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小詩集~秋風に


小雨そぼふる散歩道

意識せずとも気にかかる

時のめぐりの白い花

やっとみつけた

曼珠沙華

うつろう世の影

時代の悲嘆

淡い光がからみあう

老いの道行き

曼珠沙華

雀に心があるか

あるよ

だって僕に心があるから

雀に心があるか

ないよ

だって僕に心がないもの

僕は存在するの

存在するよ

雀に見つめられたもの

世界は存在するの

存在するよ

僕や雀が見つめるもの

寒くなったね

つぎの春まで世界は存在するの

それはわかんない

街は午後の眠りに静まる

歩みゆく道の先に

紅い点描

ヤマボウシの果実

やはらかなトゲで

私の手をこばむ

誰がつみとるのか知らないが

願わくは詩人の住まう

デスクにひとつ置かれておくれ

秋の日の

ヤマボウシの実

寒いね

秋だからね

夜明け前だからね

すこし着こんで散歩しよう

街は静かだ

雀たちと出会うにはまだ早い

僕が僕自身に出会うにも

まだ歴史は熟さない

毒をたっぷり含んだ果実が

僕の意識にふくらむのも

まだまだらしい

だから今の僕は人畜無害

でもやさしい善き人でもない

強い人でもない

風邪をこじらせたら死んでしまう

障がい持ちだ

颯爽とは生きられない

でも生きているのは楽しい

雲に光がにじむ

街に朝がくる

また愚かな歴史をつむぐため

歴史のなかではすべてが未知だ

Facebookページ、詩集#雀の涙


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