく大人の年齢なので、最終回で描かれた『子ども達は変わっていけるが、大人はそのまま』という描写にはドキッとした。

 唯一希望があるとすれば、高校生になったまりなちゃんの「うち今日ママやばそーだからケーキ買って帰る」というセリフから察せられる、自分の母親はヤバイという認識を得たこと、ケーキを与えると落ち着くという回避方法を取得したことだろか。

 それでさえ、子どもであるまりなちゃんが母親のご機嫌を取ってあげているという状況で、とても正常な親子関係とは言えないが、それを打ち明けられる友人を得られたことが、まりなちゃんにはとても大きいことのはずだ。タコピーがこの二人を「おはなし」させることで、この未来まで二人を導いたのだ。

 親を愛し、親に愛される人生が一番いいなんてことは分かっている。けれど現実として、そうじゃない家庭もいっぱいある。やばい親のいる家庭に生まれても、どうにか生きていかなくちゃいけない子どもたち。そして、やばい親から変われないままの大人たち。

 「おはなし」することが出来ないのは圧倒的に大人のほうだということを、タコピーの原罪が教えてくれる。私は違うから!と思うことが、きっと一番危険なのだろう。

 ※この作品が好きならこれも好きでは?といったオススメがあれば教えて下さい。


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