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アンの元飼い主が現れた


昨日、このブログによく登場するおばちゃんの元に、アンの元飼い主が現れた。

アンを置いて引っ越しした、アンを捨てた元飼い主。

「あなたの所にいるんじゃないかと思って!!
ねぇ、あの子元気にしてる?少し顔を見に来たんよ
!!」

ど厚かましい態度と言葉をペラペラと並べたらしい。

捨てておいて、好きな時に勝手な行動がとれる、権利を手にしていると思う、自分勝手な思考回路と常識を疑う。

「知らんよ。あんたが勝手な事するけぇ。ずっと飼い猫が生きていける程に、外猫の世界は甘くないわいね。」

おばちゃんは、そう言ったらしい。

アンが幸せな場所に行ったとは、絶対に言いたくなかった。

「えーっ!!そうなん?あの子はどこにおるの!!なんであなたがちゃんとしなかったん?あなたが悪いわ。」

だと。

二度とアンの前に顔を見せて欲しくない。

うちに来てからのアンは、当然ながら、環境の変化に酷く怯え、少しの物音でも、私に飛びかかって
来た。

噛みつき、引っ掻く。

私の手や足は傷だらけになった…。成猫の歯の力は凄まじい。
掌に歯型の穴が開いたりした…。

しかし、アンだって私が怖いのだ。

その恨みの目。

身体の傷よりも、心が痛くなった。
気持ちやり場のない、心の痛み。

その都度、
「大丈夫。大丈夫。怖い事せんよ。私はあんたのお母ちゃんよ。」
そう言い続けた。

しかし、アンの攻撃を避けようと、ヒョイと腕を上げた瞬間、アンは激しく目を瞑り、小さくなった。

「あっ…!!アイツはアンを叩いていたんだ。」

噛まれたって構わない。私はアンを撫でた。

「誰がアンタを叩くんか?誰が叩いたんか!!
酷い事する人がおったんじゃね。お母ちゃんは、絶対にあんたを叩かん。ええか?この手はあんたを守る為にあるんよ。」

涙が出て、大声を上げて泣いた。

この時アンはじっと抱かれていた。


アンの13年という長い年月は、幸せだったのだろうか?

捨てられて解放されたのかもしれない。

私は、元飼い主と同じ人間である事が恥ずかしかった。

現在、少しずつ距離は近づき、1ヶ月が経過しようという今日、アンは名前を呼ぶと走って側に来る。

保護猫軍団達と、追いかけっこをし、外の景色を楽しんでいる。

まだ研修期間なので、利用者様との関わりは先になりそうだが、最近では、利用者様の前に姿を表す様になった。

「アンくん、人とは残酷な生き物でもあるけど、
人とは優しいもんよ…。
20歳目指して、頑張ろう!!
エヘヘ…。アンタは可愛いねぇ…。柔らかいねぇ…。」
と言うと、お尻を向けたり、転がってお腹を見せる。

そんな中、おばちゃんから一本の電話が入った。

「近隣で、子供の後をずっとついて歩くガリガリな猫がおるらしんよ。一緒に見に行ってくれん?」

この子も捨てられた…。そんな予感がした。

そうでないと、子供を頼りに歩き続けるはずはない。

行かなければ。行ってやらなければ。

ここで一つ、このブログを読んで下さる方に伝えたい事がある。

「今あなたが飼っている猫を捨てないでください。
一度餌付けされた猫が生きていける程に、外の世界は甘くありません。その子達は、飢えて、飢えて
この世の究極の苦しみを経験した末に、旅立ちます。手を差し伸べた瞬間に、責任が伴います。
どうか、どうか捨てないで…。飼えない理由が出来たとしても、生きていける最善の方法を考えて欲しい。」

保護猫軍団、新しい仲間のお話は、また別のお話で。





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