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「カンタン」な手術なんてない。「カンタン」なお仕事がないように。

41歳になって一ヶ月ほど経とうかという頃、人生初めての手術を受けるために、これまた人生初の入院をした。受けた手術は「子宮頸部円錐切除術」。自分にとって大きな出来事だったので、記録として、そして同じような経験をする人に「こんなケースもあるのか」と思ってもらえればと、いくつかの記事に分けて残してみようと思う。

20年を経て手術に

初めて婦人科の検診を受けたのは、恐らく22歳か23歳の時。ピルを処方するにあたり必要です、と言われたのがきっかけだったと思うのだけれど、その時の結果はClass IIで「炎症性の変化を認めます」とコメントされた。それからもう20年ほど定期的に検診を受けており、進行は行ったり来たりしながらも緩く右肩上がり。一年ほど前から担当になった今の先生が、昨年暮れの細胞診の結果でCIN2が出たのをきっかけに言った「この先、絶対に癌化するとは限らないけれど、ウイルスが完全に無くなることはないと思うので、一度検査も兼ねた治療を検討しても良いかもしれません」の一言をきっかけに、それまで何度か聞いたことはある「子宮頸部円錐切除」というのを受けてみようかと真剣に考え始めた。

「カンタン」な手術

先生の「手術自体は20分程度で終わる『カンタン』なもの」という概説と、さまざまな婦人科がネットに掲出している「日帰りでも可能なくらい負担も少なく『カンタン』」といった情報を200%鵜呑みにして、ビビりな私も踏み切ることができたのだが、鵜呑みにしすぎたことを術前説明で知ることになる。

手術予定日一ヶ月ほど前に手術前の検査を受けた時、先生が「ご家族にもお話する必要があるので、次の術前説明は身内を連れて来てください」と言われ、「あれれ?思ったほどカンタンでない...?」と思い始めた。その時の私の想定では、一人で病院に行く→(入院するけど)サクッと手術を受ける→帰っていつも通り生活をする(5K程度のランニング含む)、くらいに思っていたのだ。なんなら退院日の夕方に予定を入れていた。夫曰く「シミ取りにいく感覚」だった。

「カンタン」の真意

手術1週間前くらいに行われた術前説明には、夫にも同席してもらい、今回行う手術の内容や、これまでの経緯、全身麻酔について、そして「あまり多量ではないけれど考えられる」出血や「ほぼないはずの」他臓器損傷・感染症の可能性、「今回の手術では、まぁしないけど念の為の」輸血の話、など一通り聞いた。率直な感想は、「これは...『カンタン』ではない」。もちろん、何時間もかかって、終わってからも長い間寝たきりになるような手術があるのも知っている。そして先生が「低いけれど絶対に発生しないとは言えない」可能性について説明しなければいけないのも、わかる。ただし、2回成人式を迎えられるほどの長きにわたって、大きな病気や怪我もなく生きてくることができた私には、「その数万分の一になる可能性」が大きく感じられて、尻込みしかかった。

そして、極め付けは「当日、どなたがいらっしゃいますか?」の質問。「え?!『カンタン』な手術だから、誰にも来てもらうつもりなかったのですが...」と正直に言うと、「あら、本当に気軽に受けるつもりだったんですね!」と呆れられ、「全身麻酔で意識がないので、万が一、何かあった時に判断してもらう人が必要」とのこと。そう言われれば、確かにそうだ。

新卒で働き始めた頃、「XXXするだけだから。カンタンでしょ?」と言われたことがある。それまでオフィスワークなんてやったことがなかったし、何もかもが新しかった私には「カンタン」には感じられなかった。一度やってしまえば「カンタン」になるのだけれど。

術前説明の後、入院受付のオフィスで入院の事務的な説明(当日の来院時間やチェックイン場所など)を受けた際、別世帯に所属する人を連帯保証人として据える必要があると言われた。真っ先に両親が思い浮かんだものの、当初は誰にも立ち会ってもらうつもりもなかったし、そもそも親に心配をかけたくなかったので、実家の両親に話す予定は毛頭なかった。そして、手術を翌日に控えた時点で、連帯保証人の欄はまだ空欄のままである。

見出し画像は、入院初日に、この原稿を書き始めた時に部屋から見えた空。

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