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シンデレラのあなたにガラスの靴を履かせたいぼく #超短編小説

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かめがやひろしの超短編小説マガジンです。
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2018年11月の記事一覧

きっと今日もうさぎは月でお餅をついている(超短編小説#26)

定時に仕事が終わらない今日をくぐり抜け いつものように深夜1時を過ぎて布団に潜り込む 寝る時間がいつもと同じ時間なので ぼくにとってこの時間は定時で たまに芸能人の熱愛スクープの記事にある 「深夜23時の六本木で」なんて状況説明の 深夜という表現は本当に深夜なのか 読むたびにいつも訝しくなる 今日は下弦の月だそうだ おいしそうに下半分だけが黄金色に 光り輝く月を見上げながら 思わず一口目に「あまっ」と声が出た 缶に入ったワインベースのカクテルは 極度の甘味に包まれ

明け方に触れる髪はぼくの指を抜けていく。(超短編小説#25)

目は開けていないけれど 頭は朝を迎えたことを分かっていた 目を閉じたままでも 太陽の光に世界が包まれ始めているのを感じる 薄っすら開いてしまった目が 朝になっていることを正しく判断した 隣のマンションを向いている 小さい窓の方を見ると カーテンに薄っすらとした 明るい輪郭ができていた 「明け方」 この3文字が今の時間帯を 分かりやすく表現している 小さい窓へ向けた重た頭を さらに横に倒していく スーッスー 規則正しく聞こえる寝息 少し厚手のタオルケットが 二人