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人生を変えた一枚の写真

第1話

この写真を知っている方は、もうよほどの年配でしょうか。昔々、1970年頃に高柳憲昭さんの本に載っていました。写っているのは、お会いしたことはないのですが、学習院大学の西 由利子さんです。Black Widow TF のリムのど真ん中にストリングがきている、完璧なセンターショットの位置から写した一枚です。場所はアメリカ、ペンシルバニア州バレー・フォージ。アメリカの初代大統領ジョージ・ワシントンが独立戦争の時に1777年から翌1778年に野営した場所です。ちょうど日本で言う、関ケ原のような場所で、ただただだだっ広い所です。
ではなぜそこで弓を射っているのかというと、1969年8月11-20日までの間ここで行われた「第25回世界選手権」のスナップの中の1枚です。まだオリンピックにもアーチェリー種目はなく、フィールドの世界選手権もありませんでした。
LADIES       70m 60m 50m 30m FITA Total
1. D. Lidstone (CAN) 1184 +1177 = 2361
2. D. Wilber (USA) 1163 + 1188 = 2351
3. N. Kozina (USSR) 1160 + 1168 = 2328
4. H. Brezezinska (POL) 1187 + 1135 = 2322
5. M. Tani (日本)1145 + 1154 = 2299
27. Y. Nishi(日本)1079 + 1041 = 2120

ターゲットの「世界選手権」が世界最高峰の試合でした。そんな中、女子で谷まゆみさんが初めて5位入賞を果たした記念すべき大会です。

前回優勝のレイ・ロジャース、
次回優勝する ジョン・ウィリアムスを抑え
優勝を果たした ハーディー・ワード

GENTLEMEN 90m 70m 50m 30m FITA Total
1. H. Ward (USA) 1220 + 1203 = 2423
2. J. Williams (USA) 1205 + 1215 = 2420
3. G. Telford (AUSL) 1194 + 1187 = 2381

男子は前回レイ・ロジャースに敗れ、3位に甘んじたハーディ・ワードが優勝し、この時ハーディー・ワードに敗れるジョン・ウィリアムスが次回優勝するというドラマティックな大会でしたが、それ以上に高校1年の僕にとっては、西さんの一枚でした。

「こんな広い所で射ってみたい!」

まだアーチェリーのアの字も知らない高校生が、的と的の間がこんな離れた、こんな広い場所で弓が射ってみたい、と突然思ったのです。
この「憧れ」こそが、この後弓を続けるすべての原動力となりました。
もしこの時、ハーディー・ワードの射ち方やジョン・ウィリアムスのフォームに目が向いていたなら、こんなに長くアーチェリーをやっていなかったかもしれません。アーチェリーを方法論や可能性で考える前に、漠然としたでいいので、「憧れ」がそこにあるかを、今一度考えてはどうでしょうか。

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