分散登校中の3年生に成長ノートを書かせた(感想)

菊池省三先生の実践に成長ノートとというものがある。
教師からテーマを与え、子どもたち一人ひとりは、そのテーマについて考えたことや思ったことなどを書くものだ。年間に100以上のテーマで書く。私も、数年に渡って実践してきた。


思いや言葉というものは、形として残らない。でも、とても大切なものだ。なので、書くことで残しておくしかない。さらに、自分の思いや考えを書くことによって、自分自身のことをメタ認知・客観視することもできる。それが、人格形成の上で非常に教育的効果が大きい。

よく、「なんで?」「どうして?」と聞かれても「わからない」「なんとなく」「知らない」と答える児童がいる。これは、ふざけている訳ではない。

「なぜ?」「どうして?」という質問は、オープンクエッションで、「はい」や「いいえ」では答えられない性質をもっている。つまり、自分の頭で質問に対する答えをこしらえなければいけないのだ。でも、この習慣や力、こつがわかっていない子どもたちは、考えるのを諦め、面倒くさいがる。だから、平気で「わからない」「なんとなく」「知らない」と答えてしまう。

また、成長ノートを通して、もう一つのよい大きな効果がある。それは、教師と子どもたち一人ひとりが繋がれるということだ。理由は3つある。

①子どもが内面を書くことで、表面化されない心情を知ることができる
②一人ひとりの文章にコメントを書くことで、成長ノートを通じた対話ができる
③子どもたちの思いを知ることで、日常の見方が変わり、声掛けもより効果的なものになる。


さて、今日は分散登校があったので、成長ノートを書かせてみた。

前半のグループは、テーマだけを投げかけて書かせてみた。

後半のグループには、様々なアプローチをして書かせてみた。

2つのグループの文章量には非常に大きな違いがあった。


Aグループの実践

テーマ:「今日のよかったこと」

T「今日一日を通して、よかったなあ、頑張ったなあ、素敵だなあ、と思ったことを書きましょう」

そう呼びかけると、子どもたちは早速、

C「わかんない!」

C「ない!」

C「書けない!」

と、口々に言いだした。

「すぐに出来ないと言うんじゃない!」と言いたくなるのをぐっとこらえ、ここからがスタートなのだと思うことにした。

Aグループには、このまま頑張って書いてもらった。
しかし、全く書けない子が3人ほどいた。書けた子も、1〜3つほどした書けなかった。平均すると1つだ。


Bグループの実践

続いてBグループにも、同じことをした。しかし、少しアプローチを加えてみることにした。

1つ目は、「事前に予告をする」ということだ。

T「今日は最後に、”今日一日のよかったこと”を考えてもらうからね」

と、一言伝え、黒板の角に書いておいた。

そして、2つ目は、「書く前に意見を共有する」ということだ。

書く前に、「今日一日で、よかったことや、がんばったこと、素敵だったことはありましたか?」と尋ねた。

一部の子は「わからない」「ない」と言っていたが、他の一部の子達は、

C「拍手が上手って褒められた」

C「聞き方が上手って褒められた」

C「みんなに会えて嬉しかった」

C「テストがよく出来た!」

など、話し出してくれた。

それを、黒板に板書しておき、その後に

T「じゃあ、きっと他にもあると思うから、ノートに書いてみましょう。」

と伝え、書き出した。Aグループのときとは違い、全員の手が動き出した。

さらに、3つ目は「書いている最中」の指導についてだ。

T「何個書けるかな?」と子どもたちに問いかけ、

T「3こ書けたらいいねえ。3こを目標にしよう!」

 ※ 黒板にすでに3こ以上あるのだ。写すだけでも3ついく。

T「5こ書けたら、凄い!なかなかだぞ」

T「10こも書いたら、スーパー小学生だ!」

など、"質より量"を求めつつ、遊び感覚になるような声掛けをした。

さらに、子ども達のノートを見ながら机間巡視は続く。

T「〜がよかったんだね。」

T「〜と書いてある。素敵だなあ」

と、つぶやきながら歩く。これも非常に効果的だ。

このつぶやきを、あたかも自分の考えのようにノートに書くのだ。人の意見に共感したらそれはもう自分の意見と一緒だ。違うなと思ったら子どもたちは書かない。だから、つぶやきをしながら歩くことで、種を撒いていく。

すると、Aグループとは大違いの結果になった。

同じ時間にも関わらずBグループは、全員が3こ以上書けている。多い子は10こを超えた。それも2〜3人はいる。平均すると7こぐらいだ。


今日の活動を通して感じたこと

今日、この活動を通して思ったことがいくつかある。

まず1つ目は、自己肯定感が低いということだ。

全く書けない子もいたが、じゃあその子は、今日よかったことがないのか?
答えは、明白だろう。そんなことはないのだ。
では、なぜ書けないのか。
それは、自己肯定感が低く、自分にはよかったことなどないと思い込んでいるからではないか。もちろん、文章力・書く力・観察力などざまざまあるが、でも全く書けないということはないだろう。1行は書く力を持っているはずだ。それでも書けない。見つからない。
3月までには、自分の良いところをたくさん書き出せる子にしたい。

2つ目は、書かせる指導について。

ただ闇雲に、「書きましょう」では書けないことが、再度明らかになった。これは、大人でも同じことだ。書くという行為は、様々な思考や手順の先にある。だから、Aグループの子どもたちが書けなかったのも無理はない。そういう書くための思考の仕方を知らないのだから。だからこそ、Bグループのときのように教師の指示のもと、ひとつひとつ一緒に行うことが必要になってくる。そうすることで、最終的に書くことができる。書くための思考や手順は、次の通りだ。

①テーマを正しく理解する
②情報を整理する
③気づく・発見する
④見通しを持つ

今日の内容に当てはめると次のようになる。

①「今日一日の中でプラスのできことを書く」ということを理解する。
 プラスとは?
 ・よかったこと ・楽しかったこと ・がんばったこと ・出来たこと ・嬉しかったこと ・素晴らしかったこと

②一日の出来事を整理し、プラスのできごとを想起する。
 ・テストの中で ・休み時間で ・授業中で など
  +
 ・ほめられこと ・できたこと ・良かったこと など

③友だちの発表や先生の話を通じて、自分にもあることに気づいたり発見したりする。

④1つ、2つ思いつき、書けそうだという思いになる。



まとめ

まだ、3年生。文章を書く力や物事を自分なりに考える力は個人差が非常に大きい。しかし、これを続けていくことで3月には今よりも成長していることを願っている。

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