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多頭飼い崩壊のお年寄りの飼い猫達の終の住処とは

前回お話させて頂いた、多頭飼い崩壊の猫達の、その後についてお話したい。

飼い主自体は、猫達には愛情がある様子で、親子、兄弟、姉妹である猫達を、離れ離れにはしたくない気持ちが強かった。

家の中で飼う事、家の中では自由である事、適切な医療を施して貰いたい事など…。
出来れば、毎日会わせて欲しい。
合計9匹。苦渋の選択の末、誰かは知らないが、誰かに託す事を決めていた。
ここまでは納得なのだが、最後の条件にぶったまげた。

「あの…タダで…やってくれる人か、あなたが全部面倒みてください。そういう活動でしょ?私はお金は出せないので…。」
と、一人暮らしの独身のお年寄りは、何度見ても大きなお屋敷の前で、わりかし偉そうにそう言った。

一体、猫の生涯の飼育、医療がいくらかかるかは、これ程の猫を飼っているならば、理解しているだろうに…。

私は静かに言った。

「あなたが希望される事をして下さる施設を知っています。生涯飼い主は、あなたという考え方の方達です。
ですから、雨風、暑さ寒さが凌げる家、お腹いっぱい食べれる食事、必要な医療、これらの全ては、飼い主が負担する事となります。それも立派な飼い主の役目ですから。」

と言うと、烈火の如く怒り出した。

「あんた、お金とる様な場所を何で紹介しようとするんか!!あんたは、マージンでも貰うんじゃろうが!!
タダ、いうたらタダなんじゃ!!」

と言うので、これも、この子達の運命なのか…。
と肩を落として帰路に着いた。

それから飼い主は、タダ、若しくは、タダ同然で、猫の生涯を預かってくれる場所を血眼になって探した。

結論…。

世の中にそんな場所なんて、どこにもある筈などなかった。

あるはずのない幻影を求めて、無駄な体力を使いすぎたのか、次第に元気がなくなっている様に見えた。

そして最後の望みを私に託したのか、

「猫のお金貸してもらえませんか?」
と、返すつもりなど全くないくせの、何で私が?…的な電話をかけて来たりした。

そして…観念し、私を訪ねこう伝えた…。

「お金出しますから、猫達をお願いします。」

とだけ静かに言った。

最後には、握って離さなかったお金よりも、猫への愛情と責任が勝ったのである。

そして、猫達のうち9匹は、生涯預かりの施設へと移動をした。親子、兄弟、姉妹、これからも一緒に過ごせる環境を飼い主は作った。

猫達は、自由に動ける環境を手に入れ、驚くべき速さで新しき住処に順応してゆく。

しかし、この施設がどこにあり、何という名の施設かは明かさずにおこうと思う。

どなたにもご覧頂けるこのブログは、それを知ると、その施設前に、猫を置いて帰る人間が出てくるからである。

その施設にご興味のある方は、ご自分の手で探し出して頂きたいと思う。
その労力もまた、飼い主である事の役割の一つだと私は思うのである。

さて、残った子達。この子達は、飼い主に何かあった時は、保護猫軍団に迎えようと思う。

残った子達は、片目がなかったり、脊髄に損傷を抱えたりしている子達であった。

「猫達より先に逝ってはいけませんよ…。頑張りましょうね。」

とだけ伝えた。引き受ける覚悟はまだ伝えていない。
すぐに甘えて来そうな予感がするからである。

ペットは家族である。

であるから、その生涯の責任は飼い主にある。

ましてや、食い止められた命を増やし続けた事への責任は、やはり重い。

この飼い主の積み上げられた業は、精算されたか否かは、私には分からない。

しかし、9匹の猫生を保証した功績は、素直に称えたいと思う。





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