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黄色いペンギン〜ボクが書いたshort short story〜

黄色いペンギン
カメダイ



ミ〜ンミンミンミンジリジリジリジリ〜。
ミ〜ンミンミンミンジリジリ〜。

「いや〜、今日も暑いね」
「こんな日は室内で泳いでいたいわ」
「俺たちを見て涼しむなんて、人間はどうかしている」
「外の水槽は水温が高いから嫌だな」



35度を超える、猛暑日。
ペンギンたちが愚痴をこぼしている。
1匹のペンギンを除いて——。


「あいつ、今日も上を見ているな」
「この暑さでどうかしちゃったのよ」

空を見上げているペンギンの名は、キスケ。

キスケは空が大好きだ。


(どうしてペンギンは空を飛べないのだろうか)
キスケは毎日、そればかり考えていた。


(どうしてペンギンは空を飛べないのに、鳥と同じ数え方をされるのだろうか)
(鳥と同じ数え方をされるということは、本当はペンギンも空を飛べるのではないだろうか)
キスケには、ペンギンが空を飛ぶことができないことに、どうしても納得ができなかった。


ある日のこと。
今日もキスケは空を見上げていた。

「あいつ、今日も空ばかり見ているな」
「ペンギンがなぜ空を飛べないのかを考えているみたいよ」
「いくら考えても飛べないのだから、無駄なのにな」


今日の太陽は、やけにまぶしかった。
それでもキスケは、
空を見上げることをやめなかった。

あまりにもまぶしかったので、キスケは空を見上げながらしばらく瞼を閉じた。


瞼を閉じても、まだまぶしかった。


キスケは、空を見上げたまま瞼を閉じ続けるのは初めてだった。


瞼の裏は、薄く黄色い世界だった。
キスケは、
どこか違う世界に飛んできた気持ちになった。


(この世界なら、飛べるかもしれない)
キスケは迷わず、飛んだ。


羽をパタパタさせて、飛んだ。

薄く黄色い光の世界で、キスケは飛んでいた。

飛び方を知らなかったから、
キスケのなかでは泳いでいる感覚だった。


(飛ぶことと泳ぐことは、一緒なのかもしれない)
キスケは薄く黄色い光の世界で、輝いていた。


(光が、ボクのなかに浸透してくるのがわかる)

(ボクは今、空を飛んでいるんだ)

(ボクは黄色いペンギン。空だって、飛べるんだ)



ミ〜ンミンミンミンジリジリジリジリ〜。
ミ〜ンミンミンミンジリジリ〜。

「いや〜、今日も暑いね」
「こんな日は室内で泳いでいたいわ」
「俺たちを見て涼しむなんて、人間はどうかしている」
「外の水槽は水温が高いから嫌だな」


「パパ〜、見て!幸運をもたらす黄色いペンギンがいるみたい!見に行きたい!!」


いつの時代も、希望を与えてくれるものは、光り輝いている。


#人生 #生き方 #うまくいく #希望