アルマイトを発明したのは誰?
コンパウンドのインドア競技では、まだアルミシャフトが多く使われていますが、手が黒く汚れることはありません。ところが1970年代前半までは「24SRT-X」や「XX75」といったアルミシャフトが使われていたのですが、雨の試合では手が真っ黒になり、翌日アローケースを開けるとシャフトに粉がふいているのです。
アルミの最大の問題は、表面が空気や水に触れることで酸化し腐食し、錆びることでした。そこで登場したのが、今の ECLIPS の前身となる「X7」です。その表面に施されていたのが、アルマイト加工やアルマイト処理と呼ばれる「アルマイト」です。
アルマイトは、素材のアルミニュームにプラスの電極を付けて、陽極酸化法によってアルミニュームの表面処理を行ったもので、そこにできた被膜がアルマイトで、その後で染料を吸着させれば「カラーシャフト」の完成です。 これによってアルミは錆びないばかりか、いろいろな色と強度を得ることになりました。
アルマイトは「金属メッキ」とは異なります。アルマイトは素材であるアルミニューム自体が酸素と反応して、自らを使って新たに表面にアルマイト層を生成しますが、メッキは表面にアルミ以外の別の金属を貼り付けるもので、寸法も厚くなります。
ではこの「アルマイト」を発明したのは、だれでしょう? ダグ・イーストンではありません。
それから100年、アルマイトはシャフトだけでなく、ハンドルにも使われるようになりました。ハンドルがマグネシュームからアルミニュームに再び変わった結果です。しかし、アルミ素材であればすべてがアルマイトというものでもありません。アルマイト処理を施すにはアルミ合金の種類も問題ですが、ある程度素材の表面が整っていなければなりません。それに、赤系のアルマイトは耐光性が良くないので色褪せしやすくなります。
そこでこれも日本の発明ですが、最近では「曲面印刷」という技術があります。水溶性フィルムに模様を印刷しておいて、それを水の中で素材に転写するのです。そうすればジーンズ模様のハンドルでもできるというわけです。
技術はどんどん進歩しています。そして多くの発明や技術をアーチェリーの世界に導入し反映させてきたのは日本のアーチェリー界でした。素材としてのケブラー(芳香アラミド)繊維こそデュポン社に先を越されたものの、それをアーチェリーに最初に使用したのは日本です。高密度ポリエチレンにしてもカーボンも低反発ラバーも、そしてNCをはじめとした工作や製造の技術は日本が世界のトップクラスです。このことを決して忘れるべきではありません。
2002年、ヤマハがアーチェリー部門から撤退したことは、日本のみならず世界のアーチェリーにとっての大打撃です。最新の技術や最先端の素材をアーチェリーに反映させるハードもソフトも、ノウハウまでもを失ったのです。だからこそ今一度、日本の底力と日本こそがしなければならないことを再考してもいい時期ではないでしょうか。これからの世界のアーチェリーのために。