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2020年3月号 静かな春にはならなくて

春夏秋冬亀成園便りの15作目です。三重県松阪市飯高町での自給率の高い暮らしをする小さな自然養鶏農園からの季節レターをお楽しみください。 

【亀成園便りここから】
今年もまた春の幕開けはヒヨコの鳴き声が知らせてくれました。烏骨鶏の小さな卵から生まれた小さなヒヨコたち。生まれてしばらくは母鶏がお腹の下で守っていて、なかなか姿を見せてはくれませんが、体に似合わぬ大きな鳴き声が存在感たっぷりです。
 今回無事誕生してくれたのは5羽です。ごく薄い黄色ばかりの個体や、地肌の黒色を想起させるような黒毛の混じった個体など、ヒヨコたちは大人よりも個性的な見た目をしています。元気にすくすく育ってくれることを願うばかりです。
 
 鶏好きがこうじて野鳥にも目を向けるようになると、春は以前よりもにぎやかです。鳴き声盛んな鳥たちは必ず雛を望んでいることを思うと、見えないだけでそこら中に卵があることが描けます。春は卵と誕生ですね。

 亀成園のある飯高町の櫛田川上流では、アマゴ漁解禁を前に、稚魚の放流が行われました。川のあちらこちらを回って魚が次々に放たれていくのを、解禁を待ち望んでいる釣り人たちがうきうきと見ていました。解禁日は懸念された川の水量を補うかのように雨でした。そうでなくとも野外体験活動やイベントやらはほとんどが中止のご時世なのに、釣り人たちは変わらずたくましかったのが印象的でした。なにせ魚を狙うのは人ばかりではありませんからね。水辺の鳥たちや川の中の大きな魚に食われる前に、我こそはと糸を垂れるのでしょう。

 奇しくも学校に行けない子供たちもせっかくなので、釣り人に混じることにしました。混じると言っても元々広い川のあちこちに散らばってのスタイルなので、今は何より安全な過ごし方なのかもしれません。この機会に一生モノの楽しみが見つかるかもしれませんね。
 もしも釣れたらどう食べようかと考えるのが、母の楽しみ方です。そしておこぼれを待つのが鶏たちの楽しみ方。生存競争は尽きません。

【亀成園便りここまで】
この頃から子どもたちは2か月半程、学校には行けない時期でした。世の中大混乱しましたが、今思えば貴重な時期だったなとも思います。結論から言えば、我が家はだれも立派な釣り人にはなれないままでしたが、川のそばで暮らす豊かさは以前よりも格段に深く味わえるようになっています。

ずいぶん更新が空いてしまい、その間も続々と最新号が溜まってきています。少しずつ積み重ねていきますので末永くお楽しみにお待ちください。


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