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シンデレラのあなたにガラスの靴を履かせたいぼく #超短編小説

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#シンデレラのあなたにガラスの靴を履かせたいぼく

アザーサイド(超短編小説#30)

おやすみ。 そう口にしたあと、彼女はぼくが聞いたことのない大きめな寝息を立てていた。 いつも「寝息立ててるよ」と言われている側からすると、実体験を伴って初めて相手の気持ちが分かる。そういう瞬間だった。 規則正しく鼻か口から洩れる空気の音。 それを聞きながら、天井を見つめる。 細長い窓に入ってきた外の光が、微妙に合っていないサイズのカーテンの脇から天井に姿を映し出される。 どういう仕組みなんだろ。 もっと物理の授業をしっかり聞いていれば、屈折率とかに興味が持てていれば、こ

ふたりでコンビニ行きたいの(超短編小説#29)

「じゃあそっちもゆっくり休んでね」 そう彼女が言うと2秒ほど静かな時間が流れ 「通話を終了しました」のモーダルが スクリーンに映し出される。 今日もお互いの食べたもの 観たネットチャンネルのこと よさそうと思った服のこと 簡単なレシピのこと だいたい半径3メートルくらいで起こったことを 報告しあった。 今朝ごはん食べるときにパッと手元見たらさ 箸の色が赤だったんだよね。 食べ始めてから気づいたわ。 無意識に彼女の箸を使ってしまった話をしたら 彼女は画面の向こう側で笑いな