見出し画像

メルセデス・ベンツ C180アバンギャルド(ステーションワゴン)

くるまの状態:ディーラー試乗車
試乗コース:六本木界隈

内装・居住性
2011年のマイナーチェンジ時に2000か所の修正が実施されてから、「オイオイ大丈夫かよ」と思っていた部分がまったくない。クーペのときにもそう書いたけどやっぱりクオリティが別モノである。
クリーンで明快。まったく気になる部分がない。シートも良い。オーディオや設定部分で若干「慣れ」が必要となる個所はあるかもしれないけれど、まったく知らずに乗っても違和感がない。
ただしい乗用車の風景がそこにある。
そう強く感じたのは、シフトレバーがキチンとセンターコンソールから伸びているからかもしれない。
最近のメルセデスはAクラスからSクラスまで「これはワイパーレバーか記念品のボールペンか?」と疑いたくなるようなシフトレバーがステアリングコラムから伸びており、センターコンソールが更地になっているパターンが標準となりつつある。
たぶん次期Cクラスもあの棒を採用するのだろう。そうすると今回のモデルが「センターにシフトレバー」の風景を味わえる見納め。だから余計にいとおしく思える。
そういう意味でも貴重な存在に今後なり得るだろう。

走行性能
見納めとなるシフトレバーをゴツリと「D」にして、ちょっと初期の踏み代が鈍いオルガンペダルを踏めばスルスルと前に進む。
この「スルスル」がなんとも滑らかだ。Cクラスのスルスルに比べれば他のクルマのスルスルはズルズル、いやズリズリじゃないのか?と思えるほど。
ステアリングも同じ。FRの美点を活かした小回りの良さは健在だ。思っていたより小さく回ってしまうんじゃないかと心配になるほどだった。
エンジンはメルセデス流の「原動機なので色気とかは不要である」という素っ気ないモノだが、遮音がキチンとしているため不快感はないし、十分な仕事量を供給してくれるので問題はない。
かといって運転はつまらないのか?と思えばそんなことはない。良く切れるステアリングをコントロールしながら走る市街地はこの上なく楽しい。思い通りにクルマが動くからだ。
今から京都まで行って来いと言われても「よろこんで!」と答えてしまいそうになる。
変な喩えだが、膀胱が悲鳴を上げるまで座りっぱなしでもまったく疲れないと思う。
流行りのレーダークルーズコントロールも試してみたが、怖いくらい正確だ。
運転にボンヤリしている最近の日本人にはむしろ使って欲しくない装備だな、と思ったことは正直に告白しておきたい。

総合評価
たいそうベタな話になるけれど、VWゴルフ、BMW3er、そしてこのCクラスはどの世代のモデルでも時代を切り取る「メートル原器」であると思う。それぞれが個性を持ち続け、熟成を続けて研鑽し続ける関係はこれからも続くだろう。
そして今回試乗したあとでもその気持ちは変わらなかった。
最良のメルセデスだ。BMWに比べて多少素っ気ないものの、相変わらず「優秀で誠実な上質感あふれる機械」である。ありふれた表現だが「おいしい水」であり「余計な味を加えていない出汁」だ。素材からきちんとしている点はどのライバルにも負けていない。
登場から5年以上経過してもこのレベルをキープしているのは本当に素晴らしい。
2013年8月現在、メルセデスの中で一番お買い得なのはこのモデル、もしくはクーペだと思った。
AクラスやCLAとぜひ比べてみていただきたい。その差に額然とするはずだから。
しかし、だからと言ってベンツに乗ってる自分を特別だと思うのはヤボだ。

上質な機械を所有する自分を素っ気なく捉えていて欲しい。それがメルセデスの正しい立ち位置だからだ。