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シンデレラのあなたにガラスの靴を履かせたいぼく #超短編小説

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かめがやひろしの超短編小説マガジンです。
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2017年3月の記事一覧

猫になっても。(超短編小説#13)

『ねえ、生まれ変わったらなにになりたい?』 ふいに隣を歩いていると彼が聞いてきた。 『んー猫かな。』 『絶対そう言うと思った。笑』 にやにやしながらこちらを見ている彼と目が合った。 ふだん何気なく生きてきて 仕事が嫌だなと思うこともあるし 通勤の電車で座れないこともあるし やたらレジが混んでいることもある。 こんな思い通りにいくことのほうが少ない 日常から離れたいと思うことはわりと多いかもしれない。。 『だってさ、気楽だし一人になりたいときは自由になれるし、

チョコに包まれるイチゴ。(超短編小説#12)

新泉から道玄坂にぶつかる狭い通りを抜ける。 この一方通行を通るのにもずいぶん慣れた。 道玄坂にあたると右折して246号線に出る。 いつも日付けが変わる時間に通るこの通りも 今日は違う通りのように交通量が多い。 助手席で彼女はふいに 『エッチしてからごはん食べるのってなんか嬉しいね。』 と言った。 確かにいつも夜ごはんを食べたあとは ほぼ決まった円山町のホテルに向かっていた。 唇を重ね 体を重ねて束ね 愛を確かめ そしてシャワーでそれをより濃いものにする 台本など

想い出コンピレーション。(超短編小説#11)

洋画を観るとふいに洋楽が聴きたくなる。 いろんなアーティストの曲が入っている コンピレーションアルバムを聴く。 3曲目にはテレビ番組の主題歌に使われた曲が入っていて そういえば二人でよく聴いていたことを記憶のプレーヤーが勝手に自動再生してくる。 『絶対によりなんて戻さない。』 曲調の割に強いメッセージが印象的で 当時別れた事実が漂う二人の間を曲は自由に泳いでいた。 数年前のことが 数分前のように感じられる。 こんな普段思い出さないことを思い出して もしかしたら