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海外駐在員の帯同家族システムと時代の不一致 / 家族の話を聴こう!

私はサラリーマン業のうち、7年ほど海外駐在員として過ごし、現在進行中です。幸いニューヨークと上海という、海外派遣地として非常に恵まれた土地で勤務でき、貴重な経験を積むことができています。

海外駐在員として働く上で、負い目を感じることがあります。
それは、海外赴任において妻を退職させて帯同し、且つ現地では帯同家族の就労許可が出ないことにより実質的に妻のキャリアを強制的に中断・破壊させることになったことです。

私がnoteでの発信を本格的に始めるきっかけになった木下斉さんのVoicy。
彼が同様のきっかけで発信される方の横串として推奨されたハッシュタグ 『#ジブン株式会社マガジン』があるのですがここで拝見した転妻らいおんさんの記事からインスパイアされて、海外駐在員システムについて思考を整理してみました。
どうぞお付き合いください。


帯同家族の意思で転勤・海外転出しているわけではない

海外駐在員という点から考えれば、会社の人事異動で配置されるのが前提です。公募等でポジションを掴むケースもあるでしょうが、転居を伴う異動について、その家族の意思が介在するとすれば、転居を拒否する場合のみでしょう。

海外に住む、という結果だけを見て羨ましい!というお言葉は多々頂戴しました。しかしながら、その後に「私には無理だけど」という言葉がつく方もこれまた多く悶絶します。全く羨ましがってない(笑)

そう、帯同家族は別に海外に住みたいなんて思っていないのに、家族の都合で嫌々来られている・・というケースも多いんですよね。家族株式会社の全体最適の為に、個人が犠牲になっているということも多々あります。

数年でほおっておいて英語がペラペラになるなんてこともないし、お子さんも学齢や地域によってはとんでもなく苦労するし、お金もかかる。
私の同級生は、中学生の頃米国滞在した際に「魚を生で食う気持ち悪い連中」としていじめられた、というのだから隔世の感がありますが、現代でも根本的にこの問題は変わっていないでしょう。

<私が思う最大の課題>現代家族を強制的に昭和的家父長制価値観に引き戻す

専業主婦世帯と共働き世帯 1980年~2022年

専業主婦世帯と、共働き世帯の推移グラフです。リンク元は上記です。1980年では共働き1:専業主婦2という比率だったのですが、2022年には逆転しています。

1986年の男女雇用機会均等法施行から40年弱。2025年は昭和100年という話題もありますが、現代では主流の共働きだった世帯が、海外転出を期に無理やり専業主婦世帯にライフスタイルを変えられています。

家事・育児をいかほど分業していてもそのバランスは崩れることが大半だと思います。あまつさえ、海外勤務である夫 or 妻は仕事も忙しくなり、出張も増え、ほとんどの場合奥様側に家事・育児負担が増えます。尚、私が知る限り『駐在帯同夫』は2例しか存じておりません。まだまだマイナーな存在です。『家父長制価値観』という表現の根拠はここにあります。日本企業の根底に、男は海外勤務しても大丈夫でしょ、家族に事情がなければついてくるでしょ、という思想があるのだと思います。日本企業の大多数にとって、海外勤務者はマイナーな存在ですしね。

つまり、ポスト高度成長期におけるそれぞれの価値観が尊重される時代において、無理やりお父さんが稼いでお母さんが家庭を守るみたいな家父長制モデルを強制されることになってしまっているのが、駐在員とその帯同家族と考えます。この点、ご家族のモヤモヤは昭和の海外駐在員とその帯同家族よりもはるかに大きいと思います。

だったら単身赴任すればいいじゃないの、というご意見には反対です。
縁あって結婚し、場合によっては子供もいる家族が、無理やり別々に住んでいることは不自然だよね、というのが私の考えです。

解決策は一体どうするのか

企業は社会の為に存在しているのですから、ステークホルダーを不幸にすることは社会に全く貢献していないよね、と思うのです。システムが現代にそぐわないのであれば、改良していくほかありません。

企業は自社雇用の海外駐在員のパフォーマンスを最大化するために、帯同家族は住宅・渡航等費用の供出とサポートをするから、最大限駐在員をサポートしてよね、というのが本音だと思います。
そのような前提を踏まえ具体的施策としては以下の通り考えました。

  • 家族への就労許可付帯ビザ / 滞在許可の発行

何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

日本国憲法第22条

該当国の規定とは言え、「職業選択の自由」が帯同とトレードオフになるというのはかなり厳しいことです。事情が許す限り、帯同家族に労働許可が下りるようなビザや滞在許可を発行できるよう、企業は配慮すべきだと思います。

  • 学習サポート

企業が帯同家族の語学学習費用を一定補助するという制度は良く聞きますが、厚生労働省の離職者職業訓練のように、資格取得奨励金制度の拡大適用なども検討すべきだと思います。

企業が供出するのが難しければ、最低限帯同家族の学習費用は手厚く供出するのが、ジブン株式会社(家族株式会社)への投資ですね。知識は簒奪されません。

上記2点は、帯同家族がそれを望んでいる場合に、サポートできる、排除しないというために挙げた解決策ですが、そもそも論として最も重要なものがあります。それは・・・

  • コミュニケーション(一番大事)

海外駐在員本人は、多忙を原因として家族に家事・育児負担を多く配分し、そればかりか多忙を原因にコミュニケーションが希薄になる・・という事例を良く見聞きします。
全く、何のために帯同しているのかさっぱりわかりません。家族株式会社のステークホルダーと没コミュニケーションはマズいです。

あまつさえ、帯同家族が大して興味もない習い事や、俗にいう「キラキラ」を、罪滅ぼし的に考え放置する、放置するだけなら良いが「費用を出してやっている」みたいな考え方すらあります。
典型的家父長制思考に、駐在員もはまっています。だめだこりゃ。

結論: 家族のお話を傾聴しよう

望まない解決策の勝手な押し付けほどの不幸はありません。せっかく帯同しているのだから、家族とコミュニケーションしよう、話を聴こう、押し付けず尊重しよう、共に過ごす時間を喜び、楽しもう。
平凡な結論ですがこれに尽きると思います。

お付き合いいただきありがとうございました!

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