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メルセデス・ベンツ CLA180 AMGライン

くるまの状態:ディーラー試乗車
試乗コース:六本木界隈

内装・居住性
極東の地でトヨタ・カリーナEDや日産・プレセア、はたまた三菱・エメロードが登場した「4ドアハードトップブーム」からはや20数年。
まさか合理主義ゴリゴリなドイツ勢が、こんなに小さくて天井の低いモデルを21世紀に投入することなど想像もしていなかった。
後席=狭くて発狂、という図式が定石だったこのテのセダンに居住性の確保などまったく期待していなかったのだが、意外や意外。
前席を170センチのポジションで合わせて後席に潜り込んでも(まさにそんな感じ)居心地は悪くない。
ひざ前と天井にこぶし一個ずつの余裕ができるのには驚いた。さすがに178センチの同乗者は「腰が痛い…」と言っていたのでそこそこ限界はあると思うのだが。
シートの座り心地に問題はない。そこはメルセデス。抜かりはなさそう。
しかし個体差だと思うのだが、大きめのギャップを拾うたびにリヤシートの背もたれ付近からギシギシ音が出ていたのには感心しなかった。どうした!?

走行性能
すでに発売されているAクラスが「アレ」な感じだったので、さしたる期待はしていなかったのが正直なところ。でも確実に良くなっていた。開発時期がほぼ同じなのにこんなに違うの?と思わず言ってしまいたくなるくらいの差だ。
Aクラスで感じたステアリングのゴロゴロ感、エンジンのモタモタしたフィーリングが和らいでいる。
純正で装備されているヨンマルの18インチという武闘派タイアを履いているのにもかかわらず乗り心地も穏やか。
4名乗車でアクセル全開にしても「遅ぇなあ」という気がしない。パドルシフトを駆使すれば市街地の流れを簡単にキープできる。フットワークもそこそこ軽い。驚いた。AMGの神通力か?
しかし18インチのタイアは奢りすぎだ。確かに履きこなしているとは思うけれど、大きければいいってもんじゃない。やっぱりそこそこガタポコするし。
どう考えても全モデル18インチ装備ってのはやりすぎだろう。17インチタイアを選ぶ余地が欲しい。スポーティで売りたいのはわかるけれどそこはメルセデス。ちょっと「売らんかな」の気持ちが透けて見える。日本のユーザーが足元を見られているということか。

総合評価
日本では正直なところ誰が買うのだろう?と思う。確かにスタイルは良い。価格も競合に比べても遜色ない。ライバルに比べて美点もあるとは思う。
けれどメルセデスのバッジをつけているクルマ、という指標で見た場合どうしても合格点を付けられないのだ。
やっぱり期待するようなクオリティには届いてないように思える。
そう強く感じるのはゴルフⅦの存在。あれは大きい。
別にゴルフを贔屓しているワケではない。単純にモノとして比べると総合的に見てあちらの方が良くできているというだけのこと。むしろメルセデスらしいFFはあっちの方だ。

乗ってはいないけれど、CLAのベースモデルは良くなっているとはいえ、おそらくAクラスで感じたようなネガが多少なりとも残っているだろう。
で、そのネガを払しょくするためにいろいろなパッケージオプションを付ける。
そうするとカンタンにCクラスの価格に届いてしまいそうになる。
だったらCクラスでいいのでは?いやいや、それはベタだ。だったらBMWの1erやボルボのV40の方がお得だ、ということになりかねない。メルセデスなりのクオリティを求めていくとソコソコの価格に落ち着いてしまう。明らかにこれは不利だ。

確かに好みの問題なので、どのクルマにも似ていないこのカタチに惚れたのなら即購入!だろう。おそらく満足するでしょうし。
けれど比較検討の対象があり、それで迷っているのなら他の候補車と見比べてじっくり考えることをおススメしたい。そんなクルマだ。
個人的には消化不良で、なんとも中途半端な印象が残るメルセデスだ。
今後のバージョンアップでどれだけ良くなるのか?を含めて数年程度、改良のほどを見守った方がいいような気がした。